東方迷子伝   作:GA王

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このEP.最終話です。
短く感じるのは、前のEPが長すぎた所為です。




そして10輪目の答えを忘れてました。

恋符 : 魔理沙
難題 : 輝夜
不死 : 妹紅
兎符 : てゐ
波符 : 鈴仙
寒符 : レティ
奇跡 : 早苗
神具 : 諏訪子
蘇生 : 永琳
奇祭 : 神奈子

簡単すぎましたかね?


1/2分咲_遅刻者です

 海斗君のズボンのポケットに手を入れて悲鳴を上げたと思ったら……。

 

霊夢「『パスウェイジョンニードル』」

霊夢「『封魔針(ふうましん)』」

 

 刺さった場所に風穴を開けそうな五寸サイズの太い針が、横殴りのゲリラ豪雨の様に降り注ぎ……かと思えば、

 

霊夢「『博麗アミュレット』!」

霊夢「『マインドアミュレット』!」

霊夢「『妖怪バスター』!」

霊夢「『エクスターミネーション』!」

 

 赤、青、黄色の無数のお札が巣を壊されて怒り狂った蜂の大群の様に襲いかかり……かと思えば、

 

霊夢「『ブリージーチェリーブロッサム』!!」

霊夢「『ヴァカンスの生命』!!」

 

 ブーメラン形の光弾が連射機能付きの散弾銃の様に発射され、

 

霊夢「『陰陽玉(おんみょうだま)』!!!」

 

 巨大で重そうな陰陽印の球体が隕石の様に落下し、

 

霊夢「『よくばり大幣(おおぬさ)』!!!!」

 

 おまけにお(はら)い棒が(むち)(ごと)くビシャンッと……、もう容赦(ようしゃ)無しの滅多打ちです。

 着弾と同時に巻き上がる煙はターゲットの海斗君の姿を隠し、無事なのかどうなのか、ましてや存在の有無すら確認できません。

 マジで海斗君がヤバイです。みんなドン引きしています。隣の魔理沙さんなんて

 

魔理「アレは無事じゃすまないze★……」

 

 って心の声が出ちゃってます。僕の心配度数はMAXを超えて恐怖へと変換され、全身は震度3の揺れを発生。

 やがて休む事なく続いていた爆発音が消え、霊夢さんが(ひざ)に手を付いて「ぜぇぜぇ」と肩で息を始めた頃、残されていた煙が風に乗って飛ばされ、徐々にその全貌(ぜんぼう)が明らかに。

 地面には所々黒く変色した糸が切れ切れになって丸い陣を描き、その中心部には……

 

さと「普通じゃない」

てゐ「やっぱりアイツおかしいウサ」

アリ「人間……よね?」

優希「海斗君!?」

海斗「ザ・イリュゥゥウウウジョンッ!」 

 

 両手を上げてYの字でドヤ顔を決める海斗君の姿が。無傷です、元気です、いつも通りです。

 

海斗「みなさん、ショーは楽しんで頂けましたか?」

 

 「Shall we  dance?」とでも言うように、紳士的なお辞儀をする海斗君に僕も魔理沙さんも、他のみんなもポカーン。でもしばらく経つとチラホラと周りから拍手が起こり始め、中には「おー」という歓声までも。

 なにこれ、仕組まれてたの? どこから? もしかして全部?

 

海斗「ナイス演技だったぜ霊夢。アドリブもGJだったぜ。んー、でも服がボロボロになっちゃったな。もうちょっとコントロールしてくれよな」

 

 興奮しているからか、そんな種明かしが僕の所まで聞こえて来ました。周りからは「なーんだ」と声があがり、それぞれが笑顔を浮かべながらまた花見の席へと戻っていきます。

 えーっと、つまりはそういう事だったみたいです。だとしたら巻き込まれた僕は何なの? 今日厄日なの?

