備えあれば憂いなし。普段から非常時に備える事を強くお勧めします。いや、ホントにホントに。
表と裏、光と影、笑顔が絶えない社会と争いが絶えない社会。どれも正反対でいて切っても切れない密接な関係です。そしてその境、どちらにも属し顔が利く者は必ずいるものです。それが輩達のトップであるボスと
??「鬼なんかにやられちゃってダッサー★」
何処からともなく現れた
ボス「何をしに来た?」
Elis「ユーちゃんの子分が『タマがやられた。向こうの奴らが攻めて来た』って叫びながら走っているのを見つけてね。面白そーだから来てみたの。もしかしたら今頃あの方達の耳にも届いているかもねー★」
ボス「来るのか!?」
Elis「さーね。予想よ、よ・そ・う。都の方に向かっていたから、そーかもねって話。それでタマは何処?」
ボス「あの
師匠「つぅ……、あんたが飼い主か?
親方「ハァ、ハァ……。代わりにオイタが過ぎるってぇ
師匠「ペットは飼い主に似るとは聞くが——」
親方「嬢ちゃんも誰彼構わず
Elis「ふーん、別にタマは野良だからどーしよーと構わないんだけどさー、その言い草なんか気に入らないわね★」
ボス「待て、手を出すな」
Elis「えーっ、それじゃーつまらないじゃない。半分こしよーよー★」
ボス「ダメだ! 誰一人として渡さぬ。自ら手を下さぬと余の気が治らん!」
Elis「ふーん、へーえ、断るんだ? せっかく優しくお願いしているのに断るんだ? いーんだそれで? 今いくらだったけな〜? すぐ返せるのかな〜★」
ボス「それとこれは話が——」
Elis「イ・イ・ノ・ネ?」
ボス「す、すきにしろ!」
Elis「さっすがユーちゃん、大好き。じゃーこっちの元気そーなヤツらをもらうね〜★」
事情も状況も把握できていないのに、彼女は考えもせずボスの味方についたと。そして彼や筋トレマン、棟梁様に長老様といったボスが放った落雷から逃れた方達の前に立ちはだかったんです。
身構える彼ら一同。彼女はその様子を上から見下ろし、
Elis「さて、薄汚い下等生物のみなさん。アナタ達はここでお終いです。魔界に攻める事もなく、
彼らが彼女達の住む世界、魔界には侵入させないと。侵略はさせないと。
さぞ気分は魔界を守る正義のヒーローだった事でしょう。でもこれは彼らからすれば大きな誤解です。立場はその逆なのですからね。そこで説得を試みますが……。
彼 「自分達は何も知らなかったんだ!」
筋ト「侵略だなんて、そんな事は一切考えてない!
Elis「え、そーなの? ふーん、でもユーちゃんがそーしたいのなら私は喜んで手を貸すよ。そーれーにー、どの道私はユーちゃんを怒らせたアナタ達をこのまま見逃さない。だって私、ユーちゃんが大好きだから★」
彼女からすればそんな事情はどうでもいい事、どんな理由であれボスの肩を持つつもりだったそうです。
そんな風に言われては誰だって納得出来ませんし、理不尽に思います。さらに彼女は宙に浮いたまま片手を上へとかざし、魔界人の力『魔力』をその手に集め始めたんです。そこに一人の鬼さんが……
鬼L「ふっ、ふざんなーッ!」
不安、恐怖、そしてやり場のない怒りを堪え切れなかったのでしょうね。手にしていた武器を彼女目掛けて投じたんです。
Elis「きゃははは、何処を狙ってるの? ハズレ~★」
でも彼女から離れた横を通過するだけ。そしてこれが、
Elis「何だかんだ言いながらヤル気満々じゃない。ホッントすぐムキになる野蛮な連中ね。力しか能のない下等種族が高貴な魔族に
悪夢の第四ラウンドのゴングとなりました。彼女が集めた魔力の
光弾は鬼さんの
彼 「うぐっ、大丈夫だった?」
棟梁「え、ええ……」
そこの彼と
筋ト「いつつぅ、
医者「すまないのぉ」
筋トレマンに救われたそうです。「身を
Elis「下等生物のクセにやるじゃない。かーっくい〜★」
とね。その言葉にカチンときたのでしょうね。彼は彼女に、
彼 「
と思うよりも早く挑戦状を叩き付けていたそうです。でもこれは大きな間違い。なぜなら彼女は……
Elis「卑怯? ちょっとゴミムシ、言葉には気を付けなさいよ? 別に私はアナタ達と戦うつもりはないの。これはー……暇つぶし? そうよ暇つぶしなの。だからゴミムシはゴミムシらしく、私を満足させて無様にくたばりなさい★」
戦う気など全く無かったのですから。戦いとは対立し合う意思があり、両者とも攻撃と防御があってこそ成り立つ言葉です。彼女が望んでいたのはそんな
そう宣言するなり
棟梁「皆の者散りなさい!」
町の方達に一箇所に固まらずその場から離れるように指示を出したんです。集まったままでは格好の的となってしまうと判断し、少しでも被害を
