表裏ダンガンロンパ ~共通とすれ違いの物語~   作:炎天水海

8 / 37
第一章 非日常編 捜す5部屋目

 注意 

 

 これはダンガンロンパシリーズの二次創作となっています。 

 本編とは異なる設定が多々あります。 

 あと主の文才は期待しないでください。 

 

 それでも平気な方は次のページへどうぞお進みください。 

 

 補足 

 渡良部はモノヤギ以外の相手を麻雀の牌や役で呼びます。本編では度々麻雀について話すことがあるので彼女が他人を呼ぶときにはその人の名前にルビをふります。 

 例:直樹→ 直樹(トン)

 他の人が相手を呼ぶときはそのまま読んでください。 

 なおプロフィールに渡良部が相手を呼ぶときの呼び方を載せてありますのでそちらもぜひご覧下さい。 

 

 *****

 

 

 

 

 

 

 ウソ? あんなに元気に話していた彼女とこんな形でお別れだなんて……信じたくない……私は訳もわからず地面に膝をついて鷹山を眺めるしかできなかった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 他のみんなも危ないとはいえ緊急事態。階段を飛び降りながら急いでやって来た。

 「どうして……あなたが…」

 金室が静かに呟いて

 「うっ……」

 血の匂いに気分を悪くする阪本に

 「こんなことが起こるだなんて…」

 矢崎とともに阪本を支え悔しいそうに言う宮原。

 「くそったれがぁ…」

 橘は吐き捨てるように呟き背を向ける。

 「誰がこんなことを?」

 巡間は問うた。それに答えたのは

 「ワレが答えるのであーる!」

 モノヤギだ。服装は…嫌みか。探偵服。鷹山が着ていた服。つくづくこいつはレイヤーギになりやがって。

 「モノヤギ、これは一体どういうこと。」

 「どうもこうもォ、コロシアイが起こったということであーるよォ?そしてェ、その犯人はオマエラの中にいるのであーる。」

 私たちの中に……鷹山を殺した犯人が?

 「ここでオマエラに説明しなければならないことがあーるのでェ、よく聞くであーる!」

 

 *****

 

 「さっきも言った通りィ、犯人はオマエラの中にいるゥ。その犯人、クロをオマエラに探しだしてもらうであーる! というわけでェ、規則を追加したのであーる。オマエラはすぐに電子生徒手帳の規則を読むであーる。質問はそれからァ!!」

 私たちはすぐに電子生徒手帳を開いた。

 

 

 〈希望ヶ峰マンション規則〉

 

 No.8 生徒内で殺人が起こった場合、一定の捜査時間を設けます。その後生徒全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。

 

 No.9 学級裁判で正しいクロを指摘した場合、クロだけが処刑されます。

 

 No.10 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合、クロだけが卒業となり、残りの生徒は全員処刑されます。

 

 

 今回追加された内容はこの3つらしい。他には何も変わっていないようだ。それよりも気になるのは

 「学級裁判?」

 謎の4文字。『学級裁判』

 「ヒッヒッヒィ。学級裁判とはァ、殺したクロを見つける裁判のことであーる!」

 「クロを見つける?」

 「だいたいはここに書いてある通りであーる。捜査時間を設けているであーるからァ、次のアナウンスまでに捜査をして欲しいのであーる! そォれェとォ!!」

 モノヤギがポケットから何かを取り出す。

 「ドドンッとなァ! ザ・モノヤギファイルであーる!」

 「ああん??」

 「ここにはァ、被害者の情報が書かれているのであーる。捜査も素人なのにィ、何一つ情報を得られないのはおもしろくないであーるからなァ。裁判の証拠として充分役立てて欲しいであーる!」

 チラリと中を覗く。そこには死因や死亡時刻、現場状況などについて書かれていた。

 「なるほど。あとは自分たちで手掛かりを捜せと」

 「そうであーる。ではァ!頑張って捜査して

ェ、クロを見つけてみろであーる!!」

 モノヤギは説明を終えて去っていった。

 「このファイル…信用出来るの?」

 「ざっと確認したが恐らく嘘は書いてない。医者として私が鷹山くんの検死をしよう。それと矢崎くん、生物学に長けている君に手伝ってもらいたい。さすがに女子の検死はいろいろと……」