 

海斗「じゃあやる事はやったし、俺も花見を楽しむとするぜ」

霊夢「待ちなさいよ」

海斗「ん? まだ他に用でも?」

霊夢「チャラ男あんたいったい……」

 

 僕も席に戻ろうとしたのですが、二人がまた何かを話し始めているのが目に()まり、足を止めて見入っていました。最初は「また何か(たくら)んでいるの?」と思いましたけど、霊夢さんの表情が楽しくなさそうで、怒っているようにも見えて、とてもそんな雰囲気ではなさそうです。

 そんな時です。フラフラとしたぎこちない足取りで、二人に近づく人影が視界の舞台袖から現れたのは。

 

??「あっれ〜? 海斗さんそんな所で(ほんなほほれ)何をされて(何ほはれれ)いるんですか(ひるんれふは)〜? うぃっふ〜」

 

  妖夢さんです。足取りはおろか、呂律(ろれつ)も回っていません。花見始まってまだ全然経ってないのにです。

 というか妖夢さんまでお酒飲むの? ホントこの世界の飲酒年齢事情どうなってるの?

 

妖夢「霊夢もぉ〜、一緒に飲もぉ〜よぉ。顔怖いよ〜」

霊夢「もう酔っ払ってんの? この短時間に、しかもあの騒がしい中でよく平気でそこまでなれるわよね」

 

 肩を組み反対の手の指先で霊夢さんの(ほほ)をツンツンする妖夢さん。楽しそうで何よりですが、そのご本人さんは「ウザッ」「メンドくせー」「HELP ME」感が全面に出ています。でも周りのみんなは見て見ぬ振り。こちらも「関わりたくない」感が全面に出ています。

 

妖夢「ん〜? 今私を笑ったな〜?」

霊夢「(あき)れているだけよ」

妖夢「うっうっ……(ひろ)い。友(らち)()と思ってたのに、そんな事言うなんて(ひろ)いよ。()うせみんなもそう思っているん()しょ?」

 

 顔を両手で(おお)って泣き肩を振るわせ始めてしまいした。

 妖夢さんは酔うと泣き上戸になるみたいですね、覚えたぞ。

 するとそんな様子に見るに見兼ねたのか、鈴仙さんが近付いて行き、

 

鈴仙「妖夢落ち着いて、誰もそんな思ってないから。ね?」

 

 と、妖夢さんの背中を(さす) りながらそう声をかけました。

 うん、今の「ね?」もいいですね。でもアリスさん程の威力はありませんでしたけど。今でも時々思い出すアリスさんの「ね?」。そして「家に泊まって行けば?」の上目遣い。あれはヤバイです、反則です。思い出しただけでニヤニヤが止まりません。あ、魔理沙さんの目が怖い……。

 

妖夢「鈴仙は優しいなー。お礼に()っこしてあ()るー」

鈴仙「え゛っ!? いや、そういうのはちょっと……」

妖夢「ん〜? 来ないなら〜、こっちから行っちゃうぞ〜」

 

 両手を広げて鈴仙さんに飛びつこうとする妖夢さん。もう酒に酔ったセクハラオヤジです。とは言え全ては手遅れ、助けようがありません。

 

優希「(鈴仙さん、無念です)」

 

 次の瞬間、僕は目を疑いました。

 あ……ありのまま今起こった事を話します! 鈴仙さんと妖夢さんの間に、ミニスカメイドの咲夜さんが「はいはい、ストップ」って言いながらいたんです。『現れた』とかじゃなくて『いた』んです。でも一瞬前には間違いなく『いなかった』んです。な……何を言っているのかわからないと思いますが、僕も何が起きたのかわからなかったんです。

 

咲夜「妖夢あなた少し休みなさい」

妖夢「はぁあああ? なん()すか〜? 私はま()()なん()すよ〜? そーれーにー、わたしは前々からあなたに言いたい事がー。うぃっふ」

 

 今度は咲夜さんをターゲットに声を上げて(から)み始めました。僕は人里の居酒屋でバイトをしていますが、酔っ払ってここまで『距離を置きたくなる』というか、『関わりたくない』というか、『面倒くさそう』って思うような人は初めて見ました。ムスッとして無愛想(ぶあいそう)な人とか、陽気になる人とか、すぐ寝ちゃう人とかならいますけど……。

 

