東方迷子伝   作:GA王

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十年後:ある日の出来事_地底七不思議(伍)

--事情説明中--

 

 

 彼は話した。血の池での出来事を、船幽霊と知り合った経緯を、包み隠さず全て。その結果……。

 

  『あっはははッ!』

 

 船幽霊の家族、大爆笑。

 

雲山「だから言わんこっちゃない」

一輪「お、お腹痛い……。私達もずっと注意してたんだよ。くくく……自業自得だね」

大鬼「でしょ!? それなのに『変態ッ!』って言うんだよ? なあ?」

 

 少年は同意を求めるために、腐れ縁の彼へ尋ねた。だが……

 

和鬼「あ、あー……、でもコッチにも非はあるから……」

 

 と、赤くなった頬をかいて非同意。少年、「コイツには無駄だった」と後悔。

 

一輪「そう言ってもらえると助かるよ」

雲山「で? こっちはどうじゃった?」

 

 胸元で円を描いて少年に尋ねる雲ジジイ。隣の彼女に「それを聞くか?」と冷ややかな目を向けられ、発してしまった言葉を取り消そうとした矢先、

 

大鬼「並だった。だからあだ名はナミ」

  『ブフォッ!!』

 

 まさかの珍回答に吹き出す。と同時に2人は思った。「ピッタリ」と。だがそれを良くないと思う者もいたりするわけで……

 

和鬼「お前……、それ以上言うなよ」

 

 赤面状態で少年に「いい加減にしろ」と鋭い視線を放っていた。

 

大鬼「はいはい。怖い怖い」

雲山「して、主らは何をしにここへ?」

一輪「まさかとは思うけど、私達も七不思議になってたりはしないよね?」

  『そのまさか』

 

 少年達は七不思議の概要と、その目撃情報を話した。その結果、

 

  『あー……』

 

 身に覚えがあると言ったご様子。

 

一輪「確かにその話からすると、私達の事みたいだね。ちょっと気になる部分もあるけど」

雲山「そうじゃのぉ、じゃが最初の話は覚えてないのぉ。忘れておるだけやもしれんが……」

和鬼「でもこれで……」

大鬼「七不思議の3つの謎解明だ!」

 

 訪れた達成感に歓喜する少年達。そして祝いに交わされるハイタッチ。が、その瞬間……

 

大鬼「いぢぢぢ……」

 

 毎度お馴染みの筋肉痛と共に、手から放たれる激痛が少年を襲った。(ゆが)む表情。その変化に彼はすぐ様気が付いた。

 

和鬼「おい、やっぱりどっかヤバイんじゃ……」

一輪「ん? どうしたの?」

和鬼「実はさっきコイツの手が金棒の下敷きになって……」

一輪「どれ、ちょっと見せて」

 

 彼女はそう告げると、少年の手を取ってしばらく眺めた後、あちこちを指で軽く押しながら、「痛みはないか?」と尋ねていった。そして診断の結果。

 

一輪「少しヒビが入ってるかもしれないね。私達が住んでる所に包帯とかあるからおいで。すぐ近くなんだ」

 

 

--少年移動中--

 

 

 七不思議の3人が暮らすその場所へとやってきた少年達。そこは地底の壁に出来た穴の中だった。だが穴の中は意外や意外。

 

和鬼「ひろッ!」

 

 そして

 

大鬼「でかッ!」

 

 完成され尽くしている住居スペースが存在していた。

 

一輪「凄いでしょ?」

 

 腕組みをし、胸を張ってドヤッ! さらに彼女はここぞとばかりに、自分達の住居をドヤドヤしながら、話しを進めていった。

 

一輪「この下にも部屋があってそこにはね……」

 

 だが、彼女はそこで突然言葉を止めた。それは「うっかり話し出してしまった」という後悔と、「これ以上は危険か?」という不安から。

 

  『そ、そこには?』

 

 しかし目を輝かせながら、己の話しに食いついて来る彼等を前にしては、(しゃべ)られずにはいられず、

 

一輪「宝があるんだ」

 

 苦笑いを浮かべ、ため息混じりに「降参」といった様子で言い切った。

 『宝』と聞いて少年達、一気に童心に返り、更に食いつく。幼い頃に遊んでいた冒険ゴッコ。それが今リアルなものとなったのだから。

 

