東方迷子伝   作:GA王

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【やってきたぜ!幻想郷】嫁候補四人目

--河童回復中--

 

 

 正気を取り戻した技術屋、再びガクブル。だが任務を全うしようとする姿勢は崩さず、ドライバーとレンチを手にすると、再度リフトの下へ潜り作業続行。その間、お調子者達の耳には「ガシャーン」やら「バーンッ」やら「ドカーン」といった、『元に戻す作業』とは真逆の音が届いていたそうな。

 そんな事がありながらも、リフトは元の姿に戻った様なのだが……

 

妖夢「えっと……、出発しても大丈夫ですか?」

にと「う、うん。動かすから乗って」

海斗「流石にとり! 可愛いのに頼りになる〜」

にと「か、かわッ!?」ガタガタ

妖夢「海斗さん……わざとやっていませんか?」

海斗「いや、俺は常に本気だ!」

 

 お調子者、腕を組んでドヤッ! その瞳に迷いは……無い。これには技術屋、

 

にと「ひぇ〜〜〜……」ガタガタ

 

 変な声を上げ、頭から湯気が出ている()()()()()()顔は真っ赤な紅葉色。その姿勢は()()()()頭を抱えてカリスマガード。そう、これらは全て憶測。なぜなら今その技術屋は……

 

海斗「だからさ」

にと「ふぅ〜〜〜……」ガタガタ

海斗「その箱から出てきて、もう一度顔見せてくれない?」

 

 ダンボールを逆さに被り、潜入工作員状態。さらにその中でマナーモード。この状況を見ればきっと誰でもこう思うだろう。「もうやめてやれよ」と。が、このヲタク、技術屋がなかなか出てこない事をいい事に、

 

海斗「に〜とり♡」

 

 ダンボールの持ち手の穴から覗き込む。2人の視線は、バッチリ一直線上に。

 

にと「ギャーーーッ!」

海斗「あっははは、おっもしれー」

 

 ヲタク、楽しみ始めていた。そこへ「いい加減にしろ」と、おかっぱ頭が彼の首根っこを掴み、

 

妖夢「はいはい、もう行きますよ。乗って下さい」

 

 強制連行。

 

妖夢「では、あと宜しくお願いしますね」

にと「うん、分かった」

 

 技術屋、返事と共にくるりと回れ右。そしてロープウェイの操作位置へ移動を開始。

 

妖夢「……」

海斗「ククク……」

 

 ダンボールを被ったまま。ズルズルと引き摺る音を立てながらも、一生懸命任務を全うしようとしていた。そのなんとも滑稽な姿に、おかっぱ頭は肩を落として脱力。ヲタクは腹を抑えて歓喜。

 やがてどうにかこうにか、ダンボールは目的地へ到着。そしてスッと足を生やすと、ガシャガシャと操作をし、

 

 

ウィーン……

 

 

 ロープウェイを起動。エラーランプが点滅していない事を指差し確認し、備え付けのマイクを手に取ると、

 

にと「長らくお待たせしました。山頂行き索道の運転を再開します。ご利用の方はご乗車になってお待ち下さい」

 

 2人の乗客に向け、場内アナウンス。そして2人が既に乗車していると知ると、

 

にと「それでは扉を閉めまーす」

 

 リフトのドアの開閉ボタンをポチリ。ここも誤動作が無い事をしっかりと確認し、いざ!

 

にと「しゅっぱーつ!」

 

 発進ボタンをポチリ。その途端ワイヤーが動き始め、リフトは通常通りに山頂を目指して行った。ここで技術屋、ようやくATフィールドを解除。

 

にと「ふー……」

 

 零れるため息。緊張、圧迫、そして閉鎖された空間から解放された安堵のため息。安心をすると冷静さも返って来るもの。その時彼女は大事な事を忘れていたと気が付いた。

 

にと「お金もらってない……」

 

 そう呟く彼女の足元には、大きさが異なるネジが3本落ちていたそうな。

 

 

--ヲタク乗車中--

 

 

海斗「絶景かな、絶景かな」

 

 遠くへ視線をやれば広がる大パノラマ。下へと視線を落とせば、色彩豊かな木々が絨毯の様に広がっていた。

 