 「了解。大丈夫だよ」

 「ねぇ、ホントにワタシたちの中に犯人がいるの……」

 「……信じたくはないけど」

 「いる、ということじゃろうな……」

 一気に私たちの中に沈黙が起きる。その沈黙は無論、「疑いの沈黙」だろう。鷹山を殺した犯人がこの中にいる。

 

       『疑心暗鬼』

 

 今の状況に相応しい言葉だ。不安、恐怖、疑い、みんなは誰にどんな感情を抱いているのだろうか。それは本人のみ知ること。しかしただ一人だけ違う恐れ(・・)があることもわかっている。

 

 

     ああ疑わなければならない

 

      嘘だと言って欲しい

 

    だんだん血の気が引いていく

 

 

 *****

 

 

 「余計な考えは捨てな」

 

 

 *****

 

 ふと玉柏の太く鈍い声に私は私たちはハッと我に返った。彼は少し苛立っていた。

 「うじうじうじうじうだうだうだうだしていて何になる。今俺たちがすることぐらいわかるだろ。死んでしまった鷹山のために、ここにあるであろうありったけの証拠を見つけだして裁判で犯人暴いてやる。そして仇とってやる。それがアイツへの弔いなんじゃないのか」

 ああそうだ。複雑ではあるものの実際は単純なことに気付かない私たちはただのバカだ。

 鷹山のために、みんなのために、私たちは探さねばならない。ならここで今突っ立っている時間なんて全くない。

 私は自分の頬をバシッと叩いて玉柏の言った通り目を覚ます(覚まそうとしているのほうが正しいのかもしれないが)

 「じゃあ私たちは探索でいいかな?」

 「馬鹿野郎」

 「ちょっと橘くん」

 すると橘はエレベーター前で杖を抜き仁王立ちする。

 「もしも医者と酪農家、どっちかが犯人なら確実な証拠は得られねぇだろうが。俺の目が黒いうちはてめぇらに変な行動はさせねぇ。いいな?」

 「見張り役か。いいだろう。むしろその方が安心できる。互いにな」

 「よし、それじゃあ捜査開始!!」

 

 *****

 

 

      **********

         捜査開始

      **********

 

 

 橘は見張り、巡間と矢崎が検死、他のみんなが捜査することになった。

 まずはモノヤギファイルを見てみる。

 

 

 モノヤギファイル

 

 被害者:超高校級の探偵「鷹山麻美子」

 死体発見現場:マンションⅠ棟のエレベーター内

 死亡時刻:23:30頃

 死因:腹部に槍が刺さったことによる出血性ショック死

 補足

 ・左手の人差し指に血豆ができている

 ・腹部に丸い傷穴が二つある

 

 なるほど。モノヤギファイルというのは本当に事件解決への手掛かりの一つなのか。なんか解せない。

 さて、私は第一発見者であろう渡良部に声をかける。なんで渡良部かって?勘だよ。それ以外の異論は受け付けない。キリッ( ・`д・´)

 「渡良部さん」

 「……なに?」

 やはり元気はない。それもそうだ。

 「あのとき、鷹山さんを見たときの状況を教えてもらえる?」

 「……今日、朝からダグラス(ドラ)近衛(リーチ)で麻雀をする約束をしていた。けどうっかり雀卓を四階の倉庫から持ってくるのを忘れてて。だからエレベーターを使って取りに行こうとしたの。そしたら…」

 「事切れた鷹山さんがいたんだ…」

 静かに頷いて現場を見つめる。

 「扉を開けてびっくりした。叫んだ。それをダグラス(ドラ)が聞いたみたいで、近衛(リーチ)を呼んで一緒にここにきてくれた。ダグラス(ドラ)がエレベーターを開けて二人も驚いて。その時、あのアナウンスが鳴った。一気に怖くなって側に近衛(リーチ)がいたからすがった。だって思うわけないでしょ」

 「コロシアイが起きるなんて、ね…」

 しかも今回の被害者の鷹山は探偵だ。私の予想だとクロは『コロシアイにおいて探偵は厄介だから早めに殺しておく』みたいな感じで鷹山を狙ったのだろう。そうだ。動機が渡された日の夜、鷹山は私に探偵としての意義を語った。偽り無き彼女のプライド。

 「私そろそろ探索してくる。あんたもそうしなよ」

 「鷹山さんのために……ね」

 

 *****

 

 私は二階に上がる。昨日玉柏が言っていた医務室について気になったからだ。夜時間にしか開かないそこの扉は開いているのか。ドアノブに手を掛けてあける。スッと開く。

 「開いてる…」

 

 ピンポンパンポーン…

 

 え、待って捜査おしまい?早くない?

