どうもありがとうございます。
下手な文章でございますが、
よろしくお願いします。
耐え切れない場合はご指摘頂ければと思います。
--翌朝--
勇儀「んぁ? 今何時だ?」
目を覚まして時計を見ると、既に昼近くになっていた。かなり寝ていた様だ。朝食を兼ねた昼食をどうしようかと、まだ起動しきれていない寝起きの頭で考えていると、足にモゾモゾと違和感が。
??「うーん……重い……」
見ると小僧が私の足の下敷きになっていた。慌てて足をどけ、驚かせない様にそっと小僧の顔を覗き込む……。
目が合った。
勇儀「よぅ、おはようさん。少しは眠れたかい?」
小僧「うん……」
寝ぼけ眼を擦りながら返事をする小僧。
勇儀「もう昼近いんだ。腹減っただろ? 飯食いに行くか?」
小僧「うん!」
今度は明るい表情で返事をしてくれた。
少し元気が出たみたいだ。昨夜の事を思い出して、また泣き出すのかと思ったけど、思いの外受け答えがしっかり出来ているし、これならばもう大丈夫だろう。
布団を片付けて身支度をしていると、
小僧「ねー……」
呼ばれた気がしたので、小僧の方へ視線を向ける。
小僧「ねー、ツノのお姉ちゃん、なんてーの?」
濁りの無い瞳で、真っ直ぐに私の角を見て尋ねてくる小僧。
勇儀「あははは、私は勇儀っていうんだ。鬼だよ」
小僧「オニ?」
勇儀「鬼」
小僧「オニってもっと大きくて、怖い顔だと思ってた」
勇儀「ふふっ、そういうのもいるよ。会いたいかい?」
小僧「……」ブンブン
私の言葉に小僧は顔を引き
勇儀「でも……今日行く所はそういうのがいるかもな~……」
けどこれは冗談では無く真実。これから向かう先に居るのは、小僧の想像通りの鬼がいる。それを察したのか、
小僧「え!?」
小僧の顔が不安と恐怖の表情へと変わっていった。暗い表情になってしまった小僧を安心させようと、笑顔を作り「心配するな」と言ってみる。
勇儀「大丈夫、大丈夫。喰われるとか、酷い事される事とか無いと思うから……たぶん……」
だが、正直なところ「絶対」とは言えなかった。
小僧「……」
私の事が頼りなく見えたのだろう。無言になり、再び暗い表情へと戻ってしまった。
勇儀「だからそういう事されない様に、私が交渉してやるよ」
小僧「コーショー?」
勇儀「あぁ、守ってやるよ」
小僧「うん」
少しだけ小僧の表情が明るくなった。
--小僧支度中-ー
身支度を終え、玄関で草履を履いていると、
ビリビリビリッ!
背後で聞き慣れない音がした。驚いて振り返ると、小僧が靴から皮を剥がし、足を入れていた。足を入れ終わると今度は「ペタッ」とその皮をくっ付けた。不思議な作りの履物に、小僧が履き終わるまで終始目が釘付けになっていた。
そしてお互いの準備できたところで、玄関の扉を開けると、
メラメラメラメラメラメラ……
??「人間のクセに……人間のクセに……人間のクセに……勇儀の家でお泊り……勇儀の家でお泊り……勇儀の家でお泊り……朝チュン……朝チュン……朝チュン……妬ましい……妬ましい…妬ましい! 羨ましい!」
黄金色の短い髪に尖った耳。緑色の目には少し涙を浮かべた水橋パルスィが、強い妖力を撒き散らして前に立っていた。
勇儀「お、おぅ。今日は朝から絶好調だな」
パル「パルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパル……」
更に妖力を上げていく。後ろを見ると、小僧が不安そうな眼差しでこちらを見ていた。
勇儀「すまない、パルスィ!」
ガッ!(パルスィの服を掴む音)
パル「パ!?」
勇儀「うおおおおぉぉりゃぁぁーーーー!!!」
パル「ルううううぅぅぅぅぁぁぁぁ。。。……☆」
うん、今日は肩が絶好調だ!
