妹紅さんから手厚い喝を入れられ、落ち着いてそれなりに「さっきの黒髪の人の名前を教えて下さい」って質問出来た僕。そしたら妹紅さん、
妹紅「あ? なんでお前にそんな事教えなきゃいけないんだ?」
って僕の事をジロジロと怪しむ目で見てきました。なんか誤解されてませんか?
妹紅「お前……」
優希「は、はい!」
妹紅「アイツに一目惚れしたのか?」
妖夢「えーッ! そうなんですか!?」
はいーーーッ!? どうしてそうなるんですか!? どういう思考回路してるんですか!? ついさっき脅されたばかりですよ!? フラグ立つわけないですよね!?
優希「ちちちち違いますよ!」
妹紅「じゃあなんなんだよ」
組んでる腕からヒョッコリ出ている人差し指が一定のリズムを刻み始めた。これは心理学上人がイライラし始めた時のサイン。というかそもそも表情がマズイ、早く答えないとまた万力地獄が来る。でも吃らない様に落ち着いて。
優希「その……えっと……」
妹紅「シャキッとしろ!」
優希「はい先生!」
しまった! つい勢いで先生って言っちゃった。
「お前の先生になった覚えはねぇよッ!」
って怒られる…………。
でもしばらく経ってもノーアクション。「どうしたんだろ?」と固く瞑った目を恐る恐る開けてみると、
妹紅「お、おう。分かればいいんだ、分かれば」
少し赤い顔をして視線を横に外していました。それに心なしかなんか嬉しそうな……。意外にありでした?
妹紅「ほらさっさと話せよ」
優希「はい、海斗君が黒髪の方を『グーヤ』って呼んでいたんですけど、妹紅さんの事もあるので本当の名前を確認したいんです。決して疚しい心はありません」
妹紅「あー、そういう事。いいよグーヤで。それが本当の名前だよ」
優希「イヤイヤイヤイヤ、絶対ウソですよね?」
明らかに投げやり。まるで「もう興味ない」みたいな。そう言えばここ来た時に喧嘩してたし、もしかしたらそんなに仲良くないのかも。聞く相手間違えたかな?
優希「あの、妖夢さん」
妖夢「あ、はい。話は聞いてました。あの方は
妖夢さんは直ぐに答えてくれました。最初からこうすればよかった。
優希「あともう一ついいですか?」
妹紅「なんだよ?」
優希「さっきあそこにいた兎の耳の……」
妖夢「どっちですか?」
優希「ブレザー着ている方です」
妹紅「なんだ? 今度こそ一目惚れか?」
だから何でそうなるんですか? 確かに髪の毛が長くてスタイルも良くて、可愛い感じだとは思いますよ? でも海斗君じゃないんですから、
優希「いいえ、違います」
キッパリ否定します。
妖夢「
優希「あの方も外来人ですか? 外の世界で僕達が通ってた……寺子屋みたいな所にああいう感じの人が沢山いるんです」
妹紅「学校だろ? そんでお前が言ってるのは女子高生ってやつだろ? 残念だけど違うよ」
あの人違うんだ……。それよりも『女子高生』が通じる方が驚きです。
妹紅「お前ホント何も知らないのな」
妖夢「ふふ、じゃあ少し今いる方の事を教えてあげますよ」
それから妖夢さんと妹紅さんは色々教えてくれました。あゆみさんがお世話になっている『永遠亭』の事、海斗君がお世話になっている『白玉楼』の事。そしてそこで暮らしている人達の事を。人里と魔法の森と紅魔館くらいしか知らなかった僕にとって、それは凄く新鮮でこの世界の神秘的な奥深さをさらに思い知らされました。
そして、大凡教えてもらって僕が「へぇー」と感心していた時、
スタッ!
空から羽が生えた二人ともう一人がやって来ました。
??「あやや、もう大分集まってますね」
??「今日は思う存分羽を伸ばそー」
??「先輩方、少しは荷物を持ってください…」
なんかまた新しい人達が来た……。今で何人いるの? 30人くらいいませんか? これもっと増えるの? だとしたら僕耐えきれませんよ?
