東方迷子伝   作:GA王

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三年後:鬼の祭_後夜祭(前)

 畳まれていく物は少数。その原型を未だ保ってはいるものの、灯りは消され、陳列されていた品を片付けられ、主人もいなくなった屋台が大半を占める旧地獄街道。街中に吊るされた祭りの提灯(ちょうちん)だけで、薄暗く道を照らす旧地獄街道。だが民家からは煌々(こうこう)とした明かりと、笑い声と活気が(あふ)れる今の旧地獄街道。

 現時刻はまもなくで、夜中と呼ばれる時間帯に差し掛かろうとしている。そんな中、灯台の様に一際明るい光を放ち、大勢の話し声が飛び交う、昔ながらの和風の屋敷が。そこでは盛大な後夜祭が開かれていた。

 

 

--鬼等宴会中--

 

 

??「がっははは!やっぱりこの組み合わせは

   最強だ!」

 

襖の隙間から見えるその部屋では、戦利品を両手に抱えて誇らしげに高笑いをする父さんと、

 

??「そうなのか?コウ、後で飲ませておくれよ。

   鬼助も飲んでみてぇだろ?」

鬼助「へい!是非頂きたいです!」

 

戦いに敗れたにも関わらず、嬉しそうにその様子を見つめる親友の親父さん。そしてその2人に話し相手兼、盛り上げ役兼、名誉ある生贄に選ばれた弟分が男臭い宴会を繰り広げていた。

 そう、あの決闘の勝者は父さん。親友の親父さんが場外へと吹き飛ばされた時、土俵へと落下したのが幸いだった。決まり手は一応「突き出し」という事にはなっているが、あのスケールであのルール上では、そんな型にはまった名前では収められない。

 2人の実力者の我儘から生まれた相撲(もど)き試合は、間違いなく鬼の歴史上最大にして最高の一戦。多くの者の記憶に、心に焼き付いただろう。それは早くも影響を出している様で…。

 

??「『大江山颪』ぃ〜」

??「だから違うって!親方様は右手だって

   言ってるだろっ!!」

 

先程から隣の部屋でそれの『ごっこ遊び』に勤しむ2人の子供達。代わる代わる役を演じて楽しんでいる様だが、その回数は私が記憶している限りでも、5回は繰り返されている。

そして

 

大鬼「左利きなんだからしょうがないでしょ!」

カズ「そしたら俺が全部反対の動きをしなきゃ

   ならなくなるだろ!」

 

目を離せばすぐコレだ。でも今日は、

 

??「2人共喧嘩しない!」

 

最強の監視役がいる。いや、来て頂いた。

 

??「大鬼君、確かに親方様は右手だったよ。

   それで腰はもっと落として。そうそう。

   カズキはその位置じゃないでしょ!」

 

まさかの忠実再現を始める「お母ちゃん」さん。「最後くらいはゆっくり楽しみな」と言われ「ならば」と素直に甘える事にして、大鬼の事をお願いしている。でも…。

 

お母「はい、そこから。よーい…。スタートッ!」

 

ああいう事に(こだわ)りがあるなんて正直驚きだ。しかも指示がやたらと細かい。白熱していたあの試合の細部まで記憶しているなんて…。ある意味特技…いや、もしかしたら能力なのかも…。

 鬼監督が加わり、クオリティが上がっていく『ごっこ遊び』。それを「まぁ頑張りな」と哀れみを込めた視線で見守っていると、

 

  『あはははは、ほらやっぱりぃ~』

 

すぐ側で上がる黄色い笑い声。

 

勇儀「ん?何の話だい?」

 

何を隠そう私達は今、この男子禁制の空間で絶賛女子会中なのだ。

 

ヤマ「えー、聞いてなかったの?」

萃香「もう言わないからね!」

 

顔を赤くして外方を向く親友。その様子から察するに、彼女絡みの話なのは間違いないのだろうけど…。

 

勇儀「じゃあ、ヒントくらいおくれよ」

萃香「イヤッ!」

 

断られた。こうも頑なに断られると、余計に気になるのが性。「さて、どうしたものか」と腕を組んで作戦を練っていると、

 

ヤマ「ヒント1〜」

 

ヤマメからの援護射撃。味方ができた。そしてそれに続く様に、

 

お空「お父さん!」

 

我先にと口火を切る地霊殿の鴉。

 

萃香「ちょちょちょっとぉっ!?」

キス「()()()ッ…、ヒント2ー」

お燐「小さい頃の~…ニャ」

 

まさかの展開に慌て出す親友を他所に、更なる援護射撃。これはありがたい。すると親友は、

 

萃香「も、もうね…。その辺で…」

 

「それ以上はいけない」と流れを止めに来た。

 だが萃香よ。この流れ…、そんなもので止まる訳がないだろ。

 

パル「ヒント3」

さと「『夢』ですね」

 

