本日は表論の二周年です。支部では数日前に投稿しましたがこっちは作者の余裕的にも今日しか無理でした←
ですが間に合ったのでよしとします(あんたが決めんなし)
では長い長い四章も本日で完結。次は五章。まだまだですが気長にお待ちくださいませ。
それでは
逃げ露落ちの鬼蛇8部屋目。縛られて縛られて、けれどそこから解放を求めてる。
注意
これはダンガンロンパシリーズの二次創作となっています。
本編とは異なる設定が多々あります。
突然視点が変わることがあります。
あと主の文才は期待しないでください。
それでも平気な方は次のページへどうぞお進みください。
補足
渡良部はモノヤギ以外の相手を麻雀の牌や役で呼びます。本編では度々麻雀について話すことがあるので彼女が他人を呼ぶときにはその人の名前にルビをふります。
例:直樹→
他の人が相手を呼ぶときはそのまま読んでください。
なおプロフィールに渡良部が相手を呼ぶときの呼び方を載せてありますのでそちらもぜひご覧下さい。
──────────
「……?」
部屋に入ろうとした途端、足元に落ちてた謎の手紙。手に取ってみる。くそ、さっきまで思い出してたばっかだっつのに。ダメだ涙で視界が……
「…………は? おい、これ……」
『刺客の七』には気を付けろだ……? いったいぜんたい何なんだよこれ……
*****
「ガハッ!!!?」
「…………君だったのか」
な、何が起きて……!? い、しゃ? なんで? まさか?
「て、めぇが……刺客の七……か? グハッ」
「? なんだそれは?」
くそっ、ちげぇのか!? うっ……
「ゴホッゴホッ……言えや……助けて、やれたかもしんねぇのに…………」
「!!!!!! すまない……すまない……っっっ!!!!」
「謝ってんじゃねぇ!!!!」
医者でもねぇって、いったい誰なんだよ……くそ…………
──────────
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「むふふ、おれだって無粋な真似はしたくないんですよこれでも。でもいつだって白くも黒くもなれるならそれくらいの度胸はありましょうよ」
「ほう……?」
「なんできみだけそんなに謎が多いのか。気になって仕方がありませんでしょう」
「知るか。勝手に人の素性を知ろうなどと考えるのはよせ」
「そうは言ってもですねぇ。おれにもおれなりの信念っていうのがありましょうよ。いくら答えがここにあるおれでも聞かないとわからないものくらいありましょう? 結局きみからわかった情報は『別院生まれでないこと』だけ。その前はおろか、後すら情報が不可解なほど多く見当たらんのでしょう……これは一体どういうことなのか。気にならないわけないでしょう?」
「阿呆か。だからって直接本人に……死んでもお前さんには言うものか」
「………………その割には、あの子とよく絡みがあるようで」
「ほざけ。なんじゃ、変態な目で見とるなんて言わんじゃろうな?」
「たとえ見たとしてもですねぇ、おれの性癖には刺さらないんです。ってそれはどうでもいい。本題はここからですよ。これ」
「…………なぜお前さんが知っとる。わしのパスポートの中身など」
「……実はおれも、関係ないわけではないんです。[[rb:タイだけは >・・・・・ ]]。だけどね、おれたちはこんなに若いうちに行くべき場所でもないんです。もう少し大人になってから。それが普通。けれど…………なんで行く必要があったんです? 旅行ではないでしょう? まさか………………予約を取りに行ったんじゃないでしょうね?」
「………………」
「はっきり言いましょう。きみの考えがさっぱりわからない。どうしてそんなことをする意味があるのか」
「……ほっといてくれんか? それを知る理由はお前さんにない」
「………………その髪の毛も?」
「……答える義理はない。お前さんが思った通りの答えがそれ。ただそれだけじゃ。わしに問うな」
「いやまあ大方予想はついてるんですけども………………」
「話す価値もない。悪いがわしは出るぞ」
「ま、待て!! まだ終わって………………行ってしまわれた…………………………灰垣ちゃん、男っていうのは簡単に抑えられる人間じゃあないでしょうよ。なぜきみは、血を絶とうとするんでしょうか…………?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
結論が出た。不気味に嗤う灰垣の本性に全員が唖然とする。
「ほれ? 結論は出た!! はやく投票するんじゃ!!」
白くどこか青みを帯びた猫のようなふわりとした髪をかき上げる。
「あ、あなたが……あなたが……っ!!」
「その話をする前にさっさと投票するであーる!!」
近衛のうだうだに耐えきれずモノヤギも私たちを急かす。そうして投票が終わる。
ぐるぐる回るのはルーレットのはずなのに
私たちが回ってるみたいな錯覚が起きる
止まったルーレット
鳴り響くファンファーレ
正解なのはわかるけど
死を
悪魔の拍手が
私たちを突き落とす
「パンパカパンパンパーンン!!!! 四問連続大正解ィ!! 今回超高校級の雀士ィ、渡良部美南を殺害したのはァ、超高校級のバレー部ゥ、灰垣遊助ェ、過去の名を!! 『
「灰垣遊助ぇ……!!」
近衛の怒りが灰垣へと向けられる。けれど灰垣は全く物怖じしない。それどころか不気味に嗤っている。
「はあぁ……全くこっちもひやひやするであーる」
「えっ」
「……暗殺者の桜田一族がいたことはわかっていたであーる。しかァしィ、モノリュウ様も含めてェ灰垣が桜田だったことは知らなかったことなのであーる」
「どういうわけです。あなたがたは」
「あのねェ……」
モノヤギは露骨にため息をつき頭を掻く。
「確かにオマエラの情報はほとんど知ってるであーる。でもあくまで『
……まあ何もかも知られてたら怖い通り越して気持ち悪いというか……いやこいつら知ってること多いからなんかな……
「それにィ……桜田がなぜそのようになったのかだって何もない資料ォ……今回は黙って処刑させるわけにはいかないであーる」
モノヤギたちですらわからない桜田の真相……灰垣は肩をすくめてはクスクス笑う。
「なんじゃ、おとなしく処刑してはくれんのか。……まっまだ罪を償うのが早すぎると言うのであればそれでも別に構わんが?」
「……は?」
「なあ矢崎よ。なぜわしが刺客の七だと疑った?」
「んー実は最初に疑ったの資料集めしたときなーんだよね~」
資料室……確かいろいろ情報を手に入れるために行ったような……
「桜田に関する質問の仕方に違和感がね。まるで灰垣くんが桜田に関係しているように感じたんだ」
「……ははっ、まさかそのときからとは。確かに桜田があったのに反応して思わず思ったことを問おてしまったのは事実じゃ」
……思い返して見れば普通桜田を見ただけで出身や犯行経緯を知ろうとするのはどこか違う。
バンッッッッッッ!!!!!!