勇儀「よし、じゃあ飯に行こう!」
--小僧移動中--
小僧の手を引きながら町を歩く。もう少しで昼時ということもあり、どの店も営業を開始し、至る所に買い物客達がいて賑わいを見せていた。
鬼 「アレが例の……」ヒソヒソ
いつもならば気にも留めない奥様達の井戸端会議ではあるが、
鬼 「ほら、今話していた……」ヒソヒソ
今日は嫌に耳に付く。昨夜のことは既に町中で噂になっている様だ。それに全身に冷ややかな視線を感じる。周囲を見回すと視界に入る者達が、皆同じ目つきでこちらを見ていた。
私に向けられた物でないことは分かってはいる。だから気にする必要もない。それも分かっている。でもこの沸々と込み上げてくる気持ちは何だ? 連中達にイライラしてくる。
感情が直ぐに表に出てしまう私は、鋭い目つきをしていたのかも知れない。けれど、ふと小僧に視線を向けた時、
行きつけの店に到着。店の外にまで漂う食欲をそそる出汁の香り。週に1度は必ず立ち寄る蕎麦屋だ。
勇儀「店長、かけ蕎麦2つ! あ、蕎麦でいいか?」
注文した後だが、念のため小僧に確認をすると、
小僧「そば大好き!」
笑顔で元気良く答えてくれた。どうやら本当に好物の様だ。
勇儀「そうか、良かった。ここはダシが濃くて美味いんだ。期待していいぞ、きっと気に入るから」
店内を見回すとまだ空席が目立つ。奥の空いている席へ移動し、小僧と隣同士で座る。暫く待っていると、大きな器から湯気を出しながら、蕎麦が運ばれて来た。
店長「へい、お待ち。ところで勇儀ちゃん、この小僧って……」
小僧「いただきまーす♪」
上機嫌で蕎麦を食べ始める小僧をまじまじと見つめながら、蕎麦屋の店長が尋ねてきた。
勇儀「
小僧「ズルズルズルー♪」
蕎麦を頬張りながら店長に返事をする。隣からは蕎麦を
店長「まぁ……でも、なんでまた勇儀ちゃんと一緒なんだい?」
さっきから私が蕎麦を口に運ぶのと同時に質問をして来る店長。食べ終わるまで少し待ってはくれないだろうか?
勇儀「ふーっ、ふーっ。懐かれちまってな。今は私が預かってる」
小僧「モグモグ、ズルズルズルズルズルー♪」
店長「そうだったのか……。それで、
その言葉に私は思わず箸を止めた。
勇儀「今から行くところだよ。何て言われるか……」
店長「親方様も棟梁様も反対されるだろうね」
勇儀「私じゃなければ即座に反対されるだろうね」
正直気が重い。出来る事なら私だってあそこへ行くのは避けたい。けれど、私一人ではどうすることもできない程の大きな問題。自問自答しながら気持ちの整理をしていると、
小僧「ぷはっ♪」
隣の小僧が幸せそうな表情で汁を飲んでいた。「こっちの気持ちも知らずに
勇儀「ズルズルズルー……ゴクッ。ご馳走さん。食べ終わったら行くよ……え?」
小僧に声を掛け、あとどれくらいで食べ終わるのか様子を伺………ない。器の中が綺麗さっぱり何も残っていない。それこそ汁でさえも。
小僧「ごちそうさまでした。すごく美味しかった」
満面の笑みで胸の前で掌を合わせる行儀のいい小僧。「美味しかった」人間の子供の口から放たれたまさかの言葉に、店長は苦笑いをしながら頬を掻いていた。
それにしても、早すぎる。それにこの小さな体に、大人の鬼一人分が良く入ったな。かく言う私でさえも腹が一杯だと言うのに……。人間の子供の食欲は驚異だ。
勇儀「ありがとう。もう行くよ。いくらだい?」
支払いをするため、小僧と共に店の出入り口へ。
店長「かけ2つで、8つだ」
勇儀「細かいのしかないんだ、数えてくれ。1つ、2つ、3つ、4つ」
店長に見える様に一枚ずつ丁寧に置いていく。
店長「坊主、また来いよ。ところで、今いくつだい?」
小僧「5つ!」
勇儀「へー、5つだったのかい。6つ、7つ、8つ! はい、店長」
店長「はいよ、まいどー」
蕎麦屋の店長に軽く挨拶を交わし、再び小僧と一緒に歩き始めた。これから向かう場所の事を考えると、自然と顔に力が入る。「私は戦場へ向かう戦士」そう自分に言い聞かせ、一歩一歩力強く大地を踏み締め、歩を進めていった。
店長「おーい勇儀ちゃん! 一つ足りてないよ!」
--鬼再清算中--
勇儀「さて、着いたわけだが……」
私と小僧の目の前には
勇儀「たのもーーー!!」
ガチャ
中から鍵が外され、門が低い音を上げながら開いていく。
真っ先に目に飛び込んできたのは、小麦色の髪から力強く生えた太くて長い2本の角。更に開きかけた門の隙間から迫力のある大きな顔が覗き、全開になる頃には私の倍はある巨大な鬼がその全貌を現した。彼こそが親方様だ。
ガシッ!
