たった一人で世界を救う話   作:KiRIN(きりん)

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第三話「二人目」

 時間は常に、誰に対しても平等に流れる。

 どのくらいそうしていたのか分からないが、いつのまにか朝になっていたらしい。

 顔は伏せたままだったが、隙間から朝日が差し込んでくる。

 それでも俺は、どうしても立ち上がる気になれなかった。

 きっと姉貴と妹だけじゃなく、両親や祖父母、もしくは親族に至るまで全員殺されたことだろう。

 死体も、遺伝子を消すために抹消したに違いない。

 どんどん暗い考えばかり浮かんでくる。

 その度に、何もできなくなっていった。

 

「……見てください、司令官。綺麗ですよ」

 

 吹雪がそっと語りかけた。

 釣られて顔を上げると、海の向こうから太陽が顔を出していた。

 

「綺麗だ」

 

 その言葉が自分の口から出た物だと、一瞬気がつかなかった。

 綺麗だ、なんて。今の気持ちで出る様な言葉じゃない。

 それでも思わず呟いてしまうくらい、海と太陽と空は綺麗だった。

 

 海。

 そう、海だ。

 どこまでも続いている。

 

 隣には吹雪がいた。

 俺が蹲っている間も、ずっとそばに居てくれた。

 そして命の恩人だ。

 彼女も海軍に追われる身になってしまった。

 力になりたい。

 あれだけ強いのだから、俺が力になれることなんてほとんどないかもしれない。

 それでも命を助けてもらったのだから、報いなくては。

 

 気持ちの整理がついた訳じゃない。

 だけど、

 喜びや怒りがずっと続かないように、悲しみもずっとは続かない。

 そう思うことにした。

 悲しみは胸の奥底にしまおう。

 少なくとも今は。

 

「行こうか」

「はい」

 

 とりあえず、立って歩いた。

 行き先も何も決まってないが、ここで座っていると、どんどんダメになりそうな気がした。

 それに吹雪がいるとはいえ、ここは海だ。

 深海棲艦にいつ襲われてもおかしくない。

 

 今は、歩こう。

 

 

   ◇

 

 

「そういえば、なんで吹雪はあそこにいたんだ?」

 

 道すがら、ふとそんなことを訪ねた。

 口に出してから思ったが、気になるところだ。

 あんな僻地にある基地に、しかもちょうど俺がいるタイミングで乱入しておいて、偶然散歩してました! ってことはないだろう。

 

「私達艦娘は、司令官の居場所がなんとなく分かるんです。

 本当になんとなーくですけど……

 それと、司令官の感情もです。喜んでるとか、怖がってるとか、大まかなことだけですが」

「なるほど。吹雪は前から俺の近くにいたのか?」

「はい。近くに存在は感じてました。でも詳しい場所が分からなくて。

 それが昨日の朝、急に分かるようになったんです!」

 

 昨日の朝、というと妖精さんを三人出した時だろう。

 妖精さんを使うことは、どうも『提督の力』とイコールらしい。今までにないくらい妖精さんを使ったことで、提督力的なものが上がり、位置が分かるようになったのだろうか。

 

「本当は事前にお手紙を出して、失礼のないようにお会いしようと思ったのですが、提督が強い恐怖を感じてたので。吹雪、いてもたってもいられず、来ちゃいました!」

 

 それについては感謝しかない。

 

「あらためて、ありがとう吹雪。助かったよ」

「い、いえ! 当然のことをしただけですよ!」

 

 俺が頭を下げると、吹雪はわたわたしだした。

 頭を上げて下さい、と、こっちが申し訳なくなるくらいに慌ててる。

 これは、ちょっと面白いな。

 

「いや、吹雪は命の恩人だ! 感謝しても仕切れないよ」

「し、司令官!?」

 

 俺は土下座した。

 一体吹雪はどんなリアクションをしてくれるだろうか。

 狙い通り、吹雪はもっとあたふたしてるようだ。

 

「ほ、本当に大したことはしてないんです!

 むしろ吹雪なんかが司令官のお役に立てて、その、恐縮って言いますか!

