小学生がカバンに『古明地こいし』のキーホルダーをぶら下げている現場を見て、
君達の何かになりたい
とざっくばらんに思う今日この頃。
◇ ◇ ◆
「壊す」ではなんとも優しい表現か。例えるなら「爆砕」。少女達を捕らえ損なった光弾は歴史ある旧都を
それが今、白黒魔法使いの少女を完全に
王手を宣言された彼女の頭には、有効な打開策よりも先に『やり残したリスト』が次々と浮かんでいた。「食べてみたいキノコがあった。しおりを挟んだ魔導書を最後まで読みたかった。人形を持たせてくれた友人に言いたいことがあった」と。そして、
彼女「ZEEEEッ★!」
「どうか叶えさせてくれ」とも。
数秒後、煙が立ちのぼり
飛来物はターゲットを見失い、役目を果たせなかった
彼女「ze☆?」
十数メートル離れた場所で頭上に『?』を浮かべ「なにがなんだかさっぱり」といったご様子。それもそのばず、彼女は名前を叫ばれて反射的に腕を伸ばしただけで、
彼女「これって……」
風になる力を分け与えられて。
◆ ◇ ◇
一度に放てる数は拳の数だけ。
私 「(かくなる上は……)」
けれど相手は二人、
私 「(その倍)」
しかも一筋縄ではいかない実力者達を打ち倒して来た
私 「(いや、足りない)」
おまけに背後に三人ずつの支援役を従えて。
私 「(だったら……そうだ!)」
反動は
私 「(うまくいっておくれよ)」
物は試し、思い立ったが吉日、その上ぶっつけ本番。そうして——
◇ ◆ ◆
紅白「文の力!」
無償ではないだろうが困った時にしっかり協力してくれる。そんな頼りになるサポート陣が
やがて人形に向けられた視線と愚痴は、
人形「{う゛っ……}」
しっかりと放送されていた。
人形「{あと少しで——}」
血の気がひいていた彼女の表情に温かみが戻って来た。休止に一生を得て安心しているのだろうが、まだ危機を突破したわけではない。一時は逃れられた鋭い視線がもう彼女達を
紅白「話は後!」
紅白「任せた!」
背中を勢いよく叩いてキーを差し込んだ。
珠 「{あのー、さっきのことなんですが——}」
一方の白黒魔法使い、与えられた力を糧にして一気にフルスロットルへ。
白黒「よーし☆」
さらにニヤリとイタズラな笑顔を浮かべ、
白黒「しっかり
珠 「{話は最後まで聞いた方がいいですよー}」
◆ ◇ ◇
私 「(一つ目、問題ない。二つ目—— )」
関節の一つ一つに意識を
私「(大丈夫だ。三つ目——)」
筋肉の一つ一つに血を通わせ、
私 「(いける。四つ目——)」
指の一本一本に能力を
私 「(まだいける!)」
私 「(五つ目……)」
「耐えてくれ」と、いや「耐え抜いてやる」と誓いを立て、最後の一本となる親指を重ね合わせた。そして私は、
私 「五倍だあああッ!」
私を超えた。
開かれた左手から飛び出した五つの光弾は、中央を軸にして互いに一定の距離を保ちながら目標へ向かって行った。大きさも速さも単発時と同等、多少威力は落ちるだろうが人間の小娘達にしたらそれでも脅威に感じただろう。
私 「いよっしゃ!!」
名案だった。そして出来ると知った、やり方も分かった、要領もつかんだ。
私 「もう一丁ッ!」
続け様に右指の一本一本へ能力を行き渡らせて慣れたフォームで放つ。それを繰り返し繰り返し、息が続く限り、能力が続く限り、心が折れない限り。
そうして仕上がったんだ。私の、私だけの……。
私 「大江山颪!」
◇ ◆ ◆
流れが
白黒「なっ!?」
変わった。明らかに麗人は
それが突然に。例えるなら徒競走におけるスタート直後の大転倒。右肩上がりだったモチベーションが瞬時にねじ曲げられ、悔しさと