親方「勇儀ちゃーん! 今日休みなんだって?会いに来てくれるなんて父さん嬉しい!」
大きな体で抱きつきながら頬ずりをして来た。
そう、この屋敷は私の実家。親方様とは私の父の事で、棟梁様とは母の事。
元々ここは母の実家で、父は婿養子としてやって来た。立場上母の方が上になるのだが、それでは面目が立たないだろうと、補佐役の親方様という役割を与えられ、この町では2番目の地位となっている。
こんなお屋敷育ちだった私だが、礼儀がどーとか、作法があーだとか言われ続ける日々が嫌になり、家を飛び出して一人で暮らしていく事にしたのだ。おかげで今は自由気ままにやれているし、その事について後悔はしていない。
勇儀「いい加減離れろよ」
親方「連れないこと言うなよ。ん? その小僧は? まさか……」
まずい……。
その昔、鬼達がまだ地上にいた頃、
その時の話を良く聞かされていたが、いつも話の最後に「奴らは自分勝手で空気が読めない迷惑な奴らだ」と、ボヤいていたのを覚えている。
目を大きく見開き、小僧を見下ろす
そして
親方「ついに孫がッ!? 相手は誰だッ! 鬼助かッ!?」
興奮しながら迫ってきた。
勇儀「バカ! ちげーよ!!」
親方「じゃあ父親は何処のどいつだ!? 適当なやつだったら父さん悲しい!」
勇儀「だから! 違うって言ってるだろ! この小僧は人間の……」
親方「人間だとぉ……!?」
想定外過ぎる言葉に思わず熱が入り、つい勢いで口が滑ってしまった。本当は順を追って話しをしたかったのだけど……。変に勘違いされたか?
親方「相手は人間だと!? 父さんはそんな娘に育てたつもりはないぞ!」
勇儀「さっきから想定外の勘違いをしてるんじゃないよ! いつまで空想の孫の話をしてるんだい!ほら、良く見なよ」
話の噛み合わない
親方「確かに、角が無ければ妖力も感じられねぇ」
勇儀「町じゃあもうとっくに噂になっているよ。聞いてなかったのかい?」
親方「いや、オレのところには入って来てねぇな。それで何で勇儀ちゃんと一緒いるんだ?」
勇儀「その辺りも含めて相談に来たんだ。棟梁様……母さんはいるかい?」
親方「あぁ、広間で一服でもしてんじゃねぇか?」
勇儀「そうかい、上がらせてもらうよ」
そう呟き、小僧の手を取り、いざ屋敷の中へ。
だが握ったその小さな手が、この先に進む事を拒んでいた。後ろを振り返ると、小僧は足元を見て震えていた。気付けば私の手の中でも……。無理もない。目の前に自分の背丈の三倍はある強面の、小僧が思っていた通りの鬼がいるのだから。
でもまぁこうなる事は薄々分かっていたわけで……
勇儀「ほら、おいで」
小僧に近づき、優しく声を掛けながら抱きしめてやる。
勇儀「どうしても中で話しをしなくちゃいけないんだ。こうしていてやるから、一緒に来てくれるかい?」
小僧「……うん」
顔を肩に埋め、小さく弱々しく返事をしてくれた。私は小僧を抱いたまま門をくぐり、ゆっくりと屋敷を目指した。
親方「本当に勇儀ちゃんの子供じゃないのか?」
勇儀「しつこい!」
グサッ!
親方「シクシクシクシク……」
ふっ、今のは効いただろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
謎の子供を抱える娘の後ろ姿を眺めながら、彼は心の言葉を口にしていた。
親方「うーむ……どう見ても
パルスィファンの方すみません。