勇儀「こら大鬼、ここは今男子禁制。入っちゃダメ
なんだぞ」
大鬼「え?そうなの?」
「なんで?」と言いたげな表情を浮かべる大鬼。深い理由はない。ただこれは女子一同で決めた事。例外は…
萃香「いや、えっと…」
さと「あなたが『どうしても』と言うなら…」
お燐「おいでニャ」
簡単に裏切りやがった。『大鬼>女子の結束』なのか?まあ薄々分かってはいたけど。
勇儀「はー…、特別だからな?」
許可を出しながら廊下にいる大鬼に手を差し出す。
大鬼「…」
だが大鬼はその場から動こうとはせず、硬直していた。しかも一点だけを見つめて。その視線の先は…。
大鬼「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
屋敷中に響く絶叫。あまりの大声に一瞬心臓が止まりかけた。そしてその発生源は、視線と同じ方向を指差していた。
大鬼「あの時の!!」
こい「久しぶりー♪思い出してくれたんだー♪
大きくなったねー♪」
『えーーーーーーーーーーーーーッ!?』
勇儀「なっ、お前さん達知り合いだったのか!?」
萃香「私達だって会ったの今日初めてだよ!?」
キス「気配を消すレアキャラなのに…」
ヤマ「え?いついつ?いつから?」
さと「えっと、どうやら地霊殿が工事している時に
会っていたそうなんです」
お燐「アタイが大鬼君と初めて会った日の前日です
ニャ」
勇儀「それもう何年も前だぞ?よく覚えて…」
そこまで語った時、脳裏に当時の記憶が蘇ってきた。
勇儀「たしかお燐が来た前日の夜は…」
そう、アレは私が軽率な行動を取ってしまい、「もう二度としない」と決意した夜だった。こう思い返してみると、あれからもう数年か…懐かしいな。ホント、あの時は大鬼に悪い事しちまったな。
それはいいとして、という事は妹君が来たのは大鬼が初めて仕事場に来た日になる。そういえばその時…。
勇儀「積み木…」
大鬼「そうだ、そこの人に言われて、
取りに行ったんだ」
こい「あー♪懐かしい♪やったやった♪」
勇儀「じゃあ、あの間取り図はお前さんが!?」
私もだんだんと思い出してきた。
あの日、大鬼の
こい「えっと、何か作ったっけ?」
勇儀「いや、覚えてないならいい…」
当の本人は記憶にないらしいが、あれは間違いなく彼女が作った物だろう。
こい「あ、でも覚えてる事もあるよ♪」
すると妹君は、突然思い出したかの様に、人差し指を立て、歌を歌い始めた。
こい「 地球が一つありまして〜♪
お豆を○○に置いたとさ〜♪
お豆を○国○川○に置いたとさ〜♪
ドバ…」
勇儀「なんだその変な歌?」
こい「大鬼君から教えてもらったんだよ♪」
勇儀「そうなのか?」
大鬼「うーん…」
真実を尋ねてみるも、大鬼は視線を上に向けて
勇儀「こいし嬢すまない、覚えて無さそうだ」
こい「ふーん、じゃあ後で教えてあげるよ♪
絵を描きながら歌うと面白いんだよ♪」
妹君の提案に大鬼は戸惑いながら返事をすると、ハッと目を見開いた。
大鬼「そうだ!ユーネェ、じぃじ達見なかった?」
どうやらコレが本来の目的だったようだ。
勇儀「ん?そっちにいなかったか?」
私が正面の
大鬼「ううん。居たのは寝てるキスケと