突然、近衛の拳が裁判席で叩きつけられる。悲痛な表情で……怒って……
「なぜ…………なぜ……!!!! なぜ渡良部殿を……っ彼女を殺したのですか!!? 彼女が、っ彼女が殺される意味など、なかったでしょう!?」
「ふっくくく、はーーーっはっはっはっはっはっ!! なぜ? なぜか……前も江上が疑問に思い、その理由を述べてたのぉ?」
嘲笑。冷淡。唇を舐めそんな言葉が放たれる。
「正直な話をしようか? わしは殺せるなら
「………………は?」
「誰でもよかったんじゃよ!! 殺せるのならなぁあ!!!!」
そこには明確な殺意を持った、一人の刺客がいた。動揺することなく、常に私たちを警戒する彼の姿が。
「だれでも…………よ、よかったの?」
「そのとおーーり!!!!!!」
パチパチと拍手しながらまた彼は嗤う。
「意味がわからない……なぜ……なぜ!?」
「たーんじゅんじゃろう??? わからんのか?」
「…………ここから出たかったのか?」
「正解正解だーーいせーーいかーーい!!!!」
貼り付いた笑顔が、気持ち悪い……
「殺すのに必要なのは、冷静さと憐れみと技量と作戦と実行力。電子生徒手帳は想定外じゃったけどもなぁ。べっつに桜田に触れる理由なんぞなかったんじゃよ。わざわざな!! でもそのほうが面白いじゃろ? 楽しいじゃろ?」
「どこが楽しいって言うんだ!!?」
「他人の意見など聞くまでもないわい。ただわしは出たかった。それ以外に理由なんぞいるか? 出たいという気持ちに理由を敢えてつける意味は? ないじゃろうて!!!!」
む、むちゃくちゃだ。他のみんなは出たいって理由がはっきりしていた。阪本は事故の形に近いけれど。
「仮に理由を聞いたところで変に同情するじゃろう? そういうの嫌いなんじゃよ。結局コロシアイという連鎖は収まらんかったんじゃから。同情しても変わらないものは変わらない。ならとっととここから出て、やりたいことやって生涯終わらせたほうがいいと思った。それだけじゃよ!!」
「それは違う!!!!」
私は、思い切り叫んでいた。そんなの灰垣の生き方なんかじゃない。
「……何が違う? 決めつけるのはやめてもらえんか」
「それが君の生き方なら……君は生にすがっていることになる。もしそうだとしたら……灰垣くん……いや桜田って言ったほうがいいのかな。君はすでに死んでる」
「えっ?」
「…………」
灰垣の表情が強ばる。私は気にせず続ける。
「桜田くんの生き方にケチをつけたいわけじゃない。けれど……今の生き方が本当に生き甲斐のある人生なの……?」
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「生きて生き甲斐のない生活なら本当に生きたとは言えないのじゃ」
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────────────────
「生命は量より質。生きている中でどれだけ自分が胸を張って生き甲斐のある人生だったといえるかが大切なんじゃ」
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灰垣が私に言った言葉を、私はそのまま聞き返す。
「生命は量より質って言うのなら……それなら君の
「………………」
「あたいも気になることがあるだよね。なーんで桜田を名乗ったのに、
そういえば……桜田を名乗る割には……どこか穴が……
「よくよく考えれば、なぜさっき刺客の七の証明をするだけで犯人と認めるって…………出たいからという理由にどう繋がるんです? 結局『犯人なのに変わりない』のに」
灰垣は……答えようとしない。けれどどこか悲しそうな顔をして……目を、閉じた。
「全く……お前さんらには敵わんなぁ……」
灰垣は瞼を開き、ぽりぽりと頭を掻いて微笑む。
「まず初めに、桜田と呼ばないでもらいたい。わしはもうそれと訣別した。今は灰垣じゃ。話を戻すとだな、そうじゃよ。わしは胸を張って生きたなんて言えない。むしろ後悔だらけの人生。罪まみれの人生。お前さんらとは比べ物にならないくらい葛藤してきた。じゃが答えは見つからない。ただバカを連ねただけ」
「つ、罪まみれ? 灰垣くんに…………そんなのがあるの……?」
「ある、あるんじゃよ。今まで隠し続けてきた罪が。モノヤギも、モノリュウも知らない」
どういうことなんだろう、そう思ったとき。
「待てよ。秘密の動機とやら、まだ出てねぇんじゃねぇのか? 貴様の秘密ってぇのはなんだよ」
「……『別院生まれじゃない』。それだけじゃ」
「見てないのによくわかったね」
矢崎が呟いた。つまり、隠してるものがそれだけってこと…………
「……………………罪とは」
急にトーンを下げ、まるで諭すような声がすべてを黙らせる。
「罪とは、償おうとも償えない一生の火傷じゃ」
「一生の……火傷……?」
「……少しだけ昔の話をしようか?」
**********
長く話すのも飽きるじゃろうから、短めに話せるよう努力はする。
さっきも言ったがわしは暗殺一家の桜田として生まれた。そこでの暮らしは過酷を極めた。毎日毎日暗殺のための修行修行…………
