公式設定と違うところが多々ありますが、
ご了承ください。
ガチャ
元気な掛け声と共に扉を開けて入ってきた女性は、白黒の服に、黒い魔法使いが被る様な帽子を被っていた。全体的にオセロ状態のおかげで、金色の長い髪が妙に際立って見える。誰だろう? 自称アリスさんの友達かな?
アリス?「あ、おはよう。何?」
??「この前のクッキーを……」
彼女は自称アリスさんを見ながらそこまで話すと、こちらへ視線を移して、
??「ってお前誰だ?」
初対面の僕にいきなり『お前』と……
アリス?「えっと、昨日森で倒れていて、その……」
??「ん? あぁ泊めてやったのか。で? どこまでいった?」
はいぃぃ!? 平然とした顔でいきなり何言ってんの、この人っ!?
アリス?「なななな何もしてないよぉ」
自称アリスさんも顔を赤くしてテンパり始めた。すると白黒の女性は帽子の後ろで手を組むと、
??「ふーん……なーんだ。つまんねぇの」
冷めきった視線でそう言い放った。そしてその姿勢のまま今度は
??「で、コイツどっから来たんだ? 何か言ってたか?」
僕の事を『コイツ』呼ばわり。でも、僕なんてそんなもんだよね……。いいですコイツで。
アリス?「えっと色々話しはしたけど、まだ何も……」
??「え!? 会話? コイツとアリスで? それ本当に会話だったのか?」
グサッ!
「それ本当に会話だったのか?」なかなかの威力の呪文に、僕はダメージを負った。
アリス?「ちゃ、ちゃんと会話したわよ。それにさっきだって……」
??「『会話』っていうのはなぁ、言葉のキャッチボールだぞ? 投げっぱなしになってなかったか?」
グサッ!
「会話 = 言葉のキャッチボール」そしてそれに続く
しかし僕へのダメージはまだ終わらなかった。これまで以上の最大級のダメージ。というか止めとなる呪文。その詠唱者は、
アリス?「ヒドイよ……頑張ったのに……」
グサグサグサグサッ!
自称アリスさん。僕は知らず知らず気を使わせ、頑張らせてしまっていたみたいだ。もう謝罪の言葉しか見当たらない。
優希「ごめんなさい……」
心の声はいつの間にか言の葉となって
アリス?「え??」
??「は??」
でもそれは2人には通じていなかったというか、的外れといった具合で、思いっきり頭に『?』を作られた。
??「なんでお前が謝るんだze☆? お前には何も言ってないze☆?」
優希「え? そうだったんですか? すみません勘違いして……でも、なんか、すみません……」
??「ん~?」
僕の顔を目を細めて覗いて来る白黒の女性。つい気まずくなって、視線を
??「お前らって……」
何かを言おうとしていたけど、
??「まぁいいや。で、名前は?」
話を切り替えられてしまった。
優希「優希です。あなたは?」
僕がそう尋ねると、その人は左手にピースサインを作り、左目へと向ける『かし○まっ!』のポーズで、
マリサ?「私は『普通の魔法使い』、
自己紹介をしてくれた。キリサメ……マリサ? ぜ? あれ?
そのタイミングで、脳裏を過ぎる海斗君の言葉。
『尊敬という意味では魔理沙かな。あんなイケメンになりたいぜ!』
という事は、この人は海斗君が言っていた魔理沙!? のコスプレをした人って事だよね? 東方すごいね、大人気だね。
と思うのと同時に、浮上する疑問。というよりも、ずっと気になっていた事。僕はそれを、
優希「なんで東方のコスプレしているんですか?」
ついに口にして尋ねた。でも自称のお2人は、
アリス?「…?」
マリサ?「…??」
「何それ?」的な表情で、首を傾げて僕に視線を向けていた。
優希「え? それ『東方Project』のキャラクターの衣装ですよね?」
マリサ?「は? 何だそれ? お前外来人か?」
アリス?「魔理沙……」
優希「外来人?」
今度はこっちが「何それ?」状態。
マリサ?「外の世界から来たやつのことを、ここではそう呼ぶんだze☆ ここは幻想郷だze☆」
優希「ウソ……」
僕は自称魔理沙さんの言う事が信じられず、自称アリスさんの方へ助けを求める様に視線を向けた。
アリス?「そう……あなたは私達からすれば、異世界の人……」
でも自称アリスさんから言われたのは、それを肯定する内容だった。
マリサ?「一応言っとくが、夢でも幻でもないze☆」
優希「そんな……信じられません」
マリサ?「って言われてもなぁ。どうすれば信じてくれるんだ?」
「何をすれば信じられるか」そう聞かれて、緊急脳内サミットを開催。中途半端な物では納得できない。ここが僕のいた世界とは違う世界で、2人が言っている事が全部本当だとしたら、もし本人だとしたら……