キスケにタオル当ててるばぁばだけだった」
向こう側の惨劇を語ってくれた。私の弟分はその仕事、使命を全うしてくれたのだ。
勇儀「そ、そうか。なら分からないな」
襖の向こうで酔い潰された弟分の姿が容易に想像できる。苦笑いを浮かべながら大鬼にそう答えた時だった。
ブツブツブツブツ…
3つの黒い
萃香「歌?何それ…。私だって知らないのに…」
お燐「アタイの事は覚えてくれて
のにニャ。アタイの前日
さと「一緒に遊んだのは聞いていたわよ?でも、
そこまでの仲だなんて聞いてないから…」
その矛先は妹君。だが当の本人は自覚して様で、キョロキョロと周囲を見回し、それが誰への物なのか探っているみたいだ。そして3人一斉に放つその言葉は。
『妬ましいっ!!!』
となれば、
パル「
ヤツはちゃんと来る。
お空「えっ!早くない!?」
こい「すごーい♪」
キス「フッフッフ…、記録更新。おめでとう」
ヤマ「着替えてないし…」
そう、あのまま。コレはやり直しだな。と、その前に…。
勇儀「大鬼ちょっと来い」
大鬼「え?なに?」
大鬼の手を引き、廊下へ。
大鬼「いいの?あのままで。パルパル暴走気味
だったよ?」
部屋に視線を向けながら尋ねてくる大鬼。いつもと違う反応を示す私に、不安を覚えたのだろう。でも安心していいぞ。その前に確かめたい事があるだけなんだ。
そう、あの時感じた力。私は『火事場の馬鹿力』と結論付けた。皆にもそう伝えた。でもあの感覚、初めてじゃなかった。しかもかなり最近体験していた。それをどうしても確かめておきたかった。
廊下を曲がった所で、「ここなら」と大鬼の手を離し、周囲を確認。よし、誰も見てないな。
勇儀「んっ!」
大鬼「え゛っ!?」
勇儀「早くしろ!」ヒソヒソ
大鬼「い、今!?」ヒソヒソ
勇儀「誰も見てないから」ヒソヒソ
大鬼「どうして今なのさ?」ヒソヒソ
勇儀「実験なんだよ。早くしないとパルスィが
暴れ出す」ヒソヒソ
大鬼「もー…」
その瞬間、背筋がゾクゾクっと来た。そして体の内側から
コレだ!あの時と同じだ!!
後は答え合わせをするだけ。急ぎ足で女子会の会場へ戻ると、
パル「パルパルパルパルパルパルパルパルパル…」
ヤマ「お、落ち着いてぇ!」
お空「さとり様逃げてー!」
キス「パルスィちょ、ちょっと待って…」
そこは大惨事。目をギラギラに輝かせ、親友とさとり嬢、更にお燐を妖術で捕獲し、口を大きく開けて、エネルギーの捕食にかかるヤツの姿が。そして、それを必死に取り押さえるヤマメ達。そんな中でも妹君は…、
こい「これ美味しー♪」
ご飯中。「よく騒がしい中飯が食えるな…」と感心しつつも、場の鎮圧に急ぐ。不思議な力は…、まだ生きてる。
勇儀「ヤマメ達離れろッ!」
ガッ!(パルスィの服を掴む音)
勇儀「うおおおおり゛ぃゃぁーーーーッ!!」
パル「…………………………………………☆」
投げ飛ばした瞬間手応えがあった。それに飛んで行くスピードも先程よりも断然早い。「これなら」と思っていると、
パル「残念、今のは分身」
本物のヤツが最近身に付けた『いらん技』を自慢気に語った。そして、「今度こそは」と嫉妬に心を支配された3人に飛び掛かった。だがその時、
ドッッッッッガァーーーーーンッ!!
