また、この回で一つ答え合わせをしましょう。
そして次回からいよいよ……。
女鬼「あらやだ、そーなの?」
女妖「そーなのよ。それでそこから出てきたのが近所の奥さんと……」
こうして何気なく歩いているだけでも
ふと辺りを見回してみても、当時の傷跡は今となってはもう見る影もない。あの辺りも私が修繕作業を行った所だ。
けど、記憶と胸の奥に刻まれた深い傷跡はそう簡単にはいかない。ただ時間に身をまかせ、記憶が薄れていくことを待つしかない。
鬼助「姐さん、昼飯どうしましょうか?」
私 「こっちに来たからたまには豪勢にいきたいところだけど……」
鬼助「あ、それなら前から行きたかった所があるんですよ。リニューアルしてから美味いって評判で――」
私 「悪い、せっかくだけど仕事終わりに予定があってな。ガッツリは食いたくないんだ」
鬼助「えー……思わせぶりですかー?」
私 「また今度な」
こうして笑っていられる未来が来るだなんて、あの時は考えもしなかったな――――。
『お空っ!?』
長い棒に腕を入れてはいたが、背後の炎に照らされる大きな翼を広げた影は
私 「違う、似せているだけでお空じゃない! お前は誰だ!?」
お空「失礼しちゃうな〜、本人だよ」
ヤマ「嘘をつかないで! お空は妖怪よ、でも今のあなたから感じるのは妖気なんかじゃない!」
キス「フッフッフッ……、あくまでシラを切るつもりか?」
ヤツ「ヘカーティア様と似た雰囲気あるけど、あんたが何者かだなんて関係ない。この
勢いよくスタートを切ったヤツに続いて飛び出す私達、それぞれが堪え切れずに爆発した感情を光弾に乗せ、惜しげもなく迷う事なく全力でぶつけた。何発も何発も何十発も。アイツが爆煙に
お空「
『ッ!?』
たったその一言、それだけで私達は攻撃の手を止めさせられ、瞬時に背後へと身を引かされていた。やがて守りの姿勢を取る私達の前に、粉塵の中から姿を現したアイツは……、
お空「女神様と似てるねぇ、そこまで分かってるならさ〜」
アイツは無傷だった。微動だにせず。
お空「手加減なんてしたらダメでしょ?」
その上
??「うっ……、やめ……」
そこへ何処からか聞こえて来た弱々しく、今にも消えてしまいそうな声。注意深く周囲を眺めていると、地面に転がる黒い物体に視線が止まった。初めは木材の燃えかすかと思ったが、
ヤマ「大丈夫ですか!? ひどい火傷……」
キス「フッフッフッ……丸焦げ」
パル「早く手当てしないと」
慌ててその者に駆け寄るヤマメ達。私の位置からでもその者が命の危険に
私 「あれをやったのはお前か?」
お空「そうだけど? 彼女だったら本気を出せると思ったのに、準備運動にもならなかったよ」
アイツを両方の目で真っ直ぐに捕らえていた。
私 「こんな事をして何がしたいんだ?」
お空「ん〜、強い奴と戦ってこの力がどれ程の物か試したい、かな? それでその後に用が無くなった
町に危害を加え、被害者まで出し、それでもなお……。けどそれ以上に、それが
私 「強い奴がご
ヘラヘラと笑いながらそう告げたアイツは……
私 「相手にナッテヤラアアア゛ッ!!」
私の理性をぶっ壊した。
??「――ん、――さん、姐さん!」
私 「ハッ!?」
??「どうかしました? さっきから呼んでるのに、早くしないと蕎麦が伸びますよ? あとそれ……」
私 「あ……」
目の前で蕎麦を
暴走した怒りを拳に宿らせて放った
お空「やっぱりこんなものなの?」
あの手応えの無さ。アイツはまるで「虫が止まって
私 「そんな……そんなはずないッ!」
私は込み上げる
私 「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ」
グツグツと煮えたぎる頭のまま、同じ過ちを繰り返そうとしていた。
??「――さんダメです!」
