東方迷子伝   作:GA王

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①暑いから冷房ON

②寒くなって上着を羽織る

③耐えきれなくなって冷房OFF

④汗でギットギトの上着を脱ぐ

⑤①に戻る



無限ループって怖くね?




五分咲き:妖夢さん、心友とイイ感じなところ申し訳ありませんけど、僕は樹海へと旅立ちますので嵐にご注意くださいです_※挿絵有

??「ゆーきー」

 

 説明しよう、彼は今それどころではないのである。次なる演目はアリス・マーガトロイドによる『人形劇』。人里でも時折披露してはいるが、この場においてはそのクオリティを格段に上げる。なにしろバックに超有名バンドを従えているのだから。

 そんな事情を知らずとも、彼からすればいきなり(むか)えたクライマックス。例え幕開け前からビシッと姿勢を正し、(まぶた)を全開にし、鼻息を荒くして待ち焦がれていたとしても(うなず)ける。

  

??「ねー、ゆーきってば」

 

 通達された開演時間まで残り三分を切った。広がった鼻腔から深く息を吸い込む彼、雑念を捨て去り、脳内をリセットし、全神経をステージへ傾ける。それは無我の境地、閉鎖空間、A○フィールドにおいて他ならない。よって例え——

 

??「ゆーーーきーーーッ!」

 

 耳元でどんなに大音量で呼ばれようと、例えその言葉が鼓膜を突き破り反対側から飛び出そうと、彼の脳を揺さぶるには遠く及ばない。とはいえ、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』をお持ちの方のリミットも近い。いや、むしろよくここまで我慢したといえよう。

 膨れ上がる憤りを頬に詰め込み、あふれ出す悲しみを瞳に浮かばせ、プルプルを開始した腕を彼に照準を合わせ、まぶしい光の弾を——

 

レミ「フラン、およしなさい」

フラ「だってお姉様」

レミ「ゆーきさんは人形劇を見たいのではなくて?」

魔理「まっ、そういうことだze☆ だから今はいくら呼んでもムダだろうze☆」

フラ「でも——」

魔理「そのかわり後でゴッコ遊びでも何でも付き合ってもらえばいいだろうze☆」

フラ「イヤ! フランはゆーきとお話ししたいの!」

レミ「フラン、あまり私を困らせないでくれる?」

魔理「魔理沙ちゃんも優希に言っておいてやるから」

フラ「イーヤーだー! 今がいいの、今じゃなきゃダメなの!」

 

 地べたに寝転んで両手足を激しくジタバタ、もはやただの駄々(だだ)っ子。そんな彼女にスーパーメイド長は「どうしたものか」と天を見上げ、紫モヤシはその場からそそくさと離れて本を開き、門番にいたっては持参した紹興酒(しょうこうしゅ)を抱きマクラにお昼寝中。そして、館の主人であるお姉様は——

 

レミ「フ・ラ・ンー? アナタいい加減に——」

 

 ついにリミット突破。少女のごとき愛らしい顔に余裕はない。

 直接的ではないにしろ、ヲタクが引き金で荒れ模様となってしまった観客席の最前列、火花散らす姉妹の間に挟まれた白黒魔法使いは始まるであろう驚異のゴッコに備えていた。そう、誰かが止めなくては、誰かが姉妹の気を引きつけなければ、それは確実にその瞬間に始まっていたのである。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 すごいです。

 目、カピカピです。でも(まばた)き厳禁です。

 すごいです、すごいです。

 (のど)、カラカラです。でも飲食禁止です。

 すごいです、すごいです、すごいです。

 足、ビリビリです。でも正座必須です。

 (まこと)なんですか、これは。

 軽快なドラムのリズムに合わせて、たくさんの人形が一糸乱れない行進で登場してきて。

 夢なんですか、これは。

 落ち着いたバイオリンの音色に(ゆだ)ねるみたいにバレー(かな?)を踊って。

 何なんですか、これは。

 不思議と安心感をくれるピアノの音で輪になってワルツ(だよね?)を踏んで。

 劇、舞踏会、ミュージカル、そんな言葉では的外れ。

 意気揚々と吹き鳴らされるトランペットを合図にみんなでチアダンス(間違いない)を披露して。

 芸術作品、国宝、世界遺産、そんな言葉では生温(なまぬる)いです。

 縦横無尽に動き回って楽しげに宙を舞う人形達は、重力の支配からも解き放られ最高の自由を手に入れて喜んでいるかのよう。

 これは魔法、そう魔法なんです。全部アリスさんの魔法なんです。僕の心はアリスさんの魔法に魅せられてしまったんです。鷲掴(わしづか)みにされちゃったんです。ガッチリと。音楽を聴いていても、映画を観ていても、それこそ劇を観たところでだったけど……