 とにかく頭を上げて下さい! 司令官!」

 

 なんか声が泣きそうになってる。

 このままだとイジメになってしまうかも。いや、土下座してるだけなんだけど。

 そろそろ止めた方がいいかもしれない。

 少しだけ頭を上げて確認すると、土下座していた。

 土下座してた。

 何故か吹雪も、土下座していた。

 

 ふっ。

 今回の勝負は互角、か。

 

 しかし真面目な話、これからどうしようか。

 とりあえず、俺の中の方針は『海軍から逃げつつ艦娘を集める』だ。

 艦娘は強い。

 たくさんいれば、それだけで手出し出来なくなる。

 これから誰にも頼らず生きていくのであれば、マンパワーも必要になるし。

 とにかく艦娘集めだ。

 

 そういえば、艦娘とはどういう存在なのだろうか。

 さっき吹雪は、前から俺の近くに居たと言っていたが、普段は人間に紛れて生きているんだろうか。

 艦娘を集めるなら、習性というか、どんな生き方をしてるのか知っておいた方がいい気がする。

 とりあえず情報収集、って偉い人も言ってた気がするし。

 その辺のことを、吹雪に聞いてみた。

 

「先ずは、艦娘のルーツについて説明しますね。艦娘は、海に沈んだ魂が具現化したものなんです」

 

 なるほど、分からん。

 分からんが、そういうものとして納得しておいた。

 思えば人間のことだって、体の仕組みについて説明しろって言われても、タンパク質の塊とかその程度の説明しかできないわけだし。

 よく分からなくても、なんとかなるはずだ。

 

 吹雪の説明によると、海の底に沈んだ魂は空に成仏できず、そこに存在し続けるらしい。

 その魂が海底の泥と一体化したのが深海棲艦、

 船と一体化したのが艦娘ということだ。

 あの時元帥が『特型駆逐艦一番艦吹雪』と言っていたのは、こういうことだったのか。

 しかし不定形の泥はともかく、船と一体化したなら船の形になりそうなもんだが、艦娘は全員人の形らしい。

 不思議だ。

 

「海で生まれるってことは、艦娘を見つけるには海沿いを探せばいいのか?」

「たしかに私たちは海で生まれますが、基本的には陸で生活しているはずです」

 

 艦娘と深海棲艦は、全面戦争にはなってないものの、出会ったら殺し合いにはなるらしい。

 だから艦娘達は、陸に上がる。

 その後は艦娘によって違うらしい。

 人間に紛れて暮らす奴もいれば、

 山に篭って一人生きてる奴もいるし、

 街から街への放蕩暮らしをする奴もいる。

 艦娘は食事も睡眠も必要としないので、生き方は自由なんだと。

 

 一方俺は食事も必要だし、睡眠も必要だ。

 屋根のない場所では暮らせないし、病気にもなる。風邪くらいなら薬局の薬でなんとかなるかもしれないが、インフルエンザとかになったら死ぬかもしれない。

 病院は使えないし、この辺もなんとかしなきゃいけないな。

 

「俺からは分からなくても、俺が近づけば艦娘からは分かるんだよな?」

「はい。遠くにいるとやっぱり精度は落ちちゃいますけど、同じ街にいれば正確に分かると思います」

 

 それならやっぱり、街を転々と移動するのが一番か。

 向こうから見つけてくれるなら、変装もできるし。

 

「遠くにいると精度が落ちるって、どのくらい落ちるんだ?」

「うーん、そうですね。方向は分かるけど、どのくらい離れてるかは分からないです」

「なるほどな」

 

 それだけ分かれば十分だ。

 艦娘が俺に会いたがってくれてるなら、例え日本の端っこにいても、一週間以内には会えるだろう。

 今の時代新幹線に飛行機、移動手段はたくさんある。

 お金がなかったとしたも、艦娘の足ならすぐだ。

 

「とりあえず、行こうか」

「はい! 吹雪は、司令官のお側に!」

 

 念のため吹雪に乗っての高速移動はせず、俺達は歩いて街を目指した。

 

 

   ◇

 

 

 街についた。

 驚いたことに、俺はもっと指名手配されているもんだと思ったが、街は平和なもんだった。

 緊急放送で俺の名前が流れてるわけでも、ビラが撒かれてるわけでもない。

 一見した所は、本当に普通だ。

 一応妖精さんに出してもらったニット帽とマスクを着けてはいるが、そこまで警戒する必要はなさそうだ。

 