暗殺者になることを望まれていた。しかしわしにはその才能がなかった。体だけが丈夫だったが言ってしまえばそれだけ。それだけしかなかった。何もできないわしにただただ振るわれる無慈悲な暴力が身体を蝕んだ。
耐えられなかった。肉体的にも精神的にも。わしは中学に上がる前に学校に相談し全国公表を教育委員会を通じて隠蔽。卒業後すぐに逃げた。小さい少年は脱兎の如く逃げた。すべてを抱え込んで、
数日走っただろう。2日、いや3日だったか。食べることも飲むこともせずただ走った。一心不乱に。振り向いたら捕まる。逃げ場のない鬼ごっこをしているみたいだった。疲れるなんて言ってたらダメだ。何も考えるな。考えれば考えるだけ蛇はやってくる。
逃げろ
逃げろ
逃げろ
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ
狂気的な凶器を振り回しながら迫る
本当は迫ってないことを心のどこかでわかってたはずなのに、わかっていなかったみたいに走って。そして遂に辿り着いた。わしを救ってくれる場所を。……そこが別院じゃった。気づけばわしは少なくとも二県をへとへとになりながら走って越えて南下していた。別院前に着きそこにいた僧に頼んだ。どうか助けてくださいと。僧は『これは仏の導きなのだろう。よく修行に励みなさい』と言ってくれた。ここで僧とわしは義理の親子の関係でありながら師弟の関係になった。姓を変え、秘密裏に名前も変えた。それから修行に懸命に励んだのだ。桜田の動向を窺いながら、ひっそり、ひっそりと。
………………以前こんな話をしたのを覚えておるか? 彗星の如く現れ彗星の如く消えたバレー部のことを。まあわしのことなんじゃが。あれには理由があった。受験期が近づいていた。本来なら引退時期、しかし元々部員が少ないのもあってかすがられたんじゃ。わしは参加することになった。結果はあの通り。全国にまで行き優勝へと導いた。……このときからバレーに対して強く引かれていた。だから高校でも続けよう……そう決めた。
しばらく過ごしてからあるニュースが目に飛び込んできた。今となってようやく理解したが『森の恐怖』のことじゃった。……すぐに誰の犯行かわかった。桜田だった。じゃがなぜあんな屋敷でやるかは疑問じゃったがな。暗殺者なのに、暗殺の仕方を誤っておったから。不思議に思っていたら以降ニュースもなくてな。忘れ去られた都市伝説になった。だがそれもすぐにわかった。
あるとき別荘に置いてきたものがあった。それを取りに行こうと考えた。……そこは惨劇だった。ぼろぼろに成り果てた家と三人の死体。一人の手には家事についての依頼を受けていたらしく、彼らが騙されたのだと感じた。
**********
「わしは……許せんかった。己を、あの家から逃げてしまった自分を。罪をこんな形で自覚することになろうとは思わなかった」
なぜなら、というように音を立てながら席に手をつき前のめりになる。
「直接手を下したのは渡良部だけじゃが、この空間において事実上の死を与えたのは渡良部含む四人」
「えっ」
「当然じゃ。|橘に刺客の七である手紙を置いたのはわしじゃ《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》から」
う……そ……あ、でもそうじゃなきゃ……話が通じなくなる…………
「で、ですがあのときは運命ダイスの影響が……」
「……その運命をもしも左右できたなら?」
「は?」
「偶発的に運命は大きく変わることがある。もしそれが起きたのならば? 偶然に見せかけた必然だとしたならば? わしの手紙ひとつで橘の、ダグラスの、巡間の運命が大きく変わったとしたならば? これを果たして『運命ダイスの仕業』と言えるのか?」
ふと、何かが落ちる音がした。カランと小さな音。
「わしのダイスの結果で、彼らの運命が狂ったとしたら……それはすべてわしが背負わねばならない『罪』じゃ。事実橘があの録音で刺客の七について触れたこと、それを恐らく耳打ちされた巡間が危機感を抱き、わしらに告げたこと……これが証拠となりうる」
さぞ当たり前のように、淡々と続ける。
「こんなわしじゃぞ? しかも外で、過去にわしが原因であろう出来事で死んだものは数知れん。幾人わしは殺したのか? ありとあらゆる無実の人々を死に至らしめた元凶が、今のうのうと生きているだと? こんな罪にまみれたわしが?」
「ま、待って!!?」
私は思わず引き留める。だって……
「ねえ……実際殺したのって君の親……もう思ってないのかもしれないけど、親なんだよね……?」
「何を言いたいかはわかった。要はわしが責任を負う理由はないと言いたいんじゃろう?」
見透かされた。うん、私は灰垣が気負う必要がない気がした。
「……確かにそうじゃな。結局犯したのは桜田。罪は親にあり子にはない……じゃがなぁ………………親の罪は自然と子に流れる。そして子はその影響で周りから迫害されるケースが非常に高い。そんなことないと言ってもバカにされるだけ。消えない。焼かれて焼かれて焼かれて、どれだけ償いをしても、もう二度と戻ることのないレッテルが【火傷】が蝕む。それならいっそ………………わしが悪人になろうと思ってな」
