東方迷子伝   作:GA王

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今回はちょっとした謎解きをご用意しました。
あなたに解けますかな?

※注:察しのいい方にとっては茶番で終わります


鬼の祭

 甘い香りを(ただよ)わす髪を()でる風は今日も清々しい。頭の上からつま先まで、彼女の魅力を余すことなく投影する鏡の前で一回転。今度は大きく近寄り瞳いっぱいに整った顔を映し返す。

 

女0「うん、今日もかわいい」

 

 微笑んでご満悦(まんえつ)。そのまま玄関に向かい(くつ)をはけば、彼女の一日は朝日のスポットライトに照らせて始まる。

 

女0「いってきます」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 時は存在する者全てを変えさせる。妖怪も鬼も人間も。

 そして、それは町とて例外ではない。地底深くに存在する「旧都」と呼ばれる小さな町は、横長だった建物がメキメキと縦へと成長し、薄明るく照らしていた火の明かりは(まぶ)しく照らす文明の光へとタスキをつなぎ、鬼と妖怪ばかりだった大通りの往来者には魔界の者達が加わっていき、大きな街へとその姿を変えようとしていた。

 そう、変わってしまうのだ。古き光景が。

 そして新たに始まるのだ。旧都の歴史が。

 しかしそれでも、変わらないものもある。必ずやって来るものがある。めくるめくって訪れるものがある。

 それはその年もやって来た。例え望んでいなくとも、「願わくば……」と願っても、避けては通れない。逃げ出すことは許されない。決して、何があろうと。

 

??「はぁ…、はぁ…」

 

 故に少年は走り続ける。行き交う人の流れに逆らって、人混みをかき分けて、息を切らせて走り続ける。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 祭り。それは日常から解放され、気心知れた仲間達と共にその時を楽しむイベントである。

 ここにも笑い声を(かな)でる者達が。長年生きる鬼の中でも若者の(たぐい)に入る女性陣である。その数総勢()()名の大集団、多くの出店が並ぶ大通りを足並み(そろ)えて歩んで行く。ゆっくりと。

 

女1「なにコレかわとか〜」

女2「妖怪さんコレいくら?」

女3「なにコレバエる〜ぅ」

女4「タ○オカだってぇ」

女5「おねえさ~ん、妖精さ~ん、コレいくらぁ〜?」

妖精「500あるね。Yummy Yummyよ」

女6「他に飲むひとは?」

 

 例え先頭を行く者達と話が()み合っていなかろうと、後方の声が聞こえていなかろうと、ガールズトークに花を咲かせながら、道いっぱいに広がりながら、すれ違う者と接触を繰り返しながら。それでもおかまい無しに。

 

女7「そしたら急に声かけてきてさー」

女8「えーっ、なにソレこわ〜い」

 

 キャッキャウフフと。

 やがて集団は交差点に差し掛かった。あいも変わらずトークに夢中なガールズ。反対側からやって来た者がそんな彼女等に道を(ゆず)ろうと角を曲がった時、それは起きるべくして起きた。

 

  

  『きゃッ』

 

 

 猛スピードで飛び出して来た者との接触事故である。

 すぐさま腰から崩れ落ちた女性に謝罪の言葉と手が差し出された。彼女がその手を(つか)んで立ち上がったとき、集団の一人が彼の存在に気が付いた。

 

女9「あ、大鬼だ」

女10「えっ、大鬼!?」

大鬼「あ、あなた達は……」

 

 その声を皮切りに続々と少年を囲んでいく乙女グループ。自ら祭り当番を()()った少年、右手に(かせ)をはめられた少年、街から偉大な者を(うば)ったこの少年に、制裁が与えられるまでのカウントダウンが進んでいた。

 そこへ……

 

??「おーい、そっちはいたかー?」

 

 大声で少年らに近付く者が。(みき)のような上腕二頭筋、女性のウエスト以上に幅のある大臀筋(だいでんきん)、思考は筋肉のことばかりの脳筋。少年の幼馴染みである。

 彼が参上すればもう安心、心配ご無用。なぜなら彼は救いのヒーロー、『筋トレマン』なのだから。困っている人を助けてくれる正義の味方なのだから。少年が解放されるのも時間の問題—— 

 が、その正義の味方が突如(とつじょ)ゴール直前でピタリと足を止めた。苦虫を噛み締めたような表情を浮かばせ、汗をダラダラと滝のように流し、風船のように膨らんだ筋肉質の体をキュッと縮こませた。まるで天敵を見つけたかのように。いや、見つけてしまっていたのだ。

