東方迷子伝   作:GA王

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Ep.4 里のケーキ屋のOPムービー的な何かを作ってみました。
もしよければ見てください。

《Youtube》
https://www.youtube.com/watch?v=FYdTlYz5Lsg
《ニコニコ動画》
https://www.nicovideo.jp/watch/sm36745805



裏_終わり

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 走馬灯(そうまとう)のようによぎる(まぶ)しい記憶の数々が、

 

自分「(イヤだ……)」

 

 絶望の(ふち)へと追いやった。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 その光景とは、

 

親方「いぢぢぢぢッ」

医者「ほれ終わりじゃ、あとは薬を飲めば大丈夫じゃろ」

蒼鬼「……外、静かになったな」

筋ト「でもこれじゃ何が起きてるのか——」

村紗「雲山聞こえる? 外はどうなってるの?」

雲山「もう大丈夫じゃ、出て来てええぞ」

鬼助「うげっ、ビッシリ突き刺さってら」

ヤマ「もうダメかと思ったよ、ありがとう。えっと……」

一輪「私は雲居一輪、こっちは雲山ね。お礼を言うのはこっちの方、あなたが屋根を作ってくれていなかったら今頃——」

パル「ねえみんな、あそこ」

 

 血で赤く染まる(うで)(かか)え、地面に(ひざ)を付いて(うずくま)っていたと。

 

神綺「夢子ちゃん平気?」

 

 目にも止まらない速さで標的の前に現れ、怪力で知られる鬼を力で圧倒した夢子さんがです。その姿ははまさに(ひざまづ)いて許しを()う者の様、さらに衣服は黒く焼き()げ、身体中からは煙を上がっていたそうです。

 恐怖に(おび)え、明日を諦めかけていた方々は皆さん口をそろえてこう言っていましたよ。「あの時程胸の高鳴りを感じたことはない」とね。

 

夢子「申し訳……ありません、お見苦しいところを。今、終わらせ……うぅッ」

神綺「もうよしなさい、これ以上は夢子ちゃんが危険よ。分かるでしょ?」

夢子「ですが、あの者達は我々魔族に——」

神綺「みんな無事だったでしょ?」

 

 やがて静寂(せいじゃく)に包まれる中、

 

神綺「向こうは大怪我を負っている者もいる。もう充分じゃなくて?」

 

 高い金属音だけが(さび)しげに響き渡り、

 

鬼助「アレってつまり……」

 

 固唾をのんで見守っていた旧都民の目に飛び込んできたもの。それは――

 

ヤマ「降参……ってことだよね?」

 

 頭上に両手を(かか)げる夢子さんの姿でした。

 

一輪「私達でも相手にすらならなかったのに……」

雲山「信じられぬ」

 

 地獄以上の地獄から解放され、旧都創立以来の危機を(だっ)した瞬間です。しかも大勢の負傷者を出しながらも、誰一人として命を落とすことなく。これはもう奇跡としか言いようがありません。

 

 『うおおおおおっ!!』

村紗「やったよカズ君!」

筋ト「ああ、アイツは勝ちやがったんだ」

 

 歓喜の雄叫(おたけ)びを(とどろ)かせ、誰もが彼の勝利を(たた)えたでしょう。

 

パル「美味しいところ取りとか、妬ましい」

医者「カッカッカッ、あの小童がやりおったわい」

蒼鬼「こりゃいよいよ免許皆伝(めんきょかいでん)か?」

 

 しかし、事態はここから最悪の方向へと転がっていくんです。

 

神綺「夢子ちゃん!?」

 

 彼が止まらなかったんです。敗北を認め、無防備となった夢子さんへあろう事か追撃を仕掛けたんです。

 

親方「よせっ!」

 

 それは赤く輝く拳だったそうです。そして夢子さんは燃え盛る炎に包まれ、そのまま瓦礫(がれき)の山へ。

 

筋ト「止まれバカ!」

 