優希「……魔法。そうだ、魔法を見せてください」
アリス?「私の魔法じゃ信用できませんか?」
優希「いえ、そうじゃなくて……」
マリサ?「魔理沙ちゃんは別に構わないze☆ じゃあとっておきを見せてやるze☆」
そう言い残すと、自称(?)魔理沙さんは帽子の中から小さな箱を取り出し、森に向かってそれを構えた。
アリス?「ちょ、ちょっと魔理沙ッ!?」
マリサ?「いくze☆『恋符:マスタースパーク』!」
ビ=====================ム
自称(?)魔理沙さんが呪文の様な言葉を言い放った瞬間、太くて眩い光が箱から放たれた。反動で吹く風がまるで台風の様に強い。それも太い僕が飛ばされそうになる程に。
光りと風が収まって暫くすると、
マリサ?「うーん! 今日も調子いいな。弾幕はパワーだze☆」
アリス?「魔理沙! どうするのよコレ!」
満足気に大きく伸びをする自称(?)魔理沙さん。そして森に出来上がった道を指差しながら怒る自称(?)アリスさん。僕、ぽかーん。『開いた口が塞がらない』とは、まさにこの事だと思う。
マリサ?「別にいいじゃないかよ。減るもんじゃないし」
ガッツリ減ってますよ。
アリス?「これじゃあ丸見えじゃない!」
マリサ?「どうせ誰も来ないだろ? それよりもこの先、魔理沙ちゃんの家だze☆ 魔理沙ちゃんはそっちの方が心配だze☆」
「じゃあなぜこっちに向けたんですか?」というのは聞くだけ野暮だろう。
アリス?「もう! 家が無くなっていても泊めてあげないから!」
苦労されているんですね。分かります。
マリサ?「で? 信じてくれたか?」
優希「はい、少しは。じゃあ空飛べますか?」
僕がそう尋ねると、自称(?)魔理沙さんは、
マリサ?「ん? 空を飛べばいいのか?」
「おやすい御用」とでも言う様に、
優希「えー……」
もうコレしか言えない。この時点で僕は薄々気付き始めていた。でも最後にと、側にいたアリスさんにも恐る恐る同じ事を尋ねてみた。
優希「あの、アリスさん……も?」
アリス?「はい、飛べますよ」
返事はあっさり「Yes」。するとアリスさんは、ふわりと宙に浮くと、まるで優しく吹く風に身を任せる様に、ゆっくりと青い空へと飛んで行った。
温かい朝日が、短い金色の髪をキラキラと輝かせ、柔らかく通り過ぎるそよ風が、青いドレスをヒラヒラなびかさせ、雲一つない澄んだ空が、その姿を写しだすキャンバス。
その有名絵画の様な光景に思わず、
優希「綺麗……天使みたい」
口から零れていた。
アリス?「え?」
優希「ぃゃぃゃ、いやいや何も言ってないです!」
アリス?「あ……ぅん」
聞こえてた? 聞かれた? 恥ずかすぃーーーッ!
顔は一気に熱くなり、心臓はバクバク。脳内は大沸騰。お互い無言のまま、気まずい感じになっていると、魔理沙さんがタイミング良く下りて来てくれた。
魔理「で? 次は何をすればいいんだ?」
優希「いえ、もう大丈夫です。アリスさん、魔理沙さん。疑ってすみませんでした」
もう全てを信じます。ここが異世界だって事、あなた達がご本人だって事を。
魔理「そうそう。そうやって最初から素直に信じていればよかったんだze☆」
アリ「魔理沙ッ! 混乱していただけですよね?」
なに……このアメとムチ。
--少女説明中--
魔理「霊夢ならもう帰って来てると思うze☆? なんなら今からちょっと行ってみるか? いたら外の世界に戻してくれるはずだze☆」
優希「ほ、本当ですか!?」
アリ「ええ、霊夢なら何とかしてくれますよ」
「元の世界に帰れる」そう聞いて僕の心境は……正直複雑だ。楽しい事もあるけれど、それ以上に辛い事ばかりのあの世界。もう少しだけ居たい様な……でもお母さんが心配するかな? するよね。
この『幻想郷』という世界に来て、まだ半日程度しか経っていないけど、大きな宝物をもらった様な、そんな気分だ。特にアリスさんとの出会いとか。一生の思い出だ。「帰ったら海斗君に自慢しよ」などの僕の
魔理「でも先に言っておくけど、ここでの記憶は全部消されるze☆」
魔理沙さんから衝撃の一言が。
優希「えーーーーーーーーっ!?」
「記憶を消される」どうやってやるのかは分からないけど、その言葉に思わず大絶叫。すると魔理沙さんは腰に両手を添えると、呆れ顔でさも当然の様に語り出した。
魔理「そりゃそうだze☆ 外の世界の連中に、ここの事を知れたりなんかしたら、魔理沙ちゃん達行く所なくなるze☆」
優希「え? そうなんですか?」
アリ「えぇ……元々外の世界では訳あって、生きていけなくなった者達が来る場所なので」
