東方迷子伝   作:GA王

20 / 229
温泉行きたいです。


一日の終わりに_※挿絵有

優希「ここかな? 『男』『女』って分かれてるし」

 

 神社の裏へと足を運ぶと、そこには大きめの板が左右に分かれて立て掛けてあり、それぞれに性別が漢字一文字で書いてあった。どうやらこの先が温泉の様だけど……

 

優希「ん? これなんだ?」

 

 男女に分かれた入り口の真ん中に小さな箱。そしてその(そば)には

 

『お気持ちを入れてください。

 尚、入れない場合、

 不幸があなたを襲うでしょう。

               by 博麗の巫女』

 

 と書かれたA4サイズの木の札が。僕、一瞬思考停止。

 

優希「ここでもお金取るのッ!? 霊夢さんって巫女だよね? 不幸が襲うとか言っていいの?」

 

 (たま)らず心の声がガッツリ出ていた。しかもやや大きめに。するとそこへ、

 

??「どうかされました?」

 

 背後から誰かに話し掛けられた。「周囲には誰もいない」と思い込んでいただけに、思わず

 

優希「え゛っ!?」ビクッ!

 

 全身で「驚きました!」のサイン。恐る恐る振り向くと……

 

アリ「そ、そんなに驚かないでください……」

 

 アリスさんでした。しかもガックリと肩を落として……無意識に傷つけてしまったみたいです。

 

優希「ア、ハィ……す、すみません……」

 

 ホント反省。そして気を取り直して、真ん中の脅迫めいた札を指差し、

 

優希「あの、コレの事なんですが……」

 

 その真意を尋ねた。するとアリスさんは呆れ顔で答えてくれた。

 

アリ「あー……、ソレですか。無視して頂いて大丈夫ですよ。今まで一度も払った事ありませんけれど、何も起きていません。気にしないで入って来て下さい」

 

 特に何かが起きる訳でも無さそうで一安心。ゆっくりと浸かってきます。

 

 

--オタク入浴中--

 

 

カポーン……。

 

 

優希「あ゛―……」

 

 気持ちいいー……足の疲れがスーッとお湯に抜けていく。これぞ日本の文化! 温泉最高!!

 でも幸せな気分ばかりではいられない。さっき一通り洗い物が終わったけれど……帰り大丈夫かな? 洗濯を終えた衣類を詰め込んだ桶を持ってみたけど、アレ結構な重さになっていたぞ。魔理沙さんは「飛ぶときに重さは関係ない」とは言っていたけど、僕がアレ持って後ろに乗ったら、支点・力点・作用点の関係で(ほうき)がポキリといくんじゃないだろうか?何より両手に荷物を持った状態で、魔理沙さんの後ろには絶対に乗りたくない! じゃあどうしよう……。

 

優希「困った……」

 

 温泉に浸かりながら瞳を閉じて考え事。辺りは凄く静か。時折吹く風が火照った顔に当たって心地いい。

 

 

ピチャ、ピチャ

 

 

 そこに水を踏む足音。しかも2つ。それは徐々にこちらに近づいて来る。全神経を耳へと集中し、気配を伺う。人を襲う獣? 妖怪? 不安と恐怖で心臓がバクバクになる中、聞えてきたのは……

 

??「いつ来てもここの温泉は良いよなぁ」

??「私は久しぶり♪」

 

 あああアリスさんとままま魔理沙さんッ!? が、ととと隣の、こここの岩に(さえぎ)られた、むむむ向こう側にッ!?

 

魔理「あ゛ーっ! 気っ持ちいー!」

アリ「魔理沙、あなたちょっとオジさん臭いわよ。でも……はー、気持ちいー……」

 

 さらに聞こえて来る2人の会話。そしてその内容から察するに、2人と僕は温泉で繋がってる!? 妄想しただけでヤバい……。

 

魔理「おーい、優希。まだいるんだろー?!」

 

そこへ僕を呼ぶ魔理沙さんからの大きな声。

 

魔理「私とアリスも風呂入って行く事にしたから! そんで、風呂出たらみんなで飯食って、帰る事にしたからなー! よろしく頼むze☆」

優希「あ、はい、わかりましたー!」

 

 平静を装って返事をしてみるも、心臓が別の意味でバクバク。

 

