東方迷子伝   作:GA王

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【やってきたぜ!幻想郷】嫁候補十人目_※挿絵有

 時刻は長針と短針が重なり合い、離れ始めた頃。少しばかり早いランチを済ませ、いつもとなんら変わらない平和な人里を行く

 

??「……」

 

 白髪おかっぱ頭。そして——

 

??「は……は……」

 

 ムズムズと鼻腔(びこう)動かす

 

??「ザクッ!」

 

 オタク。

 彼が憧の地(幻想郷)を訪れてから季節は冬を迎え、年を越し、あっという間に桜の花が咲き誇る時期を迎えていた。それは茶色主体だった植物達が先代の意思を引き継ぎ、次の世代がやる気を出して芽生え始める時期。

 

海斗「は……は……ズゴックッ」

 

 暖かくこそなっては来ているが、上着を手羽せない時期。故に、気を(ゆる)めると風邪をひいてしまう時期でもある。

 

海斗「は……は……ゲルググッ」

 

 お調子者の彼もまた、その被害者だろうか?

 

妖夢「つらそうですね」

海斗「あー……。正直言ってこれはヤバイ。鼻は()れるわ、ムズムズするわ、目も(かゆ)いし」

 

 否、それはこの季節の厄介者の仕業(しわざ)によるもの。その名も

 

海斗「100%花粉症だわ」

 

 である。

 ここ幻想郷は豊かな大自然に囲まれた秘境の地、この季節に花粉を()き散らす杉や(ひのき)などそこら一帯に

 

海斗「は……は……ジオングッ」

 

 これでもかと広がっている。逃げ場などない。花粉症に取り()かれてしまったが最後、生きながらにして地獄を味わう事になるのだ。何とも恐ろしい場所である。

 

海斗「マジかー、俺今年からデビューかよ」

妖夢「そんなにつらいんですか?」

海斗「ヤバイぜ、マジっぱねぇぜ。みょんはずっと幻想郷にいるのに、よく花粉症にならないな」

妖夢「体質、でしょうか?」

 

 自身から尋ねた事ではあるが、彼はおかっぱ頭のその回答に

 

海斗「(絶対そうじゃない)」

 

 と強い確信めいたものを抱いていた。

 

海斗「(半人半霊だからだろうな)」

 

 と。だがその考えも直ぐに改める事になる。周囲に目をやり、行き交う人々に注目してみれば、彼の様に苦しんでいる者が誰一人としていないのだ。これにはお調子者、流石に気が付いた。

 

海斗「(なにかある)」

 

 打開策があると。

 

海斗「なあ、みょん。何で人里の連中は花粉症にならないんだ? くしゃみ連発してるの俺くらいだぜ?」

妖夢「いえ、なる方はなるみたいですよ。買い物しているとそういった話題をよく耳にしますし。ただそういう方は決まって薬を処方してもっているそうですよ」

 

 その答えはなんて事のない、至極当然なありふれた解決方法。「症状が(ひど)ければお医者さんへ」である。だがそれは彼にとって別の意味を持つ。

 

海斗「Help me , ERINNNNNN!!」

妖夢「あー、また……」

 

 突如(とつじょ)全速力でスタートを切ったオタクに頭を抱える苦労人。「そうはさせない」と急いで彼の後を追いかけるのかと思いきや、ため息を一つ(こぼ)して変わらぬ速度で歩みを進めるのだった。

 

妖夢「行っても意味ないのに……」

 

 

ーー少女移動中ーー

 

 

 人里を出て程なくすれば見えてくる竹林。竹は早いもので一日に一メートル成長すると言われている。今彼の目の前で鬱蒼(うっそう)()(しげ)るそれらは、通常のものとは比較にならない程の速度で成長を遂げ、時間単位でその姿を変えていく。無用心に入りこもうものなら、竹林は容赦(ようしゃ)なくその者を飲み込んでいくだろう。踏み入れたら余程の強運を持たない限り抜け出せない竹林、九割九分九厘迷子になる竹林。付けられた名前は『迷いの竹林』。

 

 

ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ!