海斗「おおっ! あやや、はたて、もみじだ!」
優希「え? 海斗君知り合いなの?」
海斗「いやいや、オレを誰だと思ってるんだよ? あーもう、あゆみん離れてくれよー」
ああ、そうでした。愚問でした。海斗君の場合は名前を知ってる ≠ 知り合い なんでした。それとあゆみさん、いつまでくっついてるの?
海斗君の腕をガッチリ掴んでラブラブ光線を放つあゆみさんに僕、ただただ苦笑。でも、ふいに視線を今来た三人に向けた瞬間、
あゆ「……ちゃん」
雰囲気が一変しました。
『へ?』
あゆ「わんちゃん。か、か、か……」
『か?』
あゆ「かわい〜〜〜〜!」
海斗「おうふっ」
抱きついていた海斗君を弾き飛ばして、叫びながら白髪の犬耳の女の子を目指して走り出すあゆみさん。いったい何事?
椛 「わわわ、離れてください! くっつかれるのは好きじゃありません!」
はた「うぐっ、何この子?」
文 「あや? あなたはスイーツ屋の……」
あゆ「いい子いい子~」ナデナデ
椛 「うー…」
あゆみさんに頭を撫でられ、牙をむき出しにして低い唸り声を上げる白犬の女の子。どう見ても怒ってる。大丈夫かな?
海斗「離れてくれたのは良いけど、あゆみん怒られるぜ?」
妖夢「止めさせた方がいいんじゃないですか?」
海斗君も妖夢さんも同じように心配しています。でも妹紅さんは……、
妹紅「いや、オチはもう見えてる」
腕を組んでジトっとした目で、ため息交じりにそう答えるだけで動く気配なし。そうしている間にも、
あゆ「わしゃしゃしゃしゃ~、よしよしよしよし〜、耳の裏はどうかな~?」
あゆみさんの行動はさらにエスカレート。もうム◯ゴロウさん的なスキンシップになってます。愛でられている方は、両手に拳を作って俯きながら全身でワナワナ。爆発寸前です。
あゆみさーん、もう手遅れかもしれませんよー……。
椛 「くぅ~~〜ん」パタパタ
喜んでらっしゃるー!! 尻尾まで振って喜んでらっしゃるー! あーあー、お座りまでしちゃって……。
妹紅「ほらな」
妖夢「あはは……、前にも同じ事が?」
妹紅「まあな、そん時は
海斗「マジ!? あゆみん影狼にも会ってんの? いいなー、羨ましいぜ」
優希「かげろう?」
知らない人の名前に「どんな人?」と軽い気持ちで三人に尋ねました。でも、僕は言ったそばから後悔しました。だって……。
海斗「
はい、出ました。海斗君の東方ウンチクが。これ長くなる……。
妹紅「待て待て待て待て、どこまで知ってるんだよ! おいお前、他人の能力まで話したのか!?」
妖夢「わわわ私は何も話してませんよ! 最初からこうなんです。どういうわけか幻想郷の事に詳しくて」
妹紅「外来人なのにか? 何で外来人がこっちの事を……能力まで知ってるんだよ!?」
声を荒げて妖夢さんに迫る妹紅さん。妖夢さんが全部話したと疑って信じない。確かにそうですよね。ここは結界で外の世界から隔離された場所、それなのに外から来た海斗君が詳しいなんてどう考えてもおかしいですよね。僕もその事は前々から気にはなっていました。魔理沙さんとアリスさんも「幻想郷の事を外の世界の人達に知られるわけにはいかない」って言っていましたし、元の世界に戻る時は記憶を消されるって言っていましたし。それくらい徹底しているのに、何で僕等の世界でゲームになっているんですかね?
海斗「モコたん、モコたん。それは……」
妹紅「それは?」
海斗「俺だからだぜ!」ドヤッ
海斗君、キメ顔でなに意味不明な説明してるの? ほら、妹紅さんも妖夢さんも「何言ってんだ?」って顔してるから。
海斗「お、噂をすればだぜ」
心臓破りの階段に目を向けて見ると、腰まで伸びた黒髪、頭からとんがった耳が生えた女性がいた。きっとあの人が今泉影狼さんだ。でも隣の口元を襟で隠した赤髪の人は誰だろう?