 『あァ…言い忘れていたことがあるであーる!捜査時間はァ、オマエラが分かる部屋全てを開放しているであーる!まあァ、役に立つかはオマエラ次第であーるがなァ。では引き続きィ、捜査を続けるであーる!!』

 

 ブチッ…

 

 ………………

 

 そういうことは最初のうちに言っておけよ

 

 ゲッフン!!さてと、気を取り直して。医務室が開いているということは何かしら事件と関係しているということだろうか。医務室はベッド二つに机とイスが一つずつ、医学系の本が複数存在していた。初めて入るものだから何かあったのかどうかの比較が全くできないのが痛い。こういうときに玉柏がいれば楽なのだが。

 「どうした」

 「うわぉちょうどいいタイミングで来たね」

 「ん? まあいい。ここの探索はまかせな。カウンターに灰垣がいるからそいつにも話聞いときな」

 「わかった」

 一つ返事をすると彼は私の背中を優しく叩いた。

 「辛ければ支えてやる。見捨てたりなんかしない。やってやるぞ」

 

 

 ***

 

 

 玉柏に促されてカウンターに向かえば確かに灰垣がそこにいた。

 「何か見つかった?」

 「いや、ここにはなさそうじゃ」

 「そっか…」

 そんな簡単には見つからないか。

 「ああじゃが夜中に玉柏とあったぞ」

 「え?」

 「ちょうどトイレから出たタイミングで会ったんじゃ。わしが入ろうとしたときにちょうど向こうが入っておったからな。わしもあやつも五階におるし。じゃから玉柏には犯行は無理じゃろうな」

 「どれくらいの時間?」

 「23:25前後じゃったな」

 これは、なるほど。

 

 

 ***

 

 

 ランドリーにも行ってみるとそこには江上が一つ一つの台の中身を確認していた。

 「どう? そっちは」

 「あ、直樹さん。これ見てよ」

 彼女が見せてきたのは雑巾二枚。一枚は血に濡れており、もう一枚は血は着いているものの一枚目よりはきれいだ。

 「ほかにも探してるけどそれぐらいかなって感じ。湊川さんもチラッとこっち来たからこのこと知ってるよ。今は上の階に行ってる」

 「了解。さて私ももっと探そうかな」

 雑巾二枚。しかも両方ともに血が着いている。これは重要だ。

 

 *****

 

 三階へ上がる。倉庫が気になっていってみるとまあ大体予想通りで宮原がいた。

 「おかしい……作っておいて正解だったな…」

 「何が?」

 「前に俺ボード作ったの覚えてる?」

 ああ、売店のときの。

 「覚えてるよ」

 「あのとき俺はボードに倉庫の中に入っている物品を全部数えてそれをまとめた。個数は初日で覚えたけどね。でもどうも槍の個数が合わない」

 「槍?」

 「そう。槍は三本あったんだけど二本になっててね」

 なるほど。モノヤギファイルを見る限り槍が凶器の可能性は高いだろう。

 「あと実はなくなったのは槍だけじゃないんだ」

 「ん?」

 「ナイフホルダーっていうやつが無くなっているんだ」

 「ナイフホルダー? 刃物を入れるやつ?」

 「そうそうそれそれ。それが一つあったんだけど今見たらなくなってて」

 「どれくらいの大きさ?」

 「俺のポーチを一回り小さくしたくらいの大きさだよ。それと腰全体じゃなくて磁石でズボンとかスカートとかに挟めるタイプなんだ」

 「ナニソレオカシイ」

 「びっくりだよね。でもこれをつけた人は傷つかないし何よりも目立たないんだ。しかも、しかもだよ? 食堂の一番小さい包丁も入るんだ」

 「ねえどこからつっこめばいいのかわからないんだけど」

 「俺に言わないで」

 ツッコミせずにはいられない。それが私なんだ()

