東方迷子伝   作:GA王

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[謎の妖怪狩り]様 から支援絵を頂きました。
星熊勇儀姐さんです。


【挿絵表示】


綺麗なのに強そう。それが姐さんです。
そして、ぶっ飛ばされそう……。
絵が上手い人、ホントうらやましいです。




そして、一先ず先にご挨拶を。

本当にごめんなさい!!

まだ最後まで書き終えておらず、ラストは2話に分けます。



十年後:酒が無限に湧き出る瓢  ※支援絵

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

??「はーあ……」

 

 特大のため息。

 

??「男なんて……」

 

 部屋の隅で膝を抱え、独り言を呟いて(しお)れる。現在進行形で傷心中、負のオーラを放つ彼女を2人は少し離れた位置から心配そうに眺めていた。

 

??「今日もか?」

 

 雲の爺さんと

 

??「みたいだよ」

 

 その使い手である。

 彼女がこの状態なのは今日に限った事ではない。もうかれこれ一週間、いや二週間になるといったところ。いつもは元気で明るい彼女だが、ある日を境にこのあり様になり、食事もままならない日々が続いている。

 

村紗「バカ……」

 

 幽霊故、それでも問題はないのだが、

 

雲山「あの小僧と喧嘩でもしたのか?」

一輪「だったらもっと怒ってるよ」

雲山「じゃあ振られたのかのぉ?」

一輪「っぽいけど、そうでもなさそうなんだよねー……」

 

 こうも目の前で落ち込まれると、流石に心配にもなる。そしてついに、見るに見兼ねた

 

??「村紗、何があったのかワシに教えてくれんかのぉ?」

 

 デリカシー・ゼロのおっさんが動いた。落ち込む彼女の隣に、ワクワク感を剥き出しにして腰を下ろした。が、

 

 

ガッ!(雲を掴む音)

 

 

一輪「ちったー空気を読めやーッ!!」

雲山「ヌヴヴヴウウウアアアぁぁぁ。。。……☆」

 

 強制撤去。

 

一輪「まったく、乙女心をわかってあげろっていうのよ」

 

 入道使いはそう(こぼ)しながら雲のおっさんと同じ場所に腰を下ろすと、

 

一輪「村紗、何があったのかそろそろ教えてくれない?」

 

 (なだ)めるように彼女に尋ねた。

 

一輪「(わくわく)」

 

 しながら。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 地霊殿の玄関を出た所で、

 

??「そいじゃ行こっか」

 

 ヘカーティア様の下へ集まっていく者達。その中には、

 

??「みんな元気でね」

 

 萃香の姿も。

 

蒼鬼「自分で決めた事だ。おもいっきりやって来い」

萃香「うん、ありがとう。たまには顔を見せるようにするから」

勇儀「そん時は土産をよろしくな」

萃香「忘れなかったらね〜」

 

 永遠に会えなくなるわけではないのに、別れというのは胸の真ん中にぽっかりと穴が開いたような感じになる。笑いながら挨拶を交わすが、刻一刻とその時は迫ってくる。

 萃香は私達と簡単な別れの挨拶を済ませると、大鬼の方へと歩きだした。徐々に狭まる二人の距離、やがてその間が私の身長分となったところで

 

萃香「大鬼、そろそろ行くね」

 

 会話スタート。

 

  『遠っ……』

 

 と呟いたのは私以外にもチラホラ。萃香、もう少し大鬼の近くに寄ってくれないか?

 その願いが届いたのか、萃香は少しだけ前進すると、

 

萃香「これからすごく大変だと思う。けど死にものぐるいで、一生懸命やればみんな分かってくれるから」

 

 腰に手を当てて(えら)そうに語り出した。

 萃香が話している事、それが大鬼に課せられた三つ目の(いまし)め、『鬼全員が許すまで裁きは続く』だ。

 来年の今日までに()()()が大鬼を許さなければ、(かせ)の裁きが発動する。みんなが大鬼をどう思っているのかは、配布される投票用紙に記載する事になっている。町民の妖怪達が含まれていないのは、嘘偽りない意見を収集するためだ。『鬼はウソを言わない』。鉄の(おきて)を利用したもの。だから書かれる事は全て本心となる。