………………
「ん? 待てどうしてそうなる?」
「……もう死んだからじゃよ。桜田は」
……っ!! まさかあのときの
「桜田が死んだから……残ってる桜田が灰垣くんだけ…………つまり親の罪が……灰垣くんに」
その通りとゆっくり頷いた。
「償うためには誰しも刑を受けねばならない。しかしたとえそれが『死刑』だとして、果たしてそれで遺族は報われるのか? せいせいするのか? 否、そんなことはない。憎めば憎むだけ…………蝕まれるのじゃ。邪心に支配される。『あいつを殺してやる』、『地獄の苦痛を味あわせてやる』。じゃがひどく憎んでも結果はどうじゃ? 変わらんじゃろ」
まるで教えを説かれているみたいに、彼の空気に私たちは呑まれている。
「変わらないものは変わらない。不変。もう過去は変わらん。残るのは【むなしさ】、それだけじゃ」
…………私のなかで、どこか結ばれたままの鎖が一瞬緩んだ気がした。むなしい、か…………
「……ああそうだ。矢崎、牛の件、わしの親がすまないことをしたな……あんな残虐なことをしていたとは思わなかったんじゃ」
「いいよ。灰垣くんは手を出してないわけだし、あたいも………………そろそろ乗り越えなきゃいけないことだからね」
「それと直樹も」
「えっ」
「……………………あのときお前さんを気絶させたのはこのわし。そして、過去に誘拐したのもわしの親じゃ」
……薄々感づいてはいた。さっきの笑い方、雰囲気、殺気、すべてが
「もし、私があのまま助からなかったら……今頃私は死んでたかもしれない……」
「ああ」
「…………灰垣くん、誘拐されたときの件は許すよ。直接関わってるわけではないし。けど…………気絶させられたときのは簡単には許せるものじゃない。あのときもすごい怖かったんだよ!!? 頭触られたあの感触は正直……気持ち悪かった…………」
「……すまん」
……私は乗り越えられない。きっとこの先も自分が怖いと信じ込んでしまったものを治すのは難しいんだろうな……ごめん、灰垣。許せないのは君じゃなくて、私自身なんだ。押し付けがましいことしてごめん。こんなこと思っても直接言えない…………自分は逃げてばかりだな……
*****
「あの、いいかしら」
そう切り出したのは湊川だった。
「あなたは……どうして自分の数珠を壊すなんてことを…………」
「……そのことかぁ……」
灰垣は目を伏せる。袖から数珠を取り出し眺めて。
「………………煩悩など捨てきれてない。誰かに怒りを抱き、恐れた。そして何より、わしは羨望を抱いていた。ここにはいない友に。秘密を共有できる、唯一無二の存在に………………あやつは弱い。じゃがそれゆえの強さを持っていた。わしはそれが羨ましかった」
持っていた数珠の欠片を……投げた。カラカラカラン!! と床に落ち私たちのほうにも流れる。
「そんな人の形をした、人ならざる者に!! 別院の子の名を語る資格などない!! こんっっっな憐れな凡夫に!! 僧侶のような者と言われる資格など一ミリたりともないんじゃ!!」
ガンっ!!
裁判席を殴りつける。その手からじんわりと、血が流れて……
「は、灰垣くん!?」
「近寄るな!! どうせじきに朽ち果てる命。手当てなどいらぬ!! 施しなど受けつけぬ!!」
キッと私たちを睨み付けて続ける。
「かの聖人は、またその師はこう言った。『私も凡夫だ』と」
「凡夫って…………」
「じゃがあの方々は……立派であられた凡夫。わしごときが一緒にしてはならない……比べてはならない……許されたものではない!! すべての悪人が救われる!! そんな幻想を抱いたんだ!! わしは罪をすべて洗い流せるという幻想に!! 教えを乞うて救われた気になってッッ!!!! そんなのッッ!!!! ただの逃げでしかないッッ……なかったんじゃよッッッッ!!!!!!」
怒鳴り声とともに転がっていた数珠の珠がぶつかる。体が震えているのがよくわかるほどに。
「けれど」
「?」
その『けれど』が、ひどく震えていた気がした。
「その唯一無二の友に、施しをしたことは、後悔……しておらん…………むしろありがとうと言いたいんじゃ、あやつに……」
「……お前にとって大事な人なのか?」
「………………ああ。少なからず。始めてまともに会話をしたときにあやつはわしの全てを見透かした。なんと言ったと思う?」
いやわからんわ。
「
ただそれだけ、直接その人に言われたわけでもないのに、なぜか恐ろしいほどの説得力を感じる。
「…………秘密は誰にも言わないから秘密だ。これ以上はあやつのためにも言わない。たとえ問われても言うことはない。わしの口からはな」
何があったのかは彼と彼が施しをした人にしかわからない……一種の鎖。
*****
「じゃがわしの動機はこれだけじゃない」
あれだけ長い長い語りも、まだ終わることはない。長話が嫌いなはずのモノヤギは………………あれ? なぜか後ろを向いたままこっちを見てない? なんで? って思ってたら
ドンッ!!!!!!