妖夢「本当に綺麗ですね。初めて乗りましたけど、いいものですね」

 

 窓の外に広がる見事な景色を楽しむおかっぱ頭。普段は気にも留めていなかった景色。その素晴らしさに感動していた。それは空が飛べるが故に、気付かなかった事。灯台下暗しだった。

 そんな彼女を見つめる熱い視線。この時彼の脳内は……

 リフトで2人きり → 閉鎖空間の男女 → あんな事こんな事 → カポー成立 → 結婚

 (よこしま)な考えが働いていた。と、そこへ。

 

??「{あー、テステス。聞こえてる? どうぞ}」

 

 何処からか声。否、天井のスピーカーから声。

 

妖夢「この声……」

海斗「にとりだな」

にと「{もしもーし。どうぞ}」

妖夢「聞こえてますよー」

 

 声が聞こえて来るスピーカーに応答するおかっぱ頭。だがこの時ヲタク、「多分そうじゃない」と気が付き出していた。それは案の定……

 

にと「{あっれ〜? 無線壊れたかな? どうぞ}」

 

 不通のご様子。

 

妖夢「聞こえてますよー」

海斗「みょん、違う違う。アレ使うの」

 

 ヲタクが指差した先には、コードがついたスピーカーマイクが。彼女はそれを手に取ると、頭上に『?』を浮かべながらマジマジと観察。すると察しのいい彼、

 

海斗「横にボタンあるだろ? それ押しながら話すんだぜ。話し終わったらボタンを離してな」

 

 使い方を説明。彼女はその言葉に従い、3度目のトライ。

 

妖夢「聞こえてますよー」

にと「{お、やっと繋がった。無線は問題無しと。リフトの乗り心地はどうだい? どうぞ}」

妖夢「ええ、すごく快適です。景色も綺麗です」

にと「{それは良かった。乗り心地も問題無しと。変な音とかしないかい? どうぞ}」

 

 察しのいい彼、この時気付き始めていた。「モルモットにされている」と。

 

妖夢「しませんよ」

にと「{そうかい、そうかい。特に問題無しと。あ、そうそう。代金だけど、上に到着したら箱に入れておいて。帰りは緑色の巫女にでも頼んで。それじゃあ引き続き楽しんでね。どうぞ}」

 

 会話終了の合図。そのタイミングで彼は立ち上がり、おかっぱ頭から無線を奪うと、

 

海斗「にとり、嫁にならない?」

 

 「俺も元気です」とご挨拶。その返事は無かったものの、彼には技術屋がどんな状態であるか目に浮かぶ様だった。そして満足気に笑いながら、スピーカーマイクを元の位置へ。

 

妖夢「可哀想ですよ? なんでそこまでするんですか?」

海斗「面白くてね。それに……」

 

 彼はそこまで答えると、窓の外をぼんやりと見つめ、続きを語り出した。

 

海斗「似てるんだ。俺の親友に。技術オタクで、人見知りで、すぐビクビクして。だからツイね」

妖夢「人見知りではないんですけど……。その方は外の世界の方ですか?」

海斗「そ。アイツ今頃どうしてるかな? 俺がいなくても大丈夫かな?」

妖夢「海斗さんが養っているのですか?」

海斗「あっははは、違う違う。誤解を生みやすいヤツなんだよ。だから少し心配なんだぜ」

 

 彼女の質問に答える彼の顔は、笑ってはいるものの、少し寂し気だった。それは彼女が初めて目にする彼の表情で、「こういう表情するんだ」と暫く見惚れていた。

 会話はそこで止まり、リフトは間も無くで目的地。その時、彼が不意に彼女の方へ振り向いた。

 

妖夢「!?」

 

 そこで彼女はようやく気が付いた。いや、我に返った。今彼女の目の前には、彼の顔。2人は急接近していた。瞬く間に体温が上昇する彼女。そしてそれを見透かす様な、本気の視線。

 

海斗「みょん、俺……」

妖夢「嫁にはなりませんからね! 毎度毎度口を開けばそればっかりで、さっきもそうやって……」

海斗「それでも俺、本当は……」

妖夢「もうそれ以上喋らないで! 顔近い! 離れて!!」

 

 両手でお調子者を押し返す彼女。と、同時に彼は背後へと飛ばされ、出入り口のドアへ激突。力も勢いも強いものではなかった。ドアには軽くぶつかった程度。だが……

 

 

ガシャーン!