 

??「少年、大丈夫? あせあせ」

 

 けど、今日僕は生まれて初めて——

 

??「もしも〜し、もしも〜し、気付いて〜。ふりふり」

僕 「へあッ?!」

 

 いきなり視界を遮断(しゃだん)されたと思ったら不思議ちゃんでした。アリスさんの人形劇は終わっているので文句はありませんけど、いきなり飛び出されるとビックリしますよ……。

 そういえばアリスさん、最後まで登場しなかったなー。カーテンコールの時も人形達だけだったし。なんでだろ?

 というか、上海と蓬莱までいたんですけど。「いつの間に!?」でしたよ。留守番してるはずなのに。さっき「一緒にトランプして待ってればよかった……」とか考えてたけど、そんなことしてたら僕、途中でボッチになってるところでした。そんなことになってたら——

 

ここ「お〜い、しょーねーん! ムカッ」

 

 泣いてましたよ……。

 

ここ「チェストーッ! ガスッ」

僕 「へぶばッ」

ここ「さっき気付いたよね〜? 『へあッ』って反応したよね〜? なのに我々をなき者にして瞑想(めいそう)とはこれいかに? ぷんぷん」

僕 「ごごごごめんなさい……それで……はい……ごめんなさい」

ここ「これ、貸してあげる。どぞどぞ」

 

 綺麗に畳まれたハンカチを渡されちゃいました。でもなんで? 

 

僕 「えっと、あのー、これ……」

 

 そいでどうしろと? 手品なんてできませんよ?

 

ここ「目、鼻、口、ありとあらゆる穴から汁が出てるから()くことを強くお勧めする。キショイキショイ」

僕 「あ、はい。ありがとうございます……」

 

 今サラッと(ののし)られた気がするんですけど……。不思議ちゃん、毒も吐かれるんですね、しかもかなり強烈な毒を無表情で。おまけに無表情で言われるもんだから、威力が倍増してます……でもそうですよね、ありとあらゆる穴から汁が出てるんですもん、キショイですよね……あっ、また目から汁が……。

 

ここ「あと少年を呼んでたの我々だけじゃないよ。あの子もずっと少年のこと呼んでたんだから〜。ピッ」

 

 「あっち向いてホイ」と導かれた指先には、チルノ達と談笑されているフランさんのお姿が。さっきまで僕の隣にいたと記憶しています。そのフランさんが呼んでた? しかもずっと? それを僕は気付かずに無視していたと?

 

ここ「少年あとちょっとで花火になってたよ〜。ドカーン」

 

 そいつはさぞきたねえ花火でしょうね。じゃなくて、ロックオンされてたんですか!? マズイです、それはものすごくマズイです。後で謝罪のお言葉とお()びの品をそろえて地べたに頭を(こす)り付けて反省の姿勢をフランさんに——

 

ここ「詳細と対応方法については白黒魔法使いに。それじゃあ我々は場所を移すからこれで〜。バイバイ」

僕 「は、はい。ありがとうございました」

 

 あ、ハンカチ……。でも使ったまま返すのはさすがに……だから洗って返さなきゃなんだけど、でもでもそうなると後日返しに行かなきゃなんだけど、でもでもでも不思議ちゃんのお住まいなんて知らないわけで……魔理沙さんなら知ってるかな? あと気になってること色々聞いておこ。

 

僕 「あのー、魔理沙さん?」

魔理「うーむ」

 

 あっれー? 珍しく考え事してるみたいだけど、どうしたんだろ?

