その中でも人物の紹介などは
特に苦手だと気付きました。
なので……初登場時はコレでいこうかと。
シート、よーし。飲み物、よーし。食べ物、抜かりなーし。あとは開始の合図を待つだけ!
のはずだったんですけど……。
『あっはははは』
いたる所で笑い声が上がり、料理やお酒を楽しむ人達は大多数。はい……、なんかもう始まっていました。まだ温泉に入っている人達もいるのにです。それと、いつ乾杯されました? なんで呼んでくれなかったんですか? 「わりい、忘れてたze☆」そんな声が魔理沙さんから聞こえてきそうです。
??「あんた達なに勝手に始めてるのよ!」
そこへ霊夢さんが分かりやすい怒り口調で、御払い棒を向けながら登場されました。呼ばれていなかったの、僕だけじゃなかったみたいです。でもよりによって霊夢さんを……。
サニ「だっておかずがすごい減ってるんだもん」
スタ「お腹すいたしー」
ルナ「もういいのかと……」
『そーだそーだ!』
サニー達と一致団結して声と拳を上げ、デモを起こす寺子屋の生徒達。
つまり……我慢出来なかったんだね。それで他のみなさんも誘発されていって、知らないうちに始まっていたんでしょうね。おかずが減っていた件は本当かどうか怪しいですけど……。
霊夢「もー、いつもこんな調子じゃないの」
あ、これがデフォルトなんですね……なら怒る必要ありました?
霊夢「まったく、お酒は乾杯からでしょうが」ブツブツ
「乾杯開始は飲み会のマナー」という事でしょうか? 霊夢さんは不機嫌な顔をされたまま、持論を呟きながら宴会の席へと歩き出しました。霊夢さん、暴れないで下さいね。
それにしても……
??「これおっいしー!」
さっきから気になっているんですけど、
??「天ぷら最高!」
このお面を頭に乗せた方は誰ですか? 先程から嬉しい事を言ってはくれているのですが、
??「じゃあ次はレンコン。わぁ〜、これも美味いッぞー♡」
無表情なんです。テンションと表情が一致していないんです。不思議ちゃんなんです。でも不思議ちゃんは彼女だけじゃないんです!
??「う〜ん、桜の下で食べるコレはやっぱり格別だね」
とか言いながら、きゅうりを
『あっはははは』
お酒を飲んでいる人達にエンジンがかかり始め、さらに盛り上がっていく博麗神社。
ふと周囲に目を向けて見れば、さっきよりも人が増えていて、みんな初めて見る人ばかり。話した事がある人を探す方が難しいくらいです。魔理沙さんは40人くらいって言っていましたけど、それよりも多いと思います。
この完全なるアウェー感に僕、
優希「帰りたい……」
心の声がポロリと零れていました。「帰って留守番中の上海と蓬莱とのんびりとトランプをしていたい」本気でそう思っていました。
そんな時でした。突然背中を押され、振り向いてみると、
??「はーるですよー」
そこには笑顔の春告げ精、リリーホワイトの姿が。僕がリリーに気付くと、彼女は背中をさらに力強く押し始めました。まるで、
優希「なになに? どこに連れて行くの?」
「向こうへ行け」みたいに。
リリーに押されるがまま足を動かす僕。前が見えないの、ぐいぐい押すリリーの
そんなこんながありながらも、ようやく
??「優希、こっちこっちだze☆」
魔理沙さん。やっと出会えた見知った顔にホッと一安心。でも、それも束の間でした。
??「へ〜え、彼がそうなのかい」
ただ者ではない雰囲気を醸し出すマダムに、
??「聞いたよぉ、海斗の友達なんだってね?」
チルノ達を「チビ共」呼ばわりしていたマドモアゼル。
??「こんにちはー。早苗でーす」
それに霊夢さんと同じ格好した緑色の髪の人。はっきり言います、この人近くで見たらすごい可愛い系で綺麗系だと思います。僕が知っている芸能人やアイドルよりもレベルが高いと思います。しかもその人と魔理沙さんの間に座らせられました。だから……
優希「か、コン……ちワ」ガタガタ
僕こういう人が大の苦手なんです! キライではないんですけど苦手なんです!! 全身から汗が吹き出して一人で震度5強です。
魔理「こいつはいつも以上にヒドイze★」
マド「あっははは……確かに人見知りみたいだねぇ」
優希「ず、ずみ……せん」
マダ「魔理沙と早苗、アレやってやんなよ」
魔理「言われなくてもだze☆ 早苗、頼むze☆」
早苗「ふっふっふー、私を誰だと思っているのですか」
何かをして頂けるみたいですけど、今は放って……
魔理「質問だ…右の拳で殴るか? 左の拳で殴るか? あててみな」
早苗「ひ、ひと思いに…右でやってくれ」
ムムムッ?
魔理「No!No!No!No!No!」
早苗「ひ…左?」
魔理「No!No!No!No!No!」
早苗「り…りょうほーですかあああ〜」
ムムムムムムッ!
