東方迷子伝   作:GA王

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表_三語り目_※挿絵有

??「……」

 

 無言。ずっと。眉間(みけん)にシワを寄せて無愛想。(すなわ)ち不機嫌、やる気はゼロ。やらされてる感はMAX。つまり、

 

??「めんどくさッ」

 

 なのである。それでも次から次へと厄介者達はやって来る。それらを業務的に単純作業的に無表情で成敗しながら進んで行く。それが、

 

??「生まれ変わったら博麗の巫女になんて絶対になるものか」

 

 彼女の務めにして運命(さだめ)。彼女がそのポジションに就いてからというもの、『異変』と呼ばれる事件が多発していた。それもものの数年で(ねら)ったかの様に、浴びせる様に、畳み掛ける様に。

 吸血鬼が幻想郷を支配しようとした事件から始まり、紅い霧が空を覆った異変、春が来ない異変、花見が繰り返される異変なんてのもあった。そして挙げ句の果てには住居の神社が退屈しのぎに天人くずれによって破壊され……。

 

霊夢「今回で何回目? 1、2、3……」

 

 その度に彼女は出撃して事件を解決してきた。その数実に——

 

霊夢「9回目えええ?!」

 

 である。そして即座に計算される異変の起きる頻度とそのペース。導き出された答えから出した結論は……

 

霊夢「私、呪われてるの?」

 

 巫女が呪われる。なんとも滑稽(こっけい)な話ではあるが、そうとしか思えない程のペース。彼女の人生が異変そのもの。これには額に手を当ててげんなり、頭痛さえ覚えるほどである。

 そうこうしているうちに到着した目的地。彼女が見下ろす地面には、まるで彼女を丸飲みにしてしまうかのような、巨大な穴が口を開けて待ち構えていた。

 

霊夢「ここが……」

 

 出てくる怨霊は()まない。位置は特定された。となればやる事は一つ。大きく息を吸い、

 

霊夢「ハー……」

 

 肩の力を一気に抜いてここ一番の超特大ため息。気を改め、いざ地底世界へ。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 アイツの想いは届かなかった。しかもよりによってやって来たのが博麗の巫女。ただならぬ緊張と衝撃が走り、全員の思考が停止していたはずだ。けど時は待ってなどくれない。博麗の巫女が旧都にやって来るのも時間の問題だった。

 

私 「出ちまったもんはしょうがない。怨霊の事は後日さとり嬢から上手いこと言ってもらうとして、扉の事とお空の事はまだ知られていない。気付かれる前に私達で解決するぞ! キスメとヤマメは博麗の巫女の足止めを頼む。その間に私とさとり嬢はお空の方を、パルスィとお燐は向こうを片付けてくれ」

 

 それが正しい選択かなんて分からない。でも考えている間も()しかった。

 

キス「フッフッフッ……、つまり時間稼ぎか」

私 「世間話でもなんでもいい」

ヤマ「もし戦闘になったら?」

私 「その時は相手するしかない。旧都への侵入を全力で阻止するんだ」

キス「フッフッフッ……、任されよ」

ヤマ「戦うとなったら、きっとスペルカードルールだよね?」

ヤツ「二人とも頑張って。向こうが片付いたらすぐ行くから」

お燐「アタイも応戦に行きますニャ」

私 「どんな手を使ってでも隠し通すぞ!」

  『おーッ!!!!!!』

 

 きっと(あせ)っていたんだろうな。あの時の私は深い考えもなしに思いついたまま指示していた。けど、そんな薄っぺらな作戦に拳を(かかげ)てくれたキスメ、ヤマメ、ヤツ、お燐には感謝の言葉しか出ない。もちろんアイツもな。今度酒でも持って礼でも……今更こそがゆいか。

 

ヤマ「あっ、勇儀」

 

 あー……、ここまで思い出すと記憶の彼方(かなた)に閉じ込めておきたい()()()まで蘇ってくる。そうだ、あれの始まりはヤマメが放った一言から——

 

ヤマ「その格好どうにかした方がいいよ」

 