そして彼女の味方は誰もいなくなった。

 与えられた3つのヒントを基に、私は固い頭をフル回転させる。「お父さん」「小さい頃」「夢」。これから連想される事…。

 

萃香「わ、分かった?」

勇儀「ダメだ…。全然分からない。

   もう少しヒントおくれよ」

 

今はみんな私の味方だ。もう一つくらいは…。

 

  『ダーメ』

 

満場一致。全員寝返った。否、初めから私の味方をしていた訳ではない。この状況を純粋に楽しんでいただけだ。

 

萃香「良かった〜」

 

「助かった」とため息と共に胸をなで下ろす親友。そしてニコニコと私を見つめる一同。きっと腹の中では、「考えろ考えろ」と嘲笑(あざわら)っているに違いない。みんなが知っていると言うのに、私だけが知らないなんて、仲間外れにされているみたいで凄い悔しい。

 

勇儀「うーん…」

 

腕を組んでも、唸ってみても、皆目検討がつかない。「何か決定打が欲しい」そう思っていた。

 

??「お嫁さん♪」

 

そこへ突然聞こえて来た声に、全身に鳥肌が立った。

 

勇儀「誰だっ!?」

 

聞いた事の無い声に体は一気に戦闘モードへ。だがその直後、

 

  『こいし様!?』

さと「こいし?いるの?」

 

「こいし、こいし」と声を発する地霊殿組。何の事だか分からず、私の頭は「?」だらけ。

 

さと「隠れてないで、ちゃんとご挨拶しなさい」

 

さとり嬢がそう言い終えた途端、

 

??「()()()()()()()()()()()()

 

 

ゾクリ…

 

 

背後から殺気。慌てて退きながら振り向いた。

そこには

 

勇儀「え?」

 

誰もいなかった。「でも確かに今声が…」そう思った矢先だった。

 

??「やっはー♪」

  『わーっ!!』

お燐「こいし様いらしてたんですかニャ」

お空「もう、びっくりさせないで下さいよ」

 

私の真後ろ、さっきまでは正面だった方面が騒がしくなったのは。再び視線を背後へ戻すと、そこにはさとり嬢と似たような格好をした緑色の髪の女が、笑顔で両手を上げてポーズを取っていた。

 突然現れた人物に平然としているのは地霊殿組だけ。他の連中は

 

 

ポカーン…

 

 

だ。

 

さと「突然で申し訳ありません。やっと捕まえる事

   ができました。私の妹の…」

こい「古明地こいしだよー♪」

 

時が止まった。そんな気がした。

 

  『えーーーっ!?』

ヤマ「さとりちゃんの妹!?」

萃香「姉妹いたんだ」

パル「気配が無かった…」

さと「それがこの子の能力でして…」

こい「無意識を操るんだよ♪」

勇儀「どういう事だい?」

さと「早い話がパルスィさんが言われていた様に、

   気配を消すんです」

こい「違うよ、気付かれない様にしてるんだよ♪」

 

「なるほど」と納得した。それでさっき私が気付かない間に2度も背後を取ったんだ。でもその時に感じたアレは…。コイツ、見た目によらず相当な実力者だ。

 

キス「フッフッフッ…、アサシンか…」

パル「その能力があれば…」ブツブツ…

 

ヤツが顎に拳を当てて呟き始めた。その内容は大方予想出来ている。それはヤツが次に放つ言葉で答え合わせできる。

 

パル「妬ましい!」

 

やっぱりか。絶対今よからぬ事を考えていただろ?

 それはそれとして、驚かされてばかりいるさとり嬢の妹君には、

 

 

ガッ!(こいしの服を掴む音)

 

 

こい「へ?」

お燐「ニャッ!?」

さと「え?勇儀さんまさか…」

萃香「ちょちょちょちょっと勇儀!?」

ヤマ「勇儀落ち着いて!」

キス「フッフッフッ…、来るか?」

パル「このパターンは!?」

お空「なになに?」

 

一度御退場願おう。

 

勇儀「土足厳禁!」

こい「はーい♪」

 

私に首根っこを掴まれて宙ぶらりんになりながらも、両手を上げて底なしの明るい笑顔で返事をする妹君。楽しそうで何より。

 そんな彼女に「姉とは随分とタイプが違うな」と頬を掻きながら眺めていると、

 

  『ふ〜〜〜…』

 

ドッとため息が湧き上がった。お前さん達、今何と勘違いしたんだ?

