ビクーッ!
ととととうとう言われてしまった。確かにあれだけ視線が合えば思いますよね。「なにガンつけてんだ?」って。「特に用はありません」なんて答えたら「変な人」って思われるだろうし、最悪の場合「キモッ!」って言葉が……。でもあゆみさんはそんな人じゃないと思うし……、でもでも、誰かが言うかもしれないし……。こんな時海斗君だったら何て言うのかな?
「君の瞳にノックアウトだぜ」
なんて言いそうだけど……そんなのムリムリムリムリ、絶対無理です!
あゆみさんの悪意のない「なにかご用?」発言に、僕の脳内は言い訳を考える事でいっぱいいっぱい。味覚、嗅覚、触覚、聴覚、視覚、全ての五感をシャットダウンさせ、全力で脳内会議を開催していました。
??「あゆみちゃん?」
鈴仙「そっちには何もないけど……」
小兎「何か見えるウサ?」
あゆ「うん、ぼや〜っとだけど〜」
もうムリぽ……。
あゆ「さっきまでレティさんの所にずっといて〜、だんだんこっちに来てて〜」
レテ「え、そうなの? 何も感じなかったわよ?」
早苗「神奈子様、諏訪子様。もしかして……」
諏訪「もしそうなら大事だよ」
神奈「あゆみだっけ? それはどんなヤツだい?」
素直に謝ろ……。
あゆ「えっと〜、手に黒電話を載せてて〜、胸の所に丸いのがあって〜、そこから細い管が出てて〜、身体中をぐるぐる〜ってしてて〜、黒い帽子を
誠心誠意、頭を下げれば許してくれますよね?
あゆ「髪の毛が薄い緑色で〜、顔が小さくて〜目が大きくて〜、か、か、か……」
せーの!
優希「ごめんなさあああい!」
あゆ「かわい〜〜〜〜〜〜!」
タイミングがシンクロしたあゆみさんの歓声に僕、再び大パニックです!
あゆみさんがぼぼぼ僕の事をかかか可愛いって? え、え、えーっ!? 僕そんな風に思われてたの!? なにこれなにこれ!? ううう嬉しぃいいいッ! こここ告白なの!? 顔がニヤニヤしてくるんですけど! いや、待て僕。一回冷静になるんだ。落ち着くんだ。素数を数えて落ち着くんだ!
優希「1、2、3、5、7……」ぶつぶつ
鈴仙「誰からも気付かれなくて、黒い帽子に薄緑の髪の毛で、黒電話を持っていて……」
??「私が知る限り該当する人物は一人しかいないわね。それをあゆみちゃんには見えている……いえ、見つけたのね」
小兎「で? そっちは急にどうしたウサ?」
優希「997、1009、1013……」ぶつぶつ
小兎「おーいウサ」
はっ! そうだよ、さっきあゆみさん海斗君にラブラブだったよね? だからそんなはずないですよ、きっとあゆみさんなりの
優希「……」ぼそ
小兎「はあああっ!?」
突然上がった叫び声で僕、ようやく現実へ帰還。そして「いったい何事?」とクリアになった頭で周囲を見回してみれば、みんなが「空気読め」みたいな、「気でも触れたか?」みたいな顔をされていて、
小兎「どさくさに紛れてななな何を言ってるウサ!」
近くにいた背の低い兎耳の女の子が、真っ赤な顔で僕の事を突き刺すような視線で見ていて、おまけに……
小兎「キモいウサ!!」
と。理由も分からないままディスられ僕、激しくorz。
なんで? なんで僕こんな目に会わなきゃいけないんですか?
??「ちょっとてゐ、キモイって失礼でしょ」
鈴仙「それがお師匠様、あの方が突然てゐの事を可愛いって言い出しまして」
は? え? は? ん? 僕そんな事……。
優希「て、てい……さん?」
てゐ「て
こちらの小兎さん、てゐさんという方らしいです。で、そのてゐさんなんですが、なんでこんな誤解をされているんですか? ただあゆみさんにお礼を言おうとしただけなのに……。なんて言おうとしたんだっけ? 確か……
「可愛いって言ってくれてありがとう」
だっけ? それその途中でてゐさんに叫ばれて……。
可愛いって言ってくれて……
可愛いって言って……
可愛いっ
優希「ぬわああああ!」
“OH MY GOD" やってしまったやってしまったやってしまった。僕キモイ!
優希「ごごごごめんなさい! そんな事は
僕、必死の弁解です。そのはずだったんですが……、
てゐ「そ、そんなの分かってるウサ! 何もそんな言い方しなくてもいいウサ! 喧嘩売ってるウサ!?」
てゐさんを更に怒らせてしまう羽目に。しかもその目を
??「だから言葉には気を付けろっていつも言ってるだろ!」
優希「はうっ!」
また蹴った、蹴られた、蹴らせてしまった。いい加減痔になりますよ? でも、ありがとうございます。
??「コイツには悪気はないんだ。ただ乙女心ってのを全く分かっていないしょうもないヤツなんだ。許してやって欲しいze☆」
魔理沙さん!