 

 

 そんな理由から人里に住む者達でさえ、幻想郷の実力者達でさえ滅多に近付こうとはしない場所ではあるが、人里の者達はこの地に日頃から大変世話になっている。

 

妖夢「……」

 

 竹林の奥深くにある屋敷『永遠亭』。幻想郷屈指の凄腕薬剤師の住まう屋敷であり、幻想郷(地上)唯一の病院なのだ。病気になったり、怪我をしたりした際はそこを訪れる。

 

 

o彡°! o彡°! o彡°! o彡°!

 

 

 ではどうやってそこへ辿(たど)り着くのか、方法は至ってシンプル。竹林に詳しい者に道案内をして貰えばいいだけ。しかもその者は高確率で人里に訪れるため、出会うのは実に容易である。さらにその者は一人ではない。医者本人を含めた五名と、最近居候(いそうろう)を始めた新入りを加えた合計六名もいるのだ。

 で、

 

妖夢「何をされているんですか?」

 

 彼に近づいて眉間(みけん)にシワを寄せて尋ねるおかっぱ頭。

 無事に見つけられたのはいいものの、このオタク、迷いの竹林を前にして左手を腰に添えた堂々とした(たたず)まいで、右手に作った拳を振り上げては、胸元へ振り下ろす儀式を繰り返していた。ずっと他人のフリを決め込んで、気付かれないように見ていた彼女だったが、いよいよ耐えきれなくなり、

 

海斗「いやな、こうしてたら向こうから来てくれると思ってさ」

 

 今に至る次第である。では皆さんご一緒に。

 

海斗「えーりん! えーりん! 助けてえーりん!」

妖夢「誰も来ませんから、それやめてもらえませんか?」

海斗「そんな事言わずにみょんもやろうぜ」

妖夢「お断りします! だいたいこの時間は鈴仙とてゐは薬の販売に、妹紅は寺子屋へ行っています。永琳さんと輝夜さんは屋敷から出る事はないでしょうし」

 

 そう、おかっぱ頭が語るように本来であればそれがデフォルト、あるべき姿。

 

海斗「だよなー」

 

 それは外の世界からやって来た彼でも知っている、有名な事実。

 

妖夢「ですからここに来たところで何もできません。花粉症の件は後日薬をお願いしておきますので、早く行きましょうよ。時間がなくなりますよ? こっち反対方向なんですからね」

海斗「へいへい、かしこまー」

 

 だが彼らはまだ知らない。そのデフォルトが、あるべき姿が、永遠と続いていた日常が、たった一人のか弱い少女によって大きく変えられた事を。

 

 

ーーオタク移動中ーー

 

 

海斗「は……は……リックディアスッ」

 

 そしていよいよオタクはやって来た。ファンであれば一度は必ず訪れてみたいと思うその場所へ。

 

海斗「ここが……」

妖夢「はい、この上が博麗神社です」

 

 大きなくしゃみを放った彼の瞳には、長く傾斜が急な心臓破りの階段が映し出されていた。多くの者はこの時点で踏み入れる事を躊躇(ためら)うだろうが、幻想郷をこよなく愛するオタクには、

 

海斗「キタキタキタキターーッ! ついに聖地キターーッ!!」

 

 それすらも豪華なレッドカーペットに映っていた。

 

妖夢「大変かも知れませんが、頑張って上がって来て下さい」

海斗「おうよ、白玉楼の階段を上ってるオレにとっては朝飯前だぜ」

 

 彼との会話を終えると、おかっぱ頭はふわりと宙に浮き頂上へ——

 

海斗「あ、みょん」

 

 そこへ呼び止められ、彼へと視線を戻してみるが、その彼は沈黙(ちんもく)したまま。ただ呼んだだけなのだろうか? それは断じて否、今彼の表情はお調子者、オタク、ナンパ師のどれでもない。彼がこの表情を見せるのは、『ランドセルを背負った一押し嫁のフィギュア』をその目に焼き付ける時以来。つまり、この上なく真剣(マジ)だった。

 彼女は彼の視線にコクリと一度だけ(うなず)いて深呼吸をすると、再び階段の上へ視線を向け、そのまま静かに飛んで行った。

 一人残された彼、今ゆっくりとした足取りで心臓破りの階段を上り始める。

 

海斗「うーん、分かってないな」

 

 呟くは届かなかった彼女へのメッセージ。そして右手に構えたピストルを(あご)下へ。

 

海斗「うーむ……」

 

 さらに足を止めて瞳を閉じる。考え事だろうか?