魔理「YES!YES!YES!YES!YES!」
早苗「もしかしてオラオラですかーッ!?」
優希「YES!YES!YES!"OH MY GOD"」
そしてシメには三人揃って拳のラッシュ。やってしまった。とうとうウズウズに負けてやってしまった。でもこれで分かった事があります。
優希「あなたもあの漫画のファンですか!?」
早苗「ドゥー・ユー・アンダスタンンンンドゥ!」
魔理「魔理沙ちゃんは早苗から借りて覚えたんだze☆」
優希「じゃ、じゃあ魔理沙さんが言われていた、外の世界から来られた方って……」
早苗「YES I AM!」
魔理「だze☆」
驚きました。「どんな人だろう」とは思っていましたけど、まさか僕が一番苦手とする部類の人が
マド「いい感じに緊張がほぐれたかな?」
はい、もうすっかりです。
マダ「たったあれだけの事で仲良くなれるなんてねぇ」
早苗「当然ですよ神奈子様、J◯J◯好きにいるのは『黄金の精神』を持つ者だけです」ドヤッ
何今の? カッコイイ事言っている様で、ものすごくカッコイイんですけど! それ、今度使わせてください。
それから僕達は漫画とアニメの話ばかりしていました。早苗さんの部屋には漫画がズラリとあるそうで、海斗君に感心されたそうです。いつ間にか行っていたみたいです。
それでその海斗君ですが……、さっきからいないんです! こんなに人が集まれば、何処かでまた一騒ぎを起こしていてもおかしくないのに、周りをみてもそんな様子の所が無いんです。平和なんです!
優希「海斗君……何処いったんだろ?」
そう呟いて、ジュースを一口飲んだ時でした。
??「さっぱりした〜」
温泉に入っていたあゆみさんがやって来ました。一人だけです。「他の人はどうしたの?」なんて考えていると、
??「あゆみちゃん、具合どう?」
??「少しあそこで水分取ってゆっくりするウサ」
二人の兎耳さんが駆け寄って行きました。なんかすごく白いと思ったけど、やっぱり具合悪かったの?
??「ここ、いいですか?」
そう言って僕の隣、早苗さんとの間のスペースに、あゆみさんを座らせようとするブレザーを着た兎さん。たしか鈴仙さんでしたっけ? それは全然問題ないので、
優希「ど、どぅぞ……」
お
移動距離に違和感を覚え始めた頃、僕の手が何かに触れました。その瞬間、
ヒンヤリ
とした心地の良い冷たさが伝わって来ました。その感覚に視線を向けて見れば、綺麗な指先が僕の掌から伸びていて……
優希「ごごごごめんなさい!」
??「いいえ、気にしないで。あなたは……」
優希「ゅゅゅぅきれふ」
??「えっと……」
苦笑いされてらっしゃる。今日だけで何度目だろう? 不思議そうな、「聞いて失敗した」みたいな目で見られるの……。頑張るって決めたのに、早くもこころが折れそうです……。そして魔理沙さん、なんか知らぬ間に遠い所へ……。呼んでおいて何処かに行かないで下さいよ……。
あゆ「あ、レティさ〜ん」
そこへあゆみさんの
あゆ「レティさん、その人は優希さんだよ〜。前にケーキをホールで買ってくれたの〜」
あゆみさん……ご紹介ありがとうございます。それとあゆみさん……やっぱり覚えているじゃないですか! なんであの時意地悪したの!?
あゆ「お店終わりだったのに〜」
優希「ごめんなさああああい!」
あゆ「ん〜?」
優希「ご、めん……な、さぃ!」
あゆ「分かればいいんです〜」
エッヘンと胸を張るあゆみさん。なんであの時知らない素振りをしたのか、その疑問の答えがわかった気がします。だって……
あゆ「ふふ〜ん」
あんなにも「してやったり」的な顔をされているんですから。仕返しだったんですね……。でも、そんな事をしなくてもよくないですか!?
小兎「それ、いつの話ウサ?」
あゆ「新装開店初日〜」
小兎「あの後あゆみ、お店で寝ていたウサ。あゆみが疲れている時に……空気読むウサ」
優希「ごめんなさあああい!」
これは小さな兎さんに向けて。で、
優希「ご、めん……な、さぃ!」
こっちはあゆみさん用。空気読めなくてすみません。お店が終わっている事に気が付かなくてごめんなさい。でも言わせて下さい。あゆみさんそろそろ僕の声に慣れて下さい!
あゆ「もーいーですよ〜。それでレティさ〜ん」
目の前を通過するあゆみさんとレティさんの楽しげな会話に、
優希「あああの、場所ッ、変わり……す?」
耐えきれなくなり、レティさんへ一生懸命の提案をしました。伝わってくれているといいんですが……
レテ「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせてもらいますね」
そんな僕の心境を察したかのように、レティさんは僕に安心感を与えてくれる笑顔で答えてくれました。
いい人だなぁー『手が冷たい人は心が温かい』って本当なんですね。
優希「じゃ、じゃあどぅぞどぅぞ」
レティさんと場所を交換しようと立ち上がり、ふいにあゆみさんへ向けた時、
優希「あわわわわ」
視線が空中でバッチリ一直線上に。しかも、
じー……
かなりガッツリ見られています。おかげで顔の温度は急上昇、たぶん耳まで真っ赤だと思います。恥ずかしいです……。
鈴仙「あゆみちゃん?」
小兎「どうしたウサ?」
あゆ「ん~? 何でもないよ〜」
鈴仙さん達にはそう言っていますけど、依然としてこっちを見てくるあゆみさん。
なになに!? 僕になんか変なところある? 何か付いているの? もしかして……社会の窓が!?
小兎「視点が合ってないウサ」
鈴仙「頭がぼんやりするの?」
あゆ「ん〜ん~、大丈夫だよ〜」
セーフ、大丈夫でした。じゃあ何で? まさか……ボタンの掛け違い!?
??「あゆみちゃんの調子はどう?」
鈴仙「あ、お師匠様。あゆみちゃんさっきまで元気だったんですが……」
小兎「急にぼんやりし始めたウサ」
これもセーフでした。じゃあ何で? まさか……服の何処かに穴が!?
あゆみさんからの不思議で熱い視線に、ありとあらゆる可能性を考察して慌てる僕。でもその答えが見つからず、もうパニック寸前。そんな時でした。
あゆ「私に何かごよ〜?」
【次回:7輪目_集合編(裏)です】