いつか聞いたことのある、
白髪「あゆみ、コイツの言ってることが分かったのか?」
黒髪「ゴニョゴニョ言ってて全然聞こえなかったわよ?」
あゆ「そーかな~? ちゃんと言ってたよ~」
あらやだ、この人天使? いやいや、僕の天使は一人だけです! でも、ちゃんとお礼は言わないと。
優希「あの、ありがとうございます」
今度は
あゆ「ん~?」
でも、首を傾けて「何か言いましたか?」と。
白髪「今のは分かるだろ?」
ああ、そうでした。この人には……。
優希「ぁの、ぁりがとぅ……ござぃます」ゴニョ
あゆ「どういたしまして~」
ほらね? どういう理屈か分からないけど、こうしないとこの方には伝わらないんです。でも、キラキラの笑顔で答えてくれたこの人……あゆみさんのおかげで、無事に二人の噴火を止める事ができました。めでたし、めでたし。
と、思ったのも
イラッ!×2
白髪「なんで今のが通じて、さっきのが通じないんだよ!」
黒髪「どう考えても逆でしょ!!」
あゆ「イタイイタイイタイイタイ~」
優希「ぎゃあああッ!」
結果、やっぱり噴火は止められませんでした。しかも初対面の人に頭グリグリされた……。
黒髪「バカ! あんたあゆみに何やってるのよ!」
白髪「しまったつい癖で。あゆみ大丈夫か!?」
あゆ「ふしゅ〜……」
目をバッテンにして口から魂が……。だ、大丈夫かな? それとスケバンさん、地味にキリキリ
海斗「お! モコた~ん、グ~ヤー!」
このタイミングでようやく
『げっ、気付かれた』
声を揃える二人に視線を向けてみれば、二人とも頬をヒクヒクとさせて、顔色は真っ青。言いたい事があるなら今がチャンスなのに、どうしたんですか?
海斗「やっぱオレの嫁にならなーい?」
だーかーら! 最高の笑顔のところ悪いけど、それの所為で「迷惑してる」って言われてるの! モコたんさんとグーヤさん、ビシッと言ってあげて下さい!
グヤ「どうするのよ!? こっちに来るわよ」ヒソヒソ
モコ「うぐ……ひ、一先ず」ヒソヒソ
グヤ「一先ず?」ヒソヒソ
モコ「逃げるぞ!」
グヤ「あ、待ちなさいよ!」
何やら二人でヒソヒソ相談していると思ったら、急に180度回転して走り出すモコたんさんと、それを追いかけるグーヤさん。突然の展開に僕、ポカーン。
言いたい事があったんじゃなかったの? 僕に言うだけ言っておしまいですか? それとあゆみさんをお忘れですよ?
優希「ぇ、ぁ、ぁの……ぁゅみ……を」ゴニョゴニョ
去り行く二人に「忘れモノをしていますよ」と伝えようとしたけど、そこにまた僕の癖が。しかもさっきの事もあって、心臓のバクバクが収まっていないまま。おかげでいつも以上に酷いです……。
そこに、
海斗「二人とも何で逃げるのー?」
眩しい笑顔で二人をさらに追いかける海斗君が。
凄く嬉しいのは分かる。だって耳にタコができるくらい話してくれたし、グッズだって部屋に山程あったし。僕が海斗君の立場だったら、きっと眠れないくらい興奮していると思う。でも、ごめん。そろそろ止めさせてね。
ガシッ!×2(海斗の服を掴む音)
優希「海斗君、一回落ち着こうか?」
??「いい加減にしないと斬りますよ?」
海斗君の服を
そこから上へ視線を移してみれば……あ、目がマジだ。本気でKILLつもりです。「さすがにそれは止めないと」と説得しようとしたけど、
海斗「おっ、二人とも息ぴったりだな。ちょっと
海斗君は余裕の表情。危機感ないの?
??「はいはい、もういいですから。少し大人しくしていてください」
優希「あのさー、海斗君。そんな調子で色々な人に迷惑かけてるでしょ?」
??「そうなんですよ、何処かに連れ出そうものなら毎度毎度」
優希「お気持ちをお察します」
『ん?』
お互い顔を見合わせて一時硬直。発する雰囲気から男の人だと思っていたけど、落ち着いて見てみれば、銀色のショートボブのカッコイイ系の女の子でした。パッと見は僕と変わらなさそうだけど、この世界だと年齢なんてあって無いような感じだもんなー……。
それはそうと、何で海斗君の事を知っているんだろ? 付き合いも長そうだし。
海斗「優希、その子はオレが世話になってる『みょん』だ」
そんな僕の疑問を見透かしたかのように、海斗君は彼女の事を教えてくれました。
なるほど、そういう事ですか。僕がお世話になっているみたいに、海斗君もみょんさんの所でお世話になっていたんですね。納得しました…………それ、大丈夫ですか?
妖夢「
海斗君なら手を放して、綺麗なお辞儀で丁寧に自己紹介してくれる妖夢さん。でも僕の中では早速疑問が。
さっき海斗君『みょん』って言ってなかった? 『みょん』要素がどこにも無いけど?
などと考えていると、
妖夢「って、その呼び方を人前では止めて下さいって言ってるじゃないですか!」
妖夢さんが突然怒り始めました。でもこれで納得です。「海斗君が勝手にそう呼んでいるだけ」だと。あ、僕も自己紹介をしないと。
優希「ぇ……、ぁ、ゅ、ゅぅきです」ドキドキ
妖夢「はい?」
ですよねー、ごめんなさい……。女性だと気付いた時から心の臓がバクバクなんです。
海斗「みょん、そいつは優希って言うんだ。ほら、前に
そこへありがたいフォロー。すると妖夢さんは手を口の前で広げて「あっ!」と声を上げると、大きく頷きながら僕の観察を始めました。
妖夢「あなたがそうでしたか。確かにそんな感じがしますね」
海斗君、妖夢さんに何て言ったの?
