東方迷子伝   作:GA王

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Stage 2 地上と過去を結ぶ深道


表_六語り目

 これはヤツから聞いた話だ。

 

【パルスィ談①】

 あの後? 

 

ヤツ「ルううううああああぁぁぁぁ。。。……☆」

 

 何回も勇儀に投げられていたおかげ……なのかな? その辺は上手いことやれたよ。キスメは止まらなかったらしいけど。で、どうやったと思う?

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 渡る者の途絶えた橋。

 地下666階、逆さ摩天楼(まてんろう)の最高層にそれはある。年期が入った(ゆえ)か、将又(はたまた)存在する意味を失った故か。特別な要件、(もっぱ)ら行事やイベントなどが無い限り、その橋を渡る者はいない。

 そんな橋へと近づく小さな影が一つ。宙に浮いてるところから察するに、地底に寝床を構えるコウモリだろうか? もしくは行き場を失って迷い込んだ鳥だろうか?

 否、どちらでもない。その正体は立ちはだかる敵を蹴散(けち)らし、攻撃を難なく回避しながら突き進む地上からの来訪者。華麗(かれい)に、自由に、大胆に光弾のスポットライトを浴びながら舞う姿は、どこか楽し気でもある。そしてその速度たるやブレーキを失った自動車の(ごと)し。速度を上げることはあっても下げることは、無い。

 やがて彼女は舞台となる橋へと差し掛かった。相変わらずアクセル全開のまま通り過ぎるのかと思われたその時、

 

 

キキィィィーーッ!

 

 

 突然の緊急停止。どうやらブレーキは持ち合わせていたようだ。そして()()と言うからには、急ぎの対応が必要な事態が発生したという事である。そう、なぜなら今彼女の前には……

 

彼女「!」

 

 光の壁が。いや、青い光を放つ弾丸が高密度となって押し寄せていたのだ。打って変わってゆっくりとした速度で一つ、また一つと慎重且つ的確に(かわ)していく彼女。

 

彼女「あぶなッ」

 

 だが少しでも気を抜けばこのあり様。被弾寸前、余裕などない。

 

彼女「ふー……、一時はどうなるかと——」

 

 どうにか無事逃れたようである。額に(にじ)む汗を(ぬぐ)い、深く大きな安堵(あんど)溜息(ためいき)を一つ。しかし、それも(つか)の間であった。

 

??「『嫉妬(しっと):緑色の目をした見えない怪物』」

 

 何処からか聞こえた声は明らかに開戦を宣言したもの。

 やがて次々と現れてはその場に(とど)まる緑色の光弾の数々。それは数珠(じゅず)(つな)ぎとなって彼女の周囲を取り巻き、行く手を(さえぎ)っていく。その姿は獲物を捕食にかかる蛇。そして蛇はついに獲物の逃げ場を完全に封じた。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

【パルスィ談②】

ヤツ「止マレーーーエッ!!」

 

 妖力乱射してその反動でブレーキをかけたの。

 

ヤツ「『嫉妬:緑色の目をした見えない怪物』!」

 

 じゃなかったらそのまま壁ドンだったから。

 

ヤツ「へぶっ」

 

 でも妬ましいことに、止まりきれないで雪山に突き刺さったんだけど。さあね、誰かが雪掻(ゆきか)きして出来たんじゃないの?

 

ヤツ「冷たい……寒い……妬ましい……」

 

 それが橋の手前辺りでの事。その時にはもう彼女の姿がしっかりと見えてたよ。

 

ヤツ「あれが……彼女が博麗の……」

 

 彼女が地上で起きた事件を解決して来たんでしょ? とてもそうは見えなかったから、最初「本当に彼女が?」って疑ったよ。けどキスメとヤマメの二人でも手に負えなかった相手、だから一応警戒はしてた。

 

ヤツ「もしかして人間? 人間が旧都に何の用?」

 

 偶然を(よそお)って声をかけたんだ。でも彼女独り言がやたらと多くてさ、話をいるんだかいないんだか、私の事を無視しているようにも見えて、だんだん妬ましくなって来てさ。それだけだったら別に何もなかったと思うよ? でもその前にアイツと勇儀のアレを見せつけられていたのもあって、

