東方迷子伝   作:GA王

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九分咲き:妖夢さん、お付き合い頂いたところ申し訳ありませんけど、苦手を克服する前にどうにかなりそうです。

 アリスさんは僕の今世紀最大のわがままを笑顔で聞き入れてくれました。

 

妖夢「上段の構え」

 

 それからアリスさんと並んで歩き始めて間もなく、突如(とつじょ)尾骨(びこつ)激痛(げきつう)が走ったんです。(あわ)てて()り向くとそこには……片足を上げて立っておられる魔理沙さんが。薄々「じゃないか」って予想していましたから、「ほらやっぱりね」くらいにしか思わなかったんですけど、不可解(ふかかい)なことにそれだけだったんです。何か言われるわけでもなく、そのままイタズラに笑いながらスタスタ先に行っちゃったんです。

 

妖夢「上下素振(すぶ)り、始めッ」

 

 そんな魔理沙さんの後を追うようにして戻ってみると、顔が少し赤くなったレミリアさんがエレガントに(むか)えてくれました。「もうお身体はよくて?」って。咲夜さんもメイドさんもフランさんも心配してくれていたみたいで、特にフランさんからは「フランが(こわ)す前に壊れちゃダメだからね」って念を押されました。『壊す』とか言われましたけど、それが本気じゃないってことくらい知ってます。フランさんなりの軽いジョークなんです、きっと。それよりも僕、フランさんの私物になりかけてる気がしてまして、そっちの方が心配です。

 

妖夢「一つ、二つ、三つ——」

 

 でもみんながみんな心配してくれていたわけではなくて、パチュリーさんは無言で読書をされていましたし、美鈴さんにいたってはグーグーと…。「毎日の門番でお疲れなのかな?」と思ったんですけど、話を聞いてみるとそれがデフォルトなんだとか。起きている時間よりも眠っている時間の方が長いらしいです。しかもそれをいい事に、ここぞと不法侵入(ふほうしんにゅう)(はか)不届(ふとど)き者がいるそうで、こっそり紅魔館に忍び込んではパチュリーさんの貴重な本を無断で()()()()()()()のだとか。

 

妖夢「ヤメッ!」

 

 それが誰かまでは教えてくれませんでしたけど、目星は付いてます。片付けに行った時のこととか、初めて美鈴さんと会ったときのこととか、何よりレミリアさんと咲夜さんの冷たい視線が全てを物語っていました。

 

妖夢「早素振り、始めッ」

 

 その泥棒(どろぼう)さんが、僕が気を失ってる間の出来事を教えてくれました。あの後、プリズムリバー姉妹さん達が演奏をされていたそうです。僕も()いてみたかったです。だからリクエストをお願いしようと思ったんですけど、今日は(あきら)めるしかなさそうです。なぜかって? それは……

 

リリ「ふんっ」

メル「ふーんっ」

ルナ「ふーんだっ」

 

 ただいま姉妹ケンカ中なんですもん。互いに背中向けて意地の張り合いをしてるんですもん。第三者が立ち入るスキがないんですもん。

 話によると演奏の最中にハプニングがあったそうで、リリカさんが指を(すべ)らせて誤った鍵盤(けんばん)を押してしまったのだとか。それだけならまだしも、メルランさんのトランペットから音が出なくなったり、ルナサさんが()くバイオリンから身の毛もよだつ異音が放たれたそうな…。

 そういった経緯もありまして、いまだにギスギスした感じなんだとか。

 

妖夢「()めッ」

 

 そんな重い空気を()ち切ろうとしてなのか、急遽(きゅうきょ)始まったのが第五演目、飛び入り参加の海斗君と妖夢さんによる『剣道』です。とはいっても試合のように戦うことはしません。こちらを正面に二人並んで妖夢さんは長い刀を、海斗君は短い刀を(にぎ)って()け声と共に素振りを披露(ひろう)してくれています。だってアレ真剣ですから、危ないですから、下手したら大ケガどころじゃ済みませんから。だからか海斗君の表情も(めずら)しく真剣です。……ごめんなさい、でも冗談(じょうだん)抜きに真剣(マジ)なんです。

 

