しかしここで忘れていけないのがインフルエンザ。
今猛威をふるっております。
なったら大変です。いや、ホントに大変でした。
皆さん手洗いは念入りにした方がいいですよ。
もちろん栄養も。
これはその場にいた方々から聞いた話です。
ある方は言いました「あれは白い光だった」と。
??「さっきの金髪はー……?」
またある方は言いました「あれは男だった」と。
??「って、ここって——」
またまたある方は言いました「あれは
??「ま、まままさか……」
しかしその一方で、
??「なんでこっちに来てるの?!」
「あれは黒い影だった」と語る方、
??「関わりたくないのに関わりたくないのに……」
「あれは女だ」と語る方もいれば、
??「何でどうして何でどうして何でどうして」
「あれは
夢子「そこを——」
では正解を発表しましょう。筋トレマンが真っ二つに切断されなかった理由とは、
夢子「どきなさい!」
医者「鬼助急げ!」
鬼助「早くしないと和鬼が」
医者「そんなの分かっておる。——そこを退け」
けれど命の危険に
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ミツメは語り続ける。あの日の記憶を。
??「大鬼そこを退け!」
それがついにここまで。
あの日起きたことは全部、今でも鮮明に覚えている。
丸つけを頼んだのに解答を忘れて話をはぐらかしたミツメのことも、
自分「和鬼、和鬼!」
血の色に染められた悲惨な光景も。
鬼助「急いで薬を——」
医者「ダメじゃ、こんな状態では飲ませても吸収できん。
??「おじいちゃん!」
??「それ和鬼?! 何これどういうこと?」
医者「ヤマメとパルスィか。事情は後回しじゃ、今は事を急ぐ。ヤマメ、大鬼の時のように——」
ヤマ「うん!」
医者「パルスィは薬を」
パル「分かった」
擦り切れた服、黄色い髪に絡まった砂利、頬に付いた焦げ跡。そんな格好で二人は駆けつけて来れた。と同時に分かった。博麗の巫女を止める事が出来なかったんだって。「博麗巫女は今何処に? 誰が相手をしている? その先の作戦は?」そう頭をよぎったのは確か。けどそんな事を尋ねられる雰囲気ではなかったし、自分も尋ねられるほど余裕なんてなかった。
指先から透明な糸を出し続けるヤマメとその糸を使ってアイツの傷口をいつになく深刻な顔で
自分「和鬼聞こえてんだろ!? 目ぇ開けろよ!」
鬼助「落ち着けって、お前に何が出来るんだよ! 今出て行っても邪魔になるだけだろ!」
何も出来なかった。吠えるだけだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
しかし裁きは終わってなどいません、始まったばかりです。
パル「パッ!?」
彼 「!? 鬼助後ろ!」
鬼助「げえええッ!」
夢子「裁きを続行します」
そこへ執行人の夢子さんが
夢子「!」
ですが、幸いなことに振り下ろされた剣が彼らへ届くことはありませんでした。
??「手ぇーがぁー、しぃびぃれぇるぅー」
先が三つに分かれた矛に救われたんです。そしてその矛を
ざわついていますね。もうみなさんもお気付きでしょう、今この場にいないのが残念ですね。その方は見る方によって姿が異なる『正体を分からなくする程度の能力』を持つ
彼 「えっ、ぬえ?」
他人を助けるなんて珍しい? けど彼らを助けるために惨状したのは事実です。ただの気まぐれだったのかもしれませんがね。
それとこれは余談ですが、皆さん覚えていますか? 村紗さん達が彼の下に駆けつけたきっかけの事を。
ぬえ「かかか勘違いしないで。人間なんて、大ッキライなんだから」
彼 「なんでそれを……。だったらどうして?」
ぬえ「けどあんたは……あんた達は!」
はい、そうですね。
ぬえ「じ、時間を……だだだからムキムキを」
外から「大変だ」と叫ぶ声が聞こえたからです。それがぬえさんの仕業だったのではないかと。なんでも話によると、ぬえさんは少なからずある程度の事情を把握している雰囲気だったそうなんです。とは言っても私の憶測ですから、本当のところはご本人に直接尋ねてみないと分かりません。
夢子「どうして邪魔を? あなたには何の罪もない、罪を犯す前に立ち去るというのなら見逃してあげてもよくてよ?」
ぬえ「そそそれはうう嬉しいけど……」
夢子「断るというのね?」
ぬえ「ここここいつらららも……」
夢子「それは無理な相談ね、連中は罪を犯し過ぎた。なぜそこまで肩入れを?」
ぬえ「いいい一緒に冒険とかとかとかか……」
夢子「なるほど『仲間』というわけね」
ぬえ「……たぶん」