魔理「魔法使い、妖怪、妖精、鬼。どれも外の世界では恰好の見世物になっちまうze☆」
優希「そんなにいっぱいいるんですか!?」
その後も僕は、アリスさんと魔理沙さんから幻想卿について色々教えてもらった。現在となっては迷信や神話になっている者達が、この世界で自由にのびのびと暮らしている事や、普通の人間が暮らしている里があるという事。それに霊界、天界もあるという事も。
優希「す、すごい」
魔理「で、それらをまとめて管理している一人が、魔理沙ちゃんの友達の霊夢だze☆」
という事は、僕がいた世界では大統領とか、総理大臣とか、知事とか、そういう人って事だよね? そう思うとその人って……
優希「すごい方なんですね」
素直にそう思った。きっとしっかり者で、器が大きくて、皆から
『肩書きだけはねっ!』
優希「え? それってどういう…??」
魔理「実際に会えばわかるze☆ そいじゃあ、飛んで行くか?」
優希「え、僕はどうしたら」
魔理「魔理沙ちゃんが乗せてやるze☆」
魔理沙さんは箒に跨りながらそう言うと、親指で後ろに乗れと合図を送りながら、
魔理「ほら、後ろに乗れよ」
決め台詞。この瞬間、僕「あらやだ、イケメン」と乙女になりました。と同時に、海斗君が言っていた『魔理沙さん≒イケメン』の方程式に、「こういう事か」と納得。
優希「でも、僕……重いですよ?」
魔理「空飛ぶのに重さは関係ないze☆ 早く乗った乗った」
魔理沙さんが急かしてくるので渋々、ドキドキしながら後ろへ。
優希「よ、よろしく……お願い……します」
なるべく平常心を装ってみるも、女の子の背中にここまで接近したことなんて初めて。緊張感MAX。落ち着け……素数を数えて落ち着くんだ! 2,3,5,7、11、13、17、19、23……。
そんな余裕の無い僕の事をお構いなしに魔理沙さんは、
魔理「そんなつかまり方だと落ちるze☆ 魔理沙ちゃんの腰にしっかりと掴まりな!」
と、僕の手を取ると爽やかに腰へと導いた。もう僕の頭の中は……特大パニック状態です!
おお女の人がぼぼぼ僕のててて手を握ったぁッ!
おお女の人にふふふ触れたぁぁぁぁぁぁぁッ!!
おお女の人のこここ腰にててて手がぁぁッ!!!
おお女の人とみみみ密着うううぅぅぅッ!!!!
うわわわわ……
魔理「
優希「は、はひっ!」
アリ「魔理沙、ゆっくり行きなさいよ」
魔理「そいつは……。約束できないzeーー☆」
優希「どわーー……☆」
アリ「もう、魔理沙待ちなさいよ!」
--オタク飛行中--
スタートから「振り落とされるッ!」と思う程の急発進。今はそこまでの速度ではないけど……
魔理「どうだ? 初めて生身で空を飛んてみた感想は?」
乗り心地? 両足はプラプラ。安全のためのシートベルト? そんな物ありません。快適な空の旅? ありえません。感想? そんなの……
優希「コワイコワイコワイコワイ……」
に決まってます!
魔理「めったに経験できない事なんだから、もっと楽しめよなぁ」
魔理沙さんが残念そうに言ってるけど、そんなの……
優希「ムリムリムリムリムリムリ」
に決まってます!
もう目なんか開けてられない。魔理沙さんにしがみ付くので必死。
恐怖のあまり魔理沙さんを掴む手にも力が入る。というより、それでギブアップの合図を送ったつもりだった。「きっと察して、もう終わりにしてくれるだろう」そう思っていた。
でもそれは、甘かった。
魔理「じゃあ強制的に……」ニヤッ
ゾクッ!
魔理沙さんのその言葉と共に、背筋に走る悪寒。見なくても分かった。今、魔理沙さんがすごく悪い顔をしていると。そして僕の懸念は。
魔理「体に覚えさせてやるzeーーー☆」
現実に。魔理沙さんは再び速度を上げると、更に上へ上へと上昇し始めた。
優希「ちょっとーーーッ!」
この間たったの数十秒? それくらいだったと思う。でも僕にとっては長い悪夢の時間だった。やがて移動速度が徐々にゆっくりになっていき、完全に0になった時――
魔理「ほれ、見てみろ。これが幻想郷だze☆」
そう言われて恐る恐る目を開いてみると、そこには山々に囲まれた綺麗な大自然と森、洋風の大きな屋敷、山の上の神社そして、村。壮大な景色に、思わず目が釘付けになった。
魔理「ここまで来れば、高さなんて気にならないだろ?」
優希「はい、多少は。すごく綺麗なところですね」
魔理「そうか? ずっとここにいるから特に何も感じないけど、他所から来た人にはそう見えるのか?」
優希「田舎のお婆ちゃんの家より自然が多いです」
魔理「お前今馬鹿にしたのか?」
目を細めて鋭い視線を向けてくる魔理沙さん。そしてこの瞬間、
ゾクッゾクッ!