 とりあえずは寝床だ。

 カプセルホテルみたいな密閉型よりも、ネカフェのようなある程度開けた場所の方がいい。

 銀行で降ろせればもうちょっとあるが、今の所持金は8700円と小銭が少し。

 ネカフェに泊まれるのは、4回か5回が限度って所だろう。

 

 スマホが使えないから、自分の足でネカフェを探さなくちゃいけない。

 とはいえこれはすぐ見つかった。

 駅前に看板が乱立してたからだ。

 普段は気にも留めてなかったが、意外と頼りになる。元々スマホを持ってないホームレスなんかは、案外こうして寝床を探してるのかもしれない。

 

 寝床は見つかった。

 さて、この後どうしようか。

 

 俺と吹雪は、とりあえず公園のベンチに腰掛けた。

 この街で何をするかの会議だ。

 本当はカフェとかで話したかったが、何せ金がない。

 戦略的節制である。

 

「思ったんだけどね、吹雪」

「はい」

「向こうが俺を探知してくれるなら、ふらふら歩くよりも、こうして待った方がいいと思うんだ」

「流石のご慧眼です! 司令官!」

「いやあ、どうもどうも」

 

 吹雪は褒めてくれたが、本当にこれでいいんだろうか。

 俺が提督だからか、彼女はどうも、俺の行動を全部肯定してしまう傾向がある。

 姉貴は頭がいい人だった。俺よりもずっと。けど何か大事なことを決めるときは、誰かに相談して、必ず反対意見とか別の視点からの意見をもらうようにしてた。

 それにどんな意味があったのか、全部は分からないが、そっちの方がいいんだとは思う。

 

「……」

「……」

 

 黙ってしまった。

 俺の周りには、姉貴とか飛鳥とか、粗暴な女しかいなかった。

 会話もお互いの意見を叩きつけ合うみたいな、そんなのしかしたことない。

 だから吹雪みたいなちょっと大人しい女の子と話すのは、嫌いじゃないが、苦手だ。

 

「あー……吹雪」

「はい」

「吹雪は俺と出会う前、どんな風に暮らしてたんだ」

「えっと、普通の女の子として暮らしてましたよ。学校には行ってませんでしたけど。使ってないお家を見つけたので、そこに住んでました」

「じゃあ友達とかいたんじゃないか?」

「はい。仲良くしてくれてた方ならいました。でも今は、司令官がいらっしゃるので!」

 

 ああ、そうか。

 ついその強さの方に目が行ってしまうが、当たり前だが、吹雪にも普通の人としての生活があったんだ。

 それを俺が壊してしまった。

 だからといって、素の生活に戻っていいなんて言えない。

 吹雪がいなければ、俺は直ぐにでも死ぬだろう。それに俺に巻き込まれる形で、吹雪も追われる身になってしまった。

 一緒にいてもらうしかない。それも完全に俺の都合で、だ。

 吹雪は気にしないと言ってくれているが、どうしても罪悪感を感じてしまう。

 

「……」

「……」

 

 罪悪感のせいか、余計に話しかけ辛くなってしまった。

 しかし沈黙は沈黙で気まずい。

 次の話題を探していると、吹雪の方から話しかけてきてくれた。

 

「司令官は、どんな風に過ごしてらっしゃったんですか?

 私は学校に行ってなかったので、学生生活がどんなものなのか興味があります!」

「まあ、普通の学生だったよ。部活とかもやってなかったし。妖精さんが見えてた部分は普通じゃないけど」

 

 言ってて思ったが、そう、妖精さん。

 さっきから艦娘が来ないが、もしかしたら俺の提督としての力が弱いせいで居場所が分からないのかもしれない。いや普通にこの辺にいないって可能性もあるけど。

 とにかく試してみるべきだ。

 他にやることもないし。

 

 妖精さん、妖精さん……と。

 心の中で呼びかける。

 直ぐにいつもの一人目が来て、やや後に二人目が来てくれた。

 前呼び出すときよりも早かったし、疲れも少ない。

 俺の提督レベル的な物が上がってるのだろうか。

 