続きを語る前に、ここで皆さんに知っておいて頂きたい事があります。それは長老様が持っておられた傷をたちどころに回復させる薬の残量です。この騒ぎで大活躍してきましたが、度重なる負傷者にこの時にはもう残すところニ人分だったそうです。その内の一人分は言うまでもなく筋トレマンへ使われました。そして残りはあと一人分に。
夢子「仲間、同胞、友人を守るため。その心には敬意を表します。けれど、それなら
ぬえ「かかかかってこここ来い」
夢子「……震えているようだけど?」
ぬえ「ううううるるうるさい!」
では続きです。打ち鳴らされる連続した金属音はお二人の実力が
ぬえ「ひぃいいいッ」
戦況はぬえさんの防戦一方だったとか。なおも高速度で移動し、前後左右から襲いかかる夢子さんの剣を受け止めるだけ。反撃もままならずいっぱいいっぱいのように写っていたそうです。さらにそこへ、
夢子「スターメイルシュトロム」
魔力の弾幕が加わりぬえさんの姿は立ち所に爆煙に飲まれていったのだとか。
小説やドラマではピンチの時に登場したヒーローが状況を
だからでしょうね。登場してばかりだというのに、やられっぱなしで見せ場のないぬえさんに、その場の方々はこう思ったそうですよ。
『(終わり?)』
とね。やがて爆煙が吹き抜ける風に流され、そこには無茶をした者の末路が……
ぬえ「けほけほッ、ぬえーッホ。目が、目が〜! 目に小石が〜!」
かと思われました。なんとぬえさんは無事だったんです。傷一つ負っていなかったんです。全弾避け切った? そう当時の夢子さんも皆さんと同じことを考えたでしょう。
夢子「上手く避けたようね、なら——」
だからより強力でいて、より速く、より逃げにくい魔法をぬえさんに放ったんだと思います。
夢子「魔法銀河系」
その魔法はぬえさんのみならず辺り一帯に飛び交い、瀕死の筋トレマンの治療を行なっていた長老様達をも襲いました。
ヤマ「パルスィ!」
パル「あーもう! エネルギーチャージ出来てないのに妬ましい! みんな下がって」
鬼助「うわととと、無差別かよ!」
彼 「放せってば! 次来てるんだって!」
鬼助「そういう事は先に言えよ!」
それを彼らは全力で阻止していたそうです。長老様の手が止まらないように、
鬼助「なんでオイラァァァ?!」
渦巻く風の様に放たれる魔力の光線は幾度となく彼らを襲撃しました。まるで彼らの想いを阻止するかのように。
夢子「ハァ、ハァ、これなら」
やがて夢子さんの息が上がるまで続けられた弾幕も終わりを迎え、辺りが
と、そこへ——
??「ぬええええええん!」
泣き声です。大音量の泣き声が響き渡ったんです。
ぬえ「ぬぇッぐ、ぬぇッぐ、ヌ゛エ゛エ゛」
そうです、なんとぬえさんは無事だったんです。ペタンと腰を抜かして泣きじゃくりながらも、同じ位置で真っ黒になりながらも、村紗さんや一輪さんを
ところで霊夢さん、地底と魔界の境界線だった扉にはお札が貼られていたのですが、そのお札ってどれくらい強力なんですか?
パル「もうムリ、もう限界。何なのあの
先代がやった事だから知らない?
パル「で、そっちは?」
紫さんに聞けって、引継ぎしなかったんですか? ……それでは紫さんにお尋ねします、どうなんですか?
鬼助「キ、キスメが突っ込んで来た時以上にヤバイ」
平凡な妖怪の群れを一掃出来るって……それ本当ですか? だとしたらさすがですね。なんでも聞いた話によると、ぬえさんはそのお札に触れてしまったことがあるそうで……。
鬼助「それにしてもよ、今のをモロに食らって泣くだけって……」
その時もやはりボンバーヘッドで大泣きしただけだったそうですよ。
パル「う、うん。彼女——」
鬼助「アイツ——」
でもそうですよね。能力で正体を眩ませてみても真の姿はイタズラ好きな女の子、その上人見知りで臆病。けれど彼女は言わずと知れた大妖怪の『
『(実はすごいんじゃないか?)』
何処の誰だかは知らないが彼女は只者ではない。この事実が立ち込めていた暗雲を|
??「誰だか知らんがおっさん達も手を貸す!」
??「えらく冷静じゃねぇの」
ぬえ「ぬぇッ!?」
彼の師と親方様です。
師匠「冷静なものか、頭も
親方「珍しく意見が合ったな、ワシもだ」
ぬえ「誰ッ?!」
『鬼の怒りを思い知れ!!』
お二人とも最高潮の大噴火、彼の師にいたっては大切な
そこからです。彼の師と親方様、そしてぬえさんによる
親方「大江山颪ィィッ!」
親方様は
ぬえ「だ、『弾幕キメラ』!」
ぬえさんは主に光弾を放ちながら、
ぬえ「伏せて!」
夢子「またあなた——」
攻められつつも向かって来る夢子さんからお二人を守っていたそうです。
師匠「おっさんの前で足を止めたな」
三人対一人、数的にも戦術的にも圧倒的に優位です。引っ込み思案で秘められた実力を出し切れないぬえさん、そこに加わる
師匠「柔をもって剛を制す——」
夢子「しまっ——」
師匠「『背負い:
【次回:表_十三語り目】