背筋に走る先程以上のイヤな予感。
優希「いえいえいえいえ、そういうつもりでは……」
予感を予知にしないために、必死に弁明。
魔理「フッフッフッ……許さん!」
でもそれは通じず、
魔理「お仕置きだzeー☆」
執行された。
今度は先程とは打って変わって垂直に急降下。しかも後ろ向きという、とんでもない姿勢で。進行方向が見えない分、恐怖は倍増。地上というデッドラインがあるという事実に、恐怖は更に倍増。計4倍。故に、
優希「ご、ごめんなさーッい! 一生のお願いです! 元に戻してーッ!!」
涙を流しながら、人生最大急のお願いをする事に。
魔理「はーっ? よく聞こえないzeーー☆」
優希「絶対ウソだーッ!」
「地上まであと何m?」と先が見えない恐怖に怯えていると、
ピタッ!
止まった……? 電車が緊急停止をするかの様に、なんの前触れも無く止まった。すると自然と心の底から「助かったぁ」と大きなため息が零れ落ちた。
魔理「おい、後ろ見てみろよ」
僕を見て悪戯な笑顔を浮かべる魔理沙さん。その真意は分からなかったけど、言われるがまま後ろを振り返ると……地面はもうすぐそこだった。というか、もう足が届く所だった。一気に血の気が引いた。そして、魔理沙さんのあの小悪魔っぽい笑顔の意味をようやく理解した。
優希「あの……魔理沙さん?地面まであと少しなんですが?」
魔理「すごいだろ? 結構練習したんだze☆?」
ドヤドヤしながら語る魔理沙さんに、「暇なんですね」とは口が裂けても言えない。「もう一回おしおきだze☆」なんて事になったら、次は命がないかも……。
優希「ふ~~~……」
一応、無事着地。込み上げてくる幸福感と絶大なる安心感。地に足が着くってこんなにもホッとするんですね。でも、ちょっと楽しかったかも。
地面に腰を下ろして休んでいると、魔理沙さんが指差しながら声を掛けてきた。
魔理「あの上が目的地だze☆」
その指の先に視線を移すと、そこには長い階段が。更に頂上には鳥居の様な物が小さく見える。
優輝「神社……ですか?」
魔理「ピンポーン、正解だze☆ 『博麗神社』、そこに霊夢がいるze☆」
魔理沙さんから紹介された神社をぼんやりと眺めていると、
??「魔理沙ー、優希さーん」
少し離れた所から声が。
魔理「おっ、アリスー! こっちだzeー☆!」
その声に魔理沙さんが大きな声で反応すると、先程見た優雅な飛行からは想像できない速度でアリスさんが飛んで来た。今、アリスさんが僕のことを「優希さん」って。もう一回呼んでくれないかな?
アリ「魔理沙ッ! あんなにスピード出して!
もう夢が叶いました。
魔理「大丈夫だったんだから別にいいだろ? じゃ、魔理沙ちゃんは先に行ってるze☆」
再び箒に跨って上昇する魔理沙さん。僕を残して。
優希「え? 僕、歩くんですか?」
魔理「初めての人は、必ず階段を歩いて上るのが習わしだze☆ アリスも行くぞー」
アリ「え、え? ちょ、ちょっと魔理沙!?」
「どうしていいのか分からない」といった様子で、僕と魔理沙さんを交互にキョロキョロと見ながら慌て出すアリスさん。なんか気を使わせてしまって、悪い気がする……。
優希「どうぞ僕に構わず、先に行ってください」
アリ「ご、ごめんなさい。ではお言葉に甘えて、お先に失礼します」
アリスさんは僕に一礼しながらそう言い残すと、また優雅に神社まで飛んで行った。
辺りはとても静か。聞こえるのは風に揺れる木々の音だけ。
海斗君と『電気とアニメの街』で楽しく買い物をして、電車に乗ったところまでは覚えてる。けど、その後気付けば異世界。名前は『幻想郷』。
そして出会った2人の魔法使い、アリスさんと魔理沙さん。2人ともタイプは違うけれど、優しくて話していてすごく楽しかった。
今2人と別れて改めて気付かされる。「1人って、孤独って淋しい」って。階段、がんばろ……。
霧雨魔理沙さん登場です。
そして初のスペカでした。
次回:「博麗の巫女」
もうまんまですね