東方迷子伝   作:GA王

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まだまだ力不足の主。
その中でも人物の紹介などは
特に苦手だと気付きました。
なので……初登場時はコレでいこうかと。


6輪目_不思議ちゃんです   ※挿絵有

 シート、よーし。飲み物、よーし。食べ物、抜かりなーし。あとは開始の合図を待つだけ!

 のはずだったんですけど……。

 

  『あっはははは』

 

 いたる所で笑い声が上がり、料理やお酒を楽しむ人達は大多数。はい……、なんかもう始まっていました。まだ温泉に入っている人達もいるのにです。それと、いつ乾杯されました? なんで呼んでくれなかったんですか? 「わりい、忘れてたze☆」そんな声が魔理沙さんから聞こえてきそうです。

 怒涛(どとう)のように押し寄せる疎外(そがい)感に僕、人知れず物陰でorz&ハートブレイク。

 

??「あんた達なに勝手に始めてるのよ!」

 

 そこへ霊夢さんが分かりやすい怒り口調で、御払い棒を向けながら登場されました。呼ばれていなかったの、僕だけじゃなかったみたいです。でもよりによって霊夢さんを……。

 

サニ「だっておかずがすごい減ってるんだもん」

スタ「お腹すいたしー」

ルナ「もういいのかと……」

  『そーだそーだ!』

 

 サニー達と一致団結して声と拳を上げ、デモを起こす寺子屋の生徒達。

 つまり……我慢出来なかったんだね。それで他のみなさんも誘発されていって、知らないうちに始まっていたんでしょうね。おかずが減っていた件は本当かどうか怪しいですけど……。

 

霊夢「もー、いつもこんな調子じゃないの」

 

 あ、これがデフォルトなんですね……なら怒る必要ありました?

 

霊夢「まったく、お酒は乾杯からでしょうが」ブツブツ

 

 「乾杯開始は飲み会のマナー」という事でしょうか? 霊夢さんは不機嫌な顔をされたまま、持論を呟きながら宴会の席へと歩き出しました。霊夢さん、暴れないで下さいね。

 それにしても……

 

??「これおっいしー!」

 

 さっきから気になっているんですけど、

 

??「天ぷら最高!」

 

 このお面を頭に乗せた方は誰ですか? 先程から嬉しい事を言ってはくれているのですが、

 

??「じゃあ次はレンコン。わぁ〜、これも美味いッぞー♡」

 

【挿絵表示】

 

 

 無表情なんです。テンションと表情が一致していないんです。不思議ちゃんなんです。でも不思議ちゃんは彼女だけじゃないんです!

 

??「う〜ん、桜の下で食べるコレはやっぱり格別だね」

 

 とか言いながら、きゅうりを頬張(ほおば)る青髪ショートのこの人。目の前には山積みになったきゅうりが置かれ、パリパリといい音を立てて食べておられまする。そのきゅうりどうしたの? 出した覚えも、収穫した覚えもないんですけど……。まさか持参されました? 100歩(ゆず)ってそれは良しとしますよ? けど、横にある『胡瓜(きゅうり)酒』って何ですか? 名前だけで美味しくなさそうなんですけど……。どこまできゅうりに徹底されているでんすか? 河童なんですか?

 

  『あっはははは』

 

 お酒を飲んでいる人達にエンジンがかかり始め、さらに盛り上がっていく博麗神社。

 ふと周囲に目を向けて見れば、さっきよりも人が増えていて、みんな初めて見る人ばかり。話した事がある人を探す方が難しいくらいです。魔理沙さんは40人くらいって言っていましたけど、それよりも多いと思います。

 この完全なるアウェー感に僕、

 

優希「帰りたい……」

 

 心の声がポロリと零れていました。「帰って留守番中の上海と蓬莱とのんびりとトランプをしていたい」本気でそう思っていました。

 そんな時でした。突然背中を押され、振り向いてみると、

 

??「はーるですよー」

 

 そこには笑顔の春告げ精、リリーホワイトの姿が。僕がリリーに気付くと、彼女は背中をさらに力強く押し始めました。まるで、

 

優希「なになに? どこに連れて行くの?」

 

 「向こうへ行け」みたいに。

 

 リリーに押されるがまま足を動かす僕。前が見えないの、ぐいぐい押すリリーの所為(せい)で途中、『白いスーツを着た人』や『楽器を持った人達』と何度接触事故を起こしそうになったことか……。その(たび)に「ごごごごめんひゃい」って謝ったことか……。

 そんなこんながありながらも、ようやく辿(たど)り着いた先には、

 

??「優希、こっちこっちだze☆」

 