妖夢「え、あれ? というか事は……、あなたも外来人ですか!?」
優希「ぇっと、あ、はい……」
『えーッ!?』
妖夢さんの驚きの声に被せて、直ぐそばからも同じリアクションの声が。そこには忘れものに気付いたグーヤさんとモコたんさん。
あゆみさん肩を貸してもらっているけど、さっきのダメージの所為? それとも具合悪いの?
グヤ「あんた達
海斗「そうだぜ、知らなかった?」
目を丸くするグーヤさんに誇らしげに歯を見せながら笑って答える海斗君。それは驚きますよね。魔理沙さんとアリスさんの話だと、外来人(この世界にとっては異世界の人間)が来る事なんてレアな事らしいですから。それが二人揃って、しかも友達同士で来ているんです。
けど、お二人の驚き方は少し度を超えていました。それにグーヤさん今、言葉の
優希「僕達……
って言いました。それってつまり……。
モコ「ああ、こいつあゆみっていうんだけど、こいつも外来人だ」
『はいーッ!?』
あゆ「外来人で~す」
海斗「!?」
優希「し、知らなかった……。あの、前にケーキ屋で買ったんですけど……」
あゆ「ん〜?」
やっとドキドキが収まって、普通に話せるようになったと思ったのに、またしても苦笑いで首を傾げながら「何て言ってるの?」と。あー、もう……。
グヤ「前にお店で買ったそうよ?」
あゆ「ん~? そーでしたっけ~?」
なんで? なんでグーヤさんのアレで通じて僕のはダメなの? それと覚えてない事ないですよね? 一瞬「あっ」みたいな顔しましたよね? そういうリアクションされると、
魔理「あッはははは、優希お前覚えられてないってさ」
魔理沙さんが嗅ぎつけて来ますから。それと笑い過ぎですよ?
ソロ〜……
後方に動体の気配。あれ? 海斗君コソコソと何処に行くの?
優希「海斗くん? 何処に……」
海斗「わ、バカ!」
あゆ「きゃーッ! あの時のイケメンさんだ~!」
いきなり大声を出して、キラキラと眩い瞳で海斗君に飛びつくあゆみさん。面識あったんだ。
海斗君は確かにイケメンで、学校でも学年問わず、それこそ学区を超えてモテモテだったけど、ここまでグイグイ積極的にアプローチする人っていなかったかも……。ある意味新鮮。海斗君どんな反応するんだろ?
海斗「ハーナーレーテークーレー」カチコチ
金縛りにでもあったかの様に硬直、おまけに動きはカクカク。壊れたブリキのおもちゃみたいになりました。さっきは追いかけ回していたのに、寄られるとダメなんだね……覚えたぞ。
海斗「オレは東方キャラ以外には興味ないんだー……」
あゆ「でも私は気にしませ~ん♡」
海斗君には悪いけど、これならもうみんなにも迷惑かけないでいいかも。あゆみさん、海斗君をお願いします。
その間に現状を整理しよう。今ここには、僕と海斗君、それとあゆみさんの3人の外来人が確定している。あとはあそこにいたウサギ耳の女子高生もそうだったら、4人の外来人がいるってこと? こんな事って……あるんですね。
妖夢「あのー、あの方とお知り合いなんですか?」
グヤ「今私の所で一緒に暮らしているわ」
モコ「里でケーキ屋もやってるぞ」
魔理「それなら魔理沙ちゃんも食べたze☆ あれ美味かったze☆ な?」
頭の後ろで手を組んだ姿勢で、上体を捻って後方へ同意を求める魔理沙さん。その相手は他でもありません。この世界に来てから僕が一番お世話になっている方、もう絶対涙を流させないって決めた方。そして、「この人を守る」って初めて思わせてくれた方。
アリ「え、うん。美味しかった」
心優しい魔法使い、アリス・マーガトロイドさん。
グヤ「それなら後で直接言って上げて。それとあなた達ちょっといい?」
グーヤさんはそうアリスさんと魔理沙さんに言うと、紅魔館の方々の方へ歩きだしました。僕は呼ばれてないから行くわけにはいきませんけど……
モコ「……」
妖夢「……」
優希「……」
き、気不味い……。妖夢さんとモコたんさんは普段あまり会話しないんですか? 何で会話してくれないんですか? これ僕が何かきっかけに話をした方がいい感じですか?
優希「ぁ、ぁの……」
妖夢「?」
モコ「あぁ?」
ひぃいいい! 怖い怖い怖い怖い。でも逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ!
優希「も、モコたん……さん」
妖夢「ぶっ!」
突然吹き出す妖夢さんに僕、唖然。え? どうしたの?
モコ「おーまーえーなー……」
両手の拳をワナワナと震わせて背後に……炎!? そういうオーラとか、目の錯覚とか、幻とかじゃないです。本物の炎が上がってます! だって……
優希「あつつつッ」
ですから!
モコ「私を怒らせたいのか? 喧嘩売ってるのか?」
優希「いいいいいいえ、けけけけ決してそそそそんな事は……」
モコ「私の名前は
優希「ひぃいいい! わ、分かりました。も、もう言いません!」
炎を
優希「あの、妹紅さん」
妹紅「今度は何だ!?」
ひぃいいい! 怒っているところ話しかけてすみません。でも大切な事なんです。
優希「ごごごめんなさい。あああの、さささっき」
イラッ!
妹紅「
優希「ぎゃーッ!」
【次回:3輪目_暴走です】