どうも、僕です。そしてさようなら。僕の人生終わりました。グサグサと冷たい視線が全身に突き刺さってすごく痛いです。みんなゴミを見る様な目をされているに違いありません。視界は地面で
??「優希お前……自分で何をしたのか分かってるのか?」
魔理沙さんのお言葉が僕の小さなハートにザクリ。
魔理「そんな事をするヤツじゃないって信じていたのに……。もしアリスが知ったら……」
??「私がなに?」
タイミングは最悪。僕、もう冷や汗がダラダラ。これが悪い夢だと信じたいです。
アリ「って優希さん!? ちょっと魔理沙これどういう事!?」
魔理「……」
アリ「魔理沙?」
魔理沙さんの様子がいつもと違う事に気がついたんだと思います。魔理沙さんもしかして泣い……。
??「それがさ聞いてよ」
黙り続ける魔理沙さんの代わりに話しを進めるヤマメさん。きっと言うつもりなんです。僕達が覗き魔だって。もしそうなったら僕はアリスさんの家には居られないし、アリスさんまで悲しい思いをさせちゃいます。それだけはしたくない。だから、だから……今言わないと取り返しのつかない事になる。
「違うんです、誤解なんです!」
って。でも言ったところで信じてもらえないかもしれないし、下手したら余計に怪しまれるかもしれないし……。
ヤマ「実はこの二人がさー」
ま、まずい。言わなきゃ早く言わないと。大きな声で叫ばないと!
優希「ち……ちが……」ゴニョ
わあああん! 緊急事態だって言うのになんでこれだけしか声が出せないの!? もうホントこんな自分が大嫌いだ……。
??「ヤマメさん待って下さい。その方が何か言おうとしているみたいです」
オワタオワタオワタオワタオワタオワタ……。
??「あのー、終わっていませんよー」
お父さん、お母さん。僕が今までお世話になった皆さん、心からお礼を言います。こんな僕に今まで親切にしてくれてありがとうございました。
??「なにもそこまで悲観的にならなくても……」
このような形で終わる事になってしまい、申し訳ありません。中途半端ではございますが、これにて東方迷子伝、Ep.6完です。みなさんお元気で。
??「もしもーし、勝手に終わらせないで頂けますかー?」
え、なに?
??「今はあなたの発言待ちです。誤解を解かなくていいんですか?」
って言われましても、もう言われた後じゃ手遅れですよ……。
??「それは安心しで下さい。ヤマメさんに止めてもらっていますから」
どこの誰だか存じませんが、ありがとうございます!!
??「どういたしまして。それではどうぞ」
でも僕、口下手な上に注目されると
??「そのようですね。ですから今回は私がお手伝いします」
何から何までありがとうございます。あの、最後に一つ質問いいですか?
??「はい何でしょう?」
優希「なんで僕の考えている事が分かるんですか!?」
??「おー、出るじゃないですか大きな声」
顔を上げた途端にバッチリ目が合いました。細い管が生えた赤い目玉と。
何これ? 新種のアクセサリー? そういえばさっきこいしさんっていう人もしていたし……。流行ってるんですか?