大鬼「見せて見せて!」

和鬼「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから」

一輪「分かった、分かった。少しだけね? でもその前に、君の手を治療しないと」

大鬼「じゃあ包帯とお酒くれればいい」

和鬼「持って来てたの?」

大鬼「念のためね」

 

 少年の簡易的且つ完全回復の治療を終え、彼女の案内で階段を下って行く少年達。やがてその視界には何重にも施錠(せじょう)された扉が。彼女はその扉の前に立つと、鍵を1つ1つ外していき、扉に手を掛けた。

 

一輪「心の準備はいい?」

 

 少年達、その質問に固唾(かたず)()んで頷く。それを合図に彼女は扉をゆっくりと引き始めた。徐々に広がる扉の隙間(すきま)からは、(まばゆ)いまでの光がこぼれ、少年達を正面から照らし出し、そしてついにその時が……。

 

  『うおーーーッ!!』

 

 そこには金銀財宝の山。黄金色に光を放つ芸術品の数々。宝石が埋め込まれた装飾品の山。それは見事なまでのトレジャー。となれば……

 

一輪「すごいでしょ?」ドヤッ

大鬼「頂戴!」

和鬼「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから」

 

 ハントしたくもなる。

 すると彼女、両手で大きく円を描きながらゆっくりと頭上へ。やがて指先が触れ合う……まであと少しといった所で、ピタリと静止。と、そこでニコリと明るい笑顔。

 少年達、その笑顔に胸はドキドキ。あとはGoサインを待つばかり。どれにしようかと選び始めていた。が、

 

一輪「ノォーーーッ!!」

 

 彼女はそこから一気に顔を『怒』の表情に変え、両手をクロス。大きく『X』を作った。

 

一輪「ダメに決まってるでしょ!」

大鬼「いいじゃん、こんなにあるんだから」

一輪「ダーメ」

和鬼「1個ずつでいいから」

一輪「ダーメ、この()もそうだけど、その宝も所有者は別にいるの。だからおいそれと簡単には上げられません」

 

 ごもっともな意見。こう言われてしまっては、少年達も諦めるしかない。

 

大鬼「はー……、やっぱりダメか……」

 

 少年、肩を落としてガックシ。興奮していただけに、その温度差は大きい。だが、一方の彼は、

 

和鬼「……ウソ」

 

 目を見開き、身体を震わせていた。それは更に興奮した(あかし)。そう、彼女は口を滑らせていた。言う必要も無いたった一言を。それを……彼は聞き逃さなかった。

 彼は慌てて懐から1枚の紙を取り出すと、震えた手で眺め始めた。何度も何度も、同じ場所を繰り返し、繰り返し。

 その奇妙な様子に気付いた彼女、

 

一輪「どうかした?」

 

 彼に近づいて尋ねた。

 

和鬼「ここ……船?」

一輪「あ……」

 

 彼のこの質問に彼女、「やってしまった」と口を押さえて自覚。だが、「知られてしまったら隠すのは無理」と早々に判断し、ため息混じりにそれを認めた。

 

一輪「そうだよ。船の中」

大鬼「え? そうだったの? でもなんでここに船なんか?」

 

 少年は彼女に質問していた。だがそれに答えたのは、彼だった。

 

和鬼「七不思議だ……」

大鬼「へ?」

和鬼「七不思議の一つなんだよココ!」

 

 

【地底七不思議-其の肆:地底に眠る宝船】

 七不思議の中でも、極めて一部でのみ噂になっている話。その目撃者はほぼ皆無。出所不明の怪しい話。それが地底世界の何処かに、宝を大量に積んだ船が存在しているという事。この話を聞いた者達は、必ずそれを求めて地底世界のありとあらゆる所を探すのだが、なかなか見つからず、皆途中でリタイアする。その背景もあり、七不思議の中でも最も根も葉もないものとなっていた。

 

大鬼「えーーーッ!?」

和鬼「一番無いと思っていたのに……。しかもコレ見つけたのオレ達が……は、初めて?」

大鬼「え゛ーーーッ!?」

 

 初の発見者。その言葉に少年達は大興奮、そして大歓喜。しかもお宝である。「コレを教えれば一躍ヒーロー」そう考えていた。まさにその時だった。

 

一輪「お願いっ!」

 

 彼等の耳にその声が届いたのは。「なに?」と興奮しながら、ニヤついた顔で彼女の方を振り向いた。自然で、簡単で、軽い気持ちで。

 

