??「う〜ん……」
光が
??「ヤバッ!」
慌てて跳ね起きて
??「酒臭い……」
昨夜の宴会の所為。
??「何かで誤魔化さないと」
辺りを見回して目に付いたのは、冷えきった出がらしのお茶。半ばヤケクソで口に含み口を
??「冷静に見ると
行く手を阻む難所の数々。無造作に置かれた皿、食べ残しがチラホラと目立つ。そこら
そして不用心に床で寝そべる花も恥じらう乙女達、中には恥じらいもなく股を開き、大の字で眠る者も。お陰で足の踏み場もない。誤って踏んづけたり、大きな音を出したりして起こそうものなら、寝起きの悪い紅白に夢想封印されかねない。最新の注意を払ってそっと、そーっと……。
グニッ
足裏に柔らかな感触。あれだけ「気を付けないと」と思った矢先に……。どうか大きな声だけは……
??「いったーーーッ!」
とはいかない。無理もない、バランスを崩して踏み止まろうとしたのだから。体にかかる力は全てその一点に集約され……つまり、思いっきり踏みつけた。でも彼女にも原因はある。ふわふわもふもふとした毛並みのいい尻尾が、無用心に放置されていたのだから。しかも九つも。
九分の一の尾を踏まれた彼女は跳ね起き、その拍子に勢い余って側の卓袱台を蹴り上げていた。
回転しながら優雅に空中を舞う卓袱台、上にあった皿やコップは楽しげに空中遊泳を楽しみ、
ゴッ! ガーン! バリンッ! ガシャーンッ!
着地。
??「ホラッ!?」
??「シャシャシャシャンハイ!?」
??「つつぅ……、誰だze★? 魔理沙ちゃんの眠りを邪魔するのは」
??「ふぁ〜、大きな音がしたけど一体何事?」
??「レミィ、動かない方がいいわよ」
??「気を付けて下さい、食器か割れたみたいです」
??「あやややや、天子さんが卓袱台の下敷きに!」
??「そそそ総領娘様ッ!?」
天子「う〜ん、もっと〜♡」
??「怪我された方は応急処置をするので言って下さい」
??「兎さ〜ん、妖夢ちゃんが卓袱台にオデコを打ったみたいなの」
妖夢「うー……、幽々子様すみません、ありがとうございます」
続々と目を覚ます宴の参加者達、でもここまではいい方。これだけ周りが騒がしくなれば、
??「あ゛ーもうッ!」
??「うっるさいわねぇ、私を無理矢理起こした代償は高く付くわよ?」
誰だって目が覚める。危惧していた二人、しかもいつにも増して機嫌が悪い。
??「ん〜……。藍しゃまー、大きな声を
??「ら〜ん? 覚悟は出来ているのでしょうね?」
藍 「ちちち違うんです紫様、聞いて下さい! 突然自慢の尻尾に激痛か走ったんです! きっと誰かに踏まれたんですよ!」
紫 「誰かって誰よ?」
藍 「そっ、それは……」
集まる視線はチクチクと汗腺を刺激し、嫌な汗を滝の様に流させる。もうこの場にいる全ての者が悟っただろう。
??「いやははは、ごめんごめん」
『スーイーカァッ!!』
萃香「わっ、わざとじゃないんだよ。急いで支度していたら倒れそうになって、足を出したら踏んづけちゃったんだよ……って悠長に話している場合じゃなかった! 霊夢、今何時だかわかる?!」
霊夢「さぁ、昼前くらいじゃないの? そんなに慌ててどこか行くの?」
萃香「里帰り! 今日からお祭りが始まって私も当番なの」
文 「あややや、そう言えば今日からでしたね」
魔理「死神も昨日そんな事言っていたような気がするze☆」
萃香「そうだ小町……っていないし。先に行くなら起こしてくれてもいいじゃない! 紫、悪いんだけど入り口まで送って」
紫 「イヤよ、私はまだ眠いの。おやすみ」
萃香「えー……、じゃあ魔理……」
魔理「魔理沙ちゃんも二度寝するze☆」
萃香「なら仕方ない、あ……」
文 「おっともうこんな時間、急いで編集に行かないと。お先に失礼しまー……☆」
揃いも揃って移動時間に自信のある者達は非協力的。もう自分の力で行くしかない。ため息を一つ吐いて気持ちを入れ替え、割れた食器の破片を踏まぬように爪先立ちで縁側を目指す。
危険地帯は抜けた。そこから先は全速力で……
??「きゃッ」
萃香「うわっと。ちょっと、ちゃんと前見てよね!」
??「ごごごごめンナs……ィ」
相変わらず聞き取り辛い。宴会にはよく現れるのに、特定の人物としか話そうとしない。酒の席でそんなのは流儀に反する。気を使ってこちらから話そうと思って接近すれば、直ぐに霊夢や魔理沙の陰に隠れてしまう。タイミングよく近付けても、自前の人形を抱きしめて縮こまり、視線を合わせようとしない。おまけに質問をすると、この様にゴニョゴニョと。これだけはハッキリしている。
萃香「そこ退いて、邪魔なの」
私は彼女が苦手だ。
--萃香が去った宴会場では--
荒れ放題の宴会場は4名+2体の従者により、すっかり前日の姿を取り戻していた。
??「お嬢様、後片付けが終わりました」
レミ「ご苦労様、咲夜も少し休んでいいわよ」
咲夜「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせてもらいます」
主人に一礼をして整えられた卓袱台へ、うつ伏せになって二度目の仮眠。屋敷に戻れば通常業務が待っている。束の間の休息とは言え無駄には出来ない。