 

海斗「白か、青い空によく映える」

 

 否……。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

海斗「ふー……」

 

 朝飯前と宣言しつつも、そこは傾斜が急な心臓破りの階段。疲れるものは疲れるようである。乱れた呼吸を整え、青い空を見上げて達成感という余韻(よいん)に彼が浸っていた時、

 

??「お疲れでしょう?」

 

 それはやって来た。トレイの上にコップ一杯の水、そして貯金箱のような賽銭(さいせん)箱。

 

??「お水をどうぞ。あら、イケメンさんね」

 

 だが彼にはそんな物は見えていない。今彼の瞳に映し出されているのは、本心を隠した紅白巫女のキラキラ笑顔だけ。

 

海斗「……」

 

 見つめ合う二人。時はゆっくりと流れ、小春日和の柔らかな日差しが優しく二人を包み込んでいた。しかしついにその均衡(きんこう)は破られた。

 

海斗「霊夢、嫁にならない?」

 

 その瞬間、巫女の手の上で水平に保たれていたトレイはバランスを失い、(のど)(かわ)きを(うるお)すはずだった水分は、コップと賽銭箱と共に足下へダイブ。辺りに高音の破裂音が響き渡った。

 

霊夢「……」

 

 心の音を周囲に奏でた巫女は赤く火照る顔をトレイで隠していたが、

 

霊夢「あのー……」

 

 (うる)んだ大きな瞳だけひょっこりと(のぞ)かせて彼にこう尋ねた。

 

霊夢「自営業ですか?」

 

【挿絵表示】

 

 

 と。さらに、

 

霊夢「それとも(やと)われですか? あ、だからと言ってイヤなわけじゃありませんよ? ただ確認しておきたかっただけで、全然問題ないんです。ちなみにご年収は?」

海斗「残念ながら仕事はしてないんだなー。今は屋敷で——」

霊夢「お屋敷?! もしかして稗田(ひえだ)家のご親戚? どうしよう、念願の玉の輿(こし)? きゃ♡」

海斗「稗田家かー、あっきゅんにも会ってみたいよなー」

霊夢「沢山の使用人、美味しいご飯……♡」

海斗「きっと可愛いんだろうなー」

霊夢「ご祝儀、香典(こうでん)、遺産相続……♡」

海斗「いひひひ♡」

霊夢「うふふふ♡」

 

 膨張(ぼうちょう)し続ける夢、希望。だがそれも彼女の手にかかれば、

 

??「ちょっと」

 

 斬れぬものではない。

 

 

--少女説明中--

 

 

 

霊夢「は? 働きもしないで居候?」

 

 まさに天から地へ。紅白巫女の幻想は「斬れぬものなど、あんまりない」と断言するおかっぱ頭によって文字通り一刀両断。おかげでお調子者へ向けられていた憧れの眼差し、熱い視線、乙女オーラはその姿をガラリと変える。

 

霊夢「なによ、あんた()()だったの?」

 

 (さげす)んだ眼差し、冷たい視線、威圧オーラ、

 

海斗「働いたら負けだと思ってる」ドヤッ

 

 だがそんものなんてなんのその。ドンと胸を張ってドヤドヤするお調子者だった。

 

霊夢「最ッッッ低」

海斗「あっははは、なんてウソウソ。まだバイト先が見つかってないだけだぜ」

霊夢「あっそ、里で働き口なんてもうないと思うけどね。で、何しに来たのよ? 用がないなら賽銭だけ置いてさっさと行きなさいよ」

 

 笑いながら冗談だと言ったところで、巫女の興味はゼロ。いや、(むし)ろもっと酷い。これ以上関わりたくない雰囲気を(かも)し出し、どストレートに退場宣告。しかしそこはお調子者、

 

海斗「さっきも言っただろ嫁にならない? って」

 

 引かない。

 

霊夢「ちょっと妖夢、この顔がいいだけのチャラい男はなんなのよ?」

妖夢「いっっっつもこうだから気にしないで。まともに相手をしたら損するだけだから」

海斗「おいおいみょん、それはさすがに傷付くぜ?」

妖夢「その呼び方をやめて下さいって言ってますよね?!」

霊夢「ぷぷぷ、みょんだって。それってあの時の——」

妖夢「ちょっと霊夢!?」

海斗「そうそう妖々夢の時の」

 