 けど槍だけならともかく、ナイフホルダー(?)がないっていうのも確かに疑問だ。

 

 

 ***

 

 

 廊下に湊川が彷徨いている。床を隅々まで調べているようだ。

 「ねえ直樹さん。床に何か着いている形跡とか見つけた?」

 床には一切着目してなかったです。けど

 「いや特に目立つようなものは見なかったかな?」

 「うーんそっかぁ」

 ?

 「どうして?」

 「江上さんから雑巾見せてもらったのよ。だから一様でも床に血とか着いてないかなって思ったのよ」

 「なるほど。……って私さっきからなるほどしか言ってないな」

 「なにを自問自答してるの?」

 

 

 ***

 

 

 湊川とのやり取りを終えた。さあ三階は鷹山の部屋がある階でもある。鷹山の部屋に行くとダグラスがそこで捜査をしていた。……よし

 「やあミス直樹」

 「すみませんでした!!!!!!」

 「What!?!?!?」

 謝らずにはいられなかった。そういえば昨日夕食にも出ていなかったから謝るタイミングなかったんだよ。

 「昨日の……あれです……」

 「あ、ああそれかい? 平気だよ平気。びっくりしたけどさ」

 「いや本当にすみませんでした!!」

 「そこまで必死に言われるとミーも混乱するからさ!! 捜査しよう!?」

 はい、します、スミマセンデシタ。

 「何か見つけた?」

 「Umm,目立つのはこれかな?」

 そう言って私に見せてくれたのは……帽子? しかも本来掛からない場所にある。帽子をとってみると…………釘!?

 「なんでやねんッッ!!!!!!!!」

 「ユーなら絶対そういうと思った」

 「どうしてこうなった」

 「さあ┐('~`;)┌」

 「けどこれ……意図的に刺したっぽい……?」

 「釘を刺したあとに別の物で固定するって発想はなかったのかな?」

 「……でも証拠になるにはなるよね」

 「だね」

 

 

 ***

 

 

 ダグラスは玄関で捜査していたから私はその奥の机とか置いてあるほうに向かった。依然整然と片付けられたきれいな部屋。ここで何かが起こったとは思えない。しかし隅々まで捜査しなければ証拠が集まらない。

 ふと、机になにか挟まっているのが見えた。引き出しを開けてみるとそこには売店から取った(?)問題集と常に鷹山が持ち歩いているノート、(違うメモ帳か。いやこの際どっちでもいい。字数同じだし)が入っていた。ペラペラめくってみると問題やら計算やら単語やらの解答が書いてある。

 …………ところどころ間違ってるやん。歴史とか想像上のとか美しいとか破壊とか!! 綴り全部間違ってるやん!! そりゃね!? 難しいけどね!? 世紀とか数とかかわいいとかはまだ簡単だし答えられるのはわかるよ!? けど欄外の熟語まで間違えるのはめちゃくちゃいただけないから!!

 「……ミス直樹、昨日と同じ現象起きてるよ。またミーにそれとか投げないでね?」

 ………………

 「スミマセンデシタ……」

 私は本日二度目の土下座をするのであった、まる。こうして私は鷹山の部屋をあとにした。

 

 *****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「結局……見られちゃったしさ」

 

 *****

 

 次は四階だ。しかし四階ほど面白味のない階はない(失礼)。まあ確認程度はするけど。四階は阪本がいた。先ほどから湊川と同じようにうろうろしている。

 「やっぱり面白味ないな……」

 同じこと思ってるし。

 「ここに何かあった?」

 「直樹……いや特に何も。多分ここの階は事件を起こすにも起こしにくいんじゃないかな」

 なにもないからね……寄宿スペース以外……

 「昨日事件の前後で何かあった?」

 「事件の前後? …………ああっと……宮原の部屋で湊川と作業してた……かなぁ……」

 「待ってなんで目を反らす」

 「だって21時から00時までやってたんだよ」

 「なっが!! てか宮原くん自分の提案どうした!?」

 「それはみんなで驚いた」

 「なにしてたんだ一体!?!?」

 マジデナニシテタンデスカ

 ま、まあ証言は入手したからいいか……

 

 *****

 

 ダメだ。捜査だけでツッコミのオンパレード。これ私裁判まで持つかな? 大丈夫かな?