 この投票を毎年行い、一人でも『許さない』と答える者がいれば、枷が電撃を発動することになる。

 そして、事前の意識確認として祭りの期間中に一回目の投票が行われた。その結果、大鬼を許すと答えたのがたった三人。私と萃香と和鬼だけ。これを(くつがえ)すには余程の事がない限り無理だ。毎年投票を行うとは言うけれど、私でさえ生死の(ふち)をさ迷った程の威力、大鬼が耐えられるとは思えない。実質、次回までに鬼全員から許しが出なければ……無理難題にも程がある。

 しかもこれを言い出したのが、他でもない大鬼自身。さとり嬢も母さんも反対したのに一歩も引かなかった。大鬼、もし万が一の場合は、私がその枷を壊してやるからな。

 と、それはそれとして……

 

大鬼「はい、ありがとうございます!」

 

 萃香からの言葉に礼を言いながら頭を下げる大鬼。その絵面はさながら上司と部下。町で他の連中が萃香と遭遇した時となんら差はない、よく見る光景だ。ハッキリ言わせてもらう。

 

勇儀「つまらん!」

お燐「あれじゃただのお説教だニャ」

ゾン「ゾンビー?」

お空「うにゅ? 怒られてるの?」

こい「お姉ちゃん、大鬼君何かしたの?」

さと「あれは本当のお説教じゃなくてアドバイスしてるの」

棟梁「改めてこう並ばれると、大きくなりましたね」

親方「昔は萃香の方が大きかったからな」

蒼鬼「成長期は恐ろしいな」

和鬼「単に萃香さんが小さいだけでしょ?」

ヘカ「地獄の女神様のキューピットはいらんかね〜?」

純狐「ヘカーティア、あなた言っている事が矛盾してるわよ?」

ピー「LoveのAuraが漂ってるね」

キス「フッフッフッ……、まだまだこれからよ」

ヤマ「いい雰囲気……なのかな?」

パル「ただいまの嫉妬指数は0パルスィ。パルパル」

 

 二人の関係を知っている者、薄っすらと気付く者、さっぱり分かってない者、それぞれ反応は違うけど、視線の先は皆同じ。自分達の会話を余所(よそ)に、その場の全員が二人に注目していた。

 

大鬼「この度は萃香さんに多くの迷惑をお掛けしてすみませんでした。喝を入れてくれた事、身をもって教えてくれた事、絶対に忘れません!」

 

 頭を下げながら萃香に今回の件を謝罪するのはいいが、

 

勇儀「固過ぎないかい?」

 

 丁寧なのは認める。けど……、

 

勇儀「大鬼にあの手の謝り方は合わないな」

 

 などと(つぶや)いている横で、

 

??「ここまででマイナス15点」

 

 採点を始めるさとり嬢。そして大鬼に頭を下げられた萃香は、照れ臭そうに頭をかきながら

 

萃香「あはは、いいって。こっちこそ殴ったりしてごめんね」

 

 と。

 誰もが耳を疑った。全員で硬直した。その場の時が止まった。

 

  『エエエえええぇぇぇーーーッ!?』

 

 叫び声と共に時が動き出し、どよめく私達。

 

和鬼「萃香さんが大鬼を殴った……だと?」

蒼鬼「穏やかじゃねぇな」

親方「萃香、よくやった」

勇儀「おいおい本当かいそれ?」

キス「フッフッフッ……、始まってもいないのに破局か?」

ヤマ「そそそそんな事ないよね? 何か理由があるんでしょ?」

 

 半信半疑で疑問を投げかける私達に、萃香は大鬼の方に体を向けたままだったが、答えてくれた。

 

萃香「ついね……。メソメソしてる大鬼を見ていられなくて、『カッ』となっちゃった」

 

 いったいいつの間にそんな事が……。私は萃香の言葉に目を見開いて絶句していた。もう頭の中は真っ白だった。そこに大鬼が放った一言が

 

大鬼「それでその後に言われたんだ。『キライ』って」

 

 痛恨の一撃だった。

 

  『ハアアアあああぁぁぁーーー!?』

 

 間髪入れず絶叫。もうわけが分からない。

 

ヘカ「あらら残念」

純狐「失恋かー……。切ないけど甘酸っぱいわね」

棟梁「今夜は勇儀に好物を作って持って行かせるから」

お燐「これはチャンスニャ!!」

ゾン「ゾンビッ!」

 

 両手でガッツポーズを取って鼻息を荒くするお燐と、おそらく彼女に声援を送っていたであろう真似事妖精。不謹慎ではあるが、彼女の想いを考えれば分からんでもない。でも……さとり嬢、これ止めないでいいのか? それと母さん、なんかシレッとこっちに投げたよな?

