東方迷子伝   作:GA王

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初めまして、GA王と申します。
文章力が残念でにわか東方ファンではございますが、
温かい目で読んで頂けると幸いです。

動画で【東方Project】の存在を知りました。
動画やこちらで皆さんが書かれた小説を読んでいるうちに、
自分独自の幻想郷を作りたいと考える様になりました。
原作とは異なる点が多々あると思いますが、
その中でも自分が作る幻想郷に共感頂けると嬉しいです。





Ep.1 鬼の子
星熊勇儀_※挿絵有


 ここは日本の何処かにある閉ざされた空間、幻想郷。その地下深くに位置し、地上から隔離された町。その名も旧地獄。ここでは人間に嫌われ、地上から追いやられた妖怪や鬼達が生活をしている。

 時刻は深夜。もう間もなくで日付を超える頃。町全体が静まり返り、明かりが落とされていく中、煌々(こうこう)と光る一軒の長屋が。と、そこへ小麦色の髪を(なび)かせ、ゆっくりと歩みを進める一人の女鬼。額から美しくも力強く生えた1本の赤い角が、彼女自身を象徴している様だ。

 

【挿絵表示】

 

 

鬼 「さあ、張った張った!」

鬼 「半に赤2つ!」

鬼 「丁に青2つ!」

 

 店の中から男達の威勢の良い声が聞こえる。ここへ来る前に寄った店で買った土産を片手に、熱気が溢れる扉に手を掛け、大きく深呼吸。さて、今日はどうか……。

 

 

ガラッ……キィー~……ガッ、ガッ、ガン!

 

 

 嫌な音を出しやがる。

 

??「おう、勇儀ちゃん今日は引っかかったか」

 

 受付をしているここの店長だ。嬉しそうにニヤついた顔で話し掛けて来た。

 

勇儀「あぁ……、幸先(さいさき)悪いよ」

 

 ため息と共に肩を落としながら、上機嫌の店長に返事。

 ここの扉は気まぐれで、静に開く事もあれば、今みたいに悲鳴を上げた後、咳払いをした様な(かん)に障る音を奏でる事もある。しかも、こういう時は負け越す事が多く、常連の間ではちょっとした験担(げんかつ)ぎになっている。

 

店長「で? 今日はどうするかね?」

 

 尚も笑顔の賭博屋の店長。好い鴨が来たとでも思っているのだろう。

 

勇儀「青10と赤10にしておくよ」

店長「はは、随分と慎重だな」

勇儀「でも負けて帰るつもりはないさ」

 

 軽く微笑んで決意表明。ここに来たからには、負けて帰ろうなんて端から思っていない。それはここにいる連中皆同じだ。

 

店長「そうかい、ほれ六千だ。ご武運を」

勇儀「ありがとうよ」

 

 店長から札を受け取り、店内を見回すがどの場も客がいっぱいで、空いているところは少ない。

 

??「姐さん! こっちこっち!」

 

声のする方に視線を向けると、青い髪をした若い鬼、鬼助(きすけ)が手を振っていた。

 

勇儀「店長! 升を2つ持ってくよ」

 

 煙管を吹かしながら「勝手に持って行け」と手を振る店長。(ます)と土産を持ち、鬼助の方へ足を運び、隣へと腰を落とす。

 

鬼助「姐さん遅かったですね。それ何です? あ、丁に青1つ」

勇儀「さっきの店で買って来たんだよ。一緒にやるかい? 半に青1つだ」

 

 青札を置きながら鬼助と簡単に挨拶を交わし、本日最初の一札に願いを込める。

 鬼流丁半。「丁」か「半」を宣言し、当たれば倍がもらえ、外れれば店に掛け分全てを持っていかれる簡単な遊びだ。この町で『打つ』と言えばここになる。そしてこの店の常連の殆どが私の仕事仲間。

 

鬼助「ありがとうございます! 頂きます!」

 

 持ってきた土産の栓を開け、鬼助の手の中の升に注いでやると、少し黄色い透き通った液体が満たしていった。

 

鬼助「ささ、姐さんもどうぞどうぞ」

 

 今度は私の番。初めて買った酒だから、どんな味なのか分からない。これも一つの賭けだ。

 

