静かに時を過ごす冷たい光景、今となっては
なんで? だって僕はさっきまで幻想郷にいて、博麗神社にいて、花見をしていて……
ん? 隣の席で腕を組んで寝息を立てているのは……やっぱり海斗君だ。この風景……知ってる、覚えてる。これじゃあまるで僕が幻想郷に行った日じゃあないですか。電気とアニメの街に行った帰りじゃあないですか。なんで?
ん? 正面の席でウトウトしている女子高生、何処かで見たことがあるような、ないような、あったような。もしかして……あゆみさん? そうだよ、あゆみさんだよ。じゃあ僕達元の世界に戻って来たってこと?
んなわけないですよね。夢だったんですよね。全部僕の
でもそうなると明日も
外、暗くなってる。最寄りの駅までまだあるし、また夢でもみていようかな。今度は
って、体が軽い。なんで? 僕、浮いてる。なんで? それに周りの景色がひしゃげて崩れていく。なんで? このままだと僕……おおお落ちるぅうううう。
ビクゥッ!
って、あれ? 落ちたと思ったのに……全然痛くない。というか柔らかい、特に頭の下が。まるでビーズクッションに頭を置いた時みたいに、そっと包み込まれているようで。おまけにいい香りです。心が安らぐ花の香りがします。なんだか分からないけど、きっとコレが僕を受け止めてくれたんですね。
え、誰? 誰ですか? 今僕を呼んだのは誰なんですか?
僕 「あぁ……」
精霊さんでする……いや、天使さんでする……青い瞳で金髪の綺麗な天使さんがおられまする。よかった、希望通りの夢が見れそうで。このまま、どうかこのまま——
僕 「って、アリスさん?!」
待て待て待て、なんでなんでなんで? なんでまた見覚えのあるアリスさんが夢に出て来ちゃってるんですか? いや、
??「具合はどう?」
白髪のこの方は…。記憶違いでなければ永琳さんですよね? おまけに……
??「やっとお目覚めか、もうとっくにみんな起きてるze☆」
この独特な語尾にイタズラな口調、お姿は確認出来ませんけどTHE・魔法使い的な服装の魔理沙さんですよね? ということはやっぱり夢の続きということですか?!
永琳「ちょっと
胸に当てられる
魔理「念のため言っとくけどな、こっちが現実なんだze☆」
ですよねー、あっちが夢でこっちが夢じゃなかったってことですよねー。夢じゃなくて夢じゃなかったってことですよねー。
永琳「問題なさそうね。頭痛や
僕 「ぃぃぇ、なななないです」
それよりさっきからずっっっと気になってるんですけど、今僕どうなってます?
アリ「気分がすぐれなかったら言って下さいね」
アアアリスさんのおおおお顔がここここんなに、こんなに近くにあられるのは何故なんですか?! しかも逆さまで、
僕 「ギャーッイタいイタいイタい!」
なんか髪の毛を雑草の
アリ「こら
蓬莱「ホラホラホラーッ!」
僕 「分かったってば、ごめんってば、すぐどくってば」
またむしり取りに来たから飛び起きてみればやっぱりでした。そこには大の字で横になっている蓬莱が。でもその小さな体の中央からつま先にかけてベコリと
僕 「ごめんね、重かったよね、
アリ「くすくす、平気ですよ。空気を入れたら元通りになりますから。蓬莱、優希さんがここに運ばれた時に
僕 「そうだったんですか、蓬莱ありがとう」
蓬莱「ホライッ!」
アリ「もー…、今のは気にしないで下さいね。『気まぐれだ』とか言ってましたけど、本当はそうではなくて——」
アリスさん、みなまで言わなくてもノープロブレムです。人差し指をビシッと
僕 「あ、はい。大丈夫です」
あと蓬莱が口が悪くても根は思いやりのある子だってこと、充分知ってますから。蓬莱だけじゃなくて
魔理「おい優希、もういいから続き早くだze☆」
何がでしょうか? 続きとは何のことでしょうか? キラッキラッにお目々を光らせて、白い歯を
分かりません、この熱い
てゐ「まさか覚えてないウサ? ネコミミがどーとか、存在があーだとか大声で