霊夢「チャラ男、まさかこれで終わりにするつもりじゃないでしょうね?」

海斗「はて? なんの事やら?」

霊夢「(とぼ)けないで、私を出しにして。他のみんなが良くても、私が納得出来るはずがないでしょ」

海斗「じゃあどうしろと?」

霊夢「反省、ちゃんとしているんでしょうね?」

海斗「そりゃあもう。妖怪の山より高く、大穴より深くだぜ?」

霊夢「なら罰を与えても受け入れるわよね?」

海斗「そりゃあもう」

霊夢「本当にいいのね?」

海斗「そりゃあもう」

霊夢「それじゃあ花見の間、妖夢(アレ)の相手をしていなさい。ずっとよ」

海斗「そりゃあもうぇえええッ!? そりゃないぜ、あんまりだぜ!」

 

 酔っ払った妖夢さんを野放しにして「霊夢さんと二人で何を話しているんだろう?」と思ったら、いきなり目を見開いて大声を上げる海斗君。そしてその海斗君に霊夢さんは「何か文句あんの?」とギロッとした視線で威圧。

 これには流石の海斗君も、

 

海斗「へいへい、分かりましたよ」

 

 両手を上げて降参のポーズです。その後海斗君は笑顔を作ってはいるものの、口元をひくつかせて限界を超えてしまいそうな咲夜さんから、尚も絡み続ける妖夢さんを(なだ)めながら引き離すと、肩を貸してその場から離れて行きました。状況から察するに霊夢さんから「大人しくさせろ」とか言われたんだと思います。

 そしてこれにて僕と海斗君の誤解は晴れて一件落着。

 

優希「(ようやく落ち着いて花見を楽しめる)」

 

 そう思っていました。みんなもそう思っていたと思います。でも……。

 

霊夢「何この感じ!?」

輝夜「まったくこんな時にッ」

鈴仙「てゐ、あゆみちゃんをお願い!」

てゐ「分かったウサ。あゆみこっちに来るウサ」

早苗「あゆみちゃんとてゐさんは私達の後ろに!」

諏訪「神が守ってあげるよーん」

にと「新兵器のお披露目(ひろめ)会といきますか」

咲夜「美鈴、手を貸しなさい」

美鈴「おまかせを」

レミ「フラン、遠慮しなくていいわよ」

フラ「壊していいの?」

パチュ「敵……ならね」

蛮奇「……今のところ敵意は確認できない」

ナズ「ご主人、宝塔は?」

星 「ちゃんとここにある」

紫 「この気配に覚えのある者は?」

神奈「さあねぇ」

幽々「私も初めてね」もぐもぐ

永琳「呑気(のんき)に食べてる場合じゃないでしょ……」

妹紅「お前達は避難しろ!」

チル「大ちゃんあっち!」

大妖「リグル、ルーミアちゃんをお願い」

リグ「ルーミア急ぐぞ、飯は後だ!」

ルー「そーなのかー?」もぐもぐ

リリ「はーるでーすよー」

レテ「今年の花見はいつになく騒がしいわね」

 

 両手の指と指の間にナイフを(にぎ)る咲夜さんと、腰の刀に手を添える酔っ払っていたはずの妖夢さんを左右に置き、中央で険しい表情を浮かべて階段を(にら)み付ける霊夢さん。さらにその後ろでは慣れたフォームで構える鈴仙さんと美鈴さん。

 周囲を見回せば道具を手に身構える人達が大多数、明らかに戦闘モード。そして自分の力量を知り、避難を始める妖精達。一気に漂う緊張感は「ただ事ではない何かが近付いている」、そう予感させていました。

 

魔理「優希もここから離れろ」

優希「どうしたんですかいったい?」

アリ「優希さん早くこっちに。あなた達も!」

ルナ「アリスさん怖いですー」

スタ「サニーも早く!」

サニ「チルノこっち!」

 

 手を差し伸べるアリスさんに掴まり、サニー達と一緒に連れて来られた先には、

 

響子「\みんないる?/」

ミス「チルノ、リグル、ルーミア、大ちゃん。サニー、ルナチャ、スター。うん、大丈夫〜♪」

 

 声が大きい子とミスチーの他に、無表情の不思議ちゃんと何人かが集まっていて、物陰から様子を伺っていました。みんなが見つめる先、そこはさっきまで僕と海斗君がいた場所の更に先。僕が何度も通い、総量にしてリットル単位の汗を流した心臓破りの階段。

 やがてそこに現れた人は、

 