勇儀「悪いねぇ。じゃ、今日もお疲れさん。あ、それで続けて半ね」

鬼助「お疲れ様です。くぁーっ! 効きますね! オイラは丁に青1つで」

勇儀「そうかい、気に入って貰えて良かった。うん、たしかに美味いな」

 

 酒()当たりだったようだ。

 ここへはほぼ毎日来ている。酒の香りと煙管の匂い、サイコロの音と歓喜とため息の音色が心地良い。賭博の勝ち負けよりも、癒しを求めに来ていると言っても過言ではない。……いや、勝ちたい。

 

鬼助「姐さん明日非番ですよね? 丁に青1つ」

勇儀「そうさ、いいだろ? あぁ、それで続けて丁で頼むよ」

 

 鬼助は仕事の後輩で古くからの付き合いだ。気心知れた仲で、行動を一緒にする事も多い。彼がここに来るようになったのも、私の後を追うように付いて来たからだ。一時は鬱陶(うっとお)しいと思っていたのかもしれないが、今となっては可愛い弟分だ。

 

 

--鬼等丁半中--

 

 

勇儀「鬼助、面白いネタは無いかね?」

 

 近頃は目立って面白い事もなく、毎日同じような生活を送っている。平和で何よりだが正直退屈だ。何か変化が欲しい。

 

鬼助「え~…。急に振らないで下さいよ。姐さんの方こそ妖怪にも知人が多いじゃないですか」

勇儀「そうなんだけどね。あいつらは自分から事を起こす様な連中じゃないし、まぁ相変わらずってとこさ」

 

 顔見知りの妖怪達の顔を思い浮かべながら鬼助に答える。一癖ある連中ばかりだが。

 

??「陰口とか妬ましいわ」

 

 コイツの様に。

 

鬼助「ん? 何か聞こえませんでした? 青1つで半!」

勇儀「いんや、気のせいだろ? あー、さっきと同じで」

 

 外からパルパル聞こえて来るが、放っておこう。

 

鬼助「あ、でもそろそろ祭の時期ですよ」

勇儀「もうそんな時期かい? 今年は私が当番だよ…」

 

 すっかり忘れていた。しかも私の番とは……最悪だ。

 

鬼助「そう言えばそうでしたね。期待してます」

 

 にこやかに口先だけの応援をしてくる弟分。

 

勇儀「もちろんお前さんも手伝うだろ?」

 

 そんな可愛い弟分に()()()()()協力を仰ぐ。

 

鬼助「え!? えー!?」

勇儀「テ・ツ・ダ・ウ・ヨ・ナ?」

 

 拒否反応を示したので、再び()()()()()協力を仰ぐ。ただし、今度は()()()()強めの口調で。ついでに笑顔も作ってやる。

 鬼主催の祭は盛大で町全体に屋台が並び、酒と料理を手に至るところで大騒ぎが始まる。しかも地底に住む妖怪達もみんなやってくる上、それが2週間休む事なく行われる。そのため、事前準備や後片付け、当日の見回り等の仕事量が異常なのだ。当番はただただ忙しいだけ。誰も進んでやろうとは思わない。

 

鬼助「はい……、喜んで……」

 

 喜んで了承してくれた。よしよし、当日は目一杯愛でて(使って)やろう。

 

鬼 「ご両人。どちらにします?」

 

 随分と話し込んでしまったのだろう。中盆の鬼が顰めた顔で尋ねてきた。

 

鬼助「オイラは丁に赤3つで、もう終わりかな」

勇儀「なんだい、もう赤だけかい? 私はさっきと同じでいいや。勝ち負けいくつだい?」

鬼助「姐さんが来てからは4勝5敗です。今ので5分です。あれ? 姐さんは?」

勇儀「私は一度置いてから、そのまま引かずに張っていたから……え?」

 

 

ジャラジャラ……。

 

 

 目の前に現れた札に釘付けになった。白が5つに黒が1つに黄が2つ。白は初めて見た。それも5つ。酒を飲みながら鬼助との話に夢中で…

 

鬼助「姐さん!スゴイです!」

勇儀「これはウソだろ!? 夢じゃないよな!?」

鬼 「まだ張るのなら次は店長とのタイマンになるが、どうする?」

 

 ここで引いても文句は無いほどの利益だ。というよりも、もう引き際だろう。でも…。

 究極の2択にどちらにしようか考えていると、全身に威圧感を感じた。ふと周りを見ると、いつの間にか店中の客が集まって来ていて、熱い視線で私の言葉を待っていた。もう覚悟は……決まった。

 

勇儀「やるよ!」

鬼 「おー! やったれ勇儀!」

鬼 「いけ勇儀ちゃん、夢みせてくれ!」

鬼助「姐さん流石! よっ、男前!」

 

 鬼助、後で覚えていろよ?