 「おい、大丈夫か。顔色悪いぞ?」

 「国門くん……いや多分……そっちは逆に生き生きしてるね……」

 「当たり前だ!! 裁判だぞ!? 僕の大好きな場所だ!!」

 つっこむ気力ェ……

 「あ、そうだ直樹」

 ポケットに手を入れ、突然真剣な顔で私に話す。

 「どうしたの?」

 「本当は今じゃなくてもいいんだけどちょうどいいから言わせて欲しい」

 待ってスッゴいトーン低くなってる。どんだけ深刻な話するつもりなんだ。

 「……………………僕は法廷に入ると、いつもの僕を保てない(・・・・・・・・・・)

 

     ……………………………

 

 「はい?」

 「僕にとって法廷はある種の見せ場。そして自分が裁判を重ねていくと同時に自分が自分でなくなっていった。いつもの弱く見える僕が法廷では上から目線の……言っちゃえばウザイやつになるんだ」

 お、おう?

 「そうなると弁護士やらそんなの関係がなくなっていくんだよ。元々弁護士として希望ヶ峰学園に来れたのは別の僕が出てくる前に突き止めた事件がきっかけだったんだから」

 何があったんだ。

 「自制することはできなくはない。けどそれは裁判を重ねるごとにできなくなっている。今回も自制はする。自制できなくなったら……そのときは頼む」

 とんでもない依頼された気がするんだけど。でも彼が言うことが本当なら……それはそれでまずい。

 「……わかった」

 「頼む」

 一つ返事をして私は国門と別れた。

 

 *****

 

 うん、次は五階だ。と思ったら金室がこちらに向かってきた。

 「あら直樹さん。ここには何もないですよ」

 「何もないの?」

 「はい。倉庫も見たんですが、特に何かがあった様子もありませんでした。強いて言うなら雀卓が目の前にあるということでしょうか」

 平常運転だったんだなあのトリオ。

 一応軽く捜査したが本当に何もなかった。

 

 

 ***

 

 

 一階に戻り、食堂にも行ってみようと思った。行けば近衛が厨房で何かを探している様子だった。

 「何か探し物?」

 「ええ。……直樹殿、包丁の行方をご存知でしょうか?」

 「包丁?」

 「この厨房にある一番小さな包丁でございます。小さいとはいえ人を殺せる程度の殺傷力はございます……しかしそれが昨日まではあったのでございますが……」

 つまり朝にはなかったのか?

 「昨日っていつまで食堂にいたの?」

 「朝の準備は夜時間になる三十分前に済ましておりましたのでその頃でございましょうか」

 ……なんか物騒な展開になってきたぞ。

 「あ、そうだ。純粋に気になったんだけど今朝麻雀やる予定だったみたいだね。それっていつ決めたの?」

 「それでしたら、昨日ダグラス殿が目覚めた九時頃に彼の部屋で」

 「私はもう一回土下座したほうがいいかもしれない」

 「落ち着いて」

 

 *****

 

 そろそろ検死を終えた頃だろうと思い、食堂から離れて三人がいるエレベーターに向かう。橘は依然とそこから動かずじっと検死をしている矢崎と巡間を鬼の形相で見張っている。二人はこれにずっと耐えてるのかすごいな。

 「検死のほうはどう?」

 「嗚呼、モノヤギファイルの情報は正しいようだ。本当に確認したいならファイルを見ながらでいいからちょっとこっちを見てみてほしい。」

 ……確かに血の臭いが充満したここで気分を悪くしそうだ。でもそれだけで逃げるのは恥な気がした。調べられるなら、調べる。

 「いいんだな? ならまず鷹山くんが刺された腹部に着目してほしいんだが、ファイル通り二箇所槍で刺されたのだと思われる。」

 「一回刃物の可能性も考えたんだけど、なーんかこの傷だとそんなこと無理そうだなって結論になったんだよね」

 矢崎も付け足すように言う。

 「あと左の人差し指になーんかアオタンが出来ているんだよね」

 「おそらく事件前にできたものだと思われるが……まあファイルを振り返えるならこれぐらいだろう」

 アオタンが人差し指にピンポイントでできるのかな?

