東方迷子伝   作:GA王

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ちょうど一年前のこの日、主は彼の話をスタートしました。今思うと懐かしく感じます。やっっっと帰ってきました。

一先ずリハビリ程度に。短いですが、あのシーンまで。なんとなく「あーこんな感じだったなー」って懐かしんで頂ければと思います。


1輪目_再会です

海斗「大変なんだ、優希! オレの嫁候補達の『D』が一つ増えちまった!」

 

 走って来て僕の両肩を掴んだかと思えば……第一声目がコレ? というか、すごく久しぶりのEpなのにこんな始まり方でいいんですかね?

 

優希「あのさ、他に言う事ないの?」

 

 僕は「元の世界に帰れるまで会えない」って思っていたのに……。

 アリスさん、魔理沙さん、霊夢さん、美鈴さんにフランさんとお姉さんのレミリアさん。サニー、ルナチャ、スターの仲良し三妖精、酒丸の店長さんに常連さん達。この世界の色々な人と知り合えて、友達にもなれたけど、やっぱりどこかでブレーキをしていて、だから……。

 だから僕今すごく嬉しいの! 察して!

 

海斗「ん? ああ、久しぶり!」

 

 おしい! けど違う!

 

優希「そうじゃなくて……」

 

 もっとあるでしょ? 「大丈夫だったか?」とか「元気してた?」とか「幻想郷に来てたんだ」とかさ……。

 

海斗「()せた?」

優希「かもしれないけど……」

海斗「髪切った?」

優希「もういい……」

 

 どうしてだろ? 海斗君が言葉を発する度に答えから遠ざかっている気がします。海斗君に期待したのが間違いでした……。

 

優希「海斗君もこっちに来てたんだね」

海斗「おうよ、まさに夢の世界だぜ! 舞◯駅よりもな!」

 

 海斗君、ドヤ顔で危ない発言するのはやめようね……。ちなみに僕はその先の海浜◯張の方が……じゃなくて。

 

優希「今まで何処にいたの? 人里で僕を見かけたりしなかった?」

海斗「いんや、人里にはよく行ってたけど、全然気付かなかったぜ? 気付いてたら声かけてるぜ」

 

 ですよねー。じゃあ本当にタイミングが合わなかっただけなんだね。でも、なんか懐かしいな、このやり取り。海斗君も海斗君のままだし、すごく安心する。あ、そうだ。僕がバイトしてるって言ったら驚くかな?

 

優希「海斗君、僕今人里で働いてるんだよ?」

 

 どんな反応するかな?

 

海斗「え、うそ? 優希が? バイト?」

優希「ホントホント」ドヤッ

海斗「優希がバイトーーーッ!?」

 

 目を大きく開いて絶叫しました。驚き過ぎじゃない? そこまで?

 

海斗「そうかそうか、頑張ってるんだな。父ちゃん嬉しいぜ!」

優希「あ、うん。でも父ちゃんじゃないでしょ……」

 

 とか言ったけど、褒めてくれてめちゃくちゃ嬉しいです。海斗君ありがとう。

 

海斗「で? 何やってるんだぜ?」

優希「居酒屋だよ」

 

 ここでまたドヤッ。海斗君は一番ないと思ってるだろうけど、これが事実なんだなぁ。また驚いてくれるかな?

 

海斗「…………なあ、いつからやってるって?」

 

 と思いきや、おでこに拳を当てて難しい表情を浮かべ始めました。僕は「どうしたんだろ?」と思いながらも、

 

優希「んー……、半年くらい前かな?」

 

 質問に答える事に。

 

海斗「その店の名前は?」

優希「酒丸(さけまる)だよ。丸の中に『酒』って書いて……」

海斗「あーーーッ!!」

 

 全部言い切る前に、また叫び出す海斗君に僕、目をパチクリ。いったい何事?

 

海斗「あれ優希だったのか!?」

優希「うぇっ!? なになに?」

海斗「最初、教育受けてたろ?」

優希「え、あっ……、うん……」

海斗「その時俺店の前にいたんだぜ? 『いらっしゃいませ!』って声が聞こえたぜ? 確かに今思い出してまるとアレは優希の声だ。うん」

 

 うそーーーん! あれを聞かれてたの!? そんな……そんな……

 

優希「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……。穴があったら入りたい……。穴があったら入りたい……。穴があったら入りたい……そして閉じこもりたい……」ブツブツ

 

 バイトの教育の現場を友達に知られる事が、こんなにも恥ずかしい事なんて……。そりゃ呪文も唱えたくなりますよ……もうオワタ。

 

海斗「あの時俺もバイト探してたんだぜ? だからもう誰か雇った知った時スゲェ悔しくてさ」

優希「ご、ごめん……」

 

 つい反射的に謝ってしまった……。でも海斗君に迷惑かけたんだから、これが正解だよね? でも海斗君は、

 

海斗「あっははは、やっぱ優希は変わってないな。あの時は確かにそう思ったけど、今は逆に『優希で良かった』って思ってるぜ?」

 

 笑って僕を応援してくれました。本当にありがとう。

 

海斗「おかげで幻想郷観光を満喫できてるし!」

優希「ああ……そっちね……」

 

 ガッカリだよ! 感謝の心を返してよ!