 

和鬼「姉貴らも一緒かよ……」

 

 実の姉達を。

 

女10「一緒じゃ悪い? 文句あんの?」

 

 説明しよう、筋トレマンは11人兄弟の大家族なのだ。長男、曾布伊(ゾフィー)を筆頭に世武雲(セブン)や太郎などなど。もちろん中には女の子もいる。何を隠そう先に登場した女1は上から5番目の、この女10は上から4番目の姉達である。そして筋トレマンは……現在のところ末っ子のポジションなのだ。

 えてして弟にとって姉とは、恐怖の象徴であり、トラウマの根源であり、厄介極まりない存在であり、絶対服従を強いられた存在なのである。例えどんなに剛腕であろうと、社会的地位を確立していようと。

 筋トレマンが置かれた状況はまさにヘビに(にら)まれたカエル、手も足も声すらも出せずにいた。だが、この時のカエルはヘビに()みついた。

 

和鬼「大アリだ! いろんな人達から苦情来てんだ!」

女10「苦情ぉ? 私達苦情が出るような事してないけどー? 和鬼はお姉ちゃん達を疑うのかなー?」

和鬼「じょ、女子連中が(かたまり)になってて迷惑してるって言われてんだよ。それがまさか姉貴達だなんて」

女10「はぁ~? 別によくなくなくな〜い?」

和鬼「よくねーって!」

 

 人通りの多い中で繰り広げられるカエル() vs ヘビ()のバトルは激しさを増していく。弟の言い分が正しいのは誰からしても明らかである。ではあるのだが相手は女性、ましてや生まれた瞬間から上下関係を植え付けてきた実の姉である。に対して口で喧嘩を挑むとは何たる無謀(むぼう)なことか。

 そんな騒ぎを耳にした通行人達はいつしか足を止め、集り始め、騒動は二次被害を引き起こそうとしていた。だがこの状況を止められる者などここには——

 

大鬼「自分からもお願いします」

 

 いない。例え嫌われ者が下手(したて)に頼もうが、頭を下げて誠心誠意頼みこもうが、止められるわけがない。焼け石に水、いや火に油である。と、動きがあった。

 

大鬼「どうかご協力を。代わりと言ってはなんですが、あちらに席を設けましたので、よければそちらを使ってください」

 

 なんという気遣(きづか)い、心配り、出来た対応。例えそれが嫌われ者だとしても、こうまでされては渋々ながらも了承せざるを得ないだろう。上から目線で少年を見下し「ふんっ」とバツが悪そうにしながらも従うしかないだろう。そう、そのはずなのである。

 

  『は〜い♡』

 

 ところがどうだ。なんだコレは。色味を含んだ鈴を鳴らしたような美しいハーモニーは。さらに立ち去る際にはわざわざ少年の目前まで歩み寄り、各々がキラキラの(かがや)かしい乙女スマイルまで。

 

女11「大鬼、今年も頑張ってけろ」 

女12「大鬼、応援しとるけん」

女13「大鬼、負けちゃイヤとよ」

女14「大鬼、後でいくっちゃ〜」

女15「大鬼、またでごわすぅ」

女16「大鬼、ほなな」

女17「大鬼、…………(照)」

女18「大鬼、ファイトにゃん」

女19「大鬼、観に行くわ〜ん」

 

 これにも少年、一人ずつ丁寧(ていねい)な対応で送り出す。しかしこの状況を「おもしろくない」と思う者もいるようで……

 

和鬼「おい、オレにはないのかよ?」

 

 正義のヒーロー、不公平な(あつか)いに内なる声をあえて表にしてみるが、

 

女20「あーはいはい、精々気張りな」

女21「あんしぇー、またやーたい」

 

 雑。ガックリと肩を落として大きなため息しか出ない。だが筋トレマンは落胆(らくたん)を、少年は接待をしている場合ではなかった。

 

女22「それはそうと、二人とも(あわ)てたみたいやけど?」

女23「うちらを探してくれとったん?」

 

 そこで本来の用件を思い出す少年ら。して、その用件とは……

 

大鬼「ヘカーティア様がいなくなったんです! どなたか見ていませんか?!」

 

 またしてもである。だがこれもまた、毎年変わらずに訪れる恒例行事なのである。

 

大鬼「ありがとうございました。失礼します」

 

 乙女集団にも野次馬集団にも『自由な女神』の居所を尋ねてみるも、これといった目撃情報は得られず。

 