「……そういえば吹雪」

「はい。なんでしょう」

「妖精さんって見えるの?」

「見えますよ」

 

 そう言いながら、吹雪は妖精さんを突っついた。

 妖精さんが涙目で抗議している。

 吹雪はあたふたしながら、頭を下げた。

 微笑ましい。

 

 しかしそうか、艦娘には妖精さんが見えるのか。

 それなら妖精さんを飛ばしながら歩くのもいいかもしれない。

 これならちょっと遠くからでも、直ぐに俺だと分かる。

 

 しっかし、艦娘来ないなあ。

 ここら辺にはいないのかもしれない。

 諦め始めた俺は、立ち上がって身体を伸ばした。

 そしたら、居た。

 俺の後ろに。

 髪をサイドテールにまとめた、無表情の美女が。

 

「……あの。もしかして、艦娘の方ですか?」

「ええ、そうよ。航空母艦の加賀と申します」

「つかぬ事をお伺いしますが、いつからそこに?」

「三十分ほど前からかしら」

 

 声掛けろよ。

 

「あなたが私の提督ね?」

「はい。遠野総一郎と申します」

「敬語を使う必要はないわ。私はあなたの部下なのだから」

 

 敬語は無しでって言われても少し戸惑うな。

 歳上の、それも美女と話したことなんてあんまりないし。

 童貞だし……ハードルたけえわ。

 

 加賀は美女だ。

 しかも青いロングスカートに黒いニットという、男心をくすぐる格好をしてる。黒いチョーカーもエロティックだ。

 もう一度言う。

 童貞にはハードル高い。

 

 そんな俺の心情を知ってか知らずか、加賀は俺に手を差し出して来た。

 握手、か。

 学生だった俺にはあまり馴染みがないが、信頼関係を結ぶ時は、大人は握手するのだという。

 加賀が俺を信頼しようとしてくれるなら、それには是非答えたい。

 迷うことなく、俺は手を握った。

 

 そして加賀は、迷うことなく俺を引き寄せて、胸に抱いた。

 

「よく、頑張りましたね」

 

 加賀はそう言った。

 

「離れていても、あなたの辛さ、大変さ、悲しさは伝わって来たわ。

 それを乗り越えたあなたを、尊敬します」

「……」

「ごめんなさい。私は言葉があまり上手くないの。だからこんなことしかできませんが。お側に置いていただけると幸いです」

 

 そう言いながら、加賀は背中を優しくさすってくれた。

 昔、俺が何かに困っていた時、おばあちゃんがこうやってさすってくれたのを思い出した。

 加賀の体温は人よりあったかくて、凄く安心する。

 単純と思われるかもしれないが、俺はもう加賀の事が好きになりかけていた。

 

「ああ。そういえば昔、こんなことを聞いた事があるわ」

 

 続けて加賀は、こんなことを言った。

 

「男の人が自信をなくした時は、女を抱かせて、自信を取り戻させるんですねってね」

「ちょ――!?」

 

 躊躇なく、加賀は服を脱ぎ出した。

 真っ白な肌に、黒い下着がよく似合ってる……じゃなくて、ここは公園のど真ん中で、俺たちは追われる身だ。

 

「か、加賀さん!」

「さんはいらないわ」

「加賀、とりあえず服を着て!」

「何故かしら。着衣が好みなの?」

「そういう問題じゃない! ここは公共の施設で、俺たち指名手配中だから!」

「心配いらないわ。邪魔する人は、私が倒すもの。鎧袖一触よ」

 

 あっ、この人馬鹿だ。

 俺の中の加賀への評価が、頼りになる大人の女性から、馬鹿に下落した。

 

「とにかく服を着てくれ。じゃないと困る」

「……分かったわ。あなたを困らせるのは、本意ではないもの」

 

 ふう。

 なんとか分かってくれたみたいだ。

 このままだと、指名手配中に公園で露出プレイという、特殊すぎる環境で童貞を卒業するところだった。

 

「と見せかけて、全裸になってみたわ。どうかしら」

「ぶうぅ!」

 

