これはお燐と彼から聞いた話です。
ですがお燐はお燐なりに悩んで、考えて、彼の指示に従っていたんです。さらにお燐はあの時既に霊夢さん、あなたに来てもらう事を密かに望んでいたようなのです。いくつもの異変を解決しているあなたを。
何故知っていたのか不思議ですか? どうという事はありませんよ。あなたの実力は萃香さんから
話が大きく
彼 「さてと」
お燐は怨霊を放つため、二人とは別行動を取ることになりました。
彼 「これでお燐の心配は——」
つまりケルベロスを彼と筋トレマンの二人だけで相手しなければならなくなったんです。とは言っても、元々お燐は戦力となっていなかったみたいですし、
筋ト「無くなったな」
下手すれば足手まといなっていただけなのかも知れません。いえ、決して彼らがそう言っていたのではありませんよ? あくまで私の憶測です。ただその時の話を聞く限り、
筋ト「で、どうしようかアイツ」
彼 「どうにかするしかないだろ?」
ケル「グルルル」
二人きりになった途端に、
筋ト「ところでさっきアイツをぶん回して分かった事がある」
彼 「なに? まさか弱点とか?!」
筋ト「アイツ……」
彼 「……」ゴクリ
筋ト「いい筋肉していやがった」
彼 「はあああッ?! こんな時に何言ってんの!? どこまで筋肉マニアなんだよ!」
筋ト「まあ最後まで聞けって。オレが言いたいのはつまり……」
彼 「つ、つまり?」
筋ト「アイツ……」
彼 「……」ゴクリ
筋ト「食ったら美味そうだな」
彼 「マジでお前何が言いてぇんだよ!!」
息が合い始めたみたいなんです。
筋ト「分かってないねー」
え? そんな事ない?
筋ト「良質な肉ってのは
彼 「あ、おいっ」
筋ト「見せてやるよ。肉屋の
アレは筋トレマンが勝手に始めた事?
彼 「な、なあ。さっき振り回していたそれって……」
おかしいですね? 後に筋トレマンから聞いた話だと、そのように語ってはいなかったけど?
筋ト「ああ、コレは……」
あ、失礼しました。皆さんは何のことだか分かりませんよね。
私が把握している事をお話ししますと、筋トレマンはお燐が去った後、ある武器を手にしていたんです。その武器とは筋トレマンが登場した際に使った鬼らしい鈍器、
筋ト「師匠の——、親方様のだ」
金棒です。そしてその金棒は筋トレマンの師が若かりし頃に使っていた物、『力を倍化させる能力』を使って片手で悠々と振り回していた物。ですが大人の鬼さん達では到底持ち上げられないほど重い代物です。
筋ト「さーってと」
それを筋トレマンは
ケル「ガウガウガアアア゛」
筋ト「まずは一発かっ飛ばしますか」
両手ですが難なく持ち上げたんです。そこから肩に担ぐと目前まで迫るケルベロスに照準を合わせて
筋ト「……流『一本足刀法』」
振りました!
スカッ
が、金棒は獲物を捕らえる事なくワン・ストライク。ケルベロスが瞬時にコースを変え、彼らの真横へと回り込んだんです。その結果空気を切る
彼 「うぐぅぅぅ……。なにが見せてやるだよ」
筋ト「おい」
彼 「なんだよ?」
筋ト「アイツ速いぞ」
彼 「知ってるよ! さっきからずっとそうだよ!」
筋ト「しかも途中で曲がった」
彼 「だからもう真っ直ぐには来ないって言っただろ!!」
ケルベロスが知恵を使った事と金棒を警戒している事は、その動作から容易に想像出来たでしょう。そして何か手を打たなければ、いずれは
彼 「はあああああ!?」
筋ト「よし、行け」
彼 「ふっっっざけんな! 下手すれば頭が——大怪我じゃ済まないんだぞ?!」
筋ト「大丈夫、大丈夫。師匠の必殺技を受けてピンピンしていたんだから」
彼 「全部知ってるクセに!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これは彼らと話している時に、心を読んでいて偶然知ってしまった事です。この事は読者の皆様だけにお話しします。どうか他言無用でお願いします。約束ですよ?