妖夢「以上、礼ッ!」

 

 あ、終わっちゃった。海斗君が上手いのかは分からなかったけど、これだけはハッキリしてます。妖夢さんハンパねぇです。ただの素振りのはずなのに見惚(みと)れてしまいました。姿勢を(りん)と正していて、太刀筋(たちすじ)が直線を描いていて、スパッスパッと空気を一刀両断していたんです。きっと剣道の有段者なんだと思います。

 

海斗「では最後に皆様、ご唱和(しょうわ)下さい」

妖夢「?」

 

 そして今現在の僕のご報告させて頂きます。はい、失敗しました。痛恨(つうこん)の大失敗をしでかしました。確かに僕はアリスさんに言いました「(となり)で」って。でも僕、すみっこ族なもんで…、元々の席がそこだったもんで…、それでアリスさんがお隣なもんで…、つまり何が言いたいかというと……

 

海斗「妖怪が(きた)えたこの楼観剣(ろうかんけん)に〜」

妖夢「!」

 

 ステージは左、アリスさんが右なもんで、海斗君達を見ながらではアリスさんを(おが)めねぇんです。これじゃあ思わず目が合って「あっ…///」とか()ずかしがるとも出来ねぇんです。完全にしでかしました。こんな事なら「隣で」とは言わず、「正面で」と言うべきでした。でもでも「正面でご一緒したいです」なんて不自然ですし、うーん…。

 

海斗「()れぬものなど〜」

 

 で、さっきから海斗君なにを(さけ)んでるの? 終わったんじゃなかったの? って、妖夢さんの顔が怖いんですけどーッ! ザックザック海斗君にメンチ切っておりまするー!

 

  『斬れぬものなど〜?』

 

 今度は魔理沙さんと霊夢さんまでですか?! そいつはマズイですって、ターゲットがこっちに……っていったそばからー!

 

プリ『斬れぬものなど〜?』

 

 おまけにプリズムリバーご姉妹さんまで!? 喧嘩(けんか)されてたんじゃなかったんですか?

 

  『斬れぬものなど〜?』

 

 ついにはみなさんもですか!? なんなのこの奇妙(きみょう)な一体感…。

 

 

妖夢「……ぁ」

 

 ヤバイってヤバイってヤバイって。妖夢さんがワナワナしてまする、目が血走ってまする。振りかざした刀より(するど)い視線が狩人(かりゅうど)のそれでする。今すぐに止めないと大噴火(だいふんか)して、そこら一体に生温かいマグマのしぶきが——

 

妖夢「あんまり無い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか……静かです。

 よく分からなかったけど……静かです。

 でも一つ分かることがあります……静かです。

 妖夢さんが決め台詞(ぜりふ)的なものを発した途端(とたん)静寂(せいじゃく)(つつ)まれました。あ、妖夢さんがorzに…。結局これ何だったの? 海斗君、僕分からないから後で教えてね。だから——

 

海斗「どーもあざしたー」

妖夢「カ・イ・ト・サ・ン?」

海斗「おう?」

妖夢「初めからこれが(ねら)いだったんですね!」

 

 だから今は逃げてー、すっごい逃げてー、全速力でめっちゃ逃げてー。

 

妖夢「今日という今日は許しません!!」

海斗「ヤッバ、逃げるが勝ちだぜ!」

 

 さあ始まりました海斗選手と妖夢選手の鬼ごっこ。レースは最初からクライマックスです。舞台を飛び出してスタートダッシュを決める海斗選手、そのまま速度を落とすことなく神社の裏へと続く第一コーナーを華麗(かれい)なコーナリングで…、

 

にと「やっといなくなった」

妹紅「やっちまえ、ざまーみろだ!」

ナズ「ふっ、いい気味」

輝夜「派手に血肉をばらまいて不様(ぶざま)に散りなさい」

星 「あなたのことは忘れません、南無三(なむさん)

 

 おっとここで妖夢選手が(もう)スピードで追い上げて来ました。でも海斗選手の姿はもう見えません。火花を散らす壮絶(そうぜつ)なレースの行方は神社の裏側へと持ち越され……

 

妖夢「『断命剣(だんめいけん)冥想斬(めいそうざん)』!!」

 

 クラッシュぅううう!? 

