↓
②寒くなって上着を羽織る
↓
③耐えきれなくなって冷房OFF
↓
④汗でギットギトの上着を脱ぐ
↓
⑤①に戻る
無限ループって怖くね?
??「ゆーきー」
説明しよう、彼は今それどころではないのである。次なる演目はアリス・マーガトロイドによる『人形劇』。人里でも時折披露してはいるが、この場においてはそのクオリティを格段に上げる。なにしろバックに超有名バンドを従えているのだから。
そんな事情を知らずとも、彼からすればいきなり
??「ねー、ゆーきってば」
通達された開演時間まで残り三分を切った。広がった鼻腔から深く息を吸い込む彼、雑念を捨て去り、脳内をリセットし、全神経をステージへ傾ける。それは無我の境地、閉鎖空間、A○フィールドにおいて他ならない。よって例え——
??「ゆーーーきーーーッ!」
耳元でどんなに大音量で呼ばれようと、例えその言葉が鼓膜を突き破り反対側から飛び出そうと、彼の脳を揺さぶるには遠く及ばない。とはいえ、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』をお持ちの方のリミットも近い。いや、むしろよくここまで我慢したといえよう。
膨れ上がる憤りを頬に詰め込み、あふれ出す悲しみを瞳に浮かばせ、プルプルを開始した腕を彼に照準を合わせ、まぶしい光の弾を——
レミ「フラン、およしなさい」
フラ「だってお姉様」
レミ「ゆーきさんは人形劇を見たいのではなくて?」
魔理「まっ、そういうことだze☆ だから今はいくら呼んでもムダだろうze☆」
フラ「でも——」
魔理「そのかわり後でゴッコ遊びでも何でも付き合ってもらえばいいだろうze☆」
フラ「イヤ! フランはゆーきとお話ししたいの!」
レミ「フラン、あまり私を困らせないでくれる?」
魔理「魔理沙ちゃんも優希に言っておいてやるから」
フラ「イーヤーだー! 今がいいの、今じゃなきゃダメなの!」
地べたに寝転んで両手足を激しくジタバタ、もはやただの
レミ「フ・ラ・ンー? アナタいい加減に——」
ついにリミット突破。少女のごとき愛らしい顔に余裕はない。
直接的ではないにしろ、ヲタクが引き金で荒れ模様となってしまった観客席の最前列、火花散らす姉妹の間に挟まれた白黒魔法使いは始まるであろう驚異のゴッコに備えていた。そう、誰かが止めなくては、誰かが姉妹の気を引きつけなければ、それは確実にその瞬間に始まっていたのである。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
すごいです。
目、カピカピです。でも
すごいです、すごいです。
すごいです、すごいです、すごいです。
足、ビリビリです。でも正座必須です。
軽快なドラムのリズムに合わせて、たくさんの人形が一糸乱れない行進で登場してきて。
夢なんですか、これは。
落ち着いたバイオリンの音色に
何なんですか、これは。
不思議と安心感をくれるピアノの音で輪になってワルツ(だよね?)を踏んで。
劇、舞踏会、ミュージカル、そんな言葉では的外れ。
意気揚々と吹き鳴らされるトランペットを合図にみんなでチアダンス(間違いない)を披露して。
芸術作品、国宝、世界遺産、そんな言葉では
縦横無尽に動き回って楽しげに宙を舞う人形達は、重力の支配からも解き放られ最高の自由を手に入れて喜んでいるかのよう。
これは魔法、そう魔法なんです。全部アリスさんの魔法なんです。僕の心はアリスさんの魔法に魅せられてしまったんです。
??「少年、大丈夫? あせあせ」
けど、今日僕は生まれて初めて——
??「もしも〜し、もしも〜し、気付いて〜。ふりふり」
僕 「へあッ?!」
いきなり視界を
そういえばアリスさん、最後まで登場しなかったなー。カーテンコールの時も人形達だけだったし。なんでだろ?
というか、上海と蓬莱までいたんですけど。「いつの間に!?」でしたよ。留守番してるはずなのに。さっき「一緒にトランプして待ってればよかった……」とか考えてたけど、そんなことしてたら僕、途中でボッチになってるところでした。そんなことになってたら——
ここ「お〜い、しょーねーん! ムカッ」
泣いてましたよ……。
ここ「チェストーッ! ガスッ」
僕 「へぶばッ」
ここ「さっき気付いたよね〜? 『へあッ』って反応したよね〜? なのに我々をなき者にして
僕 「ごごごごめんなさい……それで……はい……ごめんなさい」
ここ「これ、貸してあげる。どぞどぞ」
綺麗に畳まれたハンカチを渡されちゃいました。でもなんで?
僕 「えっと、あのー、これ……」
そいでどうしろと? 手品なんてできませんよ?