魔理「ところで、優希知ってたかー?」

優希「?」

魔理「アリスってこう見えて、実は結構いいもん持ってるんだze☆ ホント……ムッカつくよな! このっ!」

アリ「キャーッ! 魔理沙どこ触ってんのよ!」

魔理「少しは分けろってんだ。このこのこのー!」

アリ「ちょ、ちょっと……ほ、ホントにやめ……あっ……」

魔理「おやおやおやおや〜?」ニヤニヤ

 

 

ピチューン

 

 

アリ「もーッ! いい加減にしなさいよ!」

魔理「打ち込んでくる事ないだろ! 別にいいだろ、減るもんじゃないし! 優希もそう思うだろ!?」

 

 

--5秒経過--

 

 

魔理「あれ? おーい!」

 

 

--また5秒経過--

 

 

魔理「先に出たのかな?」

アリ「ホントに魔理沙やめてよね。隣の優希さんに聞かれていたらどうすんのよ!」

魔理「いいじゃんか。ちょっとくらいサービスしてやっても」

アリ「ア・ン・タ・ネェ……」

 

 言えない……「バッチリ全部聞こえていました」なんて。アリスさんには本当に申し訳ないですけど……魔理沙さん、ありがとうございます!

 

 

ーーオタク忍び中ーー

 

 

 あの後、「先に出た」と思われていただけあって、最新の注意を払って気配を消し続けていた僕。温泉に入ったと言うのに、無事気付かれる事なく退散できた瞬間、ドッと疲れが……。

 で、アリスさんと魔理沙さんが戻って来たところで、予告通りみんなで夕食を――

 

優希「コレ全部霊夢さんが!?」

霊夢「なによ? なんか文句あるの?」

優希「いえ……ないです」

 

 ギロリと鋭い視線を向けて来る霊夢さん。ただ素直に「凄い」って思っただけなのに……睨まれると何も言えない……。

 

霊夢「イヤなら食べなくていいわよ」

優希「いえ……、ォィシィです……」

霊夢「は?」

 

 こわいこわいこわい……。

 

魔理「そんなに睨んでやるなよ。『マズイ』って言われた訳じゃないんだからさぁ」

アリ「そうよ。それに今ちゃんと『美味しいです』って言ってたわよ」

霊夢「そ、それなら別にいいわよ。紛らわしい言い方しないでよ。まったく……ちゃんと言いなさいよね!」

 

 「ふんッ!」と他所を向いて怒る霊夢さん。僕この人ホント苦手……アリスさんは優しいです。

 

霊夢「ハッキリしないのは好きじゃないわ。ウジウジしないでシャキッとしなさいよね」

 

 霊夢さんの一言一言が重いパンチとなって襲いかかる。泣いてもいいですか?

 

アリ「霊夢、もういいでしょ?」

魔理「まあ、でも実際イラッとくる時あるよな」

 

 あ、もうダメかも……。

 

アリ「もー、二人とも! 優希さん、私はそんなことないですからね?」

 

 アリスさん、ホント天使。

 

霊夢「アリスはやたらとコイツの肩持つわね」

魔理「似た者同士なんだろうze☆」

優希「え?」

アリ「ちょ、ちょっと……。その話は……ね?」

 

 「似た者同士? 誰と誰が? まさか僕とアリスさんが?」と浮かぶ疑問。

 

 【アリスさん】綺麗、優しい、親切、明るい、会話が上手そう、誰とでも仲良くなれそう、友達多そう。

 【僕】地味、挙動不審、優柔不断、暗い、会話下手、コミュ障、友達は海斗君だけ

 

 何コレ? どこも共通点ないけど? 天と地の差ですけど? 少しでも共通点を探してしまった自分が恥ずかしい。(おこ)がましい!