 野次馬共は今宵(こよい)の大一番の勝負に更に火が入り、私も気分が高揚して体が熱い。場の流れは今私にある。もう負ける気がしない!

 

店長「どれ、ワシの出番か。幸先悪い筈だったのにな。ここまで来るとは……。恐れ入った」

勇儀「私も驚いてるよ。もし次も勝ったら、ちゃんと支払ってくれるんだろうね?」

店長「鬼はウソつかない! だろ? それじゃあ勝負の前に三か条言っとくか」

 

 三か条とは、鬼の間での決まり事で、破れば即追放の鉄の掟だ。

 

店長「一つ、鬼はウソをつかない!」

  『一つ、鬼はウソをつかない!』

 

 店長の後に続いて皆で復唱をする。

 

店長「一つ、鬼は騙さない!」

  『一つ、鬼は騙さない!』

店長「一つ、鬼は仲間を見捨てない、裏切らない!」

  『一つ、鬼は仲間を見捨てない、裏切らない!」

 

 言い終わったところで、店長がサイコロを手に取り、

 

店長「いざ!勝負!」

 

 

 

 

??「うわぁぁぁーー! ぎゃーー!」

 

 突然外からけたたましい叫び声。店中の全員が顔を見合わせ、「何事か!?」と慌てた様子で店の外へ出て行く。私が外に出ると既に人集りが出来ていた。

 

勇儀「なんだい? どうしたんだい?」

 

 人混みを掻き分け進んで行くと、人集りの中心に見慣れない服装をした小僧が、震えながら蹲っていた。

 近寄って声を掛けてみるが、更に縮こまってしまい、震えが激しくなる。このままでは(らち)が明かないので、一先ず抱き寄せて落ち着かせてやる事にした。

 

勇儀「大丈夫。何も怖がる事なんてないよ。どうしたんだい?」

 

 小さな背中を擦りながら優しく(ささや)く。腕の中の小僧はまだ震えていたが、呼吸が少しずつ落ち着きを取り戻していくのが感じられた。

 

鬼助「姐さん。その小僧……」

勇儀「あぁ、何か怖い事でもあったんだろ?」

 

 驚いた表情の鬼助に「大したことはない」と言葉を返した。しかし、鬼助の次の一言で私は驚愕することになる。

 

鬼助「姐さん、その小僧……。人間です」

 

 鬼助に言われ、慌てて腕の中の小僧を見つめる。角が無い事には近づく前から気付いていた。妖怪等の類いかと思っていたが、言われてみれば確かに妖力も感じられない。この小僧が妖怪であれば、絶対に妖力を発しているはずだ。

 

勇儀「人間…」

 

 私たち一族を忌み嫌い、地底へと追いやった一族。

 

鬼 「でも何で人間が?しかもこんな小僧が」

 

 どこからか聞こえて来た。

 確かにそうだ。地上からここへ来るには、大穴に飛び込むしかない。しかし、飛び込んだところで空でも飛べない限り、生きてここへは辿り着かないだろう。仮に飛べたところで、見張りの妖怪共が黙っていない。

 

??「人間のクセに抱いてもらえるなんて、妬ましいわ」

勇儀「おい、パルスィ! 見張りの連中は居眠りでもしていたのかい?」

 

 声だけが聞こえて来る妖怪の知人に、大きな声で尋ねる。

 

パル「真面目に仕事していたのに、妬ましいわ。パルパルパルパル……」

勇儀「ってことはこの小僧は穴を通らないで、ここへ来たってことかい!?」

 

 何なんだ、この小僧は?

 

鬼 「とりあえず今日は夜も深い。お開きにしよう」

 

 誰かがそう言うと人集りはバラバラと散っていった。

 私も家へと帰るため、小僧から手を離して立ち上がる。視線を落として改めて小僧の様子を見ると震えは治まっていたが、目から出るそれは止め処なく溢れ続けていた。小僧の気休め程度になればと、頭に軽く手を置き、

 

勇儀「大丈夫。ここの連中はお前さんを悪い様にはしないさ。じゃあな」

 

 顔を近づけて笑顔で別れの言葉を残し、小僧に背を向けて立ち去ろうとすると、

 

 

グッ!