和鬼「ヘカーティア様、絶対この時間帯狙ってたよ」

大鬼「え、どうして?」

和鬼「勇儀さんにしつこく見回りの時間聞いてたんだよ」

大鬼「だったら最初からマークしとけよ!」

和鬼「だからオレは当番じゃねぇってーの! トレーニングしてただけだってーの! それに一番近くにいたのお前だろ!!」

 

 相も変わらず()()()()け回る羽目になった少年達だった。

 そして、特別待遇を受けた乙女達の話題は……

 

女24「ちっちゃい頃から知ってるけどさ~」

女25「こーんなガキンチョだったのに~」

女26「すっかりお兄さんになっちゃってぇ」

  『いい感じだよねぇ~~』

 

 少年とは呼べないまでに成長を遂げた彼のこと。

 

女0「でも色々言われてるんでしょ?」

  『そこもいい感じだよねぇ~~』

 

 そんなガールズトークを横耳に、

 

  『大鬼のヤロオォォォッ』

 

 沸々(ふつふつ)と闘志を燃やす者達。出番前にも関わらず、少年に一泡(ひとあわ)()かせてやろうと立ち上がる。だがそんな連中のところにはヤツが来る、きっと来る。

 

??「祭りじゃー! 今年も嫉妬(しっと)祭りじゃー!! パ〜ルパルパル」

 

 何処からともなく()ぎつけて参上する。

 

??「フッフッフッ……、どーどーパルスィ」

??「あーもー、また……。ちょいとお兄さん達、お祭りでの争いはダメだからね。じゃないと勇儀に言いつけちゃうからね。いい?」

 

 なお、これもまた昨今のお決まりのもよう。

 

  『失礼しました!』

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 少年が最強の名を手にした翌年、そのイベントへの参加者が劇的に増えた。その数たるや三桁に届きそうなまでに。しかもその大半は鬼や妖怪ではなく、魔界のスラム一派『(やから)』と呼ばれる者達。目当てはもちろん鬼達の宝である。

 

妖精「{Every body! Are you ready?}」

  『……お、おぅ』

妖精「{もー、ここは『Yeah!』って Shout するね。OK?}」

 

 その宝を手にするためには地面にぽっかりと空いた半球で、少年が最強を下した際の産物の中で少年を打ち負かせねばならない。して、そのルールと対戦方法は……

 

妖精「{Every body! Are you ready?}」

  『イ、イエー……』

 

 ルール①:敗北条件は場外のみ。

 

??「今年は私の勝ちだね。まさか女神様が出店で商売してるだなんて思わなかったでしょ」

??「はぁー、ほどほどにしてくださいね」

??「はいはい。それにしても、さとりちんもよく思い切ったよね」

 

 ルール②:武器の使用可能(指定された物のみ)

 

??「武器の使用を認めるなんてさ」

さと「二人たっての希望なんです。特に筋トレマンからの。けど全て殺傷能力の低い木製に限らせてもらいました」

??「えー、真剣とかもありにしようよ」

さと「ダメです。いくらヘカーティア様のご意見とはいえ、そこは(ゆず)れません!」

ヘカ「でもさー」

 

 ルール③:いかなる攻撃手段も認める

 

ヘカ「光弾放てる連中だっているんでしょ?」

さと「そうなんです……」

??「でもいっぱい鍛錬しましたニャ」

??「ゾンビー」

??「うつほもヤタッチと一緒に手伝ったんだよ」

ヤタ「ふん、負けたらブッコロスッ」

ヘカ「あっひゃっひゃっひゃっ。ちょ、ちょいタンマ。お空それ、ツボ。くくく……」

 

 対戦方法:バトルロイヤル

 

妖精「{This year の Challenger は80名! それじゃあ早速、Let's Fight ね!}」

 

 開始を告げるドラが打ち鳴らされたら、もう誰にも止められない。

 

大鬼「来いよ」

 

 チャレンジャー達は雄叫(おたけ)びと共に、一丸となってスタートを切る。

 

大鬼「全員駄目になるまでかかって来な」

 

 それを少年はたった一人で(むか)()たねばならないのか?