白黒「急にどうしたっていうんだze★」
直接狙って来るものだけに注意すればよかった。
それが今や同時に発射される数は五倍。おまけに照準を広範囲に展開させてきた。下手な鉄砲数あれば当たるとでも言わんばかりに。それはさながら連射機能付きの散弾銃、回避はこんなんを極める。
この予想だにしない展開に紅白巫女の少女は、苦虫を噛み
紅白「引きなさいって!」
一時撤退を余儀なくされていた。しかしそれは彼女が立てた作戦の打ち切りと、上げられたばかりの反撃の
紅白「魔理沙!」
その事は無言でただ前だけに意識を向け、回避を続ける魔法使いも理解していた。
紅白「聞きなさいよ!!」
この戦闘における彼女の成果といえば、
白黒「言ったなら最後まで信じやがれ!」
「任せる」と。
幻想郷屈指のスピード狂、「素早く動けるなら」と舌なめずりをしてレベルの上がった無理ゲーの攻略へと勇み行く。
まとまって押し寄せる光弾を大きく躱し、続けて追って来る砲弾の下をかい潜り、荒れ狂う
白黒「もう少しだze☆」
とうとう麗人の表情がうかがえるまでに。
額には汗を
迎える正念場、次に放たれる光弾の颪が勝負の分かれ目。優れた反射神経と正確な読みでやり過ごせれば、少女達は麗人の下に辿り着ける。それが出来なければ……。
魔法使いの少女、目前に迫っていた砲弾を瀬戸際の間合いで避け、すぐさま全神経をその時に備える。
白黒「なっ、力が——」
だがここでまさかの急ブレーキ。
珠 「{だから言わんこっちゃない}」
羽の効果が切れたのだ。その時を、
ニヤァ〜
麗人がどれほど待ち
麗人「もらったーッ!」
彼女は血眼になって探り続けていたのだ。いずれ少女の身に起きるであろう変化を。例えどんなにささいで小さなものだろうと見逃さないように。そして少女の焦る表情と突然の失速から全てを悟ったのだ。しかも少女達は二人揃って絶対的射程距離範囲内。
訪れた絶好の機会に喜びを隠せず笑みがこぼれる。だが決して油断はしない。瞬時に砲弾を充填し、着火までのカウントを開始した。引き金を引くまで三、二、
紅白「充分!」
そこへ後部座席で
紅白「あんたも
それは彼女が麗人に初めて披露するスペルだった。そのスペルは対鬼用として開発されたものだった。そして、彼女をサポートする鬼に決定打を与えたスペルカードだった。
紅白「これは効くでしょ!」
そのスペルカード、名を……
紅白「『
宣言と同時に投じられた札は、瞬く間に麗人の身長を
白黒「いっけーッ!」
だが麗人とて黙ってやられはしない。
麗人「ハアアアアアッ!」
それに対抗するは拳に集められし怪力、神をも
麗人「大江山颪ッ!」
目には目を、歯には歯を、巨大光弾には巨大光弾をと同等サイズの五つの砲弾を放つ。両者が衝突し合ったのはその数秒後。決着は……
麗人「!!」
ミリ、いやマイクロ、いやナノ秒単位だった。押し合う事もなく、激しい火花を散らす事なく、まるで何事も無かったかのように陰陽玉は邪魔者をかき消して突き進んでいく。そしてついに、
麗人「オオオオオ……」
麗人の下へ。
麗人「ラァアアア゛ッ!」
が、麗人またしてもこれを素手で受け止める。押しつぶされそうになりながらも、額と腕に血管を浮かばせながら持ち
ドシン……
気のせいだろうか?
ドシンッ
否、断じて気のせいなどではない。
ドシンッ!
間隔が空きつつも連続的に地を破壊する音は紛れもなく
ドシンッ!!
が、そこで麗人は見てしまった。
麗人「ナニイイイイ!?」
足下で小さく
霊夢「と——」
少女が
霊夢「『
次回、ちょっと未定