付けて書いてました。
例えば、擬音を除く外来語を使わない事です。
そうした方が自分の思い描く地底世界に
近いものが書けそうで挑戦し続けましたが、
かなり苦戦していました。
うー……、頭がズキズキする……。
まず思ったのはそれだけ。急に襲われた激しい頭痛に不安を覚え、手と足に力を入れて動作確認を……。うん、動く。
五体満足である事にほっと一安心。そして意を決して恐る恐る目を開け……。うわっ、眩しっ。
強くは無い光だと思う。でも「眩しい」と感じたところから察するに……、もしかして長い間目を閉じていた? などと考察をしながら、未だ焦点が合わない目で、ぼんやりと呆けていた。
暫くたった頃、だんだんと目が慣れてきて、僕の置かれた状況が分かってきた。
まず、ベッドで横になっている。頭にふかふかの枕、体には薄手のタオルケットが掛けられている。
次に、木造の天井。そこには吊るされたランタンがある……。終わり。今分かるのはここまで。
更に情報を得るため、重い頭をゆっくりと持ち上げると、
ガタン!!
優希「!?」ビクッ!
突然の物音にビックリ。全身の毛という毛が逆立ち、心臓は一瞬フリーズ。慌てて視線をそちらに向けると、そこには倒れた椅子を元に戻している女性がいた。
優希「え?」
僕は目を疑った。その人の姿が、あの時見たフィギュアと全く同じだったからだ。アリスのコスプレ流行ってんの?
僕が物珍しそうに見ているのがバレたのか、その人は気まずそうに視線を
??「ケガ、平気?」
優希「……」コクッ
??「痛み、無い?」
優希「……」コクッ
??「そう、良かった」
優希「……」コクッ
??「……」
優希「……」
僕の記念すべき初の女性との会話終了。その余韻に浸りたいところだけど、色々分からない事がある。ここは何処? この人の家? 何でコスプレ姿? 今何時? 水もらえないかな? etc……。
頭の中で聞きたい事が山ほど
1……2……3……4……5……6……7……8……9……じゅぅ…………だああ
『あのっ!』
被った……。
??「どうぞ、お先に……」
優希「ィェ、ド、ゾ……」
??「……」
優希「……」
気まずい時間が流れる。今ので絶対変な人だと思われた……。もういい、変な人ですよ……。変人は用を済ませてとっとと帰りますよ……。
優希「イマナンジデスカ?」
??「時間? 21時くらい?」
優希「ここッテ……」
??「私の家」
優希「オ水くだサイ……」
??「待ってて」
コスプレした人はそう言い残すと、凛とした表情で部屋から出て行った。そして一人になったところで、女の人と初めて
コンコン……。
そうこうしていると、扉から優しいノック音が。そしてガチャリという音と共に、扉がゆっくりと開き、両手でトレイを持ったさっきの人が、出て行く時と同じ表情でそこにいた。トレイの上にはコップと水差し、あとクッキーの様なものが見える。その人はトレイをテーブルの上に置くと、コップに水を入れて運んで来てくれた。
??「どうぞ」
人形みたいに整った顔。「綺麗な人だな」とは思っていたけど、近くで見るとその印象が更に強くなる。フィギュアとは少し違うけど、雰囲気はかなり似ている。それに柔らかくて甘い香りが。僕には刺激が強すぎます……。
優希「ぁ、ぁりがト……」
もらったコップに口を付け、水を一口……。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……。
一気に飲んでしまった……。
??「まだ、いる?」
優希「はぃ……」
「厚かましくてすみません」と心で謝罪をしながらも、水をもう一杯だけ頂くことに。『女性と2人きり』というこの事実に、一人そわそわしていると、今度はコップと一緒に、クッキーも持って来てくれた。
??「よければ、これも」
優希「ありがとぅ……」
女性にこんなに親切にされた事なんて、生まれて初めてかも……。母さんはカウントに入れません!