不思「あの人、里の人かな?」

??「きっと私の演奏を待ちきれなかったのね」

??「はっ、義姉(ねえ)さんの?」

??「いや、私のキーボードの演奏を聞きに来たんだよ」

??「いやいや、私のトランペットの音を」

??「いやいやいや、私のバイオリンの美しい音色でしょ」

??「何を言ってるのよ、私のビートを胸に刻みに来たんでしょ」

 

 右の手首に黒い腕輪。着物を着ているのに、黒いサングラス。僕はオシャレとかカッコイイ服装とかには(うと)い方ですが、これだけは分かります。

 

優希「(すごい変な組み合わせ……)」

 

 だって。でももっと特徴的だったのは被っている帽子。(いかり)のマークがついたその帽子、僕がついさっき見た物と瓜二つ。あれは初対面の僕に親しげに接してくれた村紗さんが被っていた帽子、それと全く同じ物です。

 流行ってんの? だとしてもすごい変です。そしてその人の背中には……

 

変服「博麗神社って……ここ?」

霊夢「そうよ、ここが博麗神社よ。それよりその背中のもの、すぐに下ろしてくれないかしら?」

 

 僕は一度だけ会った事がある。会ったと言っても、その人はあの時寝ていたから、僕の事なんて知らないと思います。そしてその種族が本当にいると僕に強い衝撃を与えた人……というか鬼、伊吹(いぶき)萃香(すいか)さんです。萃香さんは背中の上でぐったりと全体重を預け、動く気配がありません。

 

霊夢「さっさとしなさい!」

 

 萃香さんをおぶったまま微動だにしないその人に(しび)れを切らせた霊夢さん。手にはカードが構えられ、注意は警告へと姿を変えていました。

 その人は霊夢さんの指示に無言でゆっくりと従い、まるで高価な展示品を扱うように萃香さんを鳥居の下、柱に寄りかかるように座らせると、そのままずっと萃香さんを眺めていました。

 

霊夢「離れて、早く!」

 

 二度目の警告。「次はない」霊夢さんの目がそう語っています。僕の目には霊夢さんが構えたカードは警察官の拳銃の様に映り、その向けられた凶器をサングラス越しに(にら)み付けるその人は凶悪犯の様に映っていました。

 

霊夢「あなた、萃香に何をしたの?」

 

 萃香さんから四、五歩前へ進むと霊夢さん達を正面にして仁王立ち。でもそこまで。尋問には黙秘(もくひ)。それなのに身長が高い所為(せい)か威圧感がこっちまで伝わってきます。

 睨み合う二人、咲夜さんも妖夢さんも姿勢を低くし、直ぐにでも飛びかかりそうな緊迫した空気が流れていました。

 そこへ階段を駆け上がる二つの足音が。一人は僕もよく知っている寺子屋の先生、けどもう一人は……誰?

 

誰?「萃香? 萃香! 大丈夫!?」

先生「見せて下さい、これは……」

 

 萃香さんを()すりながら声をかける青い服を着た髪の長い女性と、耳を近づけて呼吸を確認する寺子屋の先生。するとその人は二人へ向けて何か一言二言(つぶや)くと、今度は「余所(よそ)見をするな」といった口調で

 

??「ちょっと」

 

 と声をかける咲夜さんに耳を傾け始めました。

 

咲夜「あなた、ただ者じゃないわね」

霊夢「それにその腕の鎖と気配、萃香やあいつ等と同じね。けどそれだけじゃない。あなた何者なの?」

 

 霊夢さんの質問を聞いているのかいないのか、その人は体こそ霊夢さん達を正面に向けているものの、視線は外側にいる僕達一人一人の顔を確認する様にゆっくりと、じっくりと動かしていました。僕がその人と視線が重なった時間、それはほんの数秒程度だった思います。でも、その間僕は全身を締め付けられるような息苦しさを覚え、脳内は「無理」の二文字で埋め尽くされていました。

 

妖夢「答えなさい! さもなければ斬ります!」

変服「自分は……」

 

 答えようとしたその瞬間、その人の首がピタリと止まりました。

 (こぼ)れるように呟かれる一言、それは誰にも聞こえなかったと思います。もしかしたら声にすら出していなかったのかもしれません。けど、ネガティブで、逃げ腰で、その上困ったらすぐにペコペコ頭を下げる僕だからきっと分かったんだと思います。その人の口は確かに、