 全員が血も涙もない無慈悲(むじひ)で衝撃的な展開に目を疑ったことでしょう。

 

村紗「もう終わりなんだって!」

 

 静止を呼びかける者もいたはずです。でも彼は……

 

彼 「オ゛オオオッ!!」

 

 (しず)まらぬ怒りを大声に乗せてそれらをなぎ払い、(またた)く間に姿をくらましたそうです。直後、夢子さんが飛ばされた方角からは爆発音と炎が上が……。何度も何度も、息つく暇もない程に。

 

夢子「も……ぅ、やめ……」

 

 絶え間なく続けられる彼の猛攻(もうこう)は、すでに満身創痍(まんしんそうい)となっている夢子さんを容赦(ようしゃ)なく追い込んでいきます。

 

夢子「おね……い」

 

 身を守るので精一杯だったでしょう。反撃など考える余裕すらもなかったでしょう。ただ信じて、彼が止まってくれると信じるしかなかったでしょう。しかし無情にも彼の手は、より激しさを増していきます。そして——

 

夢子「たすけて」

 

 ガラスが(くだ)け散ったような音が響き渡ったそうです。先程一輪さんも語られていましたね、マイさんをノックアウトした時に「バリーンって音がした」と。そうです、夢子さんにかけられていた身を守る術が解かれたんです。無尽蔵(むじんぞう)に思えた夢子さんの魔力が、ついに限界を(むか)えたんです。

 それを見越しておられていたのでしょうね、

 

??「夢子ちゃん離れて!」

 

 神綺様は。トドメの拳を振り下ろそうとする彼に特大魔法を放ったんです。(ひじり)さんの最上級の魔法――

 

神綺「『大魔法(だいまほう)魔神復誦(まじんふくしょう)』!」

 

 を。その時の事を後日「何もしていなければ夢子ちゃんは……。それだけはどうしても避けたかった」と(おっしゃ)っておられました。また、その時放った魔法はあくまで彼を止める程度のもの、殺傷能力は(おさ)えていたと語っておられました。

 しかしそれが……その優しさが(わざわ)いしました。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 心に(うった)えかける優しさが、

 

自分「(ちがう……ちがうちがうちがうちがう)」

 

 二度と戻れない暗闇へと突き落とした。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

神綺「起きないで!」

 

 レーザー砲に加え、大・中・小の大きさが異なる光弾の乱れ打ち。彼は全弾受け切ってもなお立ち上がったんです。そして案の定、標的は夢子さんから神綺様へ。

 

神綺「それ以上動いたら——」

 

 ()てつく視線に襲われる中、神綺様は彼に警告したそうです。「動けば次はない」と。それに対する彼の返答は……、

 

彼 「ヴォオオオッ!!」

 

 負の感情に取り()かれた威圧でした。怒号と共に全身から地底の天井にも達する火柱をあげたんです。交渉は決裂、聞く耳を失った彼に神綺様は心を痛めながらも、再び魔法を詠唱(えいしょう)されました。

 

神綺「魔神——」

 

 が、それでは遅かったんです。彼が(にら)みをきかせた時点で手を打つべきだったんです。神綺様が詠唱を開始した時にはもう……

 

彼 「ダアアアッ!!」

 

 彼が射程範囲に収めてしまっていたのですから。

 一気に神綺様との差を詰め、拳に燃え盛る炎を乗せて衝撃波と共に打ちを放ったんです。それは(すさ)まじい熱を帯びた突風を起こし、周囲の雪を瞬時に水へと変え、事の成り行きを見守っていた旧都民をも襲いました。火傷を負い、遠方へ飛ばされた方もいたそうです。余波でその威力です。魔界の神様であられる神綺様とはいえ、直撃してしまってはただでは済みません。起き上がられない程に負傷されてしまったんです。彼に根付いた力はそれ程までに、『神様をも(おびや)かす』までに強大なものへと成長してしまっていたんです。