 魔理沙さん。やっと出会えた見知った顔にホッと一安心。でも、それも束の間でした。

 

??「へ〜え、彼がそうなのかい」

 

 ただ者ではない雰囲気を醸し出すマダムに、

 

??「聞いたよぉ、海斗の友達なんだってね?」

 

 チルノ達を「チビ共」呼ばわりしていたマドモアゼル。

 

??「こんにちはー。早苗でーす」

 

 それに霊夢さんと同じ格好した緑色の髪の人。はっきり言います、この人近くで見たらすごい可愛い系で綺麗系だと思います。僕が知っている芸能人やアイドルよりもレベルが高いと思います。しかもその人と魔理沙さんの間に座らせられました。だから……

 

優希「か、コン……ちワ」ガタガタ

 

 

 僕こういう人が大の苦手なんです! キライではないんですけど苦手なんです!! 全身から汗が吹き出して一人で震度5強です。動悸(どうき)・息切れ・気つけが(ひど)いんです。救◯を希望します!

 

魔理「こいつはいつも以上にヒドイze★」

マド「あっははは……確かに人見知りみたいだねぇ」

優希「ず、ずみ……せん」

マダ「魔理沙と早苗、アレやってやんなよ」

魔理「言われなくてもだze☆ 早苗、頼むze☆」

早苗「ふっふっふー、私を誰だと思っているのですか」

 

 何かをして頂けるみたいですけど、今は放って……

 

魔理「質問だ…右の拳で殴るか? 左の拳で殴るか? あててみな」

早苗「ひ、ひと思いに…右でやってくれ」

 

 ムムムッ?

 

魔理「No!No!No!No!No!」

早苗「ひ…左?」

魔理「No!No!No!No!No!」

早苗「り…りょうほーですかあああ〜」

 

 ムムムムムムッ! 

 

魔理「YES!YES!YES!YES!YES!」

早苗「もしかしてオラオラですかーッ!?」

優希「YES!YES!YES!"OH MY GOD"」

 

 そしてシメには三人揃って拳のラッシュ。やってしまった。とうとうウズウズに負けてやってしまった。でもこれで分かった事があります。

 

優希「あなたもあの漫画のファンですか!?」

早苗「ドゥー・ユー・アンダスタンンンンドゥ!」

魔理「魔理沙ちゃんは早苗から借りて覚えたんだze☆」

優希「じゃ、じゃあ魔理沙さんが言われていた、外の世界から来られた方って……」

早苗「YES I AM!」

魔理「だze☆」

 

 驚きました。「どんな人だろう」とは思っていましたけど、まさか僕が一番苦手とする部類の人がこっち(オタク)派とは……あるんですね、こういう事。そのおかげで……。

 

マド「いい感じに緊張がほぐれたかな?」

 

 はい、もうすっかりです。

 

マダ「たったあれだけの事で仲良くなれるなんてねぇ」

早苗「当然ですよ神奈子様、J◯J◯好きにいるのは『黄金の精神』を持つ者だけです」ドヤッ

 

 何今の? カッコイイ事言っている様で、ものすごくカッコイイんですけど! それ、今度使わせてください。

 それから僕達は漫画とアニメの話ばかりしていました。早苗さんの部屋には漫画がズラリとあるそうで、海斗君に感心されたそうです。いつ間にか行っていたみたいです。

 それでその海斗君ですが……、さっきからいないんです! こんなに人が集まれば、何処かでまた一騒ぎを起こしていてもおかしくないのに、周りをみてもそんな様子の所が無いんです。平和なんです!

 

優希「海斗君……何処いったんだろ?」

 

 そう呟いて、ジュースを一口飲んだ時でした。

 

??「さっぱりした〜」

 

 温泉に入っていたあゆみさんがやって来ました。一人だけです。「他の人はどうしたの?」なんて考えていると、

 

??「あゆみちゃん、具合どう?」

??「少しあそこで水分取ってゆっくりするウサ」

 

 二人の兎耳さんが駆け寄って行きました。なんかすごく白いと思ったけど、やっぱり具合悪かったの? 

 

??「ここ、いいですか?」

  

 そう言って僕の隣、早苗さんとの間のスペースに、あゆみさんを座らせようとするブレザーを着た兎さん。たしか鈴仙さんでしたっけ? それは全然問題ないので、

 

優希「ど、どぅぞ……」

 

 お(ゆず)りします。「魔理沙さんそっち詰めて下さいね」とズルズルとお尻を引きずりながら右へ移動を開始です。半人分、一人分、二人分と……どこまで行くのこれ?