 

ヤツ「『花咲爺(はなさかじい):シロの灰』!」

 

 キャパオーバーしてぶっ放してた。

 そうだよ、私のスペルカードの由来は童話の『花咲か爺さん』と

 

ヤツ「『舌切雀(したきりすずめ):大きな葛籠(つづら)と小さな葛籠(つづら)』」

 

 『舌切り(すずめ)』から。

 どうしてか気になる? 大した話じゃないよ。もうずっと前、アイツがまだ小さかった頃の話なんだけど、当時勇儀が罰の祭り当番をしていて、代わりに私達が交代でアイツとお祭りを回ってたじゃない? その時に————

 

??「パルパルあっちいこ。いいにおいする!」

ヤツ「もう食べ物はなしだから」

??「えー! ケチー」

ヤツ「さっきヤマメと回った時にいっぱい食べたんでしょ? 焼きそば、焼き鳥、おでん、串焼き、串揚げ、あと玉コンニャク。子供のクセにお酒のツマミばかり食べて……妬ましいわ!」

??「りんごアメとわたアメもたべたよ」

ヤツ「余計に妬ましいわッ!」

??「あと一つだけ」

ヤツ「ダーメ。勇儀にも言われてるの」

??「お・ね・が・い♡」

ヤツ「うぐっ……」

??「ね、ね、ね?」

ヤツ「妬ましい………………これで最後だから」

??「ヤッター! パルパルありがとう(チョロいな)

ヤツ「今、何か言った?」

??「べつにー。ん? コレ……」

ヤツ「どうしたの? 絵本?」

??「『はなさかじいさん』と『したきりすずめ』だよ」

ヤツ「何それ?」

??「えー、しらないの?」

ヤツ「逆に聞くけど何であんたが知ってるのよ?」

??「ここくるまえ……ねるときにママが……」

ヤツ「ふーん、ちょっと貸して」

 

 ————立ち寄った古本市でアイツがその絵本を見つけてね、「知らないなんて変」みたいな事を言い出すから読んでみたの。そしたら無性に妬ましくなって来てさ。

 勇儀あの話知ってる? どっちの話にも動物が出てくるんだけど、その動物が近所の人にイタズラして仕返しされるの。そんなの当たり前でしょ?! それなのに同情した飼い主には宝とか上げるくせに、仕返しした方には散々な目に合わせるの。そこは()びてもっと凄いお宝を献上するところでしょ!? そんなの誰だって嫉妬するわ! あの絵本は嫉妬の教科書よ!! ってアイツにも教えておいた。

 痛たー……。別にいいじゃない、昔話の解釈なんて人それぞれなんだから。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 緑眼のジェラシー。

 

彼女「?」

 

 だがそこまで。蛇は獲物を食べる事もなく、狩る事もなく、まるで何事も無かったかの様に姿を消していた。静けさに身を預けて呆然と(たたず)む彼女。頭上には点が大きめの『?』マーク。と、そこへ……

 

??「もしかして人間?」

 

 声。

 

??「人間が旧都に何の用?」

 

 橋の反対側、薄暗い影から姿を現したのは、黄色のショートヘアで緑色の瞳の少女だった。彼女は瞬時に悟った。さっきの度重なる攻撃はこの者の仕業であると。だが今彼女の前にいる者からは敵意は感じられない。それでも警戒を解く事なく、相手のペースに合わせて会話を進めていく。つまり様子見、本当にこの者が自分にとって障害となりえる者なのかどうかを。そして彼女が下したジャッジは……

 

彼女「(普通だ)」

 

 そう、普通だった。それはRPGでフラグも立たないくらいの、村人Aくらいの存在感。だが地上からの指示は「その者を倒せ」やら「先に進め」といった無慈悲かつ無情なもの。さらに聞けば目の前の少女は嫉妬心を操る妖怪であると。この時彼女は思った。

 

彼女「(嫉妬ってなんだろう?)」

 