 ちょっと目を離した隙に、下着を脱いでいた。

 姉貴直伝の拳を、加賀の頭に落とした。

 同時に加賀の評価が、馬鹿から大馬鹿に変わった。

 

「痛いわ」

「俺の心の方が痛いわ!」

 

 加賀は頭をさすりながら、しゅんとした顔をした。

 ちょっとやり過ぎただろうか。

 初対面の女の人を殴ったのは、やり過ぎだったかもしれない。

 そう思っていると、俺の反省の気持ちが馬鹿らしくなるくらい、加賀はまたアホなことを言い出した。

 

「……もしかして、私の身体では興奮しないのかしら?」

「いや、するよ。するけどさ、シチュエーションがさ。もっとこう、あるじゃん」

「そう。興奮するのね。それは良かったわ」

 

 そうか。

 良かったのか。

 それならもう、俺から言うことは何もない。

 

「吹雪」

「はい! ってわあ! もしかして加賀さんですか!? いつのまにか見つけてるなんて、流石です司令官!」

 

 妖精さんと戯れることに夢中だったのか、吹雪は加賀の存在に気づかなかったらしい。

 いやさ、一つのことに集中出来るのはいいことだと思うけど、もうちょっと周囲に気を配ろうぜ。

 結構デカイ声で喋ってたぜ、俺。

 

 二人は簡単な自己紹介を済ませた。

 どうやら艦娘同士は、予備知識があるらしい。

 お互い見ただけで『吹雪』と『加賀』だということを分かっていた。

 その後、加賀に俺たちの近況を話した。

 彼女はそれを聞いた後、ちょっと考えてからこう尋ねた。

 

「提督。この後のことはどう考えているの?」

「色んな街を転々として、艦娘を集めようと思ってる」

「そう。私は反対ね」

「えっ、どうして?」

「騒ぎを起こす危険性があるからよ。

 艦娘の中には、激情的な子もいるわ。街中であなたを見つけたら、大声で近づいてくることもあるでしょう」

 

 そうなの?

 吹雪を見ると、首を縦に振っていた。

 いや、知ってるなら教えてくれよ。

 

「まだあるわ。北に移動したら南にいる艦娘と離れてしまうし、南に移動したら北の艦娘と離れてしまう。それなら日本の中央付近で待った方が無難ではなくて」

 

 これもまた、ぐうの音もでない正論だ。

 俺って本当に馬鹿だな。

 

「とりあえず艦娘を集める、という話ですが、集めた後どうするのかしら。

 五人程度なら問題ないでしょうけど、次の街で急に20人程見つかったら、どうしようもないわ」

 

 そうか。

 見つからない可能性は考えてたけど、

 一気に沢山見つかってしまう可能性もあるのか。

 

「じゃあ、どうすればいいと思う?」

「そうね。私なら海辺に拠点を建てるわ。こういうのは早い方がいいもの」

 

 拠点、か。

 いつかは作ろうと思ってた。

 

 利点は沢山ある。

 泊まるのにお金を払わなくていいし、人の目を警戒しなくてよくなる。

 そして建てるなら、速い方がいい。

 時間をかければかけるほど設備が増えるし、実際に住んでみないと分からないこともあるだろう。

 それに今日思ったが、街で艦娘を待っている間、やることがない。時間を無駄に過ごすのは、この状況ではどう考えても良くない。

 海辺なら民間人が近寄る心配もだろうけど……

 しかし、海には深海棲艦がいる。

 

「それは心配ないわ。航空母艦である私は、艦載機を飛ばして辺りの探索が出来るの。夜は駆逐艦の吹雪さんが辺りを警戒出来ますし。敵が来たとしても、私は強いわ。浜辺に来る程度の敵なら、何も問題ありません」

 

 深海棲艦も問題ない、と。

 

「建ててみるか、拠点」

「鎮守府よ」

 

 俺の言葉を、加賀が訂正した。

 

「艦娘と提督、私達が住む場所の名前は昔から決まってるの。鎮守府、とね」

「鎮守府、か……」

 

 不思議と惹かれる名前だ。

 男の浪漫が詰まってる気がする。

 よし、やる気が湧いて来た。

 いっちょ建ててみるか、鎮守府。

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