 「次に個人的に気になったものがある。まずは左手側にあるこれ」

 「……『(エクスクラメーション)』?」

 「鷹山ちゃんが遺したダイイングメッセージじゃかいかなって思ってるよ」

 ダイイングメッセージ。鷹山が死の間際に書いた私たちに向けてのメッセージか……

 「それとこれだ」

 「釘?」

 あれ、釘といえば鷹山の部屋に一本刺さってなかったっけ?

 「二本の釘が置いてあったの?」

 「そうだ。これだけで決めるのは申し訳ないのだが、可能性として宮原くんが怪しいな」

 「それは、ないと思う」

 「あくまで可能性だ。まだ確定ではないよ」

 するとズカズカと割り込んでくる一人の影が。

 「橘くん?」

 すると彼はあろうことか鷹山に刺さった槍を優しく(?)引っこ抜いた。

 「な、何をする!?」

 「……翻訳家、こいつを持ってみな」

 「ふぇ!?」

 持ってみろと言われ絶対重いだろとか思いつつも言われるがままに持ってみた。……あれ思ったより軽い。

 「軽……い……?」

 「そういうことだ。てめぇ忘れてねぇか。俺はこのマンションの探索で大工と武器庫に行ったんだよ。そのとき一通りの武器持ってんだ。んでこいつは軽いっつうことを知ったんだよ」

 そういえば最初に言っていたことだ。

 「殺傷能力が高い上に軽い。つまりこいつは男であろうが女であろうが扱い易い代物なんだよ」

 「私もいいか」

 巡間も矢崎もこれを持つが感想は私と同じだった。犯行は誰にでも可能だったのか。

 

 *****

 

 

 

 

 

 ピンポンパンポーン

 

 

 

 

 *****

 

 チャイムが鳴る。つまり

 

 

 『ヒィッヒッヒッヒッヒィ……そろそろ捜査で充ゥゥゥゥ分な証拠は手に入れたであろう?? これからァ!! 学級裁判を行うであーる!! オマエラァ!! 外の噴水の前に集まるであーーーる!!!!』

 

 

 捜査時間が終わった。今私たちの持つ証拠が鷹山さんを殺した犯人を示すのに充分なのだろうか。いやそんなことで悩むな。

 「チッ、きたか」

 「いよいよなんだな」

 「そうだね」

 三人は素早くこの場から去っていった。私は……鷹山の目の前で一度手を合わせる。

 

 私たちが必ず、あなたを殺した犯人を見つけて見せる。だからどうか……優しく見守っていて

 

 手を合わせてその場から立ち去ろうと思ったら灰垣もこちらにやって来た。すると数珠を取り出して彼もまた手を合わせた。顔を上げた彼は苦悶の表情を浮かべていた。

 「鷹山よ、頼むぞ」

 ただ一言、それだけ彼女に述べて彼は外へ出ていった。そのあとを追うように私もみんなと外へ出た。

 

 そういえばエレベーターの奥の壁じゃなくて横壁にあんなに血着くのか?

 

 *****

 

 外にみんなが噴水の前に集まった。

 「で、これからどうなるんだ?」

 「ここに集まったところで噴水しかないのにね」

 「だな。まさかここで裁判やるのか?」

 「それはないと思う」

 ここで裁判やるとかどこの青空教室だよ。と思っていたら突然

 

 ザァァァァ…………

 

 噴水の水がピタリと止まり、徐々に水が噴水から消えていく。どうなってるのこれ。

 「すっごい!! 噴水の下部分、水を吸収するあれだ!!」

 「誰か宮原を止めとくれ」

 そういうところで興奮できるのすごいと思うけど今なるなバカ。

 

 ピンポンパ ブチッ……

 

 『オマエラァ!! 噴水型エレベーターに乗るであーる!!』

 

 ブチッ……

 