「元はと言えばお前さんのせいじゃ近衛ぇええっ!!!!!!」
大きな音とともに灰垣が近衛を指さす。
「……は?」
「は? 『は?』じゃと!!!?!?? このおおバカ者が!!!! 人の心を散々に踏みにじりおって!! なにが『自分は関係ありません』面しとるんじゃ!!!! お前さんがどれだけ渡良部を傷付けたと思っとるんじゃ!!!!」
「なっ!! 何を仰るか!!? そんな渡良部を殺しておいて、何が傷付けただ!!?」
「ああああそうじゃあ!!!? わしは渡良部を殺した!! 殺したわい!!!! じゃああがなぁあああ!!!! お前さんのがよっっっっっっっっぽどたちが悪いんじゃよ!!!!!!!!!! 裏切り者だからとひよって……ゲームのやりとりも、紅茶飲んで一息つくのも、プールでの思い出も!! 何もかもぶち壊すような態度取られたらみーんな傷付くに決まっとるじゃろが!!!! ふざけてるのか!!!?!? 自覚してるみたいで無自覚しおってバカ者が!!!!」
突如として近衛と灰垣の口喧嘩に発展。私含めてみんながおろおろとしてる。
「最初に言ったことの訂正をしてやろうか!!? わしは近衛以外だったら誰でもよかったんじゃよ!! 殺せるならなぁ!!!?」
「えっ?」
「おい」
「待て」
「ほわっつ?」
「だろうね」
待って。え。近衛以外なら誰でもよかったって。それ近衛以外のところしか違くない?
「……………………な、なぜ」
「お前さん自身の【罪】を理解させねばならんと思った。裏切り者への、近衛への怒りがわしを動かした。そういうことじゃ。じゃが近衛を殺したところで何かになるのか?」
「そ、それは!! 僕を殺せば裏切り者がいなくなるでしょう!?」
その答えに灰垣は頭を抱える。困ったように、いやそれはとても呆れている様子で。そしてポツリと呟いた。
「それが『意味ない』んじゃよ……」
「どういうことです?」
「殺したところで近衛が思っていたこと全て失せるじゃろ。人が死んだら、誰がその意思を告げられる? 誰一人として無理じゃろ。自分のことは自分自身が一番わかってること。他人が言ってもその他人の主観で語られたら元も子もないじゃろう? 心理学を持っていたとしてもじゃ、それが100%なわけない。裏切り者がいなくなれば、裏切り者のこと何もわからなくなる。近衛を殺すのはかなりリスクが高いと判断した。なら他の者を殺そうと思った」
筋は通っているけれど、すごい恐ろしいことを言ってる。
「自殺も考えたが、もし暴けなかったとき全員死んでしまう。それは避けたかった」
また、あのカランって音が聞こえる。今度は屈みそれを手に取る。みんなを狂わしてきたサイコロ。
「ここに立つことの、
この学級裁判の意味、私たちはもしかすると本当の意味を理解せずに立っているのかな。
「ぼ、ぼくは…………」
「近衛。裏切り者で何されたなんか、わしは知らん。じゃが…………それもまた『導き』じゃ。『
「…………あるが、まま……に……」
「意味、履き違えるなよ」
灰垣は天井を見上げ、手を伸ばし、ゆっくり拳を作った。
「上下を足せば七になる。ぐにゃりとした世界、そこは歪みの中で光をもたらす。転がり続けるサイコロの影。わしはもう死んだ。幾度となく影に呑まれた。希望もすでになく、もしかするとわしは『絶望』と化していたかもしれない。でもいい。どうせこれからまた……死ぬからのぉ」
なんか、寂しそうにみえるのは気のせいなのかな。さっきから話題が変わったりうつむきがちだったり…………
*****
「…………さてそろそろ、始めてくれ。モノヤギよ」
「ん? いいであーるかァ?」
「なんじゃい、珍しい。長話嫌いが。ほら、いいからさっさとするんじゃ」
「わかったであーる。ではではァ、モノリュウ様ァ!!!!」
パッ
『…………つまらんモノだな。これより超高校級のバレー部に相応しいおしおきを開始するとしよう』
「つまらなくて結構じゃよ。わしはいつだって、死と隣合わせの人生じゃった。暗殺者から外れた生き方をしたのが幸いだったとわしは思っておる」
『くだらんことを……』
モノリュウのテンションの低さは肝の座った灰垣にがっかりしているからなのか。
「灰垣殿!!」
「……近衛よ。言っておくがわしはお前さんには謝らんからな」
「…………」
灰垣は私たちに背を向ける。
「そうだ。近衛、お前さんの忘れ物は燕尾服のポケットに返したからの。………………大事に使ってやれ。もう見失うことのないようにするんじゃぞ」
「はい!?」
慌てた近衛がポケットをまさぐったとき、目を見開いた。泳いだ目をすぐに灰垣に向ける。
「…………正直こんなに語るつもりはなかったんじゃがなぁ。もし、良ければわしの『あの詩』の仲間外れを見つけてみてくれ。その仲間外れがわしそのものだから」
優しいおじいちゃんのような声が、胸に刺さってくる。
「嗚呼もっと、もっと恨まれたまま、もっと嫌われたまま、もっと惨めで情けない、とてつもないほどのカッコ悪さで死にたかったわい」
つかつかとおしおきの舞台があるであろう部屋に近づく。
「何を仰いますか」
そのとき近衛が一つ、声を掛けた
「それではァ、おしおきィ……」
「もう既に、充分格好がついていらっしゃるほど……格好悪うお姿にあられますよ」
『スタートだ……ふ、フククク、カァーカッカッカッカッカッカッカァ!!!!!!』
「ははっ、なんじゃそりゃ」
格好いい格好悪いへにゃりとした失笑を私たちに向けて、そのまま彼は首を捕まれ奥へと消えていった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
GAME OVER
ハイガキくんがクロに決まりました
オシオキを開始します
◆◆◆◆◆◆◆◆
『仲間外れの桜の下、懐かしきに施しを』
“超高校級のバレー部”灰垣遊助、処刑執行
自分に嘘をついて生きるのは
随分と苦しい
………………
上は明るいな
四肢は大の字になってて鎖で全く動かん
どうなるかを待ってたら
バサッ!!!!