外から聞いた事も無い巨大な爆発音が。慌てて表に出て、音がした方角へ視線を向けると、
地底の壁に父さん達の武舞台サイズのクレーターが、くっきりと出来上がっていた。
キス「ウソ…」
ヤマ「もしあれが分身じゃなかったら…」
お空「ひーッ!」
パル「あわわわわ…」
キラキラキラキラ☆
青ざめた顔で目を皿にするキスメ達。当のパルスィは、口に手を突っ込んでガタガタと震えている。それもそうだろう、仮にアレが本物だったらと思うと、私でさえもゾッとする。
萃香「うーん…、みんなどうしたの?」
お燐「頭がぼんやりするニャ…」
そこへヤツの餌になりかけていた者達が、頭を
??「えーっ!アレを勇儀さんが!?」
さとり嬢だ。この場の皆の心を読んで、状況を把握したのだろう。流石と言うべきか、抜け目がないと言うべきか…。ホント便利だよな、それ。
萃香「え?なになに?」
さと「ゆゆゆゆ勇儀さんが、パパパパルスィさんの
パルスィさんをビューンで、あそこをドーン
って」
キラキラキラキラ☆
出来上がったばかりのクレーターを、バタバタと腕を振りながら指差すさとり嬢。興奮しているのは分かるが…、説明下手かっ!心を読めてもそれじゃあダメだろ…。
お燐「つまり、パルスィさんの分身を投げて、
アレが出来たんですかニャ?」
ナイス通訳。流石長年のペット。そしてそのお陰で親友がようやく理解出来た様だ。
萃香「じゃ、じゃあやっぱり勇儀の能力って…」
勇儀「あはは…、どうやらこの馬鹿力みたいだな」
私がそう答えると、
『おめでとうっ!!』
皆が一斉に祝いの言葉と共に駆け寄って来た。それはまるで、胴上げをされるくらいの勢いで。
萃香「私、ずっと…ずーっと待ってたんだからね」
ヤマ「もう『無能の四天王』じゃないだね!」
キラキラキラキラ☆
キス「フッフッフッ…。能力の名前はどうする?」
パル「それは是非私が名付け親に…」
勇儀「それなんだが、実はさっき思い付いたんだ」
『なに?』
勇儀「『怪
『なんで?』
両手を腰に当てて答える私に、頭上に「?」を浮かべて首を横に傾ける一同。「いいね」と、待望の反応に喜びながらも、それを覚られぬ様に深呼吸。
落ち着いたところで、解説開始。
勇儀「馬鹿力は『
それとさっき、さとり嬢が言ってたろ?
ヘカーティア様が『神をも
言われていたって。だから『乱す』『神』で
『乱神』」
ここで大きく胸を張ってドヤドヤ。さあどんな反応をするか…。
『ふーん』
終わり。感想はそれだけ。
萃香「怪力乱神って、そういう意味だっけ?」
ヤマ「たぶん違うと思うけど…」
キス「フッフッフッ…、怪力乱神とは。
人知を超えた不思議な現象や存在のことで、
各々、怪異・勇
by 大百科」
『メタ乙!』
キラキラキラキラ☆
パル「しかも『かいりき』じゃなくて、
『かい
勇儀「一々細かいなー、じゃあいいよそれで!」
この瞬間、私の能力の名前が命名された。その名も『怪
お燐「でも、
って言ってた筈なのにニャ」
鋭い質問でいい質問。その理由は
勇儀「えっと、条件みたいなのがあるみたいで…」
お茶を
歳を重ねるに連れ、身に付けた三か条回避の特技。これは町の皆も同様だ。悲しい事に歳を取ると、こう言う事が平然と、しかもそこそこのクオリティーで出来る様になる。
だがこの場にはそれすらも通用しない者がいる。
じー…
私を見つめ続ける赤い目玉に気付いたのは、お燐に答えて間もなくの事だった。
勇儀「よせよせよせよせっ!読むな!覗くな!