 

変服「うおおおおおおおッ!!」

 

 「ごめん」って。

 雄叫(おたけ)びと共にその人から放たれる威圧感は肌にビリビリ打ち付け、僕を瞬時に束縛(そくばく)状態に。そんな中、目に飛び込んで来たのは、数十本という大量のナイフ。さっきの咲夜さんと同様に『現れた』というより、まるで既にそこにあったかのように姿を見せたナイフは、雄叫びを上げるその人へ向かって一直線に飛んでいきます。

 「危ない」「大怪我する」「直ぐにガードを」頭にそんな思いが過ぎる僕に、その音は心配を、情けを、考え方全てを改めさせました。

 

 

バッチーンッ!

 

 

 火薬が爆発した音、鞭で叩かれた音、光弾の当たった音、そのどれでもない音。強いて言うなら、アリスさんがフランさんに放った一発、あの音が力強さと重さと凄みを持ち合わせた音。

 そしてその直後に襲った突風は、(せま)るナイフを瞬く間に吹き飛ばし、

 

妖夢「……ッ、『折伏(しゃくぶく)無間(むけん)』」

 

 妖夢さんが()み込んでからスタートを切るまでに(わず)かな遅延を生じさせ、

 

美鈴「はぁぁあああッ!」

フラ「すぐにはコワレナイデネッ!」

 

 美鈴さんとフランさんに『敵』だと認識させていました。

 迫る三人の実力者、でも彼女達が辿り着くよりも早く、その人は既に次の動作を終わらせていました。

 少し猫背になるように上体を曲げ、力を失った両腕はダラリと前へ。

 美鈴さんにコーチを付けてもらっていたとは言え、色々な構えや技を覚えたとは言え、ほんの少しだけしか武術に触れた事のない僕が言うのもなんですが、あれは身を守る姿勢なんかではないです。その真逆、言うなれば全てを受け入れる『完全無防備』。

 そこからはほん1〜2秒の出来事、目を皿にして呆気(あっけ)に取られていた僕が現実を受け入れた時には、もう既に妖夢さん、フランさん、美鈴さんが倒れていて、

 

変服「――でぇえええッ!」

 

 その人は左の拳を掲げて殴りかかっていました。咲夜さん、霊夢さん、鈴仙さん達の頭の(はる)か上をふわりと飛び越えて。そしてそのターゲットとなっていたのは……

 

幽々「あらあら、こっちに来たわね」

紫 「どうやらあなたに用があるみたいだけど?」

??「みたいだねぇ……。身の程を知れ」

 

 さっき僕と一緒の席にいた

 

??「みんな手ェ出すんじゃないよ!」

 

 八坂神奈子さんです。

 

神奈「『御柱(おんばしら):ライジングオンバシラ』」

 

 迎え撃つ神奈子さんが放った赤いレーザーは全て命中。一方その人は両腕でガードの姿勢を取るも、空中では身動きが出来ずに爆煙と共にそのまま垂直落下。でも地面に体を打ち付ける直前で受身を取り、その場から背後へ。というかこっちに来ました。

 そこへ神奈子さんが進み出てその人の前で立ち止まると、

 

神奈「驚いたねぇ、あれを直撃しても無傷かい。でも何処の誰だかは知らないが、立場を(わきま)えよ。今のその姿勢、それが神への正しいあり方だ!」

 

 まるで(ひざまず)いた姿勢でいるその人を見下ろしながらそう言い切りました。そして僕はと言うと、口を開いたままポカーン。早速脳内サミット開催です。

 

 ①カミ?

 ②今神奈子さんカミって言いました?

 ③それはあの神様の『神』ですか?

 ④誰が?

 ⑤神奈子さん……が?

 ⑥ええええッ!?