思わず目をつむった
じゃが顔には透明なヘルメットで覆われて
顔に直接かからない
ああ感触でわかる
土だ、土がわしを覆っていく
バサッ、バサッ、バサッ、バサッ
バサッ、バサッ、バサッ、バサッ
服に入るのも、すでに慣れていた
……………………
どれくらいの時間が経っただろう
完全に土に覆われた体は
身動きを取らせてはくれない
さて、と
これから何が来るのじゃろうか
グサッ
カハッッッッ!!!?
な、なんじゃ!?
グサッ
グリグリグリグリグリグリグリ
ウガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!????
腹を、抉られてる!?
いやっ違うっガアアッッ
手も、腕も、
太ももも、膝も、足も、
抉るように刺さってッッ
グリグリグリグリグリグリグリ
ウガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
痛いっッ!!
痛い痛い痛いッッ!!
強烈な激痛が…………!!
く………………そ……ッッ!!!!!!
…………………………
あ……れ…………
なんか、血の気が引いてきておるような……
シューーーーーーーーーーーーーー…………
嗚呼そうか……
血、吸われとるのか……
土がわしを覆ってる
刺さってるこれの感触……
木でも植えられたんじゃろう
つまりはわしは養分
ははは……
ふははは……
ははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!
嗚呼痛いッッ!!!!
痛いのぉ!!!!
ふははははははははは!!!!!!
痛いのはわかってる
でもわしは不思議に笑っていた
喜びではない
これはわしの足掻き
苦しんだところで嘲笑われる
それならいっそ……
“笑ってやる”
異常だって構わない
でもやつらの絶望に
負けてなんかやるものか
そんな意思でわしは笑っていた
………………………………
わしはずっと嘘つきであった
己の真実を潜めたまま恐れた
教育教育と圧されて揉まれ
秀麗なものなど欠片もない
わしは
バレー部にも、僧侶にも
何にもなれない半端者
芝に隠れて怯えた
誰よりも臆病な半端者
…………なあ冷静で素敵に微笑むお前さん?
もしもこれからも生きるなら
遠くから、ソナタを見届けよう
わしはお前さんとは相容れられない
じゃが……欲を言うなら
欲を……言う……………………なら……
…………なあ…………う………………、……せ…………
もし、また会えた、ら……
はな…………せる、かのぉ……
こんどは…………
………………こん、どは……
いや…………よいか………………
しって、……るのは………………
あ、なた………………だけ、で………………
……い……………………い……………
……………………………………
……………………
笑顔で目を閉じる
苦しんだであろうはずの彼は
ただ笑って
その生涯を終える
仏の如く、息を引き取った
彼の埋まったその上で
満開の桜が咲き誇る
その桜はバレーボールの波を
表すように咲いていた
*****
…………不思議と私は灰垣の生き様に見いられていた。残酷なのに、まだ怖くて体が動かないのに。痛みを堪えてあんなに笑って、儚く散る。今までの残忍さを逆にこちらが返したように見えた。
桜田との訣別、罪の責任取り、近衛への怒り。灰垣はどれだけ考えたんだろう。長い間考えてたんだと思う。
『…………………………つまらん』
モニターのモノは処刑をつまらないと言った。
『つまらない。つまらなすぎる。こんなものが絶望の糧になるものか。情けなく散れば良いものを』
「…………オシオキ、約束は守ってるであーる。それにィその文句は言わないルールであろう」
『誰に向かって口答えをしている!!』
モノリュウの怒号にびっくりする。けれどモノヤギは動じなかった。
「……
『貴様』
「それに、ワレがいないと出来ないこともあーる。ワレを壊したいのならその覚悟もあるということであーるよな?」
『………………ふふふ、この世界での真の支配者め。だが余がいればそれは無力だ。守るもの一つ守れない無能なヤギが』
突然バチバチバチ!!!! という稲妻が走る音がする。
「ッッ!! グアアアアアアアア!!!!?!?」
それはモノヤギに対して襲う。こんな仲間割れ見たことない。
『黙っていれば望む通りにしてやる、そういったはずだ』
「……まだ……まだヤツは生きている…………ソイツが死なない限り、まだワレは負けていない……!!」
『くだらん足掻きはよせ。余の支配プログラムは貴様にまで及んでいるのだ。またそこの人形共を嘲笑い、蔑み、絶望に落とせば良いのだ。減らせばいいのだ。超高校級を、貴様を見捨てたやつらへの復讐も兼ねて。………………ふふふふふ、しかし受け入れたのは自分であることすら覚えてないなんて、なんて皮肉だろうなぁ?』
「ぐ………………」
ふと、モノヤギは私たちをちらりと見る。小さくチッと舌打ちが聞こえた。
『貴様は、抗えぬ。従え』
「………………了解した……」
モノヤギ……? なんか、やっぱりいつもと様子違う気が……
『さてと、こんなにもつまらんものを見て萎えた。去る』
それだけ言い残してモノリュウは消えていった。
「…………オマエラ」
しばらくの沈黙。モノヤギが声をかけてきた。
「……争ってるのがオマエラだけとは限らないであーる。くれぐれも、気をつけて」
そういってモノヤギもいなくなった。一体、なにがどうなってるんだ……? モノヤギは何を考えてる?
*****
そんな私の個人的な葛藤をぶち壊す人がいた。
「はあーああ!! やっと終わったか? こっちは綺麗事は嫌ぇなんだぜ。そろそろいいか?」
「!? き、綺麗事って何よ!!」
「いやそれより……国門、お前……」
「ひははははは。ようやく
国門なのに国門でない。前に橘が言っていた、人格の危険。さっきの裁判の途中から本当におかしくなっていたけど……これは……
「お前……」
「おいおいおい!! 俺様をお前と呼ぶのはよせよ。俺様は……ああそうだねぇ……『ショータン』とでも名乗っとくぜ」
ショータン……?