 

??「さーってと、かっ飛ばしますか」

 

 否、一人ではない。心強い味方がいる。

 

??「コンガラ流『一本足刀法』!!」

 

 永遠のライバルが。

 なぜ彼が少年と共闘(きょうとう)しているのか疑問に思うだろう。だが理由は単純明快、従姉弟(いとこ)がプレゼントされた(ひょう)の、油断を許されぬ師の娘が愛用する(さかずき)の所有権を守るためにおいて他ならない。

 

和鬼「『迦死羅(カシラ)一塁打』」

 

 ならば少年とは敵対しないのか。

 

和鬼「『難呼突(ナンコツ)二塁打』」

 

 それも否である。

 彼にとって鬼の宝はもらっても、もらわなくてもどっちでもいい代物、二の次だった。しかしアイツには勝ちたい。ましてや、

 

和鬼「『死路(シロ)三塁打』」

 

 他の者にやられるところを見たくない。そう思っていた。

 

和鬼「『串盛りバイキング本塁打』」

 

 そこで彼は少年にこう提案した。

 先に挑戦(邪魔)者達を二人で打ち負かそう(排除しよう)と。その後に一対一(サシ)でやりあおうと。そうすればどちらが勝っても二つの(プレゼント)の所持者は変わらないと。

 

大鬼「『背負い:勝ち割り剛鬼』」

 

 そうして始まった宝の命運がかかった大乱闘(だいらんとう)にして無双劇(むそうげき)。いつしか彼は宝を守る者、『守護者(ガーディアン)』と呼ばれるようになっていた。

 

大鬼「『奥義:散歩必殺』」

 

 たった二人、されど二人。互いに互いを認め合った二人は抜群のコンビネーションで次から次へと、バッタバッタとかっ飛ばす、なぎ払う、ぶん投げる。それはさながら、いつかの騒動を再現しているかのよう。

 そしてリングに残ったのは選ばれた者のみ。

 

大鬼「そいじゃあ」

 

 適度な準備運動をこなした犬猿の仲にして無二の親友による

 

和鬼「やるか!」

 

 王者決定戦。

 

大鬼「うおおおおッ!」

 

 片や最弱でありながら神をも(おびや)かす破壊的な力を授かった少年。

 

和鬼「うおおおおッ!」

 

 片や必死の努力で想定外な力を身につけ、能力が目覚め始めた筋トレマン。

 

大鬼「いぎぎぎ……」

和鬼「うぐぐぐ……」

 

 両者のタイマンは一打目から過激に加速、場内のボルテージは——

 

  『ヲォーーーーーッカズキィィィイ!』

 

 爆発的に急上昇。黄色い声援は——

 

  『きゃーーーーーっだいきぃぃぃい♡』

 

 より結束力を深める。

 そのバトルたるや規格外、別世界、異次元。多人数を相手していたのがまるでお遊びのよう。

 

和鬼「つぶれちまえッ」

 

 利き腕に触れ、巨大隕石と化した拳を放つ守護者。に対するは——

 

大鬼「萃香ちゃん、姐さん……勝ッ!」

 

 歳と共に成長した能力を全開にしたちっぽけな拳。拳と拳が激突を繰り返す度に大気は震え、観客達は身震いを起こし、地底世界全域が激震する。

 

大鬼「大江山……」

 

 初めは小さな小さな子供のケンカだった。町のど真ん中でおっぱじめて迷惑がられていたなんてざら。それが今や(おおやけ)の場で、会場を埋め尽くす客を集め、女神様をも(うな)らせる——

 

和鬼「大江山……」

 

 年一番の超ビッグイベントへ。

 

  『(おろし)ッッ!!』

 

 やがて会場は静まり返る。時が止まったかのように。だがそれもほんの一瞬だけ。

 

??「Winner is ――」

 

 決着である。大歓声の渦に飲み込まれるスピーカーから高らかに宣言される名は——

 

??「Daaaaaaaikiiii!」

 

 最弱の王者。この年も宝の所有権はさることながら、その座を誰にも(ゆず)らなかった。ただし、

 

大鬼「和鬼ワリぃ、動けねー。起こして」

和鬼「ったく、世話が焼ける」

 

 その姿、すっくと立ち上がり肩を貸す敗者より

 

大鬼「だーッ! それをヤメロって言ってるだろ!!」

和鬼「まあまあ、なんてお下品な姫様だこと」

 

 敗北的。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 ゾロゾロと列をなして会場を後にする観客達、興奮冷めやらぬまま残された時間を楽しもうと、出店が軒を連ねる街へと足を運ぶ。その中には例の女性陣の姿も。(はぐ)れてしまったのだろうか? 確認できるのは5名のみ。それでも(あせ)って探している様子は見受けられない。やはり「きゃっきゃウフフ」しながら歩みを進める。

 そんな乙女達の前に彼女は笑顔で現れた。

 

女0「なぁ〜るほど」

 

  「少し話を聞かせて」と呼び止めて。

 

女0「ありがとう、親切に教えてくれて」 

 