 そんで、

 

パル「あーあ、じゃあダメかー……」

 

 酷く落ち込むヤツ。何を期待した? まあ十中八九アレだろうな。

 

大鬼「それでも!」

 

 その声はざわつく私達を瞬時に黙らせ、再び注目させた。

 

大鬼「萃香さんには感謝しています。(しか)ってくれた事も、今までずっと友達でいてくれた事も」

萃香「や、やめてよ〜、そんな改まって。照れ臭いじゃん」

大鬼「まだあります。本当の親を探してくれていた事だって、10年前に……」

萃香「あ、うん。分かったって、もういいから」

大鬼「世話になった事、全部、全部……本当に感謝しています!」

萃香「やめてって言ってるでしょ……」

 

 大鬼、行け。

 

大鬼「萃香さんコレ、今までの感謝の気持ちと、送別のプレゼントです。受け取って下さい」

 

 ゆっくりとした足取りで歩みを進め、萃香へとプレゼントを手渡す大鬼。受け取った萃香はバツが悪そうに視線を外して

 

萃香「あ、ありがとう……」

 

 と。だがそこからは微動だにせず。

 

大鬼「中身、見てくれますか?」

 

 動かなくなった萃香に(しび)れを切らせたのだろう。

 萃香の腕の中には、鮮やかな色使いで描かれた美しくも可愛らしい柄の袋が。紫色のリボンで上部を縛り、空気でふっくらと膨らませさせてシルエットをごまかしている。

 さとり嬢が持って来た時には既にあの状態だった。「ただ渡すだけでは芸がない」と粋な(はか)らいからだ。確かにあれだと2度驚く。あんな気の効いたことされたら私でもイチコロだろうな。

 そしてその中身は、

 

萃香「うェえええーーーッ!?」

 

 言わずもがな。

 

萃香「こ、こ、こ、ここここれいいの? 本当に大丈夫なの!?」

 

 大鬼と中身を何度も何度も視線を往復させ、慌てふためく萃香。そしてこちら側では

 

こい「中身なんだったの〜?」

お空「うつほも見たーい」

ピー「What is a present?」

和鬼「()らさないで見せてよ」

親方「大鬼のヤツいつの間に買い物に行ったんだ?」

棟梁「さあ?」

蒼鬼「謹慎中だろ?」

お燐「これは仕方が(ニャ)いニャ。耐えるニャ、アタイ」

ゾン「()()()!」

パル「只今の嫉妬指数は30パルスィ。パルパル」

 

 空気を読まない(やから)が多過ぎる。そんな輩に萃香は緊張した顔でゴソゴソと袋からそれを取り出した。

 

  『うぇえええーーーッ!?』

 

 ナイス反応。

 

ヘカ「それ渡しちゃう!?」

ヤマ「酒が無限に湧き出る瓢だよ!? 鬼達の宝でしょ?」

お燐「仕方(ニャ)いニャ、仕方(ニャ)いニャ。アタイがあれを貰っても……ニャ」

パル「只今の嫉妬指数は60パルスィ。パルパル」

 

 ヘカーティア様とヤマメの疑問はもっともだ。他の者もきっと同じ様に思っていることだろう。そんな一同にさとり嬢は「コホン」と咳払いを一つすると、丁寧に説明を始めた。

 

さと「先日の議会で『注いだ酒のランクを上げる(さかずき)』を勇儀さんが所持する件について話し合いました。その結果、公式の所持者はボケ……大鬼君である事を条件に、誰が所持していても問題なしとなり……」

勇儀「つまりコイツは今私の物ってわけよ」

 

 大鬼から貰った盃を見せつけて(ほこ)らしげにドヤッ!

 

さと「えっと、話を続けてもいいですか?」

勇儀「わ、悪い」

さと「(ひょう)についても同様に適用されます。つまり何も問題はありません」

 

 さとり嬢の言うように、盃と瓢の譲与(じょうよ)は問題なし。けどそれは公式の所持者が大鬼だからこそ。私達がこれらを持ち続けるには、

 

さと「一先ず()()()ですけどね。来年以降は大鬼君が挑戦者に勝ち続けないといけません」

 

 そういうことだ。

 

大鬼「誰に挑まれても絶対に負けない!」

蒼鬼「ほー、おっさんが挑んでもか?」

大鬼「負けません!」

親方「リベンジするぞ?」

大鬼「それでも負けない!!」

 