「……ショータン、なぜ国門くんを」
「あーれぇ? まさか気付いてねぇのかだぜ?
狂ってる、あ、待ってその話前にしてた……あれのことじゃ……
「確かに誰かをバカにすることはあったけど、そんなはずは」
「ったっくよぉ、これだから正真正銘『バ カ』は困るぜぇすかぽんたん共めが。言わせてもらうがぁーよぅ、
それはまるで発狂しているみたいで、けれどさもそれが普通のようで、おかしいのに認識がおかしくなったのか。
「まあどうやったってぇ貴様らと仲良くなれる気は全くねぇがねぇ!! 俺様は俺様の役割を果たすまで。んじゃーなぁー!!!! ひはははははははははは!!!!!!!!」
大袈裟な高笑いが裁判場にイヤに残って反響する。いなくなったはずの
「……もうどうすることもできないのでしょうか…………」
「さあ……な……正直今までとは違う変わり方をしてるし……」
国門をなんとかする術はないのかな……できることならしたいけど、手段がわからない。彼が侵食者に取り込まれたのなら引き出す方法があるかも知れないのに。もしそれがなかったら、私たちはどうすればいいの? ここに巡間はいない。彼なら何かわかるかも知れないと思った。でも無い物ねだりなんてできやしない。
「……もう、逃げてたまるものですか……」
近衛はそう呟いて……出ていった。私たちもそれに続いてエレベーターで戻る。
***
部屋に戻ってからご飯食べよう。そう思った。
「…………………………」
どこかで、私は自分の精神の疲弊を感じていた。
みんなの動機、積み重なる課題。大切なものすら消えていく。こんな無情さをいつまで私たちは続けるのだろう。
今までにないくらいの喪失感がする。
喉が苦しい。
このまま寝ちゃおうかな………………
いつまで経っても
今日という日で寝られなかった
変わりにずっと一点を見ていた
私の瞳に写っていたのは
感情なくずっと光続ける電球だけだった
**********
部屋に戻る前に休憩スペースで紅茶を淹れ自室で飲む。熱々の紅茶は簡単に喉を通ってはくれない。一度机において水面を見つめればなさけない僕の顔が映っていた。
『いい? あなたが綺麗で素敵で好きだと思った人は3日で飽きるから。代わりに、あなたがブスで苦手で嫌いだと思った人は3日で慣れてくから。あなた絶対それ。わたしとは慣れすぎてそうは思わないとは思うけど、他の人だとしたらそう思う。絶対、100%ね』
お嬢様、わたくしようやく気づきました。貴女様がどうしてあのようなことをおっしゃったのか。確信されたようにおっしゃられましたが、ここで過ごすうちに意味がわかりました。
誤解のないように申しますと、別に渡良部殿がブスだとは存じておりません。ただし苦手で嫌いではありました。あのような呼び方されると普通誰も存じませんでしょう。わたくし自身も自覚はございますが、さすがにここまでではございませんよ……えっございませんよね?
実のところ、初めは金室殿が綺麗だと存じました。可憐で優雅でとても惹かれるものがございました。しかし本当にそれに『飽きた』のでございます。不思議でなりませんでした。
代わりに全く眼中になかった渡良部殿に目がいくようになりました。確かにダグラス殿と三人でずっと居りましたが、正直めんどくさいとしか存じることができませんでした。それがどうしでしょう。居心地が良くなっていったではございませんか。なんで? どうして? わからないことだらけでした。
もしかするとわたくしは感情が欠けていたのかも知れません。だとしたらそれは『嫌い』でしょう。
昔から仕えているお嬢様とは仲が良かったですね。貴方の要望にはいろいろ応えたつもりでおります。わたくしの背中を見ながら、肩を並べながらともに過ごす毎日を楽しんでいた。執事の仕事自体苦ではなかったから。一風変わったお嬢様でございます。
ああそういえば花が好きでございましたね。わたくし花はあまり好みではございませんでしたが、ハーブティーは好きでしたし熱心に語る貴方は美しかった。その影響からかハーブティー以外にも誕生花程度ならわかるようになっておりました。
あ、お嬢様と喧嘩をしたこと一度もございませんね。些細な言い合いはあっても、嫌いにはなりませんでした。些か『なれなかった』のほうが正しい気も致しますが。主従の関係ゆえに我慢しなければならないものなのかと考えたこともございました。が、いくら考えたって嫌いには至りませんでした。ただ慕って居りました。そんなことを一度お話したことがございました。その時貴女はあのセリフをおっしゃった。覚えておりますでしょうか。
………………きっと、わたくしは『嫌よ嫌よも好きのうち』、まさにそんな言葉が似合う人なのでございましょう。いえ。全く以てその通り。恋愛には傾かないと存じていたはずなのに、覆されましたよ。本当にね。わたくしは渡良部殿には飽きることはございませんでしょう。何せ『慣れて』しまいましたから。
嗚呼なぜ今まで気づかなかったのでしょう。後悔しかございません。そんなことを申し上げても、わたくしはもう渡良部殿に何を伝えようとも伝えることが出来ません。なにせもう、直接お会いすることができませんから。
ですが届くのであれば言いたい
慕っておりましたよ、美南さん
貴女からもらった押し花も
もう絶対離しはしない
ありがとうございました
今はゆっくりお休みください
わたくし、絶対乗り越えて見せますから
カミツレの花言葉は
『逆境を耐える』
『苦難の中の力』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「うふふふふ」
「ッチ、てめぇはいつまで笑ってられんだよ」
「それはもちろん、生きてる限りに決まってるじゃない」
「……………………」
「? 何か言ったかしら」
「……やっぱり、俺は諦めきれねぇよ」
「…………あたくしに向けるものならやめてくださる?」
「誰のせいだっつの。だが俺はてめぇのおかげで消えかけたものが見えたんだ……いい加減
「無理ですわね。見るだけでなく感じませんと」
「…………」
「同情はいりませんことよ」
「……それでも、俺は諦めねぇかんな」
「御勝手に」
「………………んじゃ、先、待ってっから」
「ええ…………お後追わせていただきますわ」
**********
「ねえねえねえ!!」
「おや? いかがしましたかな?」
「ここのあれどうなってるの!?」
「ああ~これは動かすために必要な動力源でありましょう。まあいわゆる電池みたいなもよだとおもってもらえればいいでしょう~」
「電池かぁ。でも……こことここ、電池の方に例えるならちょっと難しくない?」
「着眼点はほめましょう。でもねぇそうするとこのあとの容量が狭くなることを考えると最悪最初からやりなおしになりかねないんですねぇ」
「それはイヤだね」
「でしょう?」
「…………本当に作れるかな」
「作れるかなではないでしょう。作るんですよ。ね? だってそのほうがワクワクするじゃないですか」
「確かにそうだね!! あ、これ宮原くんたちから受け取ったやつ。あれとか終わったって」
「おおおそうでしたか!! さすが、統率力高いですねぇ。なかなかそちらにはリーダーシップの高い人が多いようで」
「まあそうだね。実際そういう人たちに助けられてる場面は多いし」
ピロン!!