 それはいつか起きた異変、それは幻想郷から春が消えた異変、それは白玉楼の主人が主犯となった異変のその後の出来事————

 

 その日、博麗神社には異変解決に名乗りを上げた紅白巫女の他に、白黒魔法使いとスーパーメイド長、そしてどういうわけか主犯であるはずの大食姫が、ようやく訪れた春を感じながらまったりとすごしていた。

 

咲夜「あなたがひょんな所で……」

幽々「私だって、ただひょんな所で……」

魔理「ならなんで、ひょんな所で……」

霊夢「ひょんなって何よ」

 

 苦情、皮肉、戯言。そして飛び交う神社のディスり。だがこれは彼女達にとっては挨拶のようなもの。そこへ何処かに隠れて話を聞いていたのか、抜群のタイミングで現れた2分の1名。彼女は己の主人に近付くや、こう言った————

 

  『()()()な所に居て』

 

 まさに抜群のタイミング、ひょんなところで息の合うお調子者と紅白巫女。そしてこれが、おかっぱ頭がお調子者からそう呼ばれるようになった所以(ゆえん)である。

 

海斗「そうだその時の話を聞かせて欲しいぜ」

霊夢「えっとあれは——」

妖夢「わーッ、わーッ! そ、そうだ海斗さん霊夢に言いたい事があるんですよね?」

霊夢「また嫁になれとか言ったら張っ倒すわよ?」

海斗「マジ?! じゃあ嫁に——」

霊夢「『霊符:——』」

海斗「冗談、冗談。これのお礼を言いたくてさ」

 

 その瞬間、巫女の表情が凍りついた。お調子者の手からは掌サイズの赤い小袋が(ひも)()るされ、目を見開く彼女の思考を表すかのように、くるりくるりと風に揺られながら回っていた。

 

霊夢「あんたそれ……」

妖夢「幽々子様からもらったんだって」

海斗「おかげで無事に幻想郷観光楽しめてるし、霊夢に守られてる感じがするぜ。ありがとうな」

霊夢「——(にん)目」ボソ

海斗「どった?」

霊夢「別に。それ、強い霊力をこめてあるから、まだ幻想郷観光を続けるのなら肌身離さず持ち歩く事ね。それで? もう他に用はない?」

海斗「そうだなー、そいじゃせっかくだから神社を案内してくんない?」

霊夢「はー……、付いて来なさい」

 

 面倒くさそうな表情を浮かべて先を行く巫女と、テンションアゲアゲで後を追うお調子者。その二人の背中を見送り、一人その場に残されたおかっぱ頭。博麗神社へ到着してからというもの、発言を(ひか)えていた彼女。その彼女はずっと探していた。巫女の言葉、表情、反応の中に隠れているものを。そして——。

 

妖夢「ここなら……」

 

 

--ヲタク観覧中--

 

 

 神社の隅々まで堪能していたヲタク。住居スペース、炊事場、なんて事のない生活環境の紹介でさえも、その一時(ひととき)は彼にとってこの上なく幸せな時間だっただろう。そして行き着いた先は近年神社に出来た名物。水道料金不要、無限に天然物が湧き出る温泉だった。

 で、

 

海斗「いやー、いい湯だったぁ」

 

 早速のご入浴である。なお利用料金は巫女の粋な計らい(どうせ無一文だろ)により、初回限定で無料となったのだった。

 

海斗「霊夢サンキュー。今度一緒にニューヨーク行かない?」

霊夢「つまらないし、そういうのもういいから」ムニムニ

 

 一方付き合わされた巫女、ちゃぶ台に置かれた飲みかけのお茶をよそに、両手でなにやらモミモミ。

 

海斗「それなんだぜ?」

霊夢「これはムニムニよ」

海斗「ムニムニ?」

霊夢「こうやってニギニギすると気持ちよくて病みつきになるのよ。最初は硬くてヒンヤリしていたけど」

 

 巫女の説明と形状から、お調子者はその物体の正体を直ぐに見抜いていた。だが異なる使用方法については口を出さず、

 

海斗「硬くて熱くて気持ちいいのなら俺も持ってるぜ」

 

 代わりに

 

海斗「今ちょうどムニムニしてるから、握っててくれれば硬くなって——」

 

 腕を組んで腰を前へ突き出し、大きくドヤッ。

 