 その時の私の服は八咫烏(やたがらす)との戦いや(さかずき)探しで、(ほころ)びやら汗やらドロやらシミやらで酷いありさまだった。

 

ヤマ「万が一博麗の巫女と戦う事になったら大変だよ?」

 

 その姿で勘のいい博麗の巫女の前に現れては、間違いなく何かあったと気付かれる。例えそうでなくとも「なんでズタボロなのよ?」なんて問われたらどうなる? 鬼はウソはつけない上に、無理に話題を()らそうものなら余計に怪しまれる。どう転んでもバレる可能性がある。

 それを察して言ってくれたのだろうけど……。

 

私 「でも着替えなんて……」

ヤマ「私が簡単なの作ってあげるから。ほら早く服脱いで」

私 「ちょっ、えっ、ここでか?!」

 

 まさか道のど真ん中でだなんて、

 

キス「フッフッフッ……、ぬーげ♪ ぬーげ♪」

お燐「とんでも(ニャ)い迫力ニャッ」

??「うわわわわ///」

ヤツ「ぐふっ♡ 勇儀の生お着替え♡」

 

 何よりヤツの前だなんて……屈辱(くつじょく)

 

ヤマ「ちょっと、いやらしい目で見てないで下に着る物なんかないの?」

ヤツ「あ、それならいいのがある! 家すぐそこだから取ってくる。ついにアレの出番だーッ!」

 

 無駄にハイテンションで走り去るヤツに不安を抱きながら、なされるがままヤマメの糸でグルグル巻きされていく私。真っ白な一本の細い糸は()られ、編み込まれ、瞬く間に生地へと姿を変え、私の上半身を包み込む服となっていった。

 で、出来上がった格好が——

 

私 「なあコレ……」

 

 白い短袖の上半身だけの服に、ヤツが持って来たヒラヒラした長い腰蓑(こしみの)。なんでも元々私への贈り物で作ってくれていたらしい。それはヤツとはいえ、素直に感謝の言葉を伝えられた。

 

私 「半分()けてんじゃねぇか」

 

 ただしソレさえなければの話。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ヤツ「ぐふふ♡ 似合ってるよ♡」

私 「そう思ってるのはお前だけだ」

キス「フッフッフッ……。勇儀よ、そうでもないぞ」

私 「いや、変だろ?」

お燐「違和感(ニャ)いニャ」

私 「そんな事ないだろ?」

??「そんな服持ってなかったっけ? って感じ」

私 「ねーよ」

 

 ヤマメ作の服にヤツ作の腰蓑。当時は変な格好だってブツクサ言っていたけど、今じゃありがたく使わせてもらっている。部屋着用としてだがな!

 

ヤマ「文句は後、キスメ行くよ!」

キス「フッフッフッ……、一狩り行こうぜ」

??「キスメー、ヤマメー……」

 

 アイツなりに地底世界を守ろうとして起こした怨霊騒動。けど結果的に町の者達の不審感を(あお)り、キスメとヤマメまでを巻き込んでしまった。先陣を切る二人に声をかけたアイツの顔には不安と罪悪感が暗雲となって(おお)っていた。そんなアイツの心中を察したんだろうな——

 

キス「フッフッフッ……、大船に乗った気でおれ」

ヤマ「終わったらまたみんなでご飯食べようね」

 

 あの二人、いつも以上に優しい顔をしていやがった。

 しんしんと降り続く雪。旧都は火こそ消えていたが煙が立ち上り、至る所に傷を負っていた。さらに空中では怨霊が(おぞ)ましい悲鳴を上げながら群れとなって大穴へ。またいつ目覚めるかも分からない八咫烏に加え、地底世界を我が物にしようと秘密の扉から出てきたという輩達。そして来てしまった博麗の巫女。

 次々と休む間もなく起きる出来事、変貌(へんぼう)を遂げる状況、荒れ狂う時間の波。その中に私達はいた。でも、あの時の、あの場所だけは、

 

??「ありがとう。怪我しないで」

 

