予防もそうですが、そろそろやつらがやって来る時期なんですよねー。
鼻も目も大変なことになって。
は…は…シャアーッ!
◇ ◆ ◇
彼女の前で繰り広げられる光景は、にわかに信じ
彼女「魔理沙——」
異変の
麗人「コォンノォヤァローッ」
加えて、それを逃げもせず避けもせずに真っ向から受け止める
彼女「あんた……」
◆ ◇ ◇
私 「いちちち……」
決定打には遠く及ばず。
やがて大木のように太かった光線は、徐々に力を失って最後には道端に転がる枝のように細くなり、ついにはその姿を消していった。
ここで本来なら「何故彼女がヤツの力を使える?」と疑問に思うところだろう。けど私はそんな不可解な現象よりも、
私 「(二度目のスキルブレイク)」ニヤリ
してやったりと満足気に勝ち誇っていた。そんな事をしている暇があったのなら先に手を打つべきだったと反省する前に。
魔理「嫉ーーーーー妬だze★」
髪をバタつかされる突風が私を襲った。その正体はより強烈な威圧感。白黒の彼女からは黒々しくもキラキラと輝きを放つ力が垂直に吹き上がり、緑色に光る瞳はより鋭くギラつき、
魔理「パル★パル★パル★パル★パルze★」
なんか色々と増していた。
魔理「『嫉恋:ジェラシー——』」
だがそこまで、二度目は無かった。
霊夢「いい加減にしなさい!」
その瞬間、カコーンと
博麗の巫女は人格が変わった彼女の背後に回るや、手にしていた棒切れを後頭部へと力任せに振り下ろし……つまり殴った。味方を殴った。既に大きなコブがあるにも関わらず殴った。
そして札を
そこからだ。雪の上に倒れ込んだ、背中に紅葉跡が出来上がったであろう彼女に向けて、空中で複数の十字を描きながら
霊夢「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」
何やらぶつぶつと
魔理「う、う〜ん」
白黒の目から
私 「(さすがだな)」
と。だがしかし同時に、
私 「(殴る必要あったのか?)」
と首をより傾げていたのも事実。ちなみにあの時、流されていく黒い影が『ルううううぅぅぅぅぁぁぁぁ。。。……☆』のようにも映ったが、これは気のせいだろう。
魔理「ze☆? 魔理沙ちゃんは何を……!?」
ヤツの力を手にしていた彼女の表情はすっかり元通りに。けど、まるで眠りから覚めたばかりかのようにキョロキョロと辺りを見回し、ヒントとなるものを探していた。おそらくあの間の記憶が無かったのだろう。
霊夢「あんた急にどうしたっていうのよ。今——」
そこへ博麗の巫女が説明しようと……それも束の間、彼女の顔色がどんどん血の気の引いた色へと変化していき、
魔理「ちょ、ちょっとタンマze★」
とか言って小道に駆け込んで行ってしまった。
『は??』
残された私と巫女、
そこへ響き渡る音は季節感無視の、雰囲気ぶち壊しの、
魔理「ZZZZEEEEeeee★★★★」
聞くに耐え難いもの。誰かに「何があった?」と問われたら……ふっふっふ。実はその時の答えはもう用意してある。とびっきりのな。いつかお
私 「あれ、大丈夫かい?」
それはそうと今だから言えるが、ヤツお手製の訳のわからん物を飲んだのだから、当たり前と言えば当たり前だな。自業自得ってやつだ。当時は敵ながら心配させられたものだ。
霊夢「一旦ストップ、あんたそこで待ってなさい!」
私 「ん、ああ構わないよ」
白黒が回復するまで休戦。私も熱を帯びて擦り切れた手を冷やそうと、足下に積もる雪を拾い上げ、ヒンヤリとする感覚に心地よさを覚えていた。そんな時だった。私を呼ぶ声が聞こえて来たのは。
??「勇儀さん……ニャ」
相手は誰だかすぐに分かった。けれど周囲を見回して見ても彼女の姿はなかった。今さら隠す仲でもないのにどうしたものかと疑問に思っていたが、後から事情を聞けば……なるほどなと。
お燐「そのままで聞いて下さいニャ」
なんでも
勇儀「何で戻って来た? さとり嬢に——」
お燐「さとり様には伝えましたニャ」
おまけに極めて
勇儀「ならどうして?」
お燐「それはさとり様が——」
そんなお燐はさとり嬢の考えを話してくれた。聞かされた時は「随分と信用されてないんだな」と不服に感じたと記憶している。さらにお燐はもう一つの騒動についても——
お燐「ここに来る途中、向こうの方で
悔やんだ。悔やんでも悔やんでも悔やみ足りなかった。私が立てたその場
私 「(今からでも遅くない)」
張り裂けそうな胸の内に身を
お燐「勇儀さん待って下さい、最後まで聞いて下さいニャ。棟梁様と親方様、大鬼君のお師匠様、それに大勢の町の方々が向かっているのを見たんですニャ」
勇儀「え、父さん達が?」
お燐「あと和鬼君の彼女さん達もですニャ。だからきっと大丈夫ですニャ」
当時和鬼の彼女の実力は定かではなかったが、お燐が「大丈夫」と断言したからそれを信じることにした。さらに父さんと萃香の親父さん、血の気の多い鬼一族が加勢してくれるとなれば、魔界の連中が束になろうが負けるはずがない。と確信めいたものを抱いていた。
安心、