彼が親方様に勝利したあの日、勇儀さんのご実家で宴会が開かれましたよね? そして彼らは食べ物の買い出しに行きましたよね? 舞台はその時のお話です。
??「あーもう! こっち来い!!」
気分が悪くなった彼を
彼 「ふー……」
彼の顔色はスッキリとしたものへと変わりました。暴飲暴食のなりの果て、これには流石の彼も「食事をする時はよく噛んで食べよう」と改めて心に誓ったみたいです。でも結局のところ、今でもそのスピードは
失礼しました。話が脱線してしまいましたね。
不要な物を全て捨て去り心機一転、清々しい顔で買い出しへと歩みを進める彼でしたが、
筋ト「おい!」
そうすんなりとはいかなかったみたいです。
筋ト「なんだよコレ?!」
その瞬間彼の顔に再び雲がかかりました。
筋ト「なんでこんな物が出てきたんだって聞いてんだよ!」
筋トレマンが見た物は決して体内から出てくるはずのない物でした。それは細長くて白い布切れ……そう、包帯だったんです。
彼 「みんなには……黙ってて」
筋ト「じゃあやっぱりあの時何度も起き上がれたのって……」
彼 「それのおかげ。でないと勝ち目どころか生きてすらいられなかった」
筋ト「いつからだ、いつから考えてた!? こんなの計画してないと——」
彼 「色々計画はしていたけど、それの事はぶっつけ本番だった。思いついたのは
つまりこういう事です。彼は親方様と決闘を行う前に訪れた控え室で、治療中の勇儀さんの腕から
話を聞かされた筋トレマンの表情は険しいものだった事でしょう。思う事も色々あったでしょう。ですが、
彼 「それに」
筋ト「それに?」
次に彼が発した一言が筋トレマンに衝撃を与え、
彼 「ヒントは和鬼だから」
筋ト「オレがヒント? どういう事だよ?」
そこから語られた内容に
彼 「前に七不思議が書いてあったメモを食べただろ?」
言葉を失ったそうです。
彼は恐らく前々から「
彼 「腹の中に入れば証拠はなくなる」
しかし彼もここまでは考えていなかったでしょうね。それでも見つけてしまう能力を持つ方が近くにいたと。『
ホント
筋ト「お前……、自分で何を仕出かしたのか分かってるのか? これは完全に三か条に反する行為だぞ?!」
重罪です。鬼の鉄の
彼 「だから頼む。見なかった事にして! 誰にも言わないで!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
筋ト「そう言えばそうだった。じゃあやらなかったら、バ・ラ・ソ・ウ・カ・ナ〜?」
その案に彼は
彼 「チィィッキショォォォー!!」
そしてその場から全速力で走り出すと、あろう事か次の攻撃の体勢に入っていたケルベロスの前に立ちはだかったんです。さらに、
彼 「や、やーい犬。オマエの攻撃なんて全然効いてないぞー。悔しかったら噛み付いてみやがれー」
こう両手を広げて「ヤーイヤーイ」とおどけて見せたんです。終いには、
彼 「オシリペンペーンのアッカンベー」
下品にもアッカンベーをしながらヒップを突き出してペンペンと。
おや、顔が赤いけど? そこまで言わなくていい? 何を言いますか、あなたの立派な勇姿でしょ?
ケル「ヴゥゥゥ……」
そのおかげでケルベロスのターゲットがあなた一人になったのだから。
彼 「ヤバッ!」
ケル「ガウガウガウガウッ!!!」
彼とケルベロスのスタートはほぼ同時、さらに元々のリードは大きくはありません。ケルベロスからすると飛びかかればすぐにでも捕まえられる距離だったそうです。
ケル「ガアアアアッ」
案の定ケルベロスは彼に飛びかかりました。彼のすぐ後ろには大きな口が迫り、頭からかぶりつこうとしていたんです。絶対絶命の大ピンチです。でもそれこそが二人の狙いだったんです!
筋ト「伏せろ!」
彼 「これでいいんだろ?!」
筋ト「GJ!」
そうです、筋トレマンが考えた案というのは、
筋ト「コンガラ流——」
そこにいる彼が
筋ト「『
いくら素早く動けたとしても、空でも飛べない限り身動きができませんからね。
囮の彼は筋トレマンの合図で、スライディングをして間一髪のところで噛み付きを回避。そして筋トレマンはその彼の頭上を
カッキィィィィン
金棒はケルベロスの中央の顎下を真芯で捕らえ、遥か上空へと打ち上げました。そこからは筋トレマンの
筋ト「オーライ、オーライ」
落下してくるターゲットが射程範囲に入るや、
筋ト「
中央の頭にガツンと強烈な一撃を与え、
筋ト「
そこから胴体へビシッ、バシッと連続で打ち込み、おまけにパコーンと頭上へフライです。
筋ト「串刺し三年、焼き一生——」
ケル「ウガアアアア゛ッ」
そして落下しながらも、爪を立てて反撃に出るケルベロスへ
筋ト「『
Smaaaaaash! 駄目押しのフィニッシュです。
筋ト「五種盛り、まいどあり〜♫」
『一本足』『神主』何のことかわかりますかな?
調べればすぐ出てくると思います。
で、技名は……これもわかりますかな?
主の好物なんてす。
そして明かされる彼の無敵だった理由。
どうでもよさそうな七不思議のくだり。
全てはこの時のため、その一です。