 

僕 「魔理沙さんどうかされ——」

魔理「ze★!?」スチャッ

僕 「ギャーッ! ごごごごめんなさい、僕ですよ僕! お願いですからマスパらないで下さい!!」

魔理「なんだ優希かよ、おどかすなze★」

僕 「すみません……」

魔理「やっと帰ってきたのか。で、なんだze☆?」

僕 「えっと、なんで人形劇にアリスさんが出て来なかったのかなーって思いまして」

魔理「は? 人形の劇なんだze★? そこにアリスが出て来たら逆に変だze★」

僕 「いや、でも、最後の挨拶(あいさつ)の時も——」

 

 って、ジト目ぇ……。

 

僕 「な、なにか?」

魔理「色々とあんだよ。アリスのことを想うならこれ以上聞くなだze★」

僕 「はい、そうします……ってぼぼぼぼぼくアリスさんのこと想うとかそんな……」

 

 って、またジト目ぇ……。

 

魔理「優希、本当にアリスのこと何とも想ってないのか?」

僕 「そそそそんなことありませんよ。いつも感謝しっぱなしですよ。大の恩人ですよ」

 

 ウソなんてありません。アリスさんは見ず知らずの僕なんかを助けてくれました。その上部屋まで……。なのに僕は迷惑をかけるばかりで、負担をかけるばかりで……。なるべくそうならないようにバイトを始めたけれど、今度はそれが逆にアリスさんに心配をかける事になって……。だから、だから……

 

僕 「いつかちゃんと恩返ししなきゃって、お礼しなきゃって思ってるんですから……」

 

 って、またまたジト目ぇ……。

 

魔理「……だとしたらアリスがかわいそうだな」

僕 「は? ひ? ふ?」

魔理「何でこんなヤツのためにアリスは……」

僕 「へ? ほ?」

魔理「あっ、そうだ。お前さっき危なかったんだze★?」

 

 さっきこころさんが言われてたことですね、分かります。けど魔理沙さん……僕に(いだ)かせたこの疑問の行方はどちらへ? しれっと仕切り直さないでくれませんか?

 

僕 「はい……こころさんからお聞きしてます」

魔理「後でフランのワガママに付き合ってやれよ、一緒に遊びたいって言ってze☆」

僕 「はい……。って、うえええッ?!」

 

 対応方法ってそういう事ー!? フランさんとの遊び……いい思い出が何一つないんですけどー! うらやましい、そこ代われ、そう思う方を緊急募集しますー!!

 そう、あれはフランさんが護衛(ごえい)してくれるようになってから少し経ったある日のことです————————

 

フラ「ゆーきー何かお話ししてよー。フランつまんなーい」

僕 「え゛っ、でも走りながら会話出来るほど余裕はケホッ」

フラ「ならゆっくり歩いて行こうよ」

僕 「けど早く帰らないとアリスさん達がゲホゲホッ」

フラ「ふーん、だったらゆーきが走れて、フランが楽しめる事だったらいい?」

僕 「それはまあ……ゲェッホゲボッ」

フラ「じゃーあ♪」

 

 ————————忘れられません、夢にも出てくるくらいです。その時に見せたフランさんのとびっきりの笑顔が。クスクス笑いながらニヤ〜ッて三日月の形にした口から(のぞ)かせる八重歯(やえば)が。そして、(にぎ)られた血の色に輝く大剣『レーヴァテイン』が。

 

【挿絵表示】

 

 それからですよ、真夜中の魔法の森に豚の鳴き声と倒木音が(ひび)き渡るようになったのは。なのに魔理沙さんときたら「フランのヤツ、ちゃんと力をコントロール出来るようになったんだな」って、僕の心配よりフランさんの成長の方をまるで我が子の様にシミジミ感じてましたし……。

 けどそれをアリスさんが許すはずもなく、レミリアさん伝いに『レーヴァテイン禁止令』が発令されたみたいで、以降はレーヴァテインの「レ」の字も見ていません。勝手気ままなフランさんですが、レミリアさんには頭が上がらないみたいです。

 でも代わりに光の弾が追いかけて来るようになりまして……。そんな深夜の一方的な鬼ごっこが今でも続いているわけです。おかげで巨大な樹木が鬱蒼(うっそう)()(しげ)っている魔法の森には……

 

魔理「うをーイッ!」

僕 「はひぃッ!!?」

魔理「自分から話かけておいて無視するとはいい度胸だze★」

僕 「すすすすみません、悪気はないんです」

魔理「ったく、フランのことはそういうことになってるからな。いいな?!」

僕 「はい……」

魔理「それと、あと少しでアリスがこっちに来るから気の利いた言葉の一つでも用意しておけよ」

 

 魔理沙さん、そいつは()らぬ心配でぃすよ。だって、一つどころじゃあないんでぃすから、山ほどあるんでぃすから! 