ですが町の方々は駆け出すと同時に武器を手に取り、
鬼M「次は——」
鬼N「次は——」
鬼O「次は——」
『(次は——!)』
攻撃を続ける彼女の下に集まって
Elis「!?」
周囲を取り囲んだんです。
その時の事を棟梁様は「驚いた」と本心を語ってくれましたよ。なぜならその行動こそ、棟梁様の
『(
まさに
そして棟梁様の最終目的は、
棟梁「放て!」
武器の一斉投球だったんです。
棟梁様の掛け声と共に、四方八方からキラリと光る武器が回転しながら彼女へと向かっていきました。
子供が通れる隙間もない程、密度が濃かったそうです。その時の光景を後に筋トレマンは「例え無数の光弾をばらまいて弾いたとしても、必ず何かが命中するはずだった」と説明してくれています。さらにこの直後に起きた目を疑う現象についても……。
Elis「きゃー、どーしよー。困っちゃう~……なーんてね★」
筋ト「え?」
彼女が突然消えたそうなんです。存在していたはずの位置に残されたのは、ひらりひらりと落ちる傘と羽を羽ばたかせる一匹の
標的を失った武器は互いに打つかり合い、高い金属音を立てて真下へと降下。でも、中には軌道を保ったままの物もあり、
筋ト「危ない避けて!」
鬼P「うあーっ!」
不本意に反対側の鬼さんを傷付けてしまっていたそうです。
??「きゃははは自爆だ自爆、ダッサ~★」
そこへ嘲笑う彼女の声が。筋トレマンと彼らが向けた視線の先にいたのは一匹の蝙蝠。そうです彼女は蝙蝠へと姿を変えていたんです。
蝙蝠「ざーんねん。発想はいーけど、小さくなっちゃったら当たらないわよね? そーれーにー動けるって事、考えてないの?」
棟梁「急いで逃げなさい!」
蝙蝠「ふふ、逃げ切れるかしらね〜★」
さらに運の悪い事に、彼女は姿を変えても力を制限されるような様子は見られなかったそうです。小さな敵から放たれる光の矢の
そしてその頃、ボスの方でも電撃による
ボス「逃さぬ」
鬼Q「ギャーッ」
直接突き刺す様に襲い来る物まで。多くの方があまりの苦痛から敗北を認め、「これは悪い夢だ」と現実逃避をしていたそうです。でも、あのお二人だけは
??「うおおおッ!」
お一人は彼の師です。足下に転がっていた
えいっ! っとこんな感じです。
棒高跳び? はあ、優希さん達がいた世界にはそういう競技があるんですか。
師匠「これで終わりにしてやる!」
では続きです。彼の師はボスの目の前まで飛び上がった後、拳を構えていたそうです。でもその一撃がボスに届く事はありませんでした。
ボス「
師匠「ア゛ァァァッ」
これまで分散して放たれていた電撃が、一斉に襲いかかったんです。断末魔を上げて苦しみ
師匠「イッッッケーーーッ!!」
??「オオオオオ」
親方様です。魂のこもった力強い
??「オオオ大江山颪イイイッ!」
が、
ボス「余を守れ!」
彼の時同様、赤い瞳の黄色の円に
親方「連撃だアアアッ!!」
ボス「させるガアアアッ!」
追撃です。連続で衝撃波をぶつけにいったんです。一方ボスは阻止するため、電撃をこれまで以上の威力で浴びせました。それは目も開けていられないまでに光を放っていたそうです。ボスの全力の反抗です。
親方「アアアガッ……カッ……オ……」
親方様に悲鳴を上げさせていた事でしょう。意識も呼吸も途切れ途切れになるまで痛めつけていた事でしょう。でも、ボスごときがどんなに強力な電撃を浴びせようと、親方様の気高く強い魂を
親方「
止める事などできるはずがありません。気合、根性、ド根性です。親方様は全身全霊、心と魂で衝撃波をぶち込みにいったんです。
ボス「チッッッックショオオオーーーッ!」
その場の誰もが親方様達の勝利を確信していました。ボスの頭にも『敗北』の文字が浮かんでいたはずです。でも誰しもが予期できなかった現実が訪れたんです。
ドドドドドドォォォンッ!
その瞬間、親方様の背中を多数の光弾が襲ったそうです。放ったのは他でもない、
Elis「ちょっと、下等生物のクセに汚い手でユーちゃんに
蝙蝠から人へ姿を戻した彼女だったんです。そして光弾を背後から受けた親方様は体勢を崩し、着弾と同時に生じる爆発の勢いで吹き飛ばされてしまったそうです。
ボス「すまない助かった」
Elis「今のでお泊まりコース一回確定だからね★」
ボス「うぐ…………。お前達の
最大のチャンスを生かせなかった旧都の方々。希望は絶望に変わり、
ボス「悪夢の6時間耐久リサイタル、
自力では立ち上がれない者多数、
『(誰でもいい、助けて)』
と。その祈りは……。
あっ、ちょうどいいタイミングでいらっしゃいましたね。
??「『
一輪さんに
??「『
村紗さん。あなた達お二人のご
ボス「るううううぅぅぅぅゎぁぁぁ。。。……☆」
【次回:表_七語り目】