東方迷子伝   作:GA王

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東方プロジェクトのアプリが出るらしいですね。
東方lost world どんなやつでしょうね。


表_一語り目

 

 

私 「さとり嬢交代だ!!」

 

 自分でも薄々気が付いていた。手のかかるアイツへの想いが引き金だって。けど、さとり嬢に言われて、その想いの名を告げられて、改めて気付かされた。ホントまさかだったよ。発動条件が能力の真逆、こんなにも平和的で優しいものだったなんて。

 

さと「お願いします。まずは一発お見舞いして下さい!」

 

 その事にヤマメ達ときたら目を輝かせて、やれ「ステキ〜♡」だの「ロマンチックぅ♡」だの、好き放題言いやがって……。でもそれは許せた。だけど親友ときたら「似合わなーい」ってゲラゲラゲラゲラと笑い転げやがって。……そう言えばあの二人は無事にゴール出来たのだろうか?

 

私 「うらあああッ!」

 

 矛盾、そして女子達の話のネタにされてしまう滑稽(こっけい)で、その上親友が言うように私のイメージとは程遠い能力。だがそのおかげであの時私は初めて――

 

お空「うぐぅぅぅッ」

 

 アイツの表情を(ゆが)ませる事が出来た。私が放った左ストレートがアイツのボディに深く突き刺さったんだ。直撃を受けたアイツは二、三歩後退(あとずさ)りをして腹部を抑えると、背を丸めながら肩を震わせてしばらく動かなかった。拳に残る確かな余韻(よいん)から、最初は「苦しんでいる」と嬉しさのあまり小さくガッツポーズを取っていた。でも、その考えは浅かった。

 

お空「き……キ……キ」

私 「?」

 

 アイツは……

 

お空「キタキタキタキタキあああーッ!」

 

 喜んでいやがった。

 耳障(みみざわ)りな笑い声を上げながら迫って来るアイツの攻撃を(かわ)し、(はじ)き、相殺(そうさい)し。私も負けずと拳で反撃に出るが、攻撃をしてはすぐ離れるヒットアンドアウェイの戦術の前では触れる事すらもできず、やむなく威力の高い大きな光弾で応戦していた。あまり得意ではない戦い方に歯痒(はがゆ)い思いを強いられていた。そんな時だった。

 

 

ドーーーン

 

 

お空「うぐ……ってあれ? なんとも……ない?」

さと「今のは私です。先に言っておきますが、コピーは得意なんです」

 

 私の心境を悟ってくれたさとり嬢が、私の攻撃に似せた光弾を放ってくれたのは。

 

さと「ここから私も加勢します。果たしてあなたに見分けがつくかしら?」

 

 さとり嬢と肩を並べて共に闘うのはあの時が初めてだった。しかも事前の打ち合わせも無ければ、サインやアイコンタクトもなく。後にも先にもあんな経験はもうないだろうな。

 

私 「(ここで右へ注意を外らす事が出来れば――)」

 

 

ドーーン

 

 

お空「ぐっ、いつの間にこんな弾幕を!?」

私 「スキありだあああ!」

 

 

ドドオオオオオン!

 

 

 自分が期待する速さ、方向、大きさの援護が告げてもいないのに、思うだけで抜群のタイミングで放たれ、

 

お空「いっつつつううう……。また覚り妖怪か!」

私 「(さとり嬢に注意が向いた。なら次のさとり嬢の動きは――)」

 

 私も彼女の考えが伝わって来て。

 

お空「待ちやがれッ」

私 「おい」

 

 

ガッ!(お空の服を掴む音)

 

 

私 「この私を無視するなんて」

お空「なんかイヤな感じ……」

私 「随分と余裕だなあああッ!」

お空「どぅわあああぁぁぁ……。。。☆」

 

 あんな感覚を、あんな快感を忘れられるはずがない。

 

私 「『お馴染み:パルスィ投げ』」

さと「パルスィさんではありませんがね」

私 「へへ、ナイスアシスト。さとり嬢」

さと「ふふ、あなたこそ。流石です」

 

 あの時の私達は間違いなく世界最強のコンビだった。

 

私 「追うぞ」

さと「はい!」

 

 そしてその結果、アイツを翻弄(ほんろう)し続け、

 

お空「くっそー、さっきから威力のある攻撃だと思ったら弱かったり、弱いと思ったら強かったり……」

 