 「チャイムは最後まで鳴らそうよ!! ていうかエレベーターが噴水ってどゆこと!?!? エレベーターに乗ったらこれ下に下がるの!? 何なの!? ここの設備どこもかしこもどうなってんの!?」

 「落ち着きやがれ翻訳家!! あとてめぇが乗るだけなんだよ」

 「行動はやっ!!」

 ツッコミの衝動に駆られたけどまあ日常茶飯事ですし。私も噴水に乗った。

 すると

 

 ガタンッ……

 

 ゆっくりと噴水が下へと動き始めた

 

 

 ねえ本当にこれドウナッテンノ……

 

 *****

 

 ガタンッ……という音とともに下に下がる。エレベーターのように下がり続ける。

 「直樹」

 後ろから玉柏に声を掛けられる。するとちょっと来いと手招きされエレベーター(噴水)の隅に向かう。なにと問うと人差し指を口に当てながら小声で彼は話した。

 「よく聞け。医務室に重要なヒントを見つけた」

 「どういうの?」

 「輸血パックだ。ゴミ箱に捨てられていた使用済みでな。しかもそれが二袋。袋の上の部分が全開だった」

 「使用済みで全開……? 犯人は医務室が開いていることを」

 「知っていたんだろうな。俺たち以外に夜時間に開く医務室の存在を」

 私たち以外に……

 「ふっ、湿気た面するなよ。見つけてやればいいだけの話なんだから」

 「……そう……だね……」

 「そっちは?」

 「鷹山さんのノート。まあメモ帳だけど」

 「貸せ」

 彼に言われて渡すとほうほうと面白がって私に一言礼をして返した。

 「なるほどな」

 話が終わって私はエレベーター……噴水の中央を眺める。空を眺めるように。この先何が起きるか全くわからない……わけではないが、下がるエレベーターに自分の気持ちまで下がっていく気がして。

 

 ガタンッ…………

 

 ゴォン…………

 

 長く動いていたエレベーターが止まった。それと同時に半円型の扉が開き光が射し込む。裁判場だ。扉の位置は私と玉柏がいる真っ正面。ぞろぞろとみんながエレベーターから降りて裁判場に入っていく。

 私はというとまだ足を踏み込む勇気が出なくて、一歩歩いただけでこれから起こることに対しての恐怖が隠せない。

 

 *****

 

 

 

 

 

     私たちの中に犯人がいる

 

        信じたくない

 

        何度も思う

 

       みんなを信じたい

 

     けど信じることができない

 

       一体どうすれば

 

       矛盾した感情が

 

       頭の中で交差する

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 

 

 トスッ……

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 「直樹」

 背中を優しく叩かれたと同時に声を掛けられる。その声の主は言わずもがなだが。振り向くと彼は優しく微笑んだ。闇などない、透き通ったような笑みで。

 

 

 「恐れるな。守ってやる。背中はまかせろ。これから世話になるんだからな。そうだろ?」

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「相棒(・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 

 

 あい……ぼう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 その言葉を聞いた途端私はほんの一瞬だけフラッシュバックした。

 

 

 なぜか相棒という言葉に既視感を覚えた。そしてそれは玉柏も同じだということも。私の身近に相棒と呼べる人がいたというのだろうか? 無論、その答えを知る術はない。あるとすればせいぜい写真だけ。それだけで知れる情報は少ない。

 

 

 

 

 *****

 

 けれど

 

 私は何を悩んでいたのか

 

 悩んだら何も手につかないではないか

 

 悩むな

 

 今はこっちに集中だ

 

 私の周りには味方がちゃんといるのだから

 

 私の手元にある『コトダマ』は

 

 ちゃんと犯人に繋がるはずなんだと

 

 信じろ

 

 根拠があるかなんて考えるな

 

 『コトダマ』を

 

 訳し

 

 真実を見つけ出す

 

 *****

 

 

 

 

 

 

 「了解、相棒(・・)

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

   クスリと微笑み返して右拳をつき出す

   彼はその意図に左拳で応えてくれた

 

 

 

 

 *****

 

 私たちはみんなのあとを遅れて追って裁判場に足を踏み入れた

 

 *****

 

 次回

 表裏ダンガンロンパ 第一章 非日常編 疑う6部屋目

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。