 誇らしげに現状を話す海斗君、に少し「イラッ」ときた時だった。

 

??「なんだなんだ? 優希の知り合いか?」

 

 毎日聞いている声が背後から聞こえて来たのは。その瞬間、僕の脳裏にある日のワンシーンが鮮明に蘇った。そう、あれは僕と海斗君がいつだったか『電気とアニメの街』に行った時ーーー

 

優希「また見に行くの?」

海斗「もちろんだぜ!」

優希「海斗君東方プロジェクト、ホント好きだよね……。お気に入りとか好きなキャラクターとかいるの?」

海斗「嫁候補という意味ではみんな好きだぜ!」ドヤッ

優希「……あ、うん」

海斗「尊敬という意味では()()()かな」ドヤヤッ

優希「へー、ソーナンダー」

海斗「あんなイケメンになりたいぜ!」ドヤヤヤッ

 

なりたいぜ……なりたいぜ……たいぜ………ーーーー

 

 想像してみて下さい。もし絶対に会うことができない尊敬、もしくは憧れの人やキャラクターが、現実として目の前に現れたら? あなたならどうなりますか?

 僕は魔理沙さんに「今海斗君に近づくのは非常にマズイです……」と強い念を送っていたけど、それは叶わず。ついに……ついにその時が。

 

海斗「魔理沙師匠、ちわっす! 海斗です!」

 

 ビシッと地面に対して直立すると、そこから勢いよく頭を下げて綺麗に直角を描き、体育会系のノリで挨拶。はい、僕の親友はこうなりました。

 

魔理「師匠ー? 魔理沙ちゃんはお前を弟子にした覚えはないze☆」

海斗「頂きました! 生『ぜ』! 成程、『ze☆』なんですね。勉強になります!」

魔理「おい、優希。このおかしなヤツなんなんだ?」

 

 困った顔で、テンションが急上昇中の海斗君を指差しながら尋ねてくる魔理沙さん。おかしなヤツって……でもそれは正しい意見だと思います。

 

優希「すみません、僕の友達の海斗君です。魔理沙さんの大ファンなんです」

海斗「死ぬときは魔理沙師匠のマスタースパークって決めてます!」

魔理「そんな事言われても嬉しくないze★」

 

 もう神社に来てからずっと興奮状態。気持ちは分からなくもないけど……。もしかしてこっちの世界に来てからこんな感じなの? このテンションで色んな人に迷惑をかけていなければいいけど……。

 

 

ガッ!(優希の服を掴む音)

 

 

 えっ、ちょっ、なになになになにっ!? 

 肩……というか首根っこに違和感を覚えたと思ったら引っ張られて、

 

 

ズルズルズルズル……

 

 

 引き()られてます、はい……。じゃなくて苦しい苦しい苦しい、ギブギブギブギブッ!

 

 

ゴッ!

 

 

優希「ひでぶっ!!」

 

 放してくれたのはいいけど、ゴミを投げ捨てるみたいにポイッて……。おまけに近くの桜の木に頭ぶつけるし……。もう誰? こんな事するの? 僕だって怒りますよ!?

 「ガツンと言ってやる」と心に決めて見上げてみると、そこにはズボンに手を入れた白髪ロングのヤンキー女子と、腕を組んだ黒髪ロングのスケバンの姿が。さっきあっちで口喧嘩していた二人です。

 それと前言撤回させて下さい。無理です、ガツンとなんて言えません。だって二人とも凄い形相で明らかに怒っているんです。僕達初対面のはずです。恨みを買うような事はしてません。じゃあ何? カツアゲされるの? 魔理沙さん、海斗君助けて! って気付いてないし……。

 

白髪「おい、お前」

黒髪「アイツ……海斗の何? 友達?」

優希「ぁ、は……」ガタガタ

白髪「お前の友達なんなんだよ!」

黒髪「いきなり『嫁にならない?』とか言い始めて、追い掛け回してくるのよ!」

  『どーにかしろ(なさい)よ』

 

 いーーーーーー!!? もう手遅れだったーー! というか僕関係無いですよね!?

 

 「それは海斗君に直接言って下さいよ!」

 

 なんて言えない。この状況で、この剣幕でそんな事言ったらフルボッコにされ兼ねない。ひ、一先ずここは……。

 

優希「と、友達が、ゴ…カケ…マセン」ゴニョゴニョ

 

 謝っておきます。でも、

 

  『はぁ~!?』

 

 僕の癖の所為で、さらにお二人の怒りを煽る結果に。もう噴火寸前です。この瞬間、僕の中ではフルボッコにされた近未来の自分の姿がありありと想像できました。

 怖い……もう誰でもいいから助けてー……。

 

??「ん~っと~、『友達がご迷惑をかけてすみません』だって~」

 

 

 




お気付きかも知れませんが『幻想郷の花見』は、訳あっていくつかに分かれます。

【次回:2輪目_とばっちりです】

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