お燐「相手は二人、アタイも一緒に相手しますニャ」
そのおかげで落ち着いて考える事が出来たのだから。
私 「(もし私とお燐で相手をしたする。そこで仮にも、よしんばにも、万々が一にも敗れてしまったら彼女達は行く先を見失う。そうなったらどうなる? 十中八九闇雲に旧都の上を飛び回るだろう。そして目にするはずだ。
そして
私 「いや、さとり嬢の考えに乗ろう。ここは私一人で相手をする」
とはいえだ。
お燐「けど二人——」
私 「そんでもって勝つ!」
「どうぞどうぞ」と楽々道を
お燐「……分かりましたニャ。アタイは遊びに行ったゾンビフェアリーを探して来ますニャ。どうかそれまで」
私 「必勝!」
お燐「頑張って下さいニャ」
何処かにいたであろうお燐への返事と第二回戦を迎える自身に気合いを入れるため、私は親指を立てた拳をビシッ高々と
「……あんた、一人で何やってるの?」
とは口にしなかったが、物陰から
私 「……なんだよ?」
彼女「別にー」
◇ ◇ ◆
ローグライクゲームにおいて、戦闘後に敵がアイテムをドロップするのはもはや当たり前のシステムである。それらを活用して迷宮、ダンジョンを攻略する。これは常識中の常識。食糧しかり回復薬しかり強化薬しかりである。しかしそれらが必ず正義の商人にも使用可能な物であり、プラスに働く物なのか? その答えを我が身を持って知った白黒のト○ネコさんは……
彼女「あ゛ー、気持ちワル……」
げんなりとしながらもようやくご帰還。なおそれまで彼女の背中をさすり続けていた女房役の紅白ネ○さんは……
巫女「あ゛ー、嫌なもの見せられた……」
やはりげんなり。大きく精神的ダメージを受けていた。そしてそれはこちらでも……
人形「{ちょっと変なもの見せつけないでよ……}」
珠 「{ぎゃははははッ!}」
常に彼女達の側から離れない、
人形「{自動モザイク処理機能を入れておくべきだった}」
珠 「{ふむふむ、これはトクダネですね}」
いや離れられない人形と珠。
人形「{もういや、具合が……}」
珠 「{
その向こう側の遠く離れたサポート陣営にもダメージを負わせていた。
ともあれ彼女、両手で
彼女「うしッ、お待たせだze☆」
戦場へ舞い戻った。
◇ ◆ ◇
華のさかづき大江山。
その昔地上には、王族達でさえも
麗人「もういいのかい? まあそっちがいいって言うならいいけどさ」
魔理「情けはご無用だze☆」
彼女「そうゆっくりもしていられないの。早くこの異変を解決しないと」
その強さと
麗人「なるほど、さすがは——」
彼女「コタツに戻るために! で、寝るために!!」
魔理「奪われた本を取り戻すためにだze☆」
麗人「……ああそうかい」
その地、山の名を——
麗人「それじゃあ続きといこうか、こっちのスペルカードはあと二枚、そっちはあと一枚。よく考えて使いなよ」
魔理「ze★? 残り一枚? 三枚勝負のはずだze★?」
彼女「あんたさっき私が前にいたのにぶっ放してくれたわよね?」
魔理「マスタースパークをだろ? だったら——」
『大江山』。
麗人「その後に連続して使ったんだよ。嫉恋なんたらスパークって」
魔理「はーッ?! そんなの魔理沙ちゃんのスペカじゃないze★」
彼女「でもあんたしっかり宣言してたわよ?」
魔理「そんなのは無しだ無し! ノーカン! ノーカン!」
そして数ある伝説の中で、今もなお多くの人間の間で語り継がれる
麗人「悪いけどそれは飲めない相談だね。いかなる理由であれ、勝負事で出ちまった結果は変えられないよ」
彼女「そうね、出目に文句は言えないわ」
魔理「霊夢はどっちの味方なんだよ!」
今冷静を
麗人「へー、言うじゃないか。やっぱり気が合うみたいだね。こんな事なんてやめて今から酒でも一緒に——」
彼女「お断り、それよりも随分と余裕みたいだけど忘れてない? 私はまだあんたとの勝負で一枚もスペカを使っていないんだから」
心の一番近くにアイツからの贈り物を忍ばせて、彼女の行く手を
麗人「あ〜ん? だからどうしたってんだい?」
魔理「霊夢おまえ……」
彼女「スペカあと四枚防げて?」
その出会いは偶然か必然か、はたまた運命の
麗人「なっ、三枚勝負だって——」
彼女「あら、一人三枚って受け取ったけど? 二人で三枚なんてやりにくくて逆にハンディよ」
魔理「そーだze☆ そーだze☆ 霊夢の言う通りだze☆」
ここは秘境の地、幻想郷。その地下666階に栄える都。
麗人「バカ言うんじゃないよ! そんなの認められるわけ——」
彼女「まさかたかだか人間の小娘二人に
同時に起こる二つの騒動、入り乱れるそれぞれの思惑、やがて迎える結末。
麗人「……いいだろう」
そこへ吹く風は暴風、台風、嵐とて生易しい。
麗人「鬼を、四天王を、私を怒らせた事を後悔させてあげるよ!!」
魔理「ヤリィ、さっすが霊夢だze☆」
彼女「気を抜かないで、これでも勝ち目は五分以下なんだから」
麗人「私の二枚目」
さあさあ制限時間いっぱい。本日、地底世界に吹く風は……。
麗人「『
【次回:裏_十四語り目】