 と。嫉妬とはやきもちである。他人が自分より恵まれていたり、優れていることに対してうらやましいと思う感情の事である。その言葉の意味は彼女も知っている。

 

彼女「(やきもち……うらやましい……)」

 

 目を閉じて自分に尋ねる。そう思う事、思える事が日常生活で転がっているのかと。

 

彼女「ない」

 

 彼女は今の自分とおかれた環境に満足していた。騒がしくても、クセが強くても、少々面倒でも、笑顔で向き合える友人達の存在と、自由気ままに過ごせる日々に。そしてたまに起きる『異変』という名の刺激に。

 つまり、彼女に厄介な能力は効かないという事。

 ニヤリと微笑む彼女。「恐るるに足らない、楽に勝てる」と勝利を確信したのだろう。だが彼女はすぐに己の浅はかな考えを改めた。

 

??「パルパルパルパルパルパル……」

 

 ブツブツブツブツ呟く毎に増してゆく負のエネルギー。これまで相手をしてきた怨念が放つものと似てこそいるものの、全くの異質。それでいてなんと禍々(まがまが)しく濃い事か。

 

??「ぎゅー……。ほっぺチュー……」

彼女「は?」

??「忠告したのに……。話を聞かないとか……」

彼女「ちょ、ちょっと?」

??「なんかもう色々と妬ましい!」

 

 嫉妬を操る能力、それは他人の嫉妬心を操る能力。そして自身の嫉妬心を妖力(ちから)に変換する能力。渡る者が途絶えた橋に、渡る事を拒む者あり。彼女の前に現れた村人Aは刺客(守護者)

 

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 ヤツから聞かされた話では、戦闘で使ったスペルカードはあの二枚だけ……、いや「二枚()使っていた」と言うべきだろう。私がヤツを丁重に送って(ぶん投げて)から彼女に気が付くまでに要した時間はおそらく……一分も経っていない。ヤツを千回も相手にしている私だから分かる。アレは、ヤツのあの二つのスペルは、そんな短時間で攻略出来るものじゃない。だから、

 

私 「バカな早すぎる!」

 

 早すぎたんだ。ありえなかったんだ。当時私はその事に「入れ違いになったのか?」と疑問に思った。でも、もしそうならヤツが後から追いかけて来るはず。だがその様子は一向に無かった。それよりも私が彼女の相手をしてから間もなく……。

 

私 「(な、何で今!?)」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

【パルスィ談③】

 彼女の服装? なんか不思議な感じだったよ。初めて見たから分からないけど、博麗の巫女ってあんな格好なの? 冬なのにフリフリした服装で。寒くなかったのかな?

 そうそう、あったあった。大きなやつがぷっくりと。あの時は特に気にもしなかったけど、アレがそうなんでしょ?

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 目を疑った。私の視線の先、橋の上で繰り広げられていたのは(まぎ)れもなく、嫌と言うほど見せつけられて来たヤツのスペル。

 

私 「(大きな葛籠と小さな葛籠?!)」

 

 混乱した。困惑した。思わず動きが止まった。

 でも予測できた。底知れぬ不安に駆られた。彼女は、待ってなどくれなかった。

 

彼女「スキありっ!」

私 「あぶなっ! いきなり何するんだい!?」

彼女「は? 余所見する方がいけないんでしょ?」

私 「このヤロー……、つくづく」

 

 そしてその答えは間もなく明かされた。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

【ヤマメ談②】

 えーっ、そうだったの!? 全然気が付かなかった。きっとドームの中にいたからその時に……。

【パルスィ談④】

 髪の色? 私と同じ()()だったよ。どうしてそんな事聞くの?

 うぇーェエッ!? じゃ、じゃあ彼女……誰?

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 旧都の存続が危ぶまれたあの日、地上からやって来たのは、

 

??「手こずってるみたいだな霊夢」

 

 私が相手をしたのは、 

 

??「手ぇ貸すze☆」

 

 一人ではなかった。

 

彼女「魔理沙……」




STAGE CLEAR
CLEAR BONUS
2人目の自機


【次回:裏_七語り目】
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