 

 

 裾を引っ張られた。振り向くと小僧が涙を流しながら怯えた表情で、私の裾を両手で掴んでいた。

 

勇儀「離しな、私じゃ力になれないよ。ここにいれば……」

 

 ここにいれば大丈夫なのか?人間を嫌う妖怪や鬼がいる様な所だぞ?人間が、しかもこんな小僧がたった一人で翌朝まで無事でいられるのか?

 裾を掴む力が更に強くなった。とは言え、振り解こうと思えば、簡単に振り解ける程度の弱々しい力。

 

勇儀「弱ったねぇ、懐かれちまった」

小僧「ヒック、エグ、ママ……」

 

 ママ?飯か?腹が減っているのか?

 

勇儀「はー……仕方ない。行くよ、来な」

 

 

--小僧移動中--

 

 

 町の大通りから脇道に入り、更に奥に進んだ所にある薄汚い古びた長屋。決して広いとは言えないそこの一室が私の城。台所も一応付いているが、ただ寝るためだけに帰って来る私にとって、そこはほぼ無縁の空間だ。

 

勇儀「着いたよ。ここが私の家だ。入りな」

 

 所々に穴の開いた引き戸を開け、いつも通りに履物を脱ぎ捨て、家の中へと入って行く。小僧は玄関まで入って来たものの、俯いてそこから動く気配がない。

 

勇儀「あはは、食っちまおうなんて思ってないよ。こっちに来てココに座りな」

 

 用意した座布団を叩きながら、警戒心を解く様に気軽に声を掛け、食料を確認するため台所へ。

 

勇儀「腹が減ってるんだろ? ロクな物無いなぁ。朝の残りの米くらいか……」

 

 大きな声で独り言を言いながら、ふと居間へ視線を移すと、小僧が卓袱台(ちゃぶだい)の前で座っていた。まだ表情は硬いが少し安心した。あのままあの場に居られたら、亡霊みたいで薄気味が悪いからな。

 手に塩を付け、余りの米を握っていく。不恰好で冷たい即席のオニギリの出来上がりだ。

 

勇儀「悪いな。コレぐらいしかないんだ」

 

 卓袱台の上にヘタクソなオニギリがのった皿を置くと、

 

小僧「いただきます」

 

 ボソッと一言呟き、

 

 

モグモグ

 

 

 少しだけオニギリを口へ頬張り、飲み込んだ。

 

 

ガツガツガツガツ、モグモグモグモグ

 

 

 そこからは瞬く間にオニギリが小僧の口へと消えていった。

 あまりにも夢中になって食べる小僧の姿に驚き、見入っていると、

 

 

ムシャ……ムシャ…………

 

 

 その動きが急に止まり、俯き出した。

 

勇儀「不味いのか?」

小僧「……」

勇儀「どうしたんだ?おーい」

小僧「zzz……」

 

 緊張の糸が切れたのだろう。あと一口だけを残して眠ってしまった様だ。

 残ったオニギリを小僧の手から取り、自分で食べてみる。

 

勇儀「しょっぱいな。でもあんな美味そうに……」

 

 部屋に布団を敷き、小僧を起こさない様にゆっくりと横たわらせ、私も同じ布団に入ることにした。少し窮屈だが、布団はコレしかないので仕方がない。

 それにしても不思議な小僧だ。背中に首元から袋が付いた服、青い二股に分かれた袴。どれもこの町では見た事がない。そして首に下げた『○×神社』と書かれた橙色の袋。

 親はどうしたのだ?何処から来た?これからどうしたら?その前に何か大切なことを忘れている様な…。ぼんやりと彼是(あれこれ)思いを巡らせていると、

 

 

ゴソゴソ……

 

 

 胸元がくすぐったい。見ると小僧が服を掴み、顔を埋めながら安堵の表情で眠っていた。

 

勇儀「へぇ、可愛いとこもあるじゃないか」

 

 今日はもう考えるのを止め、小僧を優しく抱き寄せて頭を撫でながら眠ることにした。

 

 

 

 

小僧「ママ……」




Q.赤、青、黄、黒、白の札は
 それぞれいくらの設定でしょう?



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