 苛立たせていた。宙に浮かびながら、地に足をつける私達を見下ろしながらも、その表情に余裕はない。さらにその怒りの矛先は、

 

お空「強くないクセにィいいい! さとり様邪魔しないでよ!」

 

 さとり嬢。そこへ、

 

さと「ふんっ」

 

 さらなる追い討ちが。

 

さと「二人でもいいって言ったのはあなたよ? まさか武が悪くなったから『やっぱり無し』なんて言うの? 強敵だと思ったのに案外大した事ないのね」

 

 さとり嬢が発言する度に、アイツは首を折り、背を曲げ、拳をワナワナと震わせていた。怒りのバロメーターが上昇している証だった。そしてついに、トドメのド・ストレートな一発――

 

さと「バカカラス」

 

 その瞬間アイツはさとり嬢へ真っしぐらに拳を振り上げて襲いかかった。光弾ではない直接的な攻撃。私とさとり嬢はそれを、それをずっと待っていた。

 さとり嬢は怒りで周りの見えなくなったアイツの握り拳をギリギリまで(こら)え、その間に私はアイツの背後へ回り込む。さとり嬢が躱したのを見届けて放つは――

 

私 「おい、こっちだバカカラス」

お空「うにゅ?」

 

 町を……旧地獄を守りたい。その想いも乗せ、

 

私 「歯ぁ食いしばれッ」

 

 能力全開、手加減一切無し、スペルカードなどという生温いものではない、父さんの伝家の宝刀。物理攻撃に衝撃波を上乗せした究極破壊兵器。

 

私 「大江山(おおえやま)(おろし)いいイッ!」

 

 空気を破裂させる音を辺りに響かせ、大気を揺るがし、強力な突風を生み出し、アイツを地の底へと叩き落とした。

 

さと「きゃーーー……☆」

 

 ついでにさとり嬢も屋敷まで吹き飛ばしていたけどな……。

 そう、あの時私達は既に地霊殿の裏庭に辿(たど)り着いていた。

 作戦の内容は一切聞いていない。でも、アイツの注意が自分に向いたと察するや、背を向けて走り出し、アイツが後を追って来たら振り返って後退しながらも応戦する。そんなさとり嬢の奇妙な戦い方に、初めは疑問を抱いていたが、徐々にその意図を察していった。「何処かに誘い込もうとしている」と。

 そこからはさとり嬢の向かう方角に合わせて私も攻撃を加えていった。誘導してみたり、面倒……もとい、手短になるように吹き飛ばしてみたりと。

 そして敷地内に入り、裏庭に回った時に何がしたいのか確信した。建設に参加していただけにこの屋敷の事は各部屋の作りと間取り、さらに特別な部屋がある事までよく知っていたから。

 その先はさとり嬢にとっても()けだったはずだ。あの部屋の入り口の前でスタンバイし、苛立つアイツを言葉でさらに(あお)って怒りを呼び起こし、引きつける。そこにカッとなって突っ込んで行くアイツの背後から私が……。一応あの時、私に気付いてからぶち込んだと記憶している。目も合ったはずだし。背中から攻撃をするなんて私のポリシーに反する。だからそれだけはやっていないと断言出来る!

 

さと「勇儀さん早く!」

私 「分か(わー)ってる!」

 

 その後私は急いで灼熱地獄への入り口、頑丈で強固な扉を閉ざし、手に余るアイツを閉じ込める事に成功した。安心感と能力切れからドッと押し寄せる気怠さの中、私はさとり嬢からその時に初めてアイツが何者であるのかを聞かされ、強いショックを受けた事を覚えている。あれは「まさか」という驚きよりも……。

 

さと「初めは目付きも口調も、お空のものとは別物だったのですが……」

 

 足下に視線を落として語り始めるさとり嬢の手は強く握り閉められ、指の隙間からは赤い色の涙が流れていた。私はその先に話すであろう事を予測していながらも、黙って耳を傾けていた。

 

さと「バカカラスと言ってムキになったり」

 

 この時「そこは誰でも怒るだろ」と思ったのは内緒だ。

 

さと「私を『さとり様』って呼んだり、おまけに『うにゅ?』って……。あの子の人格はまだ――」

 

 やっぱり。それが素直に思った事。だから私は話を聞いた時に胸を締め付けられたんだ。きっとお空はずっと戦っていたんだ。身体に侵入してきた八咫烏(ヤタガラス)とやらと。

 お空が戦いに勝つと信じて待つ事が最善の方法だっただろう。そして私達もそうであって欲しいと願っていた。

 けどそれは許されなかった。時間は待ってなどくれなかった。願いは叶わなかった。

 

 

 ドガーンッ!!