パチュ「お疲れね」
レミ「夜明け前までお祭り騒ぎ、無理もないわ」
パチュ「お祭りと言えば……」
レミ「今日からみたいね地底のお祭り、どんな雰囲気か興味あるわね。日光を気にしなくて済むから、思いっきり羽を伸ばせそう。パチェもそう思わない?」
パチュ「そうでもないわ。地底と言え、祭りとなれば人混み。疲れるだけよ」
一方もう一人の従者は、
妖夢「幽々子様、片付け終わりました。時間も時間ですし、もう帰られますか?」
幽々「その前に何か食べて帰らない? お昼近いし朝ご飯も食べてないし」
妖夢「昨日あんなに食べられたのにですか? 私はまだお腹空いていませんよ」
幽々「なら人里で食べて帰るから、妖夢ちゃんは先に帰っていていいわよ」
妖夢「そうはいきません。幽々子様を一人でお食事に行かせると、とんでもない金額になるのでついて行きます」
食べる事に関して歯止めの効かない主人の監視役をしていた。
紫 「立場ないわね」
幽々「そう?」
紫 「もっと主人らしくなさいよ。上下関係があやふやじゃないの」
幽々「いいの、妖夢ちゃんはしっかり者だから信用しているの。ねー?」
妖夢「幽々子様……わわわ私、外で鍛錬してきます」
頬を染めて愛用の二本の刀を手に駆け出す彼女。こんな時でも鍛錬は怠らない。そんな従者をマイペースな主人は、
幽々「けどちょっと真面目過ぎるのよねぇ」
眉をひそめて見送っていた。
紫 「柔軟性に欠けるなんて、従者として致命的よ。その点私の従者は……」
堂々と誇らしげにを語り出す賢者。その視線の先の彼女達は、
橙 「藍しゃまー、もう片
藍 「ちぇえええええええええん! 自分から進んでお手伝いなんて偉いよ、成長したね。私も鼻が高いよ」
橙 「う〜、藍しゃま。く、苦しい
相変わらずの平常運転。いや、感極まってやや飛ばし気味。腕の中の部下に底知れぬ愛情を注ぎ込む最強の式神。
そこへ「注目しろ」と手を叩く家主、それぞれの会話を中断しそちらへ視線を移す一同。
霊夢「それじゃあ、残ったメンバーには復旧作業に手伝ってもらう事にしたから。よろしくね」
魔理「はーッ!? 何で魔理沙ちゃん達も手伝わなきゃならないんだze★」
霊夢「萃香が出かけちゃうんだもん、仕方がないじゃない。それにいつも宴会の場を提供してあげているんだから、手伝うのは当然だと思うけど?」
紫 「あの小娘に責任もってやらせなさいよ」
霊夢「そうしたいのは山々なんだけど全ッ然無能! すぐサボる上に喝を入れたら頬を赤らめて『もっと♡』って催促するんだから」
幽々「押してダメなら引いてみたら?」
霊夢「そんな事をしたらまたサボって堂々巡りよ」
鈴仙「あのー……、私は日課があるので帰ってもいいですか?」
霊夢「そうね、あんたは仕方がないわね」
レミ「私達も帰らせてもらうわ。代わりに美鈴を貸すから好きに使ってちょうだい」
霊夢「そういう事ならいいわよ。それにあんたより役に立ちそうだし」
ここぞとばかりに理由を付けて面倒事から逃げて行く者達。言うなら今すぐ、許されるのは精々後一名。
??「なら私もこれで」
チャンスを逃さない。何食わぬ顔で言い切り、
霊夢「はいはい」
誰からも突っ込まれる事無く、帰宅を許された者達と共にその場から撤退した。
霊夢「で? 最終的に残ったのはやっぱりあんた達3人ってわけね」
妖夢「あれ? 幽々子様?」
霊夢「あんたの主人なら真っ先に紫達とスキマに隠れたわよ」
妖夢「そんなー、幽々子様酷いです」
魔理「なあ霊夢、魔理沙ちゃんも今日は……」
霊夢「どうせ暇なんでしょ? さっ、お喋りはもうおしまい。二人共さっさと働いて! それと……」
貧乏くじを引いた2人に指示を送り、ポツリと呟く紅白巫女。彼女が向けた視線は部屋の隅、そこには膝を抱えて小さく
霊夢「アリス! いつまでそんな所にいるのよ、しっかり見えているんだからね」
アリ「……」
妖夢「どこか具合でも……」
魔理「あー、大丈夫だから。ここは魔理沙ちゃんと霊夢に任せて、先に行ってくれだze☆」
少女を気にかける庭師の背中を押し、仕事をするように
霊夢「妖夢なら行ったわ、もう私達しかいないから顔を上げなさいよ」
アリ「……」
だが返事が無かった。それどころか、少女は小刻みに肩を震わせ始めた。
魔理「泣いてるのか?」
アリ「……」
霊夢「たぶん萃香ね、あんなの気にするだけ損よ」
魔理「そうだze☆ あんなのは無視だ無視! それに神社を直すのにはアリスの力が必要なんだze☆?」
アリ「……ホント?」
霊夢「そ、そうよ。人形使いの力、頼りにしているんだから」
魔理「だからアリスも一緒に行こうze☆ 上海と蓬莱も手伝ってくれるよな?」
上海「シャンハーイ」
蓬莱「ホーラーイ」
笑顔で答える2体の半自立式人形。それは主人を
アリ「うん」
目尻に光るものを残しながらも、明るい表情を取り戻していた。
天人くずれの退屈しのぎで破壊された博霊神社。その異変解決後、神社は小さな鬼によって中途半端に修繕されたが、人見知りの少女の大活躍により、その姿を瞬く間に取り戻した。
そして後にこの出来事は、幻想郷の外の世界へ次の名で伝えられる事になる。「東方
【次回:十年後:鬼の祭_弐】