 でもきっと海斗君の事だからコレも打ち合わせ通りなんだろうけどね。妖夢さん、迫真(はくしん)の名演技でした。お疲れさまでした。

 そして海斗君はやっぱりすごいです。尊敬しちゃいます。だって本日一番の笑い声が上がっているんですから。あのプリズムリバーご姉妹さん達なんて、あんなにツンケンしていたのに、顔すら合わせていなかったのに、すっかり笑顔を交わしているんですから。僕にはとてもとても…。

 そんな海斗君のことがかなりお気に召したのでしょうか? 先程から「あひゃひゃひゃ」と爆笑されている方がいるようで…、すぐそこに気配を感じるわけで…、ただそれが誰だか分からなくて…。でもなんとなーく気が付いてしまっているわけでして…、なるべーく気付いていないようにしているわけでして…、どうか声がかからないようにと祈っているわけでして……

 

??「よー、目が覚めたって聞いてねぇ。アンタに話があんよ」

 

 来ちゃったー、来られちゃったー、(まい)られちゃったー。「今会ったら気不味(きまず)いお方ランキング」堂々の第一位の萃香さんが。話があるって言われてますけど、何のことだか簡単に予測できます。だってそれ以外に萃香さんを怒らせることなんて思い当たりませんから。キュリンキュリンの件で僕は鬼を怒らせたんだああああッ。

 

僕 「ささささっきはすすす——」

萃香「(だま)りなッ」

 

 むぐぅ…、()っぺた(つぶ)れるぅ…、歯が吹き飛ぶぅ…、(あご)が砕けるぅ…。片手で口を(ふさ)がれただけなのに、子供みたいな体格なのに、握力(あくりょく)常識(じょうしき)(はず)れです。顔が爆砕(ばくさい)しそうです。

 

萃香「(おとこ)なら切った啖呵(たんか)を簡単に曲げるんじゃないよ!」

僕 「ばびぃッ、ずびばぜん」

萃香「ったくビビリやがって。私があんたに何をしたっていうのさ。それに謝って欲しくて来たんじゃないってぇの」

 

 いや、あの、現在進行形でその()()をされてるんですけど…。とはいえ謝ることが的外(まとはず)れだと(おっしゃ)るのなら、何が目的なんですか? 話っていったい……

 

萃香「お礼!」

僕 「ふぇ?」

 

 僕にですか? 人違いでは? だって僕、萃香さんからお礼を言われるようなことしてませんよ? えっ、霊夢さんから聞いた?

 

萃香「ケーキ、ありがとう」

 

 まただ。

 

萃香「言いたかったことはそんだけ、じゃあね」

 

 ろくに知りもしないくせに、ろくに話もしたことないくせに、種族とか見た目とか(うわさ)とかだけで勝手に恐ろしい人だと決め付けていた。あの時だって僕が誤解していなければ、大騒ぎしていなければ、フランさんは(しか)られずに済んだんだ。僕がフランさんを知ることから逃げ出していければ…。

 

僕 「失礼しましたッ」

 

 僕はつくづくダメダメな人間です。反省したはずなのに同じ(あやま)ちを(おか)すなんて……

 

僕 「それと――」

 

しかも二つも。分かってますよ魔理沙さん、そのしかめっ面の意味、グラスを(にぎ)る指先に込められた想いを。

 

僕 「どうもありがとうございました!」

 

 僕は萃香さんに(すく)われていたんですよね、そうなんですよね? 萃香さんに口を(ふう)じられていなかったら、きっと僕はペコペコ頭を下げながら謝り続けて、また勢いで「言いすぎた」とか「そんなことは思ってない」とか最悪「ウソなんです」なんて言ってしまって、それで今度こそ本当にアリスさんを…。

 僕が伝えたかったありがとうの意味、頭の後ろで腕を組んで去って行く萃香さんに、ちゃんと届いてくれたみたいです。だって手を()って(こた)えてくれましたから。「気にすんな」って背中で語ってくれましたから。でも萃香さん、

 

僕 「待ってください!」

 

 それじゃあダメなんです。それだけじゃあダメなんです。それだけじゃあ僕は何も変わらないと思うんです!