 

 

??「メガフレア、ギガフレア、ペタフレアあああッ!!」

 

 最初の大きな音から始まり、次々と打ち込まれる扉への攻撃。その激しさは回を重ねる毎に増していった。だが扉は当時の私達の技術(ちから)を集結させて作りあげた耐熱性と頑丈性に富んだ物。いかなる衝撃と熱にも耐えられるように作ってある。

 すると扉の内側から

 

八咫「くそおおおっ、開けろッ!! ここから出ぜえええッ!」

 

 ガンガンと叩く音と共に怒り狂うアイツの声が聞こえて来た。

 

八咫「こんな事をしてただで済むと思ってるの?!」

私 「出すわけないだろッ」

八咫「ふざけんな! 今すぐ開けないとお前から消すぞ! 開けろよッ!」 

 

 扉への物理攻撃音と同時に発せられる言葉は、暴力的ものではあったが、そのトーンは徐々に力を失っていた。やがて音も声も聞こえなくなり、「観念したか?」と思い始めた頃、

 

??「さとり様……」

 

 中から……。

 

??「……助けて」

 

 暴れ続けるアイツの声と高さも波長もなんら変わらなかった。けどあの時分かったんだ、それがアイツではなく()()の悲痛な叫び声であると。そしてこれは、

 

さと「お空ぅ……」

 

 さとり嬢には重く、大きく、強く響いていた。光を失った瞳から一筋の涙が流れ、何かに取り憑かれたかの様に覚束(おぼつか)ない足取りで扉へと近づいていた。「救いたい」その一心だったはずだ。

 

私 「さとり嬢気をしっかり持て! 今出したらアイツは間違いなく真っ先にこの町を、地底世界を滅ぼすぞ!」

 

 でもそれを許してしまったら、取り返しの付かない事になっていた。あの時、ああは言ったがお空の助けを求める声を聞いてしまった手前、八咫烏(アイツ)罵声(ばせい)がお空の泣き叫ぶ声に聞こえて心苦しかった事を覚えている。今でも思い起こすだけで辛い。

 本心を押し殺し、目下の扉を見守りながらアイツが諦めて落ち着く事を願う。あわよくばいつものお空に戻って欲しいとも。それくらいしか出来なかった。

 

八咫「チッッッキショオオオッ!」

 

 無念、無情、無慈悲。時の流れを(つかさど)る神がいるのなら、胸ぐらを掴んでその時のことを問い詰めたい。

 

八咫「開けろって、イッテンダヨォオオオ」

 

 「何故願いを受け入れてくれなかった?」と。

 分厚く強固な扉越しだというのに、肌にヒシヒシと突き刺さる凄まじい迫力。その余りある怒りの力は、

 

私 「な、なんだ? 地震か?!」

さと「違います、これは……」

 

 足下をガタガタと(すく)み上がらせていた。さらに揺れは次第に激しさを増し、ピシッ、ピキッと音を上げて亀裂を生み出し、その隙間(すきま)から蒸気が噴射。それも一箇所、二箇所どころの騒ぎじゃない、そこら中一帯で湯気が暴走していた。

 

さと「中の温度が急激に上がっているんです! 扉は大丈夫かも知れませんが、このままでは地盤ごと――」

私 「なっ、アイツ灼熱地獄ごとぶっ壊すつもりか!?」

 

 私のその予想は不幸にも正しかった。中から怒りに満ちた雄叫びが漏れ、その声が強くなる度に地面が今にも吹き飛びそうな程盛り上がっていき、挙げ句の果てには地底全体を大きく揺るがし始めた。いつかの大地震の時のように。

 

私「(このままでは床が吹き飛ぶ)」

 

 そう思った時だった――――

 

 

ピーーーーーーーーーッ!!