 例えば「あんなに素晴らしいものを見たことないです」とか「夢でも復習できるように目と心にしっかりと書き(しる)しました」とか「アリスさんがくれたの魔法の時間を生涯(しょうがい)忘れません、忘れられません、忘れることがきません!」とかとか。特に最後のはバシッと言い切りたいです。いえ、言い切ってみせます!

 ああ、早くアリスさん来ないかなー……っとあのシルエットは?!

 

大鬼「彼女が萃香ちゃんの話してた?」

萃香「そうアイツぅ、私と話そうともしないんだから」

大鬼「えっ、なんで?」

萃香「しらなーい、声かけようとしてもすぐどっか行くんだもん」

大鬼「彼女に何かしたの?」

萃香「なーんも、鬼だから嫌われてるんじゃなーい?」

大鬼「なんだよそれ、無意味に鬼を嫌うなんて……」

萃香「趣味の悪い人形に囲まれてるのが大好きなネクラだから、嫌われていようと別に悔しくもないんだけどねぇ。むしろコッチから願い下げ」

 

 ネクラ? 萃香さんソレ、漢字変換すると『根暗』ってことでよろしいでしょうか?

 

大鬼「あー、なるほどねぇ」

 

 チョーット()ッテ(クダ)サイ! 大鬼さんまで「なるほどねぇ」じゃありませんよ、なに納得されてるんですか! 上海と蓬莱はすごくいい子なんですよ?! なによりアリスさんが根暗なわけないじゃないですか! いつもニコニコ、キラキラ、キュリンキュリンしてるんですよ?! 笑ったときなんて直視できないくらいに(まぶ)しく輝いて、ネコミミカチューシャ付けたときなんて反則的に似合ってて、『ね?』って首を傾けたときなんてすっっっごくカワイイんですから。もうかわいすぎて色々とヤバイですから。それくらいかわいいんですから。もうね、もうかわいいとかそんなレベルじゃないんです。天使。女神。精霊。そんな存在なんです。もうすでに。人間とか妖怪とかそれ以外とかそういう次元を超越(ちょうえつ)しちゃってるんですもん。そんな方が根暗なわけないじゃないですか! そうだサングラス……そのサングラスをしてるからよく見えてないんですよ! サングラス取って見て下さいよ! さあさあさあさあ!! アリスさん以上の女性なんていませんから!! いるわけがありませんから!!!

 許せません、アリスさんの陰口だなんて。それが例え——

 

萃香「大鬼ドードードードーッ」

 

 って、なんか大鬼さんが狂犬(きょうけん)みたいに(うな)り声を上げてこちらを(にら)まれてるんですけど……。萃香さんが取り押さえてなければ、飛びかかって来てたっぽいんですけど……。なんで? もしかして僕、知らず知らず大鬼さんにガン飛ばしてました? OH MY GOD!! あああ謝らないと謝らないと今すぐ謝らないと……。

 

てゐ「キッッッモ! アイツやっぱりキモいウサ」

鈴仙「しーっ! 私だって鳥肌で我慢(がまん)してるんだから」

 

 って、は?

 

チル「ん? さっきの天ぷらの人?」

ルナ「優希さんです〜」

リグ「あの人、酒丸で働いてるらしいよ」

大妖「えっ、ミスチーのライバル店で?」

ルー「そーなのだー」

サニ「少し前まで毎晩スターが道標してあげててさ、今は――」

スタ「ね、ねぇ……、そのフランさんが……」

フラ「フラン、フラン、フラン……。今日一番に壊したくなっちゃったナ゛ーッ!」

 

 って、ひぃいいい!?

 

メイ「くすくす、いけませんよフランお嬢様。はい、いい子いい子」

咲夜「あの包容力(ほうようりょく)、勉強になります。私もいつか!」

レミ「だから言ったでしょ? あの子に適任だって」

 

 って、ふぅー……。

 

パチュ「ふーん、ふーん、ふーん」

慧音「さすがだな、里でも人気なだけはある」

先生「…ふふふ、彼の(うわさ)は酒丸では有名ですからねぇ」

 

 って、へい?

 周りのこのリアクションは何事でぃすか? いったい何なんでぃすか? ディスられて、ぼやかれて、おまけに命狙われて。強く念じていただけのはずなのに……こ、これじゃあまるで……

 

僕 「ま、まま、ままま魔理沙さん……ぼ、ぼぼぼぼ僕……」

魔理「あー……、ze☆」

 

 って、ほぉおおおほほほほほ!?

