◇ ◇ ◇ ◇ ◇
紫 「もっと大きな声で!」
聞こえていないはずなどなかった。
声を荒げる彼女は、にわかに信じ
それは全神経を傾けていた他の者達も同様だった。と、同時に考えてもいた。幼い少女とも見える鬼が発した言葉から導き出される答えを。
しかしその答えは、なかなか表舞台には上がって来ない。
だがそのブレーキも長くは続かない。もう答えは出ているのだから、理解してしまっているのだから、
さあ、各車準備は整った。そこへ
萃香「大鬼は私のダーリンなの♡」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ナニィイイイイイイイイイイイイイ!?』
やっぱりーッ! 大鬼さんと萃香さんは付き合ってたー!!
文 「スクープ、スクープです! こいつぁ特ダネですよー」
椛 「萃香様と若様がそいうご関係だったなんて」
はた「
にと「若様? 次期四天王候補? ん〜……?」
早苗「新聞に書いてありましたよ〜」
諏訪「どーせ読まないで放ったらかしなんでしょ」
てゐ「じゃあ話にあったソイツの想い人って――」
輝夜「なによ、色気ゼロじゃない」
影狼「お燐のこと応援したかったのになぁ」
蛮奇「……同じく」
あゆ「えー、萃香さんカワイイよー」
妹紅「幼女趣味なのか?」
レミ「幼女趣味……身の危険を感じるわ」
パチュ「自覚はあったのね」
藍 「うちの
橙 「あっ、私
海斗「くぅっそぉ、やっと会えたと思ったのにィ」
慧音「歴史的には幼い少女が
先生「…ふふふ、好みは人それぞれですよ」
チル「だーりんってなに?」
サニ「1000mg配合?」
ルー「ファイト一発なのかー?」
リグ「それ、タウリンな」
ルナ「恋人さんのことです〜」
大妖「男性の方をそう呼ぶこともあるんだよ」
スタ「星空の下のデートとか
星 「恋、愛、バトル……。ゔっ、胃が……」
ナズ「到着しちゃいましたね。聖が出てくるのも時間の問題ですしね」
小傘「うぅ、驚いたよー……」
リリ「はーるでーすよー♡」
レテ「そうね、正しいわ」
とんでもねぇです、
さと「もうっ、萃香さん発表が早すぎますって!」
萃香「だって〜♡」
大鬼さんの腕に
いいなーいいなー、僕なんて僕なんて……。彼女、いたことありません。女の子と腕を組んだこと、ありません。
霊夢「そんな話一度も――」
萃香「えー、したよー。『花見にダーリンを連れて来てもいい?』って聞いたよ」
霊夢「いつ?」
萃香「ケーキもらったとき」
霊夢「そんなの初耳! ウソつかないで!」
萃香「ざんねーん、鬼はウソを言えませーん」
霊夢「ぐぬぬ、ダーリンだなんて……。どどどどどうせ、たたたたただの飲み友達程度なんでしょ? そうなんでしょ? そうよ、そうに決まって——」
萃香「それもざんねーん、私とダーリンは
相思相愛、そんなの到底この先もないでしょう、ありえないでしょう。
萃香「昨日はあつ〜い夜を……
契りを結ぶだなんて夢のまた夢………………ん?
『チョォオオオッとまてぇぇえい!!』
はわわわ……。『契り』って小難しいニュアンスだけど、つまりそういう事だよね? ゴールしたって事だよね? なんか想像しちゃいけないんだろうけど、あんな事やこんな事の妄想が広がっちゃいますよ。こんなのバレたら温泉の時以上に冷たい目で見られちゃう……。
美鈴「あらやだ、奥さん今の聞きました?」ヒソヒソ
咲夜「さすが鬼よね。お
妖夢「ききききき斬りますッ!」
フラ「フラン、なーんか『ドカーン』したくなっちゃったナー」
鈴仙「二人ともストップ、ストーーーップ!」
さと「ハレンチな思想がいたる所で……」
こい「お姉ちゃん!?」
もう大変です。一大事です。
さとり様、真っ赤な顔で頭から湯気を上げてヘロヘロと倒られました。
海斗君、orzして涙の
霊夢さん、orzして甲子園で砂集めをしている高校球児になってます。
アリスさん、お変わりありません。一人だけ真っ青です。ホントに大丈夫かな? そういえば、妖夢さんと
神奈「で、何が望みだい?」
大鬼「ア?」
確か赤と青の半々の服装だって……。たぶん白髪の
神奈「また金かい? もう存分にくれてやっているはずだが?」
大鬼「ア゛アッ?!」
いたーッ!
神奈「それとも、ぶっとばされれば気が済むのかい?」
大鬼「ッのヤロー!!」
萃香「大鬼ダメッ!」
反対側だけど、ぐるっと
神奈「こっちは多額の
大鬼「まだ終わってない、終わらせられないっ! お前さえ来なければ、お空が暴れることも、魔界の連中が来ることも、誰も傷付かずに済んだんだ。お前さえ来なければ、自分は爺ちゃんを
待ってて下さいねアリスさん、
神奈「ふんッ」
今永琳さんを呼んできますから。優希、いっきまーす!
神奈「で、その薬とやらはやっぱりあんたが作ったのかい?」
永琳「ええそうよ、ずいぶんと大昔にね」
大鬼「え?」
すみませーん、通して下さーい。前失礼しまーす、通りますよー。なんか低い姿勢でコソコソ動き回って忍者みたい……。
神奈「その薬、また作ってやれないのかい?」
永琳「……ムリよ」
ニンニン、ニンニン。おっとお話し中でござった。
神奈「どうしてだい? 月の頭脳とあろう者が」
永琳「もう材料となる植物がこの
大鬼「それじゃあ、あなたが……あなた様が……」
終わったでござる? 声かけても平気でござりまする?