 

 

私 「んあ?」

鬼助「姐さん休憩終わりですよ」

私 「もう終わりかい。休んだ気がしないな」

鬼助「『うーん、うーん』って唸ってましたもんね。悪い夢でもみてました?」

私 「悪い夢ねぇ……」

鬼助「へい?」

 

 もしそうだったら救われたんだけどな……――――

 

 

 鼓膜を突き破るようなバカでかい爆発が何処からか聞こえて来たのは。

 

私 「何だ今の!? 何処から聞こえて来た?!」

 

 後に私は知った。それが……。

 

さと「分かりませんッ! でも見た限り周囲も町の方も何も起きていません」

 

 それが幕開けの合図、地上に吹き出た地の恵み『間欠泉』であると。

 けど当時の私はそんな事が起きているなんて少しも考えもせず、ただ「町の何処かで更なる大惨事が起きていやしないか」と、それだけを心配していた。それはさとり嬢も同じ。

 そんな私達の気など御構い無しに、

 

八咫「はぁ、はぁ、手応えを感じたのに……。無駄に頑丈な作りしやがってェエエエッ!」

 

 第二波を起こそうとしていた。

 

私 「(このまま何もしないでいたら……)」

 

 脳裏を掠める最悪の状況。とは言え、私達ではどうにもできない。だからあの時、私は彼女に賭けたんだ。

 

私 「お空、聞こえてんだろ?!」

 

 アイツの中で膝を抱えて泣いているであろうお空自身に。

 

私 「絶対に助ける! だからお前さんも足掻(あが)け! (あき)らめるな!! そいつにいいようにさせるんじゃない!」

 

 地底世界の未来を賭け金に、負ければそれはこの時点で消え失せる一世一代の大番勝負。(さい)投げられ、その出目は……

八咫「がっ……、頭の悪い地獄烏が――出て来るんじゃないわよッ」

 

 私の勝ち。そしてあの時聞こえた声は紛れもなくお空の声だった。

 

お空「うにゅーッ! 負けないもん、さとり様と鬼さんをイジメないで!」

八咫「あああぁぁぁ……、、。。」

 

 扉から遠ざかっていく叫び声と、ピタリと止んだ大地の揺れ。いつまた再発するとも分からない一刻を争う中でようやく手にした大チャンスに、私は急いでさとり嬢に尋ねた。

 

私 「さとり嬢! お空が戦ってくれてるうちだ。次にアイツが戻ったら灼熱地獄ごと吹き飛ばしかねないぞ!!」

さと「……」

私 「何か考えがあってここに連れて来たんだろ?!」

 

 彼女が考える作戦というのを。

 

さと「お空を……お空を屋敷ごと地底奥底に沈めます」

私 「はああああッ!? お前さんそれ本気か?! 本当にそれでいいのか?!」

さと「いいわけないじゃないですか! でも地底を守るにはもうそれしか手が無いんです!」

 

 母さんの意思を継ぎ、凛とした姿で町の長を務めて来た彼女。その彼女がその時、膝から崩れ落ちて大粒の涙を流していた。

 

さと「――さん……」

 

 私は手のかかるアイツが幼い頃、三カ条の他に口酸っぱく教えていた事がある。それは今でも嫌な顔をしながらも守り続けてくれている。

 

さと「勇儀さん……」

 

 鬼は交わした約束を破らない

 

さと「助けてください」

 

 のではなく、

 

私 「へへ」

 

 『鬼は交わした約束を必ず守る』と。

 そして私はお空と約束した。「絶対に助ける」と。

 

私 「よっしゃまかせろ!」

 

 意気込んだ私には作戦なんてなかった。でもやらねばならない事は分かっているつもりだった。

 

私 「(八咫烏が暴れ出したら黙らせる)」

 

 ただそれだけを考えて扉を見下ろしていた。

 中は恐ろしい温度だっただろう。例え私と言えど、ものの数秒で全身大火傷を負うのは避けられなかっただろう。そう、全ては憶測。なぜなら私は最後まであの部屋に入る事はなかったのだから。

 

私 「な、なにィイイイ!?」

 

 あれに気が付いたのは本当に偶然だった。いったいいつから、どうしてあんな状況になっていたのかなんて、当時は全く見当もつかなかった。

 気合いを入れようと深く息を吸い込んだ時に見上げた頭上には、

 

 

ウウォオオオオオ

 

 

 雄叫びを上げる怨霊が川上を目指す魚の群れのように、町を目指して飛んでいたんだ。

 

 

 

 




【次回:裏_二語り目】
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