 

 

 何かが外れる音。そして彼は、

 

海斗「え?」

 

 空中へ放り出されていた。閉められたはずの自動扉のロックが外れたのだ。

 

妖夢「海斗さんッ!」

 

 慌てて手を伸ばす彼女。しかし彼と彼女は離れていく一方。「絶対に捕まえる」そう誓って力強く飛び込んだ結果、

 

海斗「ッぶねー……」

 

 間一髪のギリギリセーフ。彼女はリフトから身を乗り出し、彼の手を捕まえていた。だが、届いたのは片手だけ。しかも、もう片方の手は支えるのに必死。離せば2人とも真っ逆さま。

 

妖夢「ぅ〜〜〜ッ」

 

 歯を食いしばり、「絶対に離さない」と決意しながらも、その顔は苦悶に満ちていた。

 

海斗「みょん無理すんな! このままじゃ2人とも落ちる!」

妖夢「〜〜〜ッ!」

 

 返事なし。いや、返事が出来ない程ギリギリの状態だった。剣の道を歩んでいたとはいえ、彼女は女の子。その白く細い腕の限界は近かった。と、そこに

 

 

ガコンッ

 

 

 不吉な音。今まで気にも止めていなかった音。定期的に発生していた音。だがそれがこの時は、彼等には不気味で死神の声に聞こえていた。

 そして音と共に発生する縦の揺れ。支柱を通過したのだ。その瞬間、彼の手は彼女から残酷にも……

 

海斗「わ゛ーーーッ」

妖夢「海斗さん!?」

 

 慌ててリフトから飛び降りて猛スピードで後を追いかける。彼の落下地点には巨大な岩が待ち受け、残された距離はもう僅か。彼女の今のスピードで追い付くか否かの瀬戸際。正真正銘、これが最後のチャンス。

 彼女は目一杯その手を伸ばした。強い意志を込めて。彼もそれに答える様に、彼女へ力いっぱいその手を伸ばした。

 

 

◇    ◇    ◇     ◇     ◇

 

 

??「はいはい、順番にね。押さないでね」

 

 慣れた手際で客を案内。それはどこか投げ槍の様にも見え、急いでいる様にも見える。その者の胸の胸の内はというと……

 

??「(早く終わらせて飲みに行こ)」

 

 こんな感じ。だがそんな者の気持ちとは裏腹に、

 

客1「あの……、記念に握手してもらえませんか?」

客2「あ、それじゃあ私も」

 

 握手会の要望。その言葉に「面倒だな」と思いながらも、

 

??「いいよ、ほら握手」

 

 客一人一人に、丁寧に笑顔で答えていく。やがて握手を交わした客が2桁になろうとした頃、

 

??「今回はもう満員かな?」

 

 ポツリとそう呟き、残された客達に向け、

 

??「今日の最終便はここまで! また明日!」

 

 と大きな声でアナウンス。その声に列を成していた客達、バラバラとそれぞれが違う方向へ散っていった。その様子を見届け、出発の準備へ。

 岸と結んでいたロープを外し、飛び乗るのは彼女の仕事道具。愛用の鎌も忘れずに。

 

??「ふー……」

 

 「これで今回のノルマ達成」と、サボりにサボった仕事のツケの終わりを迎え、ホッと一息。

そして最後のもう一踏ん張り。

 

??「出航ー」

 

 岸を蹴って舟に勢いを付け、漕ぎ出そうとしたその時、

 

??「こまっちゃーん! 待ってー!!」

 

 彼女を呼ぶ声が。聞き慣れない呼び名に、「私の事か?」と首を傾げる彼女。だがその者は真っ直ぐに、砂煙を上げながら猛スピードで彼女を目指していた。やがて舟の側に辿り着くと、その勢いのままジャンプし、

 

 

ダンッ!

 

 

 強引に乗船。そしてサムズアップで己を指し、キメ顔で放たれるその言葉は……

 

??「嫁にならない?」

小町「…………は?」

 

 

 

嫁捕獲作戦_四人目:小野塚(おのづか)小町(こまち)【困惑】

 

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