ここ「目、鼻、口、ありとあらゆる穴から汁が出てるから
僕 「あ、はい。ありがとうございます……」
今サラッと
ここ「あと少年を呼んでたの我々だけじゃないよ。あの子もずっと少年のこと呼んでたんだから〜。ピッ」
「あっち向いてホイ」と導かれた指先には、チルノ達と談笑されているフランさんのお姿が。さっきまで僕の隣にいたと記憶しています。そのフランさんが呼んでた? しかもずっと? それを僕は気付かずに無視していたと?
ここ「少年あとちょっとで花火になってたよ〜。ドカーン」
そいつはさぞきたねえ花火でしょうね。じゃなくて、ロックオンされてたんですか!? マズイです、それはものすごくマズイです。後で謝罪のお言葉とお
ここ「詳細と対応方法については白黒魔法使いに。それじゃあ我々は場所を移すからこれで〜。バイバイ」
僕 「は、はい。ありがとうございました」
あ、ハンカチ……。でも使ったまま返すのはさすがに……だから洗って返さなきゃなんだけど、でもでもそうなると後日返しに行かなきゃなんだけど、でもでもでも不思議ちゃんのお住まいなんて知らないわけで……魔理沙さんなら知ってるかな? あと気になってること色々聞いておこ。
僕 「あのー、魔理沙さん?」
魔理「うーむ」
あっれー? 珍しく考え事してるみたいだけど、どうしたんだろ?
僕 「魔理沙さんどうかされ——」
魔理「ze★!?」スチャッ
僕 「ギャーッ! ごごごごめんなさい、僕ですよ僕! お願いですからマスパらないで下さい!!」
魔理「なんだ優希かよ、おどかすなze★」
僕 「すみません……」
魔理「やっと帰ってきたのか。で、なんだze☆?」
僕 「えっと、なんで人形劇にアリスさんが出て来なかったのかなーって思いまして」
魔理「は? 人形の劇なんだze★? そこにアリスが出て来たら逆に変だze★」
僕 「いや、でも、最後の
って、ジト目ぇ……。
僕 「な、なにか?」
魔理「色々とあんだよ。アリスのことを想うならこれ以上聞くなだze★」
僕 「はい、そうします……ってぼぼぼぼぼくアリスさんのこと想うとかそんな……」
って、またジト目ぇ……。
魔理「優希、本当にアリスのこと何とも想ってないのか?」
僕 「そそそそんなことありませんよ。いつも感謝しっぱなしですよ。大の恩人ですよ」
ウソなんてありません。アリスさんは見ず知らずの僕なんかを助けてくれました。その上部屋まで……。なのに僕は迷惑をかけるばかりで、負担をかけるばかりで……。なるべくそうならないようにバイトを始めたけれど、今度はそれが逆にアリスさんに心配をかける事になって……。だから、だから……
僕 「いつかちゃんと恩返ししなきゃって、お礼しなきゃって思ってるんですから……」
って、またまたジト目ぇ……。
魔理「……だとしたらアリスがかわいそうだな」
僕 「は? ひ? ふ?」
魔理「何でこんなヤツのためにアリスは……」
僕 「へ? ほ?」
魔理「あっ、そうだ。お前さっき危なかったんだze★?」
さっきこころさんが言われてたことですね、分かります。けど魔理沙さん……僕に
僕 「はい……こころさんからお聞きしてます」
魔理「後でフランのワガママに付き合ってやれよ、一緒に遊びたいって言ってze☆」
僕 「はい……。って、うえええッ?!」
対応方法ってそういう事ー!? フランさんとの遊び……いい思い出が何一つないんですけどー! うらやましい、そこ代われ、そう思う方を緊急募集しますー!!
そう、あれはフランさんが
フラ「ゆーきー何かお話ししてよー。フランつまんなーい」
僕 「え゛っ、でも走りながら会話出来るほど余裕はケホッ」
フラ「ならゆっくり歩いて行こうよ」
僕 「けど早く帰らないとアリスさん達がゲホゲホッ」
フラ「ふーん、だったらゆーきが走れて、フランが楽しめる事だったらいい?」
僕 「それはまあ……ゲェッホゲボッ」
フラ「じゃーあ♪」
————————忘れられません、夢にも出てくるくらいです。その時に見せたフランさんのとびっきりの笑顔が。クスクス笑いながらニヤ〜ッて三日月の形にした口から
それからですよ、真夜中の魔法の森に豚の鳴き声と倒木音が
けどそれをアリスさんが許すはずもなく、レミリアさん伝いに『レーヴァテイン禁止令』が発令されたみたいで、以降はレーヴァテインの「レ」の字も見ていません。勝手気ままなフランさんですが、レミリアさんには頭が上がらないみたいです。
でも代わりに光の弾が追いかけて来るようになりまして……。そんな深夜の一方的な鬼ごっこが今でも続いているわけです。おかげで巨大な樹木が
魔理「うをーイッ!」
僕 「はひぃッ!!?」
魔理「自分から話かけておいて無視するとはいい度胸だze★」
僕 「すすすすみません、悪気はないんです」
魔理「ったく、フランのことはそういうことになってるからな。いいな?!」
僕 「はい……」
魔理「それと、あと少しでアリスがこっちに来るから気の利いた言葉の一つでも用意しておけよ」
魔理沙さん、そいつは
例えば「あんなに素晴らしいものを見たことないです」とか「夢でも復習できるように目と心にしっかりと書き
ああ、早くアリスさん来ないかなー……っとあのシルエットは?!