 そんな僕の考えを見透かしたのか、霊夢さんがジトッとした目で、モグモグと口を動かしながら僕を監視していた。そして口の中の物をゴクリと飲み込むと、

 

霊夢「今のは忘れなさい」

 

 「気にするな」とやや強めの口調で言い放った。

 

霊夢「それで? あんた人里で仕事をする事にしたんですって?」

優希「は、はい!」

霊夢「いい心構えだと思うわよ。何もせず居候(いそうろう)するなんて、ただの()()だもん。もしそうなっていたら、私はあんたの事を軽蔑(けいべつ)していたわ」

魔理「そうだな。()()はダメだな」

優希「はい……」

 

 今だから思う、「ホントに仕事が見つかって良かった」と。

 

アリ「わ、私は別に……」

霊夢「でもあんた、アリスの家から人里までどうやって通うつもり?」

 

 そう尋ねられるものの、僕がアリスさんや魔理沙さんみたいに空を飛べる筈もなく、

 

優希「え? あ、歩いて……」

 

 必然的にこうなる。

 

霊夢「魔法の森を? 言っておくけど、あそこは人を食べる妖怪もいれば、イタズラ目的で人を惑わす妖精達もいるのよ? 私が渡したお守りのおかげで、ある程度は安全だと思うけど、無謀にも程があるわよ。そんなを事したらあんた、死ぬわよ?」

 

 霊夢さんに言われた事は薄々気付いていた。昨日の夜、アリスさんの家の外に出た時に感じた威圧感。悲鳴に唸り声。あの中を通れば間違いなく即死。でも……。

 

優希「どうすれば……」

アリ「なら、私が……」

魔理「魔理沙ちゃんが送り迎えしてやるze☆」

  『え?』

 

まさかの申し出に思わず耳を疑い、目が点。

 

魔理「行きはそのまま人里に送ってやるze☆ そんで帰りはまたここで風呂入っていけば、アリスの家まで送ってやるze☆ バッチーのは嫌だからな」

 

 「お風呂に入って綺麗になればOK」なんという好条件。僕としても温泉は心地よかったし、まさに願ったり叶ったり。それに何と言っても……。

 

優希「ありがとうございます。是非そうさせて下さい! それならアリスさんに迷惑をかけずに済みます!」

アリ「ィャ、私は別に……」

魔理「おい、魔理沙ちゃんならみいいってことか? さすがに今のは傷付いたze★」

 

 しかめっ面で不貞腐れる魔理沙さん。一気に不機嫌に。

 

優希「いえ、決してそういう訳ではなくて……、ごめんなさい……」

 

 本意でないにしろ、故意でないにしろ結果は謝罪。時を巻き戻してやり直したい…。

 僕が後悔の気持ちに駆られてしょぼくれるていると、突然霊夢さんが

 

霊夢「なに? あなたアリスの事が好きなの?」

 

 爆弾投下。

 

 

ドッキーーーン!

 

 

アリ「えーーーーッ!!?」

優希「ななななに、なにを言ってるんですか!? 僕はただお世話になるアリスさんに、これ以上迷惑をかけたくない『()()』で、ここここここ好意とかそんなのじゃなくて、『()()()()()()』なんです!」

アリ「……」

魔理「おい優希、今自分で何を言ったのか分かってるのか?」

優希「?」

霊夢「魔理沙ムダよ。こういうヤツに何言っても」

 

 

グサッ!

 

 

 なんかよく分からないけど、切れ味のいい一撃が。けど、

 

霊夢「まぁ、これ以上アリスの足を引っ張りたくないって想いは評価するわ」

 

 褒められて少し回復。

 

優希「ハ、ハイ……。ありがとうございます。いずれは魔理沙さんにも迷惑かけない様に……」

霊夢「そうね、魔理沙がいつまでも送ってくれる保証なんてないし。途中で『()()()』とか言い出すかもしれないし」

魔理「霊夢、魔理沙ちゃんはそんなに信用ないか?」

霊夢「日頃のあなたを知ってたらねー」

アリ「そうね。寝坊、遅刻の常習犯だもんね」

魔理「なんだよ2人して! 魔理沙ちゃんだって、やるときはちゃんとやるんだze☆?」

  『どうだか』

魔理「優希は信用してくれるよな? な? な?」

 

 もう必死……。

 

優希「あ、はい……」

 

 勢いに負けて『Yes』と答えたけど……正直不安です…。魔理沙さんが原因で遅刻とかになったら、シャレにならないよ……。今は頼るしかないけれど、早く一人で人里まで行ける様にならないと……。

 

魔理「安心したze☆ 優希にまで信用されていなかったら、魔理沙ちゃん一人ぼっちになって泣いてるところだったze☆」

 