魔理「どうせコイツがゴニョゴニョ話すから、てゐが変に誤解したのが始まりなんだろ?」
そう言いながらご愛用の
てゐ「じゃあなんて言おうとしたウサ? はっきり言うウサ」
優希「そ、それはあゆみさんに……」
その時僕はようやく気が付きました。あゆみさんのおかしなポージングに。両腕で地面と平行に大きく輪を描き、全身をそちらへ預ける姿勢。記憶に新しいそのポーズ。それはさっきあゆみさん自身が見せてくれたもの。椛さんや海斗君の時と全く同じもの。あれはいわゆるHug、「か、か、か、かわい〜〜〜〜!」の後です。
と同時に理解しました。あれは僕に向けたものじゃなかったって。結局は僕が勝手に誤解して、勝手に浮かれて、勝手に慌てて、てゐさんを巻き込んでしまったという事みたいです。
とはいえですよ? 勘違いだったと分かった今、アレを言ったら「そんなはずないだろ」って思われるのは目に見えていますし、ここは……
優希「あの……あゆみさん、そこに誰かいるんですか?」
話を逸らさせて頂きます。
魔理「は? お前はまた急に何を言っているんだze★?」
僕のことを疑ってかかる魔理沙さん。でも分かるんです。姿は全然見えませんけど分かるんです。あゆみさんと同じくらいの背丈で細身の誰かが、あゆみさんの腕の中にいるんです。
あゆ「いるよ〜、かわいいんだから〜。みんな見えないの〜?」
神奈「しかし驚いたねぇ。完全に見えているみたいたねぇ」
諏訪「見事に特徴を言い当てたもんねぇ」
魔理「何がどうしたんだze☆?」
早苗「あちらのあゆみさんという方が、無意識を操る方を捕まえているんです」
魔理「こいしをか!?」
「こいし」魔理沙さんがそう驚きの声を上げると、まるで観念したかの様にその人は姿を見せました。こいしと呼ばれたその人は黒い帽子を(ry。
ガチャン
落下し物の音に驚いて視線を向けると、そこにあったのは……
優希「黒電話?」
何故に? しかもダイヤル式のやつ。配線繋がってなさそうだし、あれじゃ電話できないよね? と見せかけて実はワイヤレス? そんなわけないか。こっちに来た時スマホ圏外だったし。だとしたら……Bluetooth!? 電話なのに?
そちらの方に興味がそそられ、「あわよくば解体してじっくり楽しみたい」などと思いながら自分の世界に引きこもりかけた時、
こい「……して?」
あゆ「ん〜?」
こい「どうしてどうしてどうしてどうしてッ!?」
徐々に強くなるその声に、現実へと引きずり出され、こいしさんへ意識をむけると、腕の中で小さく震えていました。細い指を握りしめて。
そしてあゆみさんの腕を振り払うと、今度はあゆみさんの腕に
こい「何で私が見えるの? 私、めいっぱい能力を使ったんだよ? どうしてなの?!」
切羽詰まった表情で、答えるスキを与えない間隔でマシンガンのように尋ね出しました。その手に込められた力が強かったのか、腕を気にしながら苦しそうな表情を浮かべるあゆみさん。そこへ、
鈴仙「あゆみちゃんから離れて!」
てゐ「痛がってるウサ、骨が折れちゃうウサ!」
あゆみさんからこいしさんを引き離そうと、鈴仙さんが後ろから羽交い締めにし、てゐさんが手を
鈴仙さんはこいしさんを引きずる様にあゆみさんから数歩距離を取った所で解放すると、今度はてゐさんと一緒に、あゆみさんを守る様にこいしさんの前に立ち
一方こいしさん、あゆみさんに謝るのかと思いきや、未だ震え続ける掌を眺めて、
こい「もしかして私の能力が……」
ぽたぽたと大粒の涙を
諏訪「落ち着きなよ。今の今まで誰もあんたの事に気が付いていなかったよ」
レテ「私も言われるまであなたが私の直ぐ近くにいたなんて知らなかったわ」
??「こいし、あゆみちゃんが特別なだけよ」
諏訪子さんにレティさん、それと赤と青半分半分の人がこいしさんを宥めようと優しく声をかけますが、
こい「いや……イヤだイヤだイヤだイヤだ。そんなのいやだよ」
届いていなかったようです。震えが強くなるこいしさんに僕、「なんか可哀想、何かしてあげられないかな?」と考えていると、隣の魔理沙さんが
魔理「優希、お前はここから離れた方がよさそうだze★」
「あっちに行け」と。
優希「え? それはなんで……」
魔理「弾幕ゴッコが始まるかもしれないって言ってるんだよ! 巻き添えになりたくなければさっさと逃げろ! ついでに霊夢も呼んでこい!!」
優希「は、ひいいいッ!」
僕、もう訳もわからないまま魔理沙さんのご指示に従い、その場からヨーイドンです。けどやっぱり後で教えて下さい。前にフランさんからお誘いを受けましたが……
優希「弾幕ゴッコってなんなんなのー!」
楽しそうな名前とは反対に、危険な臭いがプンプンするんです!
魔理沙さん達に背を向けて走り始めた僕、でもその直後、横から
??「だいぶお揃いのようね」
初めて聞く声が。走り去る時に僕がチラリと目にしたのは、白い包帯に巻かれた右腕だけでした。
【次回:9輪目_その後です】