 移動距離に違和感を覚え始めた頃、僕の手が何かに触れました。その瞬間、

 

 

ヒンヤリ

 

 

 とした心地の良い冷たさが伝わって来ました。その感覚に視線を向けて見れば、綺麗な指先が僕の掌から伸びていて……

 

優希「ごごごごめんなさい!」

??「いいえ、気にしないで。あなたは……」

優希「ゅゅゅぅきれふ」

??「えっと……」

 

 苦笑いされてらっしゃる。今日だけで何度目だろう? 不思議そうな、「聞いて失敗した」みたいな目で見られるの……。頑張るって決めたのに、早くもこころが折れそうです……。そして魔理沙さん、なんか知らぬ間に遠い所へ……。呼んでおいて何処かに行かないで下さいよ……。

 

あゆ「あ、レティさ〜ん」

 

 そこへあゆみさんの(ゆる)い声が。顔をそちらに向けると、小さな兎さん、鈴仙さんの順に視界に映り、その先で手を振ってアピールするあゆみさんの姿が。お知り合い?

 

あゆ「レティさん、その人は優希さんだよ〜。前にケーキをホールで買ってくれたの〜」

 

 あゆみさん……ご紹介ありがとうございます。それとあゆみさん……やっぱり覚えているじゃないですか! なんであの時意地悪したの!? 

 

あゆ「お店終わりだったのに〜」

優希「ごめんなさああああい!」

あゆ「ん〜?」

優希「ご、めん……な、さぃ!」

あゆ「分かればいいんです〜」

 

 エッヘンと胸を張るあゆみさん。なんであの時知らない素振りをしたのか、その疑問の答えがわかった気がします。だって……

 

あゆ「ふふ〜ん」

 

 あんなにも「してやったり」的な顔をされているんですから。仕返しだったんですね……。でも、そんな事をしなくてもよくないですか!?

 

小兎「それ、いつの話ウサ?」

あゆ「新装開店初日〜」

小兎「あの後あゆみ、お店で寝ていたウサ。あゆみが疲れている時に……空気読むウサ」

優希「ごめんなさあああい!」

 

 これは小さな兎さんに向けて。で、

 

優希「ご、めん……な、さぃ!」

 

 こっちはあゆみさん用。空気読めなくてすみません。お店が終わっている事に気が付かなくてごめんなさい。でも言わせて下さい。あゆみさんそろそろ僕の声に慣れて下さい!

 

あゆ「もーいーですよ〜。それでレティさ〜ん」

 

 目の前を通過するあゆみさんとレティさんの楽しげな会話に、

 

優希「あああの、場所ッ、変わり……す?」

 

 耐えきれなくなり、レティさんへ一生懸命の提案をしました。伝わってくれているといいんですが……

 

レテ「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせてもらいますね」

 

 そんな僕の心境を察したかのように、レティさんは僕に安心感を与えてくれる笑顔で答えてくれました。

 いい人だなぁー『手が冷たい人は心が温かい』って本当なんですね。

 

優希「じゃ、じゃあどぅぞどぅぞ」

 

 レティさんと場所を交換しようと立ち上がり、ふいにあゆみさんへ向けた時、

 

優希「あわわわわ」

 

 視線が空中でバッチリ一直線上に。しかも、

 

 

じー……

 

 

 かなりガッツリ見られています。おかげで顔の温度は急上昇、たぶん耳まで真っ赤だと思います。恥ずかしいです……。

 

鈴仙「あゆみちゃん?」

小兎「どうしたウサ?」

あゆ「ん~? 何でもないよ〜」

 

 鈴仙さん達にはそう言っていますけど、依然としてこっちを見てくるあゆみさん。

 なになに!? 僕になんか変なところある? 何か付いているの? もしかして……社会の窓が!?

 

小兎「視点が合ってないウサ」

鈴仙「頭がぼんやりするの?」

あゆ「ん〜ん~、大丈夫だよ〜」

 

 セーフ、大丈夫でした。じゃあ何で? まさか……ボタンの掛け違い!?

 

??「あゆみちゃんの調子はどう?」

鈴仙「あ、お師匠様。あゆみちゃんさっきまで元気だったんですが……」

小兎「急にぼんやりし始めたウサ」

 

 これもセーフでした。じゃあ何で? まさか……服の何処かに穴が!?

 あゆみさんからの不思議で熱い視線に、ありとあらゆる可能性を考察して慌てる僕。でもその答えが見つからず、もうパニック寸前。そんな時でした。

 

あゆ「私に何かごよ〜?」

 

 

 

 




【次回:7輪目_集合編(裏)です】

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