「お? おおおお!! 終わった!! よしよし!! どれだけ時間をかけたことか…………これだから計算は嫌いなんです……し・か・し!!!!!! これでようやく心置きなく設定ができましょう!!」
「どれどれ!! …………わあ!! すっごい!! ねえねえ!! どんな感じにするつもりなの!!!?」
「そうでしょうねぇ~………………多少はおれたちの参考にもなる場所を置きたいんですよねぇ。でも一応コンセプトがこれで……」
「前に言ってたあれと変わらないんだ。うーんけどそれでもいいんじゃない? 定義とはってなっちゃっても、オリジナルの、自分の世界作っちゃおうよ!!」
「……そう、ですね!! うん、何をおれは悩んでいたんしょ。では続きやりましょう!!!!」
「えいえいオー!!!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
必要以上のことはぜってぇに言わねぇ
隠してばかりだけど本能には忠実
話しても笑われてはぐらかされてばかり
多くは語らないんだよね
だがあいつは自分で自分を殺した
でもあの人は意思を託した
たとえ二度と口にすることはなくとも
たとえ二度と話してくれなくても
俺はあいつに願うだろう
わたしはいつも祈ってる
独りでいるのは一緒でも
同じ夢を見ていても
どうか願わくは
どうか願わくは
【この手の意味を忘れねぇでくれ】
【一人の舞台で食事をともに】
【作ろうよ世界を、夢は無限卿だから】
【越えられるって信じてる世界を】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
このとき直樹たちは
気づいていなかった
……俺の流儀はな
出して……出してっ!!!!
どうなってるのよ!?
ひはははははははは!!!!
生きる価値もないゴミ共が
させるか!!
触れた瞬間 はじめまして
だから貴方は変だった
もういいよ
オマエラァァアアア!!!!?
“さようなら”
正しく疑え
目先だけに囚われるな
そこにあるのは真実のみならず
隠された裏を覗き込め
そうこれは“すれ違いの物語”
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“約束のヘアドネーションのコピー”を手にいれた
灰垣がある人物のためにヘアドネーションで提供し与えた髪のコピー。要はただのかつら。とある人との約束は通常ではほどくことのできないほど、堅く堅く結ばれていたものだったそうな
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********
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「さて約束、守ってくれなきゃ困る」
「……………………っ!!」
ガッシャーン!!!!!!
「っ!!? ちょ……!!」
「そんなことをして、なにか収まるわけでもない」
「なに?」
「本当は渡してはいけないもの。これを渡せばすべてが壊れる。大事にしているものすら」
「………………」
「言いたいことはわかる。けど必要としてるのは自分だけじゃない。元は一つ。だからなおるとわかっていても……こんな形じゃ意味はない。ねえ……どうして大事?」
「そんなの決まってる!! 誰が●●を」
「その●●も同じ」
「っ!?」
「同じだから、他にはなれないそのものでなくてはならない。別のこと探すの手伝うから」
「…………………………わかった」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
動き出すのは
なんの歯車か
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第四章「転がる骰にゃ影潜む」
終
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next→第五章「二匹の狼が報じた一矢が抜けないまま命懸けで飲み込み撃ち込んだのは、二人の赤ずきんの摘む曼珠沙華の咲いた日に投影したあの姿」
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補足
枝は垂れても嘘をつく
→【枝垂れ桜】
花言葉:優美、『ごまかし』、円熟した美人
芝に潜んだ臆病さ
→【芝桜】
花言葉:『臆病な心』、合意、一致
重さ八とて教育上よ
→【八重桜】
花言葉:豊かな教養、善良な『教育』、しとやか
山のきれいに見とれるべからず
→【山桜】
花言葉:あなたに微笑む、純潔、高尚、淡白、『美麗』
冬の寒さは
冷たく静かで笑ってる
→【冬桜】
花言葉:『冷静』
→【寒桜】
花言葉:気まぐれ、あなたに『微笑む』
一人のソナタ
彼岸を見届けん
→【彼岸桜】
花言葉:心の平安、精神の美、『独立』
仲間外れ→【芝桜】
芝桜は桜の仲間ではない