 

 

--妹君郵送中--

 

 

こい「お姉ちゃん凄いね♪頑張ってね♪」

さと「うん…。ちゃんと出来るか自信ないけど…」

 

決闘が終わった直後にあった母さんからの緊急発表。それは私を含め、町の住人達に衝撃を与え、会場中をざわつかせた。その時深い理由は語られなかったけど、あの母さんが後任に選んだんだ。きっと大丈夫、

 

こい「お姉ちゃんなら大丈夫だよ♪」

さと「こいしがそう言うなら…」

お空「さとり様、ガンバっ!」

さと「お空、ありがとう」

キス「フッフッフッ…、ではこの際に妖怪にも

   稼ぎのいい仕事への参加を…」

さと「あ、はい。それは常々感じていたので、

   前向きに検討し、改善を…」

萃香「みんなに町の掃除する様に言ってよ。

   祭のゴミじゃないのも沢山あったんだから」

さと「そうなんですか?では最低月に一度、

   全員参加の町内清掃を…」

パル「是非年に一度の妬み祭りを」

さと「えっと、それは…。検討致します…」

ヤマ「もう気軽にお茶会出来なくなるかな?」

さと「いえ、そんな事にはさせません!

   あれは私の楽しみなんです!」

お燐「でも気軽に大鬼君と遊べ(ニャ)(ニャ)るニャ。

   だからアタイが〜」

さと「ん゛っ?」

萃香「あ゛っ?」

お燐「ニャッ?」

 

なのか?腰は低いし大鬼の事になると直ぐコレだし…。母さんみたいに皆を率いていくタイプじゃないと思うのだけど…。

 などと不安を抱きつつ、手にした酒を飲んでいると、妹君と偶然視線が合った。すると彼女は口元を緩めて笑顔を浮かべると、

 

こい「鬼さん凄い力だったねー♪」

勇儀「ブーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

突然私の真横に現れて腕をペタペタと触り出し、私は驚きのあまり口に含んでいた物を吹き出してしまった。しかもその吹き出した先が、

 

 

うっとり♡

 

 

ヤツ。

 

勇儀「パルスィ悪い。酒臭くなっちまうな。

   今風呂と着替えを用意するから」

 

一応形式的に言ってはみるが、

 

パル「イヤ♡」

 

そう来ると思った。それと頬を赤らめるな!その頬に手を当てて恥じらうな!!私の気遣いを断るな!!!

 

勇儀「どうしても?」

パル「イヤ♡」

ヤマ「ラーメンだけじゃ?」

パル「イヤ♡」

キス「餃子も付けなきゃ?」

パル「イヤ♡」

 

なるほど、じゃあ仕方がない。

 

 

ガッ!(パルスィの服を掴む音)

 

 

パル「パッ!?」

 

照準、パルスィの家方面。打ち上げ角度、30度。力、もちろん全力!

 

  『あー、やっぱり』

勇儀「着替えて出直して来ーーーいッ!!」

パル「ルううううぅぅぅぅぁぁぁぁ。。。…☆」

 

私がパルスィを投球した直後、ヤマメとキスメが耳に手を当て、外の様子を伺いだした。「何をしているんだ?」と首を傾げていると。

 

ヤマ「うーん、音がしなかったから、

   今のはいつも通りだね」

キス「フッフッフッ…。勇儀よ、手を抜いたか?」

勇儀「いや、全力だ!」

ヤマ「私はてっきりまたパルスィが…」

キス「フッフッフッ…。あの力を見せられてはな」

 

そう言う事か。確かにあの時の力であればヤツは今頃「壁ドン」だっただろう。「でもアレは…」等と考え事をしていると、

 

 

ツンツン

 

 

不意に腕を突かれた。そちらに視線を向けると、

 

 

キラキラキラキラ☆

 

 

眩しい視線で訴えてくる妹君が。謎の反応に私が「なんだ?」と首を傾げている中、

 

萃香「アレ凄い力だったよ。あの大きさの親父を

   片手で『ポイッ』だもん」

お燐「あの時はありがとうございましたニャ」

お空「うつほもびっくりだった」

さと「ヘカーティア様も言われておりました。

   『あの力は神様をも脅かす力だよ』と。

   腕相撲だったらヘカーティア様でも勝てない

   かもって」

ヤマ「きっとそれが勇儀の能力なんだよ」

キス「フッフッフッ…。開花おめでとう」

 

口々に私を称賛していく者達。でも私は複雑な気持ちだった。なぜなら、

 

勇儀「たぶん、能力じゃないと思う」

  『えっ?』

勇儀「あの時の力、もう出せないんだ」

 

そう、あの時感じた体の内側から湧き上がる不思議な力が、今では踏ん張ってみても、力んでみても再現しないのだ。だから私はこう結論付けた。

 

勇儀「あれはきっと『火事場の馬鹿力』だ!」

 

この言葉に皆が腕を組んで唸り出してしまった。それは「そうなのかも知れないし、違うかも知れない」と、半信半疑な気持ちを表していた。

と、そこへ、

 

??「ユーネェ、今いい?」

 

男子禁制の秘密の花園に侵入とする者が。

 




一気にいこうと思いましたが、
諸事情により分けさせて頂きました。

次回【三年後:鬼の祭_後夜祭(中)】
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