大鬼「彼女が萃香ちゃんの話してた?」
萃香「そうアイツぅ、私と話そうともしないんだから」
大鬼「えっ、なんで?」
萃香「しらなーい、声かけようとしてもすぐどっか行くんだもん」
大鬼「彼女に何かしたの?」
萃香「なーんも、鬼だから嫌われてるんじゃなーい?」
大鬼「なんだよそれ、無意味に鬼を嫌うなんて……」
萃香「趣味の悪い人形に囲まれてるのが大好きなネクラだから、嫌われていようと別に悔しくもないんだけどねぇ。むしろコッチから願い下げ」
ネクラ? 萃香さんソレ、漢字変換すると『根暗』ってことでよろしいでしょうか?
大鬼「あー、なるほどねぇ」
チョーット
許せません、アリスさんの陰口だなんて。それが例え——
萃香「大鬼ドードードードーッ」
って、なんか大鬼さんが
てゐ「キッッッモ! アイツやっぱりキモいウサ」
鈴仙「しーっ! 私だって鳥肌で
って、は?
チル「ん? さっきの天ぷらの人?」
ルナ「優希さんです〜」
リグ「あの人、酒丸で働いてるらしいよ」
大妖「えっ、ミスチーのライバル店で?」
ルー「そーなのだー」
サニ「少し前まで毎晩スターが道標してあげててさ、今は――」
スタ「ね、ねぇ……、そのフランさんが……」
フラ「フラン、フラン、フラン……。今日一番に壊したくなっちゃったナ゛ーッ!」
って、ひぃいいい!?
メイ「くすくす、いけませんよフランお嬢様。はい、いい子いい子」
咲夜「あの
レミ「だから言ったでしょ? あの子に適任だって」
って、ふぅー……。
パチュ「ふーん、ふーん、ふーん」
慧音「さすがだな、里でも人気なだけはある」
先生「…ふふふ、彼の
って、へい?
周りのこのリアクションは何事でぃすか? いったい何なんでぃすか? ディスられて、ぼやかれて、おまけに命狙われて。強く念じていただけのはずなのに……こ、これじゃあまるで……
僕 「ま、まま、ままま魔理沙さん……ぼ、ぼぼぼぼ僕……」
魔理「あー……、ze☆」
って、ほぉおおおほほほほほ!?
OH! MY! GOOOOD!! バカバカバカバカバカバカバカバカ僕の大バカモノーッ。樹海、樹海はどちらですか、今すぐ樹海を……まてまて落ち着け僕、いったん落ち着くんだ、円周率を唱えて落ち着くんだ。
そうですよ、望みはありますよ、絶望するにはまだ早いですよ。だってアリスさんに聞こえてなければなにも問題ないんですから。例え周りからウジ虫を見るような目で見られようと、キモ男呼ばわりされようと、レーヴァテインを振り回されながら追いかけられようとセフセフセーフなんでぃすから。あーよかった、一時はどうなることかと思いましたよ。
ん? 上海と蓬莱なになに、どうしたの? 向こう見ろ?
って、アリスさんが顔隠してうずくまってまするぅうう! 頭から湯気出てまするぅうう! あのリアクション絶対聞こえてまするぅうう!
いられない……僕はもうこの場にいられない……アリスさんの家にも、この世界にでさえも。樹海……樹海を……樹海を求めて旅立たないと……
大鬼「おい、お前」
優希「はひぃいいいッ!」
大鬼「お前こそ目ん玉ひん
萃香「んもぉ、やだあ大鬼ったらぁ♡
大鬼「ヴガッ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
彼女は
それがどうだ。今彼女の目に映る彼は、胸の内を
だから彼女は彼に送ったのだ。ずぶ濡れの捨て犬のような瞳を向ける彼に対して。
彼女「あー……、ze☆」
ぶっちぎりの笑顔とサムズアップを。
瞬間、彼はずぶ濡れの捨て犬から薄汚い人形へ。明日への希望を失い、自ら
「これが夢であって欲しい、幻であって欲しい、
そんな彼の念の行方は……。
彼女「!!」
彼女の瞳の中にだけ映し出されていた。
彼女「全員かまえろー!」
警告を知らされる彼女のサイレンに
??「そくせつしゅ~わ~つ~♪」
開演した幻想郷の花見の第三演目、彼の念を受け取り悪夢を打ち
??「\ギャーテーッ! ギャーテーッ!/」
『
??「ヒューッ、のってくヨォ」
『with TD』。