見ない方がいい!」
手で目の前を必死にガードしてみるも、それは
さと「なるほど、そう言う事ですか…」
とうとう知られた。しかも悪い事に彼女の側にはヤツがいる。「また捕食に来る」そう予期し、姿勢を低くして身構えた。ヤツが少しでも怪しい動きを見せたら、直ぐにスタートを切れる状態だった。
パル「ん?勇儀どうしたの?」
だが思いの
勇儀「妬まないのか?」
さとり嬢に口に出して尋ねていた。すると彼女は、
さと「なんか勇儀さんならいいかなって。
妬ましいというより、微笑ましいです」
頬を
萃香「え?なに?教えて!」
さと「えっとですね…」
知りたがりの親友に、私の許可無く耳打ちで答える次期町の長。どうやら機密保持の精神は薄いらしい。町の未来が思いやられる…。
そしてそこから始まる伝言ゲーム。今度は親友からお燐へ、お燐からキスメへと耳打ちでそれは伝わって行く。その度に、皆が一様に「へ〜」と言いながらニヤニヤと笑いながら、「意外」と視線で語ってくる。もう恥ずかし過ぎて体が熱い。変な汗まで出て来る始末だ。
やがて伝言ゲームは残すところ後一人。最後はヤツの番。
ヤマ「パルスィは………止めとこ」
ヤマメのナイス判断。いや、これは最初から危惧して、一斉に話さなかったさとり嬢の策略だろう。おそらく伝言ゲームの最中に「パルスィは最後」と、指令が出ていたのかも知れない。
パル「仲間外れなんて、妬ましい…」
ヤマ「帰りに教えてあげるよ」
勇儀「それよりもお前さん着替え!
そのままじゃ家に上げないぞ!」
パル「お泊りセット持ってきた。だからお風呂…」
背中の風呂敷はそういう事らしい。ならば良しとしよう。泊める気はさらさら無いがな。
勇儀「じゃあ用意するから」
パル「一緒に入ろ♡」
頬を赤らめて恥じらいながら、一方通行の夢を語るヤツ。答えは当然。
勇儀「断る!」
子供みたいな事を
キラキラキラキラ☆
さっきからこの視線。それは無邪気の極み。まるで数年前の大鬼の様。ずっとスルーしていたが、いよいよ耐えきれん。
勇儀「なんだ?何か用か?」
出所は妹君。突然現れるわ、眩しい視線で訴えてくるわで、考えている事がよく分からない。正直苦手だ。
こい「私にもビューンってやって」
まさかのリクエストに「私を遊具として認識してないか?」と不安がよぎる。更に、
さと「こいし止しなさいよ」
姉からの忠告も
パル「止めておいた方がいいよ」
体験者からの忠告も
こい「おねがーい♪」
どこ吹く風。その眩い光を放つ視線は、一向に止まる様子がない。私としてもこのパターンは初めてで、あまり気は進まないが、
勇儀「じゃあ地霊殿方面に飛ばすぞ」
こい「はーい♪」
他ならぬ妹君
ガッ!(こいしの服を掴む音)
こい「お邪魔しましたー♪」
照準、地霊殿。打ち上げ角度、20度。能力、無し。力、手加減なし。
勇儀「お構いもしませんでぇぇぇっ!」
こい「やああああっっっっはぁぁぁ。。。…☆」
怖がる様子は全く無く、そればかりか満開の笑顔で飛んで行く妹君に、
さと「玄関の明かり付けておいてねー」
お燐「アタイ達ももう少ししたら帰りますニャー」
ヤマ「またねー」
キス「フッフッフッ…、そして…グッドバイ」
パル「よくもまあ、楽しめるよね…。妬ましい…」
各々が別れの挨拶をする中、
お空「こいし様ー、お土産ありがとー」
手に袋を持った地獄鴉だけが感謝の言葉を述べていた。
勇儀「土産?」
お空「うん、こいし様がみんなで食べてねって」
さと「こいし、いつの間にそんな気の利く事を…」
お燐「
お空「えっと…」
地獄鴉がゴソゴソと袋の中を漁り、取り出したのは…。
『あ………』
皆私と同じ事を思っただろう。「またかよ」と。
??「がっはははは!」
??「だっはははは!」
そこへ離れの方から聞こえて来た、戦士達の高笑い。かなり盛り上がっている様だ。
勇儀「向こうにいたのか…」
ごめんなさい。再び分けさせて頂きます。
仕上げの作業が追いつかず、
出来上がっている所までの投稿になります。
【次回:三年後:鬼の祭_後夜祭(後)】
今度こそは…。