??「これは私の第三の目です。これで人の考えている事、心を読む事が出来るんです。申し遅れました。私は古明地さとり、覚り妖怪です。古明地こいしは私の妹です」
さらにそこから声の発信源へと視線を向けると、大きな瞳が僕を見下ろしていました。冷静になって全体を見ると……こいしさんとはあまり似ていませんね。それよりもこの人すごい事を言っていました。人の心を読む? そんな事できるの? でも実際にさっきまで僕は思っただけで会話ができていたわけだし。
??「ね、ねぇ。さ、さっき……からいったい何を?」
??「さとりちゃん、みんなにも教えてくれると助かるかなー」
さとりさんの向こう側から聞こえて来る声。「どうしたの?」と尋ねるアリスさんと「みんなに通訳して」と求めるヤマメさん。だと思います。
それはそうですよね。振り返ってみて下さい、僕は考える事しかしていないんです。ようやく声を出したかと思えば急に叫びだして……完全にヤバイ奴です。
さと「そんな事を考えている暇があるのなら、事情を説明した方がいいと思いますが? このままでは誤解されたままですよ」
はい、そうします。
さと「それと下手でもいいので発言はして下さい。でないと私までヤバイ奴と思われます。なにより他のみんなには声にしないと伝わりません」
優希「わ、分かりました。
そう、あれは僕が霊夢さんを探しに行ってからの事です――――
優希「ぜぇー、ぜぇー、ぜぇー……」
僕は赤い服をターゲットに神社中を走り回っていました。でも「見つけた!」って思っても、それはサニーだったり、フランさんだったり、蛮奇さんだったり、キーボードでセッションしている人だったり、帽子を被って二本の尻尾が生えた女の子だったりと全て外れ。
残すのは神社の裏だけとなり、そこでようやく見つけました。
優希「海斗君?」
を。何処に行ったのかと思ったらこんな所にいました。
海斗「どうしたんだぜ? 息は切れ切れで汗は……それほどでもないな」
優希「足もガクブルしてないよ。それでこんな所で何してるの?」
海斗「ここ温泉なんだ。外の世界では『東方地霊殿』って呼ばれる地底の異変が数年前に起きてな。その時の産物なんだぜ。これが湧いた時に異形の者も一緒に地上に出てきて、それで霊夢は『異変だ!』って気付いて魔理沙師匠と地底へと……」
ツラツラと語り始める海斗君。これ長くなるやつだ……。
海斗「霊夢サイドはゆかりん、あやや、萃香。魔理沙師匠サイドはにとりとパッチェ。それと……」
優希「あ、うん。ここが温泉なのは知ってるよ。仕事終わりによく使わせてもらったから」
海斗「へー、そうだったんだ。それなのに会わなかったな」
それね。
海斗「でな、あっちが男湯」
優希「うん、そうだね」
海斗「こっちが女湯」
優希「そうだね」
海斗「……」
無言になる海斗君に僕『?』。すると同じ言葉が繰り返されて僕、また『?』。それが五回くらい続いた時、海斗君が痺れを切らして
海斗「優希は
と、僕をディスり出しました。
優希「ごめんごめん、ホント分からない」
海斗「男の俺が
そう言われてようやく悟りました。
優希「海斗君まさかのぞ……ふがっ!」
海斗「しーッ! 声がでかい!」ヒソヒソ
優希「ご、ごめん。でも
犯罪行為に手を染めようとする海斗を止めるべく、僕は説得を試みました。でも、海斗君は人差し指を立てて「チッチッチ」と横に振りながら「そうじゃないんだな」みたいに余裕の表情で、
海斗「それはわかってるぜ。覗きなんて低レベルな事はしないぜ」ヒソヒソ
優希「じゃあ何してたの?」ヒソヒソ
海斗「会話を聞いて妄想してる!」
と、胸を大きく張ってものすごくドヤドヤ。「俺はハイレベルなんだ!」って言いたいんでしょうけど、それ……
優希「それ盗聴だよね?」
海斗「あっははは、人聞き悪いぜ。
つまり逆にコソコソやってる方が問題だという事だったみたいです。僕は思いました。「そういう問題? それにたまたまとか思わずとか言ってるけど、どこまで本当なんだろ?」って。そんな僕の疑問を差し置いて海斗君は
海斗「ほら耳を澄ましてみろよ」
と目を閉じて全神経を耳に集中させ始め、僕も言われるがまま中の会話に耳を傾けてしまっていました。
■ □
優雅に日頃の疲れを癒す者達。そこでは皆が同じ姿。地位も名誉も立場も罪をも全て脱ぎ捨て、平等な立場で会話を楽しんでいた。
