報復せし番犬 作:貧弱一般人
WATCH DOGSも緋弾のアリアも、設定がうろ覚えのままに書いているから、「あんたさん、ちょっとここ間違ってんじゃん!? 」「こんなガバガバ設定をよく晒せたもんだ恥知らずが」「奴じゃねえよ、双だよ! 」なんて箇所があったら遠慮なく感想欄に怒鳴り込んできてください。お願いしましたよ。
この日は酷い雨降りだった。
バシバシとトタン屋根を打つ雨音が響く。ストロボのように点滅する蛍光灯も相俟って、どこか不吉な出来事の予兆を感じさせた。
「おい、マーク。どうしたよ、そんなシケたツラしてよ」
「ああ。雨の日って気分が乗らないんだ」
「なるほどなぁ。確かに」
部屋の大部分を占めるワークデスクには、大きな2つのディスプレイが置かれ、それに挟まれるようにノートPCが繋がれている。乱雑に置かれた接続用のケーブルなどの存在もあり、部屋全体が窮屈な印象を受ける。
「にしても寒くないか? なあ。壁からすきま風入ってるしよ」
「我慢しろ、ロナルド。まさか誰もこんなボロ小屋がかのブルーム管轄地だとは思わない。もしもctOSに侵入しようと試みる命知らずがいたとしても、ここはバレっこない」
「そうだけどよぉ、せめて暖房はつけてくれねえかな? 凍っちまう」
PCを除けば、まるでボロ屋のような有様。しかし、ここは大手IT企業ブルーム コーポレーション直轄の監視警備所である。マーク・シャーウッドとロナルド・マクレイの2人はここで東京のctOSコントロールセンターの遠隔監視をしていた。
「俺たちって最高に運がいい 」、ロナルドは事あるごとにそう呟く。ブルーム社の開発したctOS、『Central Operating System』は今では全世界の電気インフラを管理している巨大システムである。最初期に導入されたシカゴでは、システムの脆弱性が問題視された。だが、重なるアップデートにより、セキュリティは強化。唯一システムに入り込めたDedSecというクラッカー集団も検挙され、今では誰もブルーム社に手を出そうとしない。安全であり、高月給。ロナルドにとってこれ以上ない最高の職場だった。
「そういや、お前イ・ウーって知ってるか? 」
「なんだそれは。どこかの部族か? 」
「ちげぇよ。都市伝説なんだけどよぉ、裏から世界を牛耳ってるスゲー組織なんだってよ」
「そうなのか。中々興味深いな」
「あんまり興味深そうにはみえねえけどな……」
監視カメラを通した映像を眺めながら、雑談し、定時帰宅。もらった給料で休日に遊ぶ。マークとロナルドの日常である。
「寒いし、ちょっと俺あったかいコーヒー淹れてくるぜ。マーク、お前もいる? 」
「酒」
「コーヒーつってんだろ!? ったくお前の分はシュガーでチョモランマ作ってくれるわ」
「やめてくれ」
スキンヘッドを掻きながらロナルドが部屋を出ていったのを確認すると、マークはディスプレイに向き直る。
────確か娘に髪を毟られて、そのハゲを隠すために丸剃りにしたんだったか。
ロナルドの微笑ましい情景を思い浮かべ、マークは知らず口角があがっていた。
そこは取り敢えず平和だった。今この時までは。
ふとマークのズボンが震えた。
誰からだろうかと、ポケットからスマートフォンを取り出し確認をする。発信者はロナルドだった。
「どうした、ロナルド」
『────────────』
「ロナルド? 聞こえてるのか? 」
声をかけるも相手は無言。次第にマークの声音に怪訝なものが混じっていく。
「イタズラなのであれば切るぞ」
ロナルドは終始無言であった。やはりイタズラ電話だったのだろうかとマークは溜息をつく。
ふとマークは言い様のない不安感に襲われた。静かすぎる。そもそもロナルドはおちゃらけヤツだが、イタズラ電話のような人の迷惑になるような真似はしない。
「……見に行くか。どうせctOSをどうにかしようとする奴なんていないんだし」
マークはドロワーから愛銃であるカーアームズK9を引っ張り出し、懐に忍ばせる。
変わりないコントロールセンターの風景が映し出されるディスプレイを一瞥し、マークはこの部屋とロナルドがいる休憩室を結ぶドアのノブに手をかけた。
そして────────
パスッという間抜けな音とともにマークの眉間に穴が穿たれた。
最後にマークの瞳に映ったのは、血溜まりに浸された絨毯とそこに横たわるロナルド。そして硝煙上がる拳銃とスマートフォンを握った黒いコートの人間だった。