 

 そう結論付いた頃には既に

 

変服「ふざけんじゃねぇッ!」

 

 事は動き出していました。立ち上がり放った強い怒気は、楽しい宴会の場を打って変わって戦場にさせてしまいそうな気配を漂わせていました。

 

??「やめなさい!」

 

 その声の主に救われるまでは。

 

??「あなたを信じて黙って見ていれば」

変服「けどコイツ今!」

??「約束でしょ!!」

 

 僕を誤解から救ってくれた恩人、さとり様です。

 二人の会話から察するに知り合いである事は明らか。そして交わされている内容不明の約束。「いったいあの人は誰で、さとり様とはどういう関係なんだろう?」と思いを巡らせ、その答えを知っているであろう東方博士の海斗君に「後で聞きに行こ」と考え始めた時、冷たい視線が集まるその場に、平然とした表情で歩み出る以外な人。その人は歯をくいしばって悔しそうに(うつむ)く彼のそばで足を止めると、

 

あゆ「あの〜、弟分さん……ですよね?」

 

 顔を(のぞ)き込むようにしてそう尋ねました。

 

てゐ「あゆみ知ってるウサ!?」

 

 さらにその直後、

 

  『若様』

 

 突風の様に現れ、あゆみさんよりも前で(ひざまず)く三人の温泉組。(あや)さんとはたてさん、それに(もみじ)さんです。『弟分』と『若様』放れたこの矛盾する立場の単語に、辺りでは「彼は何者なのか?」といった議論が始まっていました。

 そこへみんなを代表して進んで尋ねたのは

 

??「さとり、アイツは何処の誰なんだze☆?」

 

 他でもない魔理沙さんでした。

 

さと「彼は……」

 

 そこで言葉を詰まらせ、足下に視線を落とすさとり様。「話したくない」そんな雰囲気を漂わせていました。けど、それは許されませんでした。さとり様から離れた所、

 

??「みんなが知りたがっているのに、この期に及んで隠しと通せるとでも思っているのかしら?」

 

 そこから扇子(せんす)を広げた紫色のワンピースドレスを着た女性は、挑発的にそう尋ねると、さとり様は睨み付ける様に三つの視線を……。

 

??「おっと、させませんよ」

??「ごめんな(しゃ)い、命令なんで(しゅ)

 

 しかしそこへ視線を(さえぎ)る二人が。一人は僕がさっき見かけた赤い服を着た猫みたいな女の子、そしてもう一人は黄色いふっさふさな毛並みの尻尾が一つ、二つ、三つ……九つ。

 まさか某忍者漫画の主人公の中にいたアレじゃないよね……やっぱり後で海斗君に聞いてみよ。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 正直言って邪魔ですね。あ、ご挨拶が遅れました。古明地さとりです。

 私の前に立ちはだかるこの二人、主人の心を読ませないための盾という事でしょう。そしてこうまで近づかれてしまっては……。なるほど、確かにこれではあなた達二人の心しか読めませんね。賞賛に値します。

 

さと「さすが賢者様、手回しがいいですね」

紫 「話をはぐらかすつもり? 話してもらうわよ」

 

 こんな事になるのならお燐とお空に、彼女の式神達の相手を頼んでおくべきでした。反省。

 

さと「チェックメイト、ということですか」

 

 完全に追い込まれました。

 

さと「あれから(およ)そ5年……か」

 

 あの時から隠し続けられた事の方が奇跡と考えるべきでしょうか。

 

こい「お姉ちゃん?」

 

 こいし、大丈夫だから。心配しないで。

 

さと「お話しします、彼が何者なのか」

 

 でもそれを語る上で伝えなければならない事があります。

 

さと「それと地底世界で起きた異変の全てを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あゆ「ね〜チビウサギちゃ〜ん。私ずっと数えてたんだけど〜」

てゐ「分かってるウサ。あゆみの言いたい事、よーく分かってるウサ」

あゆ「……」

てゐ「……」

あゆ「この人数だと〜」

てゐ「足りないウサ……」

あゆ「ど〜しよ〜」

 

幻想郷の花見_集合編  【完】

 




ここまで読んで頂き、
本当にありがとうございます。

一先ず【幻想郷の花見_集合編】は終わりです。
ですが花見はまだ始まったばかり、
集合編があるという事は……。
ですがその前に、
どうしても避けては通れないEpがあります。
それが次章になります。
正体不明の『変服』、誰でしょう。
『地底世界で起きた異変』、何の事でしょう。
はい、包みも隠しもしません。
次章のタイトルは

【Ep.7 東方地霊殿】

です。
とうとうここまで来てしまいました。
そしてようやく初めて書く異変になります。
どうか温かい目で見守ってください。

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