 穏やかな時間が流れていた。それはさながら嵐の前の静けさ。束の間の休息。

 

お燐「!」

 

 そう、バカデカイ嵐はもうすぐそこまで来ていた。

 

お燐「勇儀さん侵入者ニャ! きっと博麗の巫女が(あニャ)に入ったニャ!」

私 「ちぃッ、仕方がない」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 暗闇の風穴(ふうけつ)

 陽の光はとうに途絶えた。明かりを灯さなければ何も見えない。そこは地下世界へ真っ直ぐに伸びた一本道。風の流れに逆らって落下して行けば、やがて見えて来るであろう穴の底。しかし道のりは長く、辿り着くころには飛び込んだ事を後悔するだろう。

 そんな道半ばで暴れる少女が一人。

 

霊夢「あーもう! 次から次へと」

 

 飛び交う札、針。穴の中に入ってから間もないというのにその数、すでに数える事を放棄してしまう程。下から次々と地上を目指す怨霊を見つけては容赦なく、躊躇(ためら)うことなく、片っ端から消滅していく

 だが怨霊とて黙ってやられてはいない。生前の怨念を込めた邪な光弾を少女に向けて放つ、放つ、放つ。

 

霊夢「鬱陶(うっとお)しいッ!」

 

 が、意図も簡単に(かわ)され呆気なく返り討ちに。周囲の怨霊とタイミングを合わせて攻撃に出るも、少女はその隙間(すきま)をかいくぐり、

 

霊夢「『霊符(れいふ)夢想封印(むそうふういん)』」

 

 一掃。日々の生活はダラダラ一色。訪れる友人にはお茶も出さず適当にあしらうクセに、獲物を見つけるや「お水をどうぞ」と悪意に満ちた営業スマイルで出迎える守銭奴。だが一度(ひとたび)仕事モードへとスイッチが切り替われば、幻想郷の平和を守るスーパーガールへと早変わり。彼女にかかれば解決出来ない異変など、ない。

 

霊夢「早く帰ってコタツに入りたいの! 邪魔しないで!!」

 

 そんな少女の逆鱗(げきりん)に触れた今、止められる者など果たしているのだろうか?

 と、そこへ……。

 

??「『怪奇(かいき)——』」

 

 第一の守護者(刺客)、参上。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

キス「フッフッフッ……、やはりこうなるか」

 

 普通に向かっては間に合わない。そこで考えた苦肉の策。

 

私 「真っ直ぐでいいのか?」

ヤマ「うん、思いっきりお願い! あとは私がなんとかする」

 

 角度45度、狙いはこの目にしっかりと見えていた。

 

私 「萃香を負かした相手だ。全力でイケ!」

  『承知ッ!!』

 

 能力解放状態での、

 

私 「頼むぞおおおぉぉぉッ!」

キス「フッフッフウウウぅぅぅーー……☆」

ヤマ「いっきてまあああぁぁぁーー……☆」

 

 いつものやつ。キスメはヤマメに掴まり、私がヤマメの服を掴み、土俵の真上の大穴へ向けて一直線に全力投球。

 

ヤツ「とうとうキスメとヤマメまで……」

 

 その後すぐに大きな蜘蛛(くも)の巣が広がり、そこへ飛び込んだ弾道はビヨーンと角度を変えて跳ね返り、二人は大穴へと吸い込まれていった。

 今でも思う。獲物を捕まえるわ、落石を防ぐ屋根になるわ、色々と作れるわ、

 

私 「ホント便利だよな、アレ」

 

 と。能力とは異なるヤマメの特技に感心していた私だったけど、そこで立ち止まっている場合ではない。

 

私 「今の内に行くぞ!」

 

 すぐに背を向けてヤツとお燐、そしてアイツと共に激戦になっているであろう地霊殿の奥を目指した。まあそん時に背後でデカイ音が鳴り響いていたけどな。そん時は特に気にする事もなく先を急いだけど、まさかそれが——

 

 




【次回:裏_四語り目】
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