だああああさいッッッあく、最悪です、コンチクショーです。バカバカバカバカバカあああッ! 魔理沙さんにてゐさん、何てことをしてくれやがったんですか! 忘れていたのに、このまま流れに
てゐ「おまけにキュリンキュリン? 気持ち悪いウサ」
ぬおおおぉ……もうガッツリ思い出してますってば、これ以上傷口を広げないで下さいってば。オワタ…、もうオワタ…、こんな事になるなら目を覚ますんじゃなかった。そのまま朝まで寝ていれば……ううん、もういっそのこと
魔理「んでな、アリスがなんかあるんだってよ」
マズイ、それ絶対マズイやつです。アリスさん怒ってるんです。
アリ「わたしはなにも……」
魔理「前々から言ってるけどなー、思ってることは口にしないと伝わらないんだze★? 特に優希みたいなヤツにはな」
だとしたらこうしてはいられません。ちゃんと正座して、反省の姿勢を見せて、それで深く深ーーーっく頭を下げて心からの謝罪を——
僕 「ふぇい?!」
き、きた。謝らなきゃいけないって分かっているのに、いざその時が来ると全身が
ホント僕、なにやってるんだろ。ダメダメだ。人に迷惑をかけることしかできないんですから。アリスさんごめんなさい。ホントにごめんなさい。毎度毎度、いつもいつも本当に——
僕 「へ?」
気のせいでしょうか? 空耳でしょうか?
って、なんで僕が感謝されてるんですか? ということはですよ? やっぱりさっきのは聞き間違いとかじゃなくて「うれしかった」って言われたんですか?!
何がでぃすか? キュリンキュリンがでぃすか? ネコミミがでぃすか? それとも——
上海と蓬莱のこと? あっ、はい。そのように言ったと思います。
僕 「いえいえそんなそんな、僕は事実を話しただけで……」
ですよねー。ぐらいですもんねー。僕が感謝されるようなことをしたのって。考えるまでもないですよねー…。けど助かりました。他については話題に出していませんし、もしかしたら特に気にされてはいない——
僕 「え゛ッ?!」
で・す・よ・ね。そんなはずがありませんよね。歯切れが悪い言い方でしたけど「アレはどういうこと?」ってことですよね? どうしよう…。ウソを
僕 「そ、それは……」
「おはよう」を言うことも、「いってきます」を言うことも、「ただいま」を言うこともなくなる。やる気を出させてくれる「いってらっしゃい」だって、疲れを吹き飛ばしてくれる「おかえりなさい」だって、明日を楽しみにさせてくれる「おやすみなさい」だってなくなる。
僕 「つ、つまり……」
アリスさんがいて、蓬莱と上海がいて、魔理沙さんがいて。僕のつまらない話を聞いてくれて、笑い話に変えてくれて、それでみんなが笑顔になって。そんな楽しくて温かくて心安らぐ場所が、ありのままでいいって思わせてくれる場所が、僕がいてもいいって思わせてくれた場所がなくなる。なくなっちゃうんだ。本当のことを伝えただけで、その一瞬で何もかも消えてなくなるんだ。
僕 「ィャ……」
イヤだ、イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ。そんなの絶対にイヤだ。だったら伝わらなくていい、これ以上の幸せなんて望まない、僕は今のままが——
アリ「違うんですよね?」
そうなんです。そんなつもりじゃなかったんです。僕は萃香さんと大鬼さんを注意しようとしただけであって——
アリ「そんなつもりでは無かったんですよね? 注意しようとしただけなんですよね? 平気ですよ、全部分かってますから」
僕は
アリ「だからアレは違うんですよね? 本心ではないんですよね? だって私……」
最低だ。
アリ「違うから。そんなんじゃないから……」
自分のことしか考えられない最低のクズだ。
アリ「
守るって言った。守ってみせるって
アリ「かわいくなんて……」
僕をじゃないでしょ? 僕が守りたかったのは……
アリ「萃香が言った通り私は……」
スカートを握りしめる拳に視線を落とす——
僕 「アリスさん!」
彼女の笑顔だったんじゃないの? なにやってんの?