 弱った神綺様を瞳に映し再び拳に炎を宿(やど)らせて構える彼、制御が出来ない強大過ぎる力を振るい続ける彼、周囲の声が届かなくなってしまった彼。

 そして、あの悲劇が……。

 

医者「いかん!」

パル「パッ!?」

鬼助「なっ……」

ヤマ「いや……」

 

 …………大丈夫です、話を続けます。

 

一輪「マズイ……」

雲山「小童(こわっぱ)ッ」

 

 その彼の身に突如(とつじょ)、異変が起きたんです。

 

村紗「そんな……」

蒼鬼「チクショーッ」

 

 まるで大きな一本の角が生えたかのように、

 

筋ト「大鬼ィイイッ!」

 

 腹部から刃が飛び出していたそうです。彼は……()されたんです、背後から大剣で。

 

??「母様逃げてッ!」

 

 母親である神綺様を救いに出た夢子さんに。もし私が夢子さんと同じ境遇(きょうぐう)に立ったとしたら、同じ行動に出ていると思います。例えそれが非人道的だったとしても、

 

彼 「ヴゥゥッ」

夢子「ユキとマイには……上手くお伝え下さい」

 

 我が身を犠牲にすることになったとしても。

 

夢子「それと——」

 

 夢子さんは悟っていたんだと思います、彼の状況を。自我を失い言葉が通じなくなっていると。止めるには致命傷を負わせ、行動不能にするしか方法がないと。

 

夢子「アリスに……」

 

 しかしそこに弊害(へいがい)となったのが、全力を()くしても抑止(よくし)切れない力です。例えスキを見つけて深い傷を負わせたとしても、即死でない限り反撃に合うのは目に見えています。だから夢子さんにとっては捨て身の覚悟の、一世一代の博打(ばくち)だったんだと思います。

 

神綺「夢子ちゃん!」

 

 そしてその結果は、

 

彼 「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」

夢子「お母さん」

 

 外れてしまったんです。彼は一時よろめきはしたものの、すぐに背後の夢子さんを瞳に閉じ込め、構えていた拳を放ったんです。

 

夢子「愛してます」

 

 直後、彼の拳は深く突き刺さっていたそうです。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 肩を(つか)む力強さが、視界を(おお)う広さが、込み上げる安らぎが、

 

自分「(こんなの違う、ウソだ)」

 

 包み込むその全てが、

 

自分「(ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ)」

 

 避けられない現実(地獄)だと思い知らせた。あの時自分は——

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 いえ、夢子さんではないんです。二人の間に入った方がいたんです。彼の拳を真正面から受けて夢子さんを守った……とは言えませんね。その方は彼を守ったんです。夢子さんを(あや)めようとした彼を!

 

??「ダ……イ……キィ……」

 

 まだ若い彼が二度と取り返しのつかない(あやま)ちを(おか)さないように。

 

??「コロ……ス……なよ?」

 

 そう()げられたのでしょ?

 

彼 「あ……あぁ……」

 

 親方様から。

 

親方「お前は……まだ、これからだ」

 

 彼は不幸にもそこで意識を取り戻してしまったんです。感じる物を全て振り払い否定し続けていたでしょう。腕を伝うものが、目に映る物全てがウソであって欲しいと心の底から願ったでしょう。

 

親方「デカく……なったなぁ。強く……なったなぁ。あの泣き虫小僧がよぉ」

彼 「自分が、自分が……ボクが、じいちゃんを……」

親方「お前は何も悪くない。ワシが勝手に入っただけ、なんだからなぁ」

彼 「ボクが……ボクが……ボクが……うぐぅ、ガハッ」

親方「大鬼?!」

 

 みなさん覚えていますか? 先程私がお話ししたことを。

 

親方「今すぐ決めろ……ってか?」

 

 不思議な回復薬の残量は……()()()だったんです。

 そこに腹部を(つらぬ)かれ、一刻の猶予(ゆうよ)も許されない致命傷を負った彼と親方様。けれど彼は今、この場にいます。これがどういうことなのか、おわかりですよね? 親方様は……