海斗「with ばんきっき!」
さすが海斗君です。誰が来ても名前を即答です。でも、絶対それ本当の名前じゃないでしょ?
海斗「やっぱ実際に見ると全然違うな。二人とも予想以上にか、か、か……可愛いーーーッ!」
ガシッ!!!×3(海斗の服を掴む音)
優希「させないから!」
妖夢「させません!」
妹紅「させてたまるか!」
海斗「そんなー、不公平だぜ……」
大好物を目の前にして「待て」を言い渡された犬の様に、潤んだ目で訴えてくる海斗君。そんな目したってダメなものはダーメ! これ以上みんなに迷惑をかけるわけにはいきません。
あゆ「ここがいいのかな〜?」
そして尚も愛で続けるあゆみさん、よっぽど犬がお好きなんですね。
椛 「くぅ〜〜〜ん♡」
相手も喜んでるし、問題はなさ……
??「あ、あ、あ……」
そうでもなかった。影狼さんの様子が変わりました。表情は歪んでいき、今にも泣き出しそうです。その視線の先は、現在進行系で自分の世界にどっぷり浸かっているあゆみさん。
影狼「あゆみちゃんの浮気者ー!」
そしてとうとう泣き出しました…………って
『えええええッ!?』
二人ってそんな仲だったの!? 口を両手で覆い隠し、赤い顔で目を丸くする妖夢さん、海斗君はなぜかガッツポーズ。そして妹紅さんは、またジト目。たぶんオチが見えてるみたいです。
あゆ「あ、影狼ちゃん」
影狼「私にもしてー!」
あゆ「いいよ〜、おいで〜」
椛 「ウー……」
あゆ「喧嘩しない喧嘩しない、仲良くね〜。よ〜しよしよしよしよし」
『くぅ〜〜〜ん♡』
手懐けてらっしゃるーっ。二人同時に手懐けてらっしゃいまするー! あーあー、お腹まで見せちゃって。
妹紅「さて、エネルギーチャージも出来ただろうし、そろそろ止めに行くか」
このタイミングでようやく動き出す妹紅さん。ちょっと遅いようにも思えますけど。
妹紅「じゃあまた後でな、えっと……」
優希「優希です」
妹紅「あっそ、優希な。女みたいな名前だな」
それでシレッと僕をディスって行きました。よく言われる事なので、全然ノープロブレムですけど……あれ、涙が。
??「……どうも」
と、そこに妹紅さんと入れ違いでやった来たのは、影狼さんと一緒に来た本名不明のばんきっきさん。何か用かな?
妖夢「こんにちは」
優希「こ、コンニチハ……」
やっぱり初対面は苦手です。もう血流がヤバイです。
ばん「……あなた、初めて?」
優希「ゅ、ゅゅぅきれふ」ドキドキ
吃りました。その上噛みまみた。絶対通じるはずがないです。妖夢さんも苦笑いです。
ばん「……優希、よろしく。私は
妖夢「それなら霊夢があっちにいるから行ってあげて」
蛮奇「……すまない」
滞在時間数十秒。 でも本名が聞けて助かりました。それに僕のカミカミのドモドモが通じてくれました。いい人かも。
蛮奇さんは軽く会釈をした後、そのまま台所へ。あ、忘れてた! 僕も早く下拵えをしに行かないと。
優希「海斗君、僕今から料理の……」
気付くべきでした。蛮奇さんがこっちに来たのに、何事もなく平和に済んだ事に。それよりも今まで海斗君が気付かなかった事が奇跡。今この場で海斗君に会わせていけないのは、魔理沙さんじゃない!
海斗「マジかよ……」ゴクリ
生唾を飲んで熱い視線を向ける先。もう直ぐに分かった。しかも運の悪い事に今僕も妖夢さんも手を放してる。マズイ、非常にマズイ! 行かせるわけには行かない!!
優希「海……」
「一押しの嫁」とまで言い切ったその相手の下には!
海斗「フラーーーーーーーン!」
ちょ、早っ!
【次回:【やってきたぜ!幻想郷】嫁候補七人目】
ちょいとはさみます。