差し出されたクッキーは、100円玉くらいの小振りな物だった。お言葉に甘えて一枚手に取り、口へと放り込んだ。
優希「!?」
サクサクとした食感。中にはナッツも混ぜてある。それでいて、気取らず、飾らずシンプルな味付け。口の中に広がる絶妙なハーモニーに思わず、
優希「うまっ! 美味しい!」
大き目のボリュームで心の声が漏れていた。
優希「デス……」
大きな声出してごめんなざい……。
??「そう、良かった」
そう呟いたコスプレの人は、僕に背を向けて窓の外を見ていた。すると突然振り返り、少し重い表情を浮かべて話し出した。
??「あなた、森で倒れてたの」
優希「え?」
??「帰り道の途中で上海が見つけたの」
優希「シャンハイ?」
??「これ、あなたの? 近くに落ちてた」
コンコン……。
その人がそこまで話すと、扉からまた優しいノック音が聞こえて来た。「他にも誰かいるの?」と思いながら、音の方へ視線を向けていると、扉が開き、僕の鞄と道具箱がふよふよとやって来た。そう、「ふよふよ」と。
「浮いてるっ!?」と、信じられない光景に目を
近づくにつれ、その実態が
そして2体は、ふわふわふわふわと側までやって来ると、鞄と道具箱を僕の足元に置き、
ニコッ。
と微笑んだ…………え? 今、笑った? 確かに今、僕のを顔を見てニコッて……。
もう僕の頭はパニック状態。この目の前で起きている世にも奇妙な現象に、恐怖を抱き始めていた。そして、ついに意を決して聞いてみる事に。
優希「あなたは……」
??「アリス・マーガトロイド。魔法使いです」
この回答に僕は「はい?」と更に困惑。脳内はパニックを通り越してパ○プンテ状態。
落ち着きを取り戻したところで、冷静に状況分析。そして一つの結論に至った。「この人、かなりなりきっているのかな?中○病なのかな?確かにふわふわと浮きながら動いて、笑顔になる人形が不思議だけど、たぶん「ド○ーン」の技術を応用して作られているんだ」と。
そう思うと、先程の2体の人形へ強い興味が沸き始め、マジマジと観察を開始していた。すると、人形達は照れくさそうな表情を浮かべ、自称アリスさんの後ろへと隠れてしまった。このあまりにも精巧な反応にまたしても、「なんかすごく忠実というか、生きているみたい。すごい技術だな」と感心して関心。
高精度の人形についてあれこれ考察していると、何やら視線を感じた。ふとそちらへ顔を向けると、自称アリスさんが不思議そうな表情で僕の事を見ていた。あ、また目が……。
気付くと同時に条件反射で視線を逸らすも、気まずさが爆発し、「まずい、まずい。何か話題を」と脳をフル回転。
そして苦し紛れに出た言葉が、
優希「あの、ここって……」
これ。でもどの辺りにいるのか聞きたかったから、結果オーライ。
アリス?「私の家」
あれ~? デジャブかな? じゃなくて、えっと……
優希「どの辺りに……」
アリス?「魔法の森の中」
想定外の回答。その言葉に「あー、そういう設定なんですね」と呆れというか、諦めにも近い思いが。そしてその後に込み上げる「新しいイメージ喫茶かな? だとしたら、こうしている間にも追加料金とか発生して……」という不安。そう考えた途端、居ても立っても居られず、
優希「あの、僕、もう、大、丈夫、です」
アリス?「え?」
優希「だから、家、帰りまス。ありがとうございましたっ!」
お礼をそこそこに、道具箱と鞄を持って逃げる様にして部屋を出た。
扉を開けると、中央にテーブルが置かれた広い部屋に繋がっていた。キッチンや暖炉、食器棚等が置いてある。たぶんここは居間、を設定した部屋。生活観が出ていて、まるでずっと人が住んでいたみたいだ。イメージ喫茶の高いクオリティに驚きながらも、周囲を見回していると、扉が目に付いた。その隣には窓。外は真っ暗で様子を伺うことができない。そういえばあの人、さっき21時くらいだって……。
ここに来てからどのくらいの時間が経ったのかは分からない。でも、自分で進んで来たわけではない。「だからきっと大丈夫」と何事も無く、無事に、且つ平和に帰れる事を祈りながら、恐る恐るお店の外へと繋がる扉を開けた。
優希「え?」
けど、目の前に広がっていたのは森。見渡す限り、木、木、木、木、木、木、木、木……だ。
僕が住んでいる所は車がそこそこ通るし、電車の本数もそこそこある。それに、僕の記憶では『電気とアニメの街』で買い物をして、電車に乗って……。そんな大都会にこんな場所があるはずがない。それに、車とか電車の音も聞こえて来ない。
優希「そういえば森で倒れていたって……」
アリス?「そう、この森で」
優希「うわぁ!!」ビクッ!
アリス?「へ!?」ビクッ!
背後から突然声を掛けられ、思わず変な声が出てしまった。
優希「ごごごごごごめんなさい」
アリス?「私の方こそ急にごめんなさい。あのね、ここ夜になると、人を襲う獣とか妖怪が活発で、危ないから……」
優希「え?」
そう言われて森へ耳を傾けると……、聞える。遠吠えが、唸り声が、何者かの悲鳴が。それに、
こんな所に不用心に足を踏み入れ様ものなら……、まず生きて帰って来られないだろう。樹海よりも確実に死ねるね。
アリス?「あの……、人里で良ければ……。明日送るから、その……」
優希「?」
アリス?「……」
優希「??」
アリス?「………」
優希「???」
アリス?「…………」
優希「????」
アリス?「ぅ…………」
優希「?????」
アリス?「う……………」
優希「??????」
アリス?「う~……………」
優希「???????」
アリス?「うti……………っ」
優希「????????」
アリス?「家、泊まっていけば?」
自称アリスさんは、赤い顔で上目遣いをしながら、凄まじい威力の呪文を唱えた。もう……死んだ……。
「家、泊まっていけば?」
言われてみたいです。
次回:「上海と蓬莱」
あの2体の人形の話です。