??「椛とあゆみさんに強引に連れて来られましたが、こうして入ってみるとたまにはいいものですね」
椛 「あの……」
??「ホントー。今度から週一くらいで使わせてもらおうかなー」
椛 「先輩方……」
二人の烏天狗の間で顔を赤くして俯く白狼天狗。これには何か理由があるようで……。
椛 「も、もう出ませんか? あゆみさんも出ちゃいましたし……」
というのは建前。烏の行水とは何なのか。彼女は湯に入ってからというもの、一向に出ようとしない二人の先輩に付き合わせられ、オーバーヒート寸前だった。ならば湯から出ればいいもの。だがそうしないのは、これにも理由があるようで……。
はた「なら椛の負けって事でいい?」
文 「あの方々が来られたら相手をお願いしますね」
そう、これは罰ゲーム付きの根比べ。負けを認めた場合、今日一日身の安全の保障は……ない。まさにDead or aliveの瀬戸際の戦いなのだ。
一方その反対側では……。
スイー……
湯から首から上だけ出して静かにスイムを楽しむ
??「血の池もいいけど温泉もありだなー」
サイズ・並。
??「あ゛ー……癒される」
おっさんのような深いため息を吐き、肩に溜まった日頃の疲れを湯に溶かすサイズ・美。そして……、
??「もー、いきなりお風呂だなんて……。何も用意してないんだから」
縮こまりながら風呂の
??「二人は髪が短いからいいわよね」
愚痴を
??「私なんて腰まであるんだから……」
サイズ・大仏。
そうこれは大誤算だった。作戦通りに悩める彼女の背中を押し、天然露天風呂へと連れて来たはいいが、ここでまさかの見落とし。
これは彼女達が寺を出発した当初には計画されていなかった。花見に向かう道中、彼女の後方で決まった行き当たりバッタリの勢い任せの作戦である。これには作戦を企てる全員が賛成した。だが運の悪い事に彼女と行動を共にしていた者は皆短髪。長くても髪が肩までしかなく、彼女の日々の苦労を察せる者がいなかったのだ。髪を束ねる物が無ければ温泉には入れない。そのまま入ろうものなら髪が水面に浮かび「ワカメ〜」となり、マナー違反となる。
村紗「じゃ、じゃあ髪を手でまとめて、上で抑えれば?」
一輪「そ、そうだよ。このまま出たら風邪引くよ?」
この提案に腑に落ちないながらも、グラデーションの髪を手で束ね始める住職。身体を寒さから守っていた腕は解かれ、隠されていたそれは船幽霊達の前に神々しく現れた。
『でかっ!』
突き付けられた現実は、目を見張る二人に格差社会の実態を思い知らせていた。
??「わー、
二人の声に反応して足で湯を掻き分けながら?やって来た狼少女。そう、髪の長い女性は住職だけではない。前述の烏天狗の一人もそうである。だが各々がその回避作を持っていた。烏天狗はいつも束ねているヘアゴムで、そして狼少女の場合は……。
聖 「あら影狼さん」
一輪「あんたは用意がいいわよね」
影狼「へ?」
村紗「さっき頭も洗ってたもんね。最初から入るつもりだったの?」
影狼「いえそうではないんです。お恥ずかしい話なのですが、蛮奇に『絶対にお風呂に入ることになるから用意しな』と強く言われまして……。着替えと一緒に渋々用意したのですが、まさかでした」
鋭い先読みをした友人に助けられた狼少女。少し照れながら事情を話していたが、その間気になる事もあったようで……。
影狼「あのー、私の体が何か?」
それはきめの細かな肌をした足から始まり、彼女の輪郭に沿って徐々に上へ。女性らしいシルエットの腰を辿り、括れのある腹部を通り、ハリのある胸部を抜け、雫が伝う首筋へ。
下から上へ、上から下へと繰り返される
一輪「いや、服の下はけむくじゃらだと思っていたから。それに……」
村紗「私達と変わらないんだなーって。それに……」
『大きい!!』
そのサイズ・
一輪「何が羨ましいよ、もう充分でしょ?」
村紗「影狼ちゃ〜ん? それは私達へのイ・ヤ・ミ・か・な〜?」
影狼「いえいえいえいえ、そんなつもりは……」
村紗「にひひひ、許さーん」
そこから始まる麗しき乙女達の「きゃっきゃ、うふふ」なジャレ合い。「くすぐったい」「重たい」「柔らかい」といった言葉が笑い声と共に飛び交い、時に小さな悲鳴と色を含んだ声が上がっていたそうな。
【次回:12輪目_スイッチ入りましたです】