僕 「ぁ、あのー……、ぇぃ——」
永琳「ん?」
ガッ!
なんだろう、服を
なんでだろう、イヤな予感しかしないでござる。
どうしてだろう、みんなが小さくなってるでござりまする。
って、
僕 「どわあああぁぁぁ。。。……」
ムササビの術ぅッ!?
魔理「ったく優希のヤツ、コソコソ何やってんのかと思えばだze★」
霊夢「少しは空気読みなさいよ……」
飛んでるーッ! 飛ばされてるーッ!! この高さで落ちたらし、し、し、死ぬぅーーッ!!!
僕 「ああああって、あれ? ここは……」
さっきいた場所です。アリスさんのお
訳がわからず周囲をうかがってみれば……不思議ちゃんが無表情のままお腹を抱えてケラケラと。赤髪の白いスーツの方なんて手まで
でもどうして……そうだ、夢だったんですよ。さっき頑張ったから疲れて寝ちゃったんですよ。あーよかった、夢で。
あっ、魔理沙さん。僕、今眠っていたみたいで……そうじゃない? 紫さんのスキマ? へー、そういう能力なんですか。チートですね。
紫 「はー、世話が焼ける」
永琳「あなたいきなり何を——」
大きな声が聞こえて来たのでそちらに目を向けて見れば、
大鬼「自分が今ここにいられるのは、あなた様のおかげです!」
土下座です。大鬼さんが両手両膝ついて地面スレスレまで頭を下げてます。
永琳「今度はいったい何の話? あの薬のことなら彼への
というか、僕を投げ飛ばしたのって、もしかして大鬼さんですか? 何でバ○ルーラみたいな事されるんですか? 僕、何かしましたか? 大鬼さん、怖いです。鬼、やっぱり怖かったです。もう近寄るのはよそ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
彼にとってオタクはチョウやガ程度にしか写っていなかった。突然視界を
大鬼「違うんです!」
では何故その彼が今、こんなにも
初めて地上の里を訪れた時は会う事も、見つける事も、探す事も出来なかった。恋人達と共に恩返しをしに行ったまではよかった。だが問題はその後、小腹を満たすため店を探している最中に激しい疲労に襲われ、直帰を余儀なくされ、自宅に到着するなり倒れ込んだのだ。その原因は地底にはない輝き、太陽光によるもの。地底から出たことがない彼にとって陽の光は
しかし次のチャンスはまもなく訪れた。だが今度は決められていた勝負ごとから背を向けられず、地上に出ることさえ断念せざるおえなかった。
そして
大鬼「自分はこの日を迎えられることを……」
ずっと心に決めていた。いつか、必ず、絶対にと。
大鬼「あなた様にお会いできる日を……」
ずっと心待ちにしていた。会いに来てくれたなら、会いに行けたなら、会うことができたならと。
大鬼「どうしても直接この口から……」
そして、ずっと心に
大鬼「自分はあなた様に作って頂いた『死ぬほどニガイ薬』のおかげで——」
一生分の『ありがとう』を伝えるんだと。
だがその言葉は、花の香りに乗せて届けることはなかった。
永琳「わかった、わかったから」
彼の肩に手を
永琳「そう、元気ならよかった」
大きく、ゆっくりとうなずいてニコリと微笑んでみせた。
萃香「ほら、あっち行って
そこへ途切れてしまっていたダーリンの腕を迎えに来た小さなハニー。そのまま急かすようにしながらも、彼と共に
そして、
神奈「なんの話だい?」
紫 「その話、気になるわね」
永琳「少し前に旧友が来てね、その時に薬を処方したのよ。それだけのことよ」
神奈「また薬かい」
紫 「なんの薬?」
永琳「簡単に言えば
能力者が暮らす幻想郷でも、ずば抜けた能力を持つ者達が集まった小さな神社。その一角で、うっすらと漂わす不穏な空気を
幽々「ん〜、穏やかじゃないわね〜」
ガッツリと、ただならぬ食う気でモグモグ感じ取る食いしん坊さんだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あっ、またお皿が空になった……。ペース変えないで食べてるのピンクの髪した人だけなんですけど……。他の方達は飲み物置いて、お箸まで置いて、シーンとしちゃって……。このままだとあの人に全部食べられちゃいますけど……。
というか今日はお花見であってますよね?
??「そろそろ始めさせてもらえへん? うちと
僕の近くにいた方が進み出て霊夢さんに尋ね始めました。
霊夢「あーはいはい、なら順番はそっちに任せるからチャッチャと始めちゃって」
霊夢さんは何の事だか分かってるみたいだけど。そういえば魔理沙さんが何かを楽しみにしてろって……もしかしてその事と——
??「うおおおっい!」
な、なんですか急に
僕 「すみません、考え事してて聞こえてませんでした……」
魔理「ったく、邪魔になるから早くこっちに来いよ。それともまだ注目されたいのか?」
いえ、今のでだいたい理解しました。大至急ココから立ち去ります。僕この場所、すっっっごく苦手なので。あ、でもその前に……
僕 「アリスさん行きますよ」
魔理「あー、アリスはいいんだze☆ おいアリス、もう始めるってよ。そろそろ帰って来いよ」
アリ「ふぇっ! あ、うん」
アリスさんと一緒にいたかったのに……ぐすん。
一緒に花見を楽しめると思ったのに……ぐすん。
僕の料理を食べて欲しかったのに……ぐすん。
アリスさん、頑張って下さいね。僕、待ってますから。ずっと見てますから。最後まで応援してますから。
今から花見で何か始まるらしいです。
《挿絵についての補足説明》
海斗のモデルはカイトです。
そこは譲れません!
理由は特にありませんがね。