霊夢「もう最ッッッ低! 変態ッ! 下衆ッ! もう帰って!! 私これから夕ご飯を食べて見回りに行かなきゃならないの!」

妖夢「もうそんな時間!? 夕飯遅くなったらまた幽々子様が」

海斗「げっ! アレはマジもう勘弁だぜ」

妖夢「霊夢、急だけど」

海斗「そいじゃおっじゃま〜」

 

 いきなり現れては結婚を迫り、かと思えばお守りのお礼をし、かと思えばついで程度に神社の見学会、挙げ句の果てには無銭入浴。結局何がしたかったのか、嵐の様に去って行くつかみどころがない彼を、

 

霊夢「なんで私の所には変なヤツしか来ないのよ」

 

 愚痴(ぐち)にドッと()き出た疲れを乗せて見送る巫女。優雅に(ダラダラと)過ごせたはずの時間は奪われ、彼女の機嫌は最高潮に最悪だった。そんな彼女の内心を察したのだろうか?

 

妖夢「霊夢」

 

 出遅れた白髪の少女は彼女を呼ぶと深々と頭を下げ、

 

妖夢「ごめんなさい」

 

 謝罪の言葉を残して彼の背中を追いかけるのだった。

 癖の強い者、厄介者、変わり者が彼女の下に集まるのはデフォルト。例え彼のようなお調子者が訪れようと、場が荒れようと、巫女が不機嫌になろうと、気心の知れた仲であれば「いつもの事」と笑って過ごせるもの。

 

霊夢「なによ、改まっちゃって」

 

 少し様子のおかしい友人の背中を心配そうに見つめ、ポツリと呟く楽園の素敵な巫女だった。

 

 

--少女移動中--

 

 

 人里を目指し直走(ひたはし)るおかっぱ頭とお調子者。二人の表情は、

 

妖夢「……」

海斗「……」

 

 ()えない。

 彼は言った。

 幻想郷の事を外界にリークしている者がいると。

 有力候補は結界を操作できる博麗霊夢であると。

 それを確かめに博麗神社に罠を仕掛けに行くと。

 

海斗「それで、どうした?」

 

 彼女は反対した。

 そのような者は絶対にいないと。

 幻想郷を守る立場の友人がするはずがないと。

 協力は出来ないと。

 

海斗「やったのか?」

 

 彼は言った。

 博麗の巫女から可能性を引き出すと。

 外の世界の言葉を使用して様子を探ると。

 己が外来人である事は勘付かれるだろうと。

 そして——

 

妖夢「はい、縁側の下に」

 

 仕掛けるのは彼女自身の判断に任せると。

 

海斗「ナイス、そこなら見つかっても自然だ。スマホのバッテリーとモバイルバッテリーで録音出来るのは数時間程度だ」

妖夢「私、まだ信じられません」

海斗「みょんに通じなかった『バイト』が通じた。春雪異変のゲームタイトルを言っても疑問さえ抱いていなかった。霊夢は外の世界で幻想郷を舞台にしたゲームがあるって知っているんだ。おまけに——」

妖夢「この世界にいる方達は幻想郷を観光するなんて言わない。観光というのは他所から来た方がするもの。そう言ってましたね」

海斗「ああ、だから霊夢はあの時点で俺が外来人だって気が付いてる。間違いなく数時間の内に霊夢は動く」

妖夢「でも、早苗達から聞いた可能性も捨てきれません」

海斗「答えは花見でだ。その頃には霊夢もスマホを見つけてるはず」

 

 二人の瞳に映る鮮やかに色付く桜の花。幻想郷の強者達が集う(うたげ)は例年通り開かれる。景気付けに用意された酒、ズラリとならんだ豪勢な食事、場を和ませる演目の数々。笑顔と笑い声が絶える事のない華やかなイベントの裏で(うごめ)く幻想郷の危機。()け抜ける二人が真相を突き止めるのは、もう目前まで迫っているのかもしれない。

 

妖夢「ところで海斗さん」

海斗「なんだぜ?」

妖夢「くしゃみ止まりましたね」

海斗「あ、思い出したら、は……は……」

妖夢「ちょっとあっち向いて下さい、あっち!」

海斗「百式ッ!」

妖夢「イヤーーーッ!」

 

 

嫁捕獲作戦_十人目:博麗霊夢【疑惑】




長い上に会話の多い回でした。
これも「若さゆえの過ち」。
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