 私には見える。大鬼の瞳の奥に強い輝きを放つ赤い炎が。いつまにかこんなにも(たくま)しくなっていたんだな。

 

萃香「大鬼、でも私……」

 

 困った表情を浮かべて話し始める萃香。けど「そうはさせない」と大鬼が割り込んで話し始めた。

 

大鬼「自分は萃香さんに殴られた時、教えてもらいました。まだまだガキだって、言葉にしないと伝わらないって」

萃香「……うん」

大鬼「だからこれからは言葉にして、声にして伝えることにします」

萃香「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大鬼「萃香さん、あなたが好きです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『はあああぁぁぁーーーッ!?』

 

 いきなりぶっ込みやがった。

 

ヤマ「心の準備が出来てなかったよ」

和鬼「キライって言われて告るかよ普通」

蒼鬼「あのヤロー……萃香を狙っていたのか」

親方「あん? 今更何言ってんだ?」

棟梁「まさかご存知ありませんでした?」

ピー「Wow」

ヘカ「あはは……若いねー」

純狐「青春ねー、私キュンキュンしちゃう」

 

 大鬼の投じた爆弾のおかげでこっちは大混乱だ。でも、

 

キス「フッフッフッ……、不満……」

 

 気があったな。私もだ。

 

お燐「フシャーーーッ!!」

さと「お燐落ち付いて! でないと……」

パル「嫉ーーーーーッ妬!! 只今の嫉妬指数は、120パルスィー! パールパルパルパル」

 

 ヤツの目が輝き出した。よし、投げるか。

 

 

ガッ!(パルスィの服を掴む音)

 

 

パル「パッ!?」

こい「無意識にな〜れ♪」

パル「……」

さと「はい、こいしありがとう」

 

 こいし嬢、それ便利だな。あとをよろしく。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

一輪「それ本当なの?」

 

 落ち込む彼女から事情を聞き、怪訝(けげん)な表情を浮かべる入道使い。その彼女は一言だけ「うん」と寂しげに答えると、再び膝を抱えて顔を隠してしまった。そこへ、

 

雲山「話は聞こえておったぞい」

 

 強制退場となっていた入道雲が。再登場早々に、2度目の強制退場にされるかと思いきや、

 

雲山「男というのは不器用で単純で、バカな生き物じゃかろうのぉ」

 

 何気にいい事を言った。

 

雲山「辛いのは分からんでもない。じゃがそれと同じ様に、あの小僧の気持ちも分かる。同じ男じゃからのぉ」

 

 入道とはいえ、爺さんとはいえ、男。同じ屋根の下で共に暮らす唯一の男性からの言葉を、彼女は目に薄っすらと涙を浮かべて耳を傾けていた。

 

雲山「男が一度決めた道じゃ、応援してやってはくれんかのぉ?」

村紗「私……」

一輪「村紗行っといで。女神様を見送る日だから、きっと地霊殿にいると思うよ」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

萃香「……カ」

大鬼「え?」

萃香「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ、大鬼のバーカッ! 頭おかしいんじゃない!? 苦労して手に入れた瓢をプレゼントして、いきなりあんなこと言って、ホンッッット、バッッッカじゃないの!!?」

 

 その声に私達はまた口を閉ざして視線を向けていた。連続で放たれた罵声(ばせい)は間違いなく本心そのもの。誰もがそうだと気付ける程に萃香は、

 

萃香「こんなことされたら……」

 

 瓢を握りしめて大粒の涙をぽろぽろと零していた。

 

萃香「私、大鬼のことを忘れられなくなっちゃうじゃない、決心が鈍っちゃうじゃない。大好きの気持ち、抑えられなくなっちゃうじゃないの!」

大鬼「ごめんなさい……」

萃香「謝るくらいなら黙って見送ってよバカー!」

 

 今だからわかる。萃香が大鬼にキライと言った意味が。きっと萃香はメソメソしていた大鬼がキライと言ったのであって、本当の気持ちは変わらなかったのだろう。確かにそれだったら殴りたくもなるよな。「しっかりしろ」って「幻滅させるな」って。

 その場で膝をついて泣き崩れる萃香を、大鬼は申し訳なさそうに見つめることしか出来ずにいた。それはまさに私が一番危惧していた状況そのもの。だからこそ、そうなった時の対応も考えていた。「これはそろそろ私の出番か」と二人の下へ近付いた時だった。

 

??「カズ君!」

 

 




【次回:十年後:白い彼岸花】

正真正銘、次回がEp5の最後です。
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