 

親方「大鬼、ミユキと勇儀ちゃんを……頼んだぞ」

彼 「ぇ?」

親方「コイツはお前が飲め!」

彼 「ン゛ッ?!」

 

 選ばれたんです。

 

親方「生き……ろよ、ワシの分も。何があっても、どんなに辛くて苦しいことがあっても」

 

 ご自身の命よりも、みんなの嫌われ者で孫である彼の命を! ご自身で飲むつもりだった薬の全てを彼の口へ流し込み、彼の命を救ったんです。

 

親方「あり……がとうな、ワシのとこに来てくれて」

彼 「イヤだイヤだイヤだ!」

親方「ワシは人間が嫌いだ。けどお前は……」

彼 「ダメだ、死んじゃダメだ!」

親方「お前はワシの孫……——」

彼 「じいちゃあああああん!!」

 

 そのまま親方様は……。

 はい? 白玉楼(はくぎょくろう)にそんな鬼の魂は来ていない? それはそうでしょうね。親方様は神綺様のお力によって魂を肉体に(とど)められているのですから。

 また、神奈子さんから事の賠償(ばいしょう)として提供して頂いている支援金と八咫烏(やたがらす)がもたらすエネルギー、(はる)かに進んだ妖怪の山の技術力が親方様を救ったんです。一命をとりとめることがでたんです。

 ですが、あの日からずっと目を覚ますことはありません。全身に取り付けられた管と装置がなければ呼吸をすることも、血を送ることも、心臓を動かすこともできず、常に瀬戸際(せとぎわ)で生かされている状況です。

 かつて最強と呼ばれ、町中の方から(した)われ、(たくま)しかったお姿は日に日に衰弱(すいじゃく)していき、今やその影もありません。親方様はもう限界です。このままでは年内にも……。

 ごめんなさい、お見苦しいところを見せてしまって。では最後に、皆さんにお尋ねします。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 言い訳なんてできない、しようとも思ってない。

 

さと「いよいよこの時が来たわね」

 

 もう許してもらおうだなんて、

 

さと「一枚目……」

 

 考えるのもやめた。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 Q.なぜ悲劇が起きてしまったのか、いったい誰が間違えていたのか。

 

 力に呑まれてしまった彼ですか?

 自ら身を犠牲(ぎせい)にした親方様ですか?

 一族の復讐に()られた夢子さんですか?

 過酷な環境に耐えきれず地底世界を目指した輩達ですか?

 体を奪われ約束の扉を破壊してしまったお空ですか?

 その力の根源である八咫烏ですか?

 それとも親方様の命を救い、地底世界に革命をもたらせた画期的な技術力を提供し、されど平和に暮らす彼の前に突然現れた……。

 そして、もし……

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 それでも……

 

さと「…………絶対に乗り越えなさい」

 

 それでも生きなきゃいけないんだ、

 

自分「へへ、あったりまえだ」

 

 この()を背負いながら。

 

自分「アイツをブッ飛ばすまでは死んでも死にきれねぇ!!」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 もしあなたが彼だったら、今日この場で神奈子さんと遭遇(そうぐう)した時、いったい何を思い、何を考え、どう動きますか?

 

 

 

 

 これが五年前、冷たい雪の降る季節に地底世界で起きていたもう一つの騒動の全貌(ぜんぼう)です。これまで霊夢さんと紫様、神奈子さん含め多くの方々に隠し続けていた事を深くお()び致します。

 そして許して頂きたいのです。あの日からこれまで魔界とは一度も争い事は起きていませんし、互いに友好な関係を保ちながら平和な日々を送っています。どうか、どうか……。




これにて『裏』の話は一旦終わりになります。しかしまだ明かされていないことが多々ありますね。そこはまた別の回で。

【次回:表_終わり】

いよいよこっちもです(予定)。
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