  『!?』

 

 だが振り向いた瞬間、彼等は瞬時に我に返った。興奮の熱も一度に吹き飛んでしまう程の、強烈なインパクトを残すその光景、姿勢。彼女は、地に頭を付けていた。宝の存在を話す事になった時からこの状況を彼女は覚悟していたのだ。

 

一輪「この事は誰にも話さないで! 代わりになる物も無いけど……この通り! どうか……どうか……」

 

 生まれて初めて体験する土下座だった。己達よりも遥かに歳上の者が必死になって、頭を下げている。ちょっとした優越感だろう。この土下座に少年達は……、

 

大鬼「言わない言わない言わない! 絶対言わない!!」

和鬼「だだだだから頭を上げて下さい! 誓いますから、約束しますから!」

 

 優越感なんて味わう余裕も無く、慌て始める。いや、寧ろ罪悪感さえ芽生えていた。

 

和鬼「知ってしまってごめんなさい!」

大鬼「ごめんなさい!」

 

 少年達も土下座。そして放つ決定打。

 

和鬼「鬼はウソを言いません!」

 

 彼女はこの言葉にゆっくりと頭を上げ……

 

一輪「ありがとう。本当は自慢したいだろうに」

和鬼「いえ、いいんです。誰かに自慢したくてやっているのでは無いので」

大鬼「そ、そうそう。ただの暇つぶしなんです」

一輪「へ? あっははは。そうか、暇つぶしか。それで? 暇は潰せた?」

 

 彼女、ホッと一安心。そして少年達は、彼女のこの質問に顔を見合わせると、声をそろえて答えた。

 

  『はい、とっても!』

 

 

--少年満足中--

 

 

一輪「じゃあ気を付けて帰りなよ」

雲山「まだ霧は深いからのぉー……」

 

 その後も船の中を一通り彼女に案内され、その上「せっかく来たのだから」と、お茶と茶菓子をご馳走になった少年達。お腹も心も大満足である。

 そしていよいよ帰宅時間。

 少年達は洞穴の外まで見送ってもらう事に。

 

和鬼「あのー……、ナミ……、水蜜さん、今日はいないんですか?」

 

 最後の最後にこの質問。ずっと船の中にいた彼等だったが、以前出会った船幽霊と再会する事が無かった。

 

一輪「あー、『地霊殿の主さんに用がある』って言って出掛けてるよ」

 

 そう聞いて少年達、「あの事だ」と瞬時に察知。と同時に「本当に行きやがった」と呆れていた。

 

和鬼「そ、そうですか」

大鬼「一輪さん達も何か困った事があれば、頼みに行くといいよ」

一輪「分かった。そうする」

和鬼「それじゃあ……」

大鬼「おじゃましました」

 

 一気に七不思議の3つを解き明かした少年達。残念ながらそれを口外する事は出来ないが、それでも少年達の心、記憶、思い出の1ページとしてしっかりと刻まれていた。地底七不思議、その一つ。地底に眠る宝船。それは少年達に大きな財産を与えていた。

 

和鬼「ちょっと金棒(コレ)持つの手伝って」

大鬼「えー……、だから言わんこっちゃ無い。結局何も起きなかったじゃん」

 

 だが、

 

和鬼「そう言わないでさ」

 

 彼等は

 

大鬼「今回だけだからな」

 

 1つ、大きな勘違いをしていた。

 地底七不思議、その一つ。霧の中の巨人。それが目撃されているのは…………姿を現すのは…………()()()()()

 

??「お゛ぉぉぉーーーッ!」

 

 突然の叫び声に足を止める少年達。

 

大鬼「え? 今の何?」

和鬼「雲山さん?」

 

 クルリと後ろを振り返る少年達。だが……、

 

雲山「今のはワシではない!」

一輪「やっぱり別にいる。君達に話を聞いた時、少し引っかかったんだ。雲山は入道の妖怪。霧の日に限らず、常にこの状態。それに、彼は他人を好き好んで(おどろ)かせたりなんかしない!」

 

 七不思議の本人と思われた2人は戦闘態勢。これには少年達、脳内パニック。

 

一輪「何者?! 姿を現せッ!」

 

 自分達に濡れ衣を着せた者への怒号。それに答える様に、そいつは少年達の前に姿を現した。

 




【次回:十年後:ある日の出来事_地底七不思議(陸)】
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