 一人の乙女が胸ぐらにかけられた呪縛(じゅばく)から解き放たれた。ようやく大地に足がつき、()き上がる安心感から一粒の涙を(こぼ)していた。

 

女11「ケホッ、ケホッ。怖かったけろ」

女1「あんたいきなり何すムグッ」

女19「それ以上はダメよ〜ん」

女5「今のってさぁ〜……」

女14「だ、だっちゃ」

 

 乙女達に背を向けたまま歩みを進める彼女は、ご機嫌に鼻歌を(かな)でていた。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 事あるごとに少年を救ってきた「あの薬」はもうない。それは例え筋肉痛に見舞われようと、大怪我しようと、生死の境に置かれていようと、自身の回復力で治すしかないという事である。

 

 

ズゴォォオォォッ

 

 

 その回復力を高めるにはエネルギーが必要だ。それもケガを負った分だけの、回復しなければならないだけの。

 

 

ジュルジュルジュルジュルーーーッ

 

 

 エネルギー、それすなわち栄養、養分、食べ物。ってことで、

 

大鬼「ゴチっ!」

 

 ここは少年の行きつけの店である。資金を貯めては訪れている店である。少年は王者でありながら、正体不明のグランドチャンピオンに(いど)み続ける挑戦者でもあるのだ。して、結果はいかに……

 

店長「残念だな」

 

 積み上げられた丼の数は記録タイ。並びこそするがなかなか超えられない最後の一杯。その一杯、気高くそびえる山の(ごと)し。

 

大鬼「まあ全部天ぷら付きの大盛りだしね」

 

 か?

 

店長「また来いよー」

 

 パンパンに膨れ上がった腹をポンっと打ち鳴らし、爪楊枝(つまようじ)をくわえて店を後に。そこへ……

 

女0「こんにちは。それともこんばんは、かな?」

大鬼「あ、さっきぶつかった……」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 腹が減っては戦は出来ぬ。それは何も少年に限ったことではない。

 

??「あ゛ー、腹減った」

 

 ここにも朝から何も食さず、過労死寸前の鬼がいた。

 

??「くっそぉ、大鬼のやつぅ……。米しか残ってないじゃないか。しゃーない、茶漬けでもいいから食おう」

 

 ようやく訪れた休息をムダにしてはならない。わずかに見つけた食料を湯に(ひた)し、

 

??「いただきますッ」

 

 かきこむ、かきこむ、流しこむ。

 

大鬼「ただいま、見てくれてた?」

勇儀「ほはへひ(おかえり)ひたひた(見た見た)はふびゃはひは(やるじゃないか)

 

 ワシワシワシワシと。

 

大鬼「じゃ、じゃあ部屋で少し休んでるから」

勇儀「ほう(おう)ほふはへはん(おつかれさん)

 

 ガツガツガツガツと。

 

女0「ごぶさた、おじゃまします」

勇儀「ほう(おう)ほははひはふ(おかまいなく)

 

 だがその手はピタリと止む。

 

勇儀「あん? 今のは……女? 大鬼が……女を!?」

 

 (はし)と茶碗を放り投げ、(あわ)てて飛び出すも二人はすぐに曲がってしまい、その姿を消してしまっていた。保護者、(かす)かにうかがえた影を頼りに、かつてない速度で記憶を(めぐ)らせる。そして——

 

勇儀「おまえさん、そいつが誰だか分かってるのか?」

 

 祭り。それは気心知れた仲間達と共に楽しむイベント。そして、新たな出会いの場。新たな恋を予感させる場。

 

勇儀「あん? 今度は誰だ?」

 

 成長途中の街の変わらぬ屋敷の一室で、

 

女0「くすくす、やっぱり子供ね」

 

 この年のその日、

 

女0「教えてあげる。大人のキスを」

 

 少年は青年へ。




その正体は・・・。
数字の並びがおかしいところがあります。
この意味が分かった時、ある人物が浮上します。
これが今回の謎解きです。

そして次回から新しいエピソードが始まります。
エピソードのタイトルは『幻想郷の花見_宴会編』です。
華やかなにいきたいですね。


↓に謎解きのヒントを書きます。
































ヒント1:「26」の数字です。
     あるものの総数です。
     
ヒント2:和鬼の兄弟です。
     和鬼=正義のヒーロー。
     正義のヒーローで11人兄弟。
     さらに長男の名前は。。。

ヒント3:上から5番目が女1。
     上から4番目が女10になります。

むしろこっちの方が謎解き?
奇遇ですね、主もそう思います。。。

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