 OH! MY! GOOOOD!! バカバカバカバカバカバカバカバカ僕の大バカモノーッ。樹海、樹海はどちらですか、今すぐ樹海を……まてまて落ち着け僕、いったん落ち着くんだ、円周率を唱えて落ち着くんだ。

 そうですよ、望みはありますよ、絶望するにはまだ早いですよ。だってアリスさんに聞こえてなければなにも問題ないんですから。例え周りからウジ虫を見るような目で見られようと、キモ男呼ばわりされようと、レーヴァテインを振り回されながら追いかけられようとセフセフセーフなんでぃすから。あーよかった、一時はどうなることかと思いましたよ。

 ん? 上海と蓬莱なになに、どうしたの? 向こう見ろ?

 って、アリスさんが顔隠してうずくまってまするぅうう! 頭から湯気出てまするぅうう! あのリアクション絶対聞こえてまするぅうう!

 いられない……僕はもうこの場にいられない……アリスさんの家にも、この世界にでさえも。樹海……樹海を……樹海を求めて旅立たないと……

 

大鬼「おい、お前」

優希「はひぃいいいッ!」

大鬼「お前こそ目ん玉ひん()いてよく見やがれ! 萃香ちゃんの方が比べものにならないくらいカワイイだろうが! 萃香ちゃんよりイイ女なんてこの世に存在するもんか! 照れたときなんてもっと小さくなって、リンゴみたいに赤くなって尋常じゃなく愛らしいんだぞ! けど、だけじゃない。小さい頃から一緒に遊んでくれて、本気で(しか)ってくれて、(きずな)の大切さを命がけで教えてくれたんだぞ! かと思えば昨夜なんて子供みたいにずっと抱きついて来て——」

萃香「んもぉ、やだあ大鬼ったらぁ♡ ()めすぎだってゔぁ♡」

大鬼「ヴガッ」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 彼女は驚愕(きょうがく)していた。胸の内を隠す彼、(ども)ってばかりの彼、イライラを(つの)らせる彼。その彼が叫ぶ場合は決まって「ぎゃー」や「うわー」といった悲痛で耳障(みみざわ)りな音声だけだったからだ。

 それがどうだ。今彼女の目に映る彼は、胸の内を(さら)け出して言い放ったのだ。しかも最強の種族である鬼に、よりにもよってその四天王に、現役と候補の両名に対し、果たし状を叩き付けるかの様に。いや、どちらかといえば候補にベクトルを向けて。

 だから彼女は彼に送ったのだ。ずぶ濡れの捨て犬のような瞳を向ける彼に対して。

 

彼女「あー……、ze☆」

 

 ぶっちぎりの笑顔とサムズアップを。

 瞬間、彼はずぶ濡れの捨て犬から薄汚い人形へ。明日への希望を失い、自ら廃棄処分(はいきしょぶん)を願い始める。そして念じ始める。強く、より強く。無意識に発してしまった時と同様に念じ始める。

 「これが夢であって欲しい、幻であって欲しい、(うそ)であって欲しい。それが(かな)わず現実であるならば、誰でもいい。妖怪でも悪魔でも鬼でもいい。どんなに強引で暴力的で力任せの手段でもいい。だからこの状況を変えて欲しい」と。

 そんな彼の念の行方は……。

 

彼女「!!」

 

 彼女の瞳の中にだけ映し出されていた。

 

彼女「全員かまえろー!」

 

 警告を知らされる彼女のサイレンに(あわ)てふためく出す花見会場。特に獣属性の者達にいたっては一際に。兎と黒狼は耳に(せん)を、白狼は先輩(からす)につかまり、地獄鴉は家族の猫を乗せ、幼猫は九尾の(きつね)と共に大主様の能力で。各々が防衛、離脱していく。

 

??「そくせつしゅ~わ~つ~♪」

 

 開演した幻想郷の花見の第三演目、彼の念を受け取り悪夢を打ち(くだ)く者達のグループ名は――

 

??「\ギャーテーッ! ギャーテーッ!/」

 

 『鳥獣伎楽(ちょうじゅうきがく)

 

??「ヒューッ、のってくヨォ」

 

 『with TD』。

 

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