 「そこまで?」と思うと同時に、脳裏を(かす)めるある疑惑。けどそれを言ったら魔理沙さん怒るだろうな……。今は止めとこ。

 

魔理「ん? それより優希さっきから全然食べてないけど、どうした? やっぱり不味(まず)かったか?」

 

 僕の表情と食事をチラチラと見比べて心配してくれる魔理沙さん。

 

優希「ィェ、そうじゃなくて……」

 

 でも決して不味い訳ではない。(むし)ろ本当に美味しい。山菜のおひたしだって、キノコのかき揚げだって。問題は味じゃなくてそもそも論で……。

 

優希「疲れなんですかね? 全然食欲がないんです」

 

 そう、心臓破りの階段を2往復、人里との間を1往復。これが響いて胃が物を受け付けてくれないのだ。そして僕が答えるまでの間の霊夢さん、すっごい睨んできた。

 

アリ「大丈夫ですか?」

魔理「あー……、あるよな。そういうの」

霊夢「あんたホント体力ないわね。明日から仕事なんでしょ? お店の足を引っ張ってたらクビにされるわよ?」

優希「ハィ、そうならない様に頑張ります……」

霊夢「それに食事は大事よ。食べれる時に食べないと、変に痩せちゃ……あんたはそっちの方が良さそうね」

 

 

グサッ! グサッ!

 

 

 反論の余地ゼロにして痛恨。分かってはいるけど、言われると痛い……。

 

魔理「あっははは! 確かに! 優希、これはダイエットだ!」

優希「ハイ、頑張って細くなります……」

魔理「あっはははは」

 

 魔理沙さん……笑い過ぎです。今度は僕が泣きそうですよ?

 

 

ーーオタク食事中ーー

 

 

 食後はみんなで協力して後片付け。一段落したところで温かいお茶を頂き、アリスさんの家へ戻ることになった。

 僕の洗濯物はあまりにも量が多く、魔理沙さんにも「バランスが取りにくい」という理由で「全部持って帰るのは無理」という判決に。そこで霊夢さんに「半分干させて下さい」とお願いしたところ、2つ返事でOKをもらい、明日の帰りに持って行く事になった。

 

優希「霊夢さん。ご馳走さまでした。あと色々ありがとうございます」

霊夢「ではそのお気持ちをこちらに……」

アリ「霊夢、あなたそれもうやめなさいよね」

魔理「いいか優希。これが霊夢だ、よく覚えておけよ」

霊夢「ちょっと、私を悪者扱いしないでもらえるかしら?」

優希「僕はそんな風には……」

霊夢「でしたら明日いらした時にお気持ちを……」

アリ「霊夢!」

霊夢「冗談よ。アリスももう少し頭を柔らかくしなさい。それじゃあ、3人とも気を付けてね」

優希「はい、ありがとうございました」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 3人を見送る博霊の巫女。夜空へと消えて行く人形使いと、外来人の後ろ姿を眺めながら、彼女は心に思った事をそのまま呟いた。

 

霊夢「いいヤツだとは思うけど。私は苦手ね。魔理沙じゃないけど、似た者同士ね」

 

 

--オタク飛行中--

 

 

魔理「どうだ? まだ怖いか?」

優希「いえ、もうあまり怖くはないです」

 

 これは本当の事。日が出ている時はあんなに怖かったのに、今は不思議とそこまででもない。夜になって下の景色が良く見えないのが幸いしているのだろう。でも、この密着状態が……。

 

アリ「魔理沙、夜なんだから飛ばすのは止めなさいよ」

魔理「わーってるって」

優希「すごい星空……」

 

 ふと空を見上げれば、無数の星達が散りばめられた宝石の様にキラキラと輝いていた。

 僕が住んでいた町では、こんなに多くの星を見る事はできない。見えたとして1等星、2等星くらい。けど今見えているのは3等星までは確実に見えてる。もっと目を凝らせば4等星だって。満点の星空とは正にこういうものを言うのだろう。

 