さと「はぁ……、はぁ……。――さん、それでは……ダメです」
私 「さとり嬢コイツいったい何なんだ?! 何でお空の姿を――」
さと「説明は後でします。私もお聞きしたい事がありますが、まずは……」
お空「ん〜? いいよ二人でも。相手に
私 「ふゥ・ざァ・けェ・ンナッ!」
さと「待って下さい!」
あの時は本当に危なかった。何がって、さとり嬢が振り上げた腕に
さと「挑発に乗らないで下さい。それでは思うツボです」
そう言われて私はこう思った。
私 「(けどそれじゃあ……このまま指を
と。
だがそれは放たれる事はなかった。
さと「そうではありません」
食い気味でもなく、言葉が発せられるよりも、
今思い返すとあそこから始まっていたんだろうな、
私 「(じゃあどうしたら?)」
さと「私に任せて下さい」
私 「(何か策があるのか?)」
作戦というのが。
さと「はい、そのためにはあなたに冷静でいてもらわないと困るんです」
それをアイツに悟られないようにしていたんだ。
さとり嬢はそこまで告げると最後に
さと「あなたの
そう言い残し、前へと進み出た。
お空「まずはそっちから? 二人同時じゃないの?」
さと「
私を残して始まる二人の戦い。相手の心を読めるさとり嬢は、向かって来るアイツの攻撃を余裕で
私 「すぅー……。ふぅー……」
肩で息をしていたさとり嬢が体力切れを起こすのも時間の問題。「早く加勢にいかないと」と
そして瞳を閉じて思い浮かべる。あの時の想いを。
心がバラバラに
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――祭の後の宴会で――
私 「声が聞こえて来たんだ」
『声?』
私 「聞こえたっていうのも変か、伝わって来たんだ。あれは――の心の声、本心だよ。夢とか気のせいとかじゃない、分かるんだよそれが。何というか、アイツと意識が繋がった感じがしてさ」
さと「ふむ、実に興味深いですね」
ヤマ「テレパシーってやつかな?」
お燐「勇儀さん超能力者だったニャ?」
キス「フッフッフッ……、まっがーれ↓」
ヤツ「勇儀と心で繋がるなんて、――のクセに
私 「そんな
『普通……の?』
私 「なんだよみんな
『別にー』
私 「ったく、話を続けるぞ。それでその後、なんかこう……胸の奥がガッと熱くなって、酒に酔って気分が良くなったというか、じっとしていられないっていうか……こういうのなんて言うんだ?」
ヤマ「興奮状態?」
私 「あー、うん。そんな感じだ。そしたら体の底からグワァァァって力が込み上げて来て、気が付いたらみんなに
『まったく』
私 「だよなー……。どうやったら伝わるのやら……」
さと「勇儀さん、勇儀さん。その時の事を思い浮かべてみて下さい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私の胸の奥に直接流れ込んで来たアイツの声。
(口うるさくて……)
おっとここは余計だった。
(強くて、かっこよくて)
ありがとうの感謝の気持ち。
(綺麗で優しい)
照れ臭くなる嬉しい気持ち。そして……
(鬼の血を受け取った鬼だ!)
胸いっぱいに満たされる幸せな気持ち。
やがて産まれた三つの感情は一つになり、新しい想いへと形を変える。
「守りたい、助けたい、力になりたい」そう強く、強く、より強く思えば思う程、力が奥底から噴水のように
当時私の心を読んでいたさとり嬢は、その事に腹を抱えて笑いながらこう尋ねて来た。
さと「あははは。勇儀さん、それをなんて言うのかご存知ないんですか?」
『怪力乱神』。暴力的で破壊的で恐ろしげな私の能力、その発動条件は――。
さと「『愛』って言うんですよ」
勇儀姐さんの件、どうでしたか?
きっと予想通りの方が多かったはず。
という主の勝手な予想。
【次回:裏_一語り目】