僕 「そんことないです。アリスさんはカワイイですッ。笑った時なんて特に! すごく! 本当に! それに……だって、だって!」
胃酸、グルグルです。血流、エゲツないです。心臓、爆発寸前です。ちゃんと言いたいのに、ちゃんと伝えたいのに、アリスさんに自信を持って欲しいのに、僕ときたらダメダメでヘタレで豆腐メンタルなもんで、
僕 「ぼぼぼきゅぼぼぼごふはぼくは!」
結果案の定こんなんですから…。だから叫び続けます。彼女に届くまで。何度も何度もぶつかって——
??「ピーンポーンパーンポーン」
僕 「って、へ?」
この音というか声って……
??「えー、会場の皆様にお知らせでーす」
海斗君だよね? この聞き慣れた軽い口調、絶対にそうだよね? まさにのタイミングで何? おかげでなんか色々と
??「これより
そんでまた何やろうとしてんの!? 霊夢さんとの時もそうだったけど、今日どんだけ仕込んで来てるの?
海斗「業務連絡ぅ、業務連絡ぅ〜。みょーん、打ち合わせすっからステージ裏に来て欲しいぜ」
あ、コレは思い付きだったぽい。あと海斗君、妖夢さんにその呼び方は……ほら怒られた。でもさ、なんかさ、崩してくれたおかげでさ——
僕 「アリスさん」
ベストコンディションで言えそうだよ。
僕 「僕はさっきの人形劇に感動しました。あんなに素晴らしいものを見たことないです。夢でも復習できるように目と心にしっかりと書き記しました。アリスさんがくれた魔法の時間を
海斗君、言えたよ。
それはそれとして、周囲からドッと上がった深いため息は何? というかいつの間にこんなに集まってたの?! もしかしてずっと見られてました?!
アリ「よかったー…」
僕 「よかった?」
アリ「え? えっと、実はさっきの人形劇で失敗を……人形の配置が1cmズレちゃって……」
アリスさん、それ失敗って言いません。誤差です。
アリ「いつもはこんなことないのに…。優希さんに見せる初めての人形劇だったから落ち込んでいたんです。
僕 「励ましなんかではないですよ。心からそう思ったんですよ。すごいって感動が止まらなかったんですよ」
アリ「そんなそんな、それは言い過ぎですって」
僕 「いえいえ、ホントにホントに」
アリ「優希さんは優しいですね」
僕 「いや、あの、そんなことは……」
アリ「その優しさが心地良くて、安心できて、つい甘えてしまいます」
僕 「あ、はい。ありがとうございます」
アリ「少し
僕 「ゔっ……」
この日が終わる頃、何かが変わってる。そんな気がします。それで……
僕 「じゃあ一つわがままを聞いてくれますか?」
この日が終わって朝を迎えた頃、僕はまた新たな一歩を
僕 「アリスさんの隣で海斗君のショーを見たいです」
だって……
てゐ「何これウサ」
魔理「いいんだよコレで。あの二人にしてはよくやった方だze☆」
てゐ「キモ男のこと、ずいぶんと知ったような口ぶりウサね」
魔理「まあな、同じ
てゐ「ふーん、だったら面倒なことにならなければいいウサけどね」
魔理「ze★?」
てゐ「まっ、それでも私には関係のない話ウサ」
魔理「あ、おい」
てゐ「また面白いものがあったら呼ぶウサ」
魔理「なんだよ、てゐのヤツ」