アリ「満月の日は月が大きく見えて、すごく綺麗なんですよ」

魔理「魔理沙ちゃんも満月の日は好きだze☆ 1人でゆっくりと空を飛びながら、満月を(さかな)に一杯やるze☆」

アリ「あなたこの前それやって、酔っ払って木にぶつかってたでしょ。お酒飲んでる時に飛ぶのは止しなさいよね」

 

 満月を見ながらお酒って……ベテランじゃないですか……。魔理沙さんがお酒を飲むのは確定。そして、お酒を飲んだときの飛行は危険。覚えたぞ。

 

魔理「はいはい。それ、着いたze☆」

 

 アリスさんの家の上空に着くと、人形の上海と蓬莱が両手を振りながら出迎えてくれた。魔理沙さんは僕を下ろすと、また直ぐに上空へと浮上し……。

 

魔理「じゃ、魔理沙ちゃんも帰るze☆」

優希「あ、はい。どうもありがとうございました」

アリ「魔理沙、明日遅れないで来なさいよ? 優希さんの仕事初日なんだから」

魔理「わーってるって。じゃあ明日早めに昼飯食べてから来るからze☆」

優希「よ、よろしくお願いします」

魔理「おう、じゃあな。おやすみぃー……☆」

 

 夜の別れの挨拶と共に、爽やかな笑顔で去って行く魔理沙さん。暗い夜空を箒に(またが)って飛んで行くその姿は、僕が知っている魔法使いそのもの。The・魔法使い。

 そして、残された僕

 

優希「……」

アリ「……」

 

 とアリスさん。今2人きり。そう考えると急に胸がドキドキと鼓動を早め、お得意の

 

優希「(どどどどうしよう。ななな何か話題をッ! さっきまで普通に会話出来てたのにぃ~! 何で急に話せなくなるの?!)」

 

 脳内テンパリ。

 

優希「あ、あの……」

アリ「は、はい!」

 

 咄嗟(とっさ)に出た声。その先はまだ考えていなかった。だから、

 

優希「なるべくご迷惑をかけない様にしますんで」

 

 僕が思っている事を

 

優希「不束者ですが、よろしくお願いします!」

 

 そのまま伝える事にした。

 

アリ「ぃぇぃぇ、改まらなくても大丈夫ですよ。私の方こそ(いた)らない点が多いと思いますので、大目に見てください」

優希「ぃぇぃぇ、そんな。もう充分過ぎる程です」

 

 これも混じり気なしの本心。アリスさんは唯でさえ親切にしてくれる上に、これから家でお世話になる。それなのに『至らない点が多い』とか『大目に見て』とか。僕はもうこれ以上アリスさんに気を使わせたくない。

 

優希「アリスさんはどうぞ今のままで……」

アリ「ふふ……」

 

 スラッとした指で作った拳を口元に当て、くすくすと笑い始めるアリスさん。僕、

 

優希「?」

 

 ぽかーん。すると……。

 

アリ「これではいつまで経っても終わりませんね。お互い協力して頑張りましょう」

 

 少し困った顔を浮かべながらも、優しい言葉をかけてくれた。そしてやってくる強力魔法。

 

アリ「ね?」

 

【挿絵表示】

 

 

 ぐはっ! 笑って首を傾けて1文字発しただけなのに、なんという破壊力!! でも僕は耐えました。堪えました! 「ここで倒れたら勿体無い」という一心で!

 そこにチクチクと感じる圧力。見なくても、確認しなくても分かる。蓬莱! きさま! 見ているなッ!

 アリスさんの魔法のお陰で俄然やる気が出る。(みなぎ)る! (あふ)れ出る!!

 

優希「はい! 頑張りましょう!」

 

 自分でも思います。「ホント単純」と……。

 昨夜とは打って変わって静かな森の中。その中にひっそりと(たたず)む一軒家。そこには心優しい人形を操る魔法使いさんが住んでいます。そして今日から僕はそこで、その方と()()で頑張って、協力して行こうと思います。

 

優希「そう言えば魔理沙さんの家って、この先なんですよね?」

アリ「はい、魔理沙が新しく作ったこの道の先に」

優希「……」

アリ「……」

魔理「おーい、アリスー!! 悪りぃ! 家が滅茶苦茶になってたから、今日泊めてくれ」

  『やっぱりね』




次回:「バイト始めました」

ですが、ちょっと別の話を挟みます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。