 

僕 「お()びとお礼に出来ることであれば言って下さい!」

 

 これは僕なりのケジメなんです、仁義(じんぎ)なんです、漢道(おとこみち)なんです! それなのに霊夢さん何で(あわ)れな目を向けるんですか? 魔理沙さん「バカ」って(ひど)くないですか? 咲夜さんまでため息つくことなくないですか? って、萃香さんの動きがピタリと止まった…だと…。

 

萃香「ふ〜ん、だったらぁ〜」

 

 背筋に走る電流、額から(にじ)み出る汗、(あら)ぶる心臓。分かります、すごい分かります、全身全霊で超分かります。

 

萃香「お願いし・よ・う・か・な〜?」

 

 イヤな予感しかしないって。

 

僕 「か、可能な範囲であれば……」

萃香「なーに、あそこでなんか面白いものやってみせてくれればいいよ。さっきのアイツらみたいに」

僕 「そそそそれは……」

萃香「今言ったよね、なんでもするって言ったよね?」

僕 「いや、あの、なんでもとは……」

萃香「()と約束を交わしたよね?」

 

 えー…、こういう時だけそこを強調するってなんかズルくありません? やっぱり鬼です。なんて言っても「鬼だよ」って一蹴(いっしゅう)されるだけでしょうし、ここは本当のことを伝えて分かって頂くのが得策(とくさく)

 大丈夫。だって萃香さん、さっき助けてくれたじゃあないですか。だから本当はとてもいい人なんです、きっと。『泣いた赤鬼』っていう昔話だってあるんだから鬼は情に熱い方々なんです、きっと。だから事情を話せば分かってくれるはずなんです、きっと。

 

僕 「えっと、えっと、僕人前に出るのだけはどうしても抵抗があってですね、というのも——」

萃香「いいから行ってこい!」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 彼のもくろみは失敗に終わった。胸ぐらを(つか)まれたと認識する間もなく、ロケットの(ごと)く発射された彼は瞬間的に予感していた。(おとず)れるであろう最悪の未来を。それは予感ではなく予知となってしまうのだが…、

 

アリ「ゆ、優希さん?!」

萃香「ちょいと邪魔(じゃま)だったんだねぇ」

 

 これはそれまでの間に起きた彼女達の小さなドラマである。

 

アリ「じゃまって——」

萃香「あんたってさ~」

 

 彼女は彼女が苦手だった。自身と思考が、性格が、内なる全てが正反対の彼女が。それ(ゆえ)に会話という会話が彼女達の間で成立したことは、これまでに一度たりともなかった。それどころか互いに手の届く範囲にいたことなどあったかどうか。そんな彼女達の関係を表すのなら、顔見知りならぬ『影見知り』。シルエットこそ把握(はあく)しているものの他は…、といった間柄(あいだがら)。それがこの日——

 

萃香「目、青かったんだ」

アリ「えっ、あっ、うん……」

萃香「おまけにまあまあのべっぴんさんときたもんだ」

アリ「そんなことは……」

萃香「まっ、私ほどじゃあないけどねぇ」

アリ「うん……」

萃香「まーたそうやって顔隠すぅ、だーから今まで気付けなかったんだってぇの」

アリ「だって、だって…、あなたのこと…、よく知らないから……」

萃香「はあ〜? だから顔合わせてくんないの? 私をずっと()けてたのも同じ理由? 知らないなら知りたいとか思わないの?」

アリ「ひ、ひひ人見知りで……」

萃香「けど今呼んでくれたよねぇ、名前でさー」

アリ「それは、あの、えっと……」

 

 彼女は彼女に初めて胸の内を明かしていた。

 

萃香「だあああああッ! もうムリ、もう限ッ界、ホンッッットなに?! うじうじゴニョゴニョおどおどしちゃってさ、言いたいことがあるならハッキリ言いな!」

アリ「もうほっといてよ!」

 

 遠慮(えんりょ)など一切ない真の想いで。

 だが忘れてはいけない。どれだけ拒絶しようが、境界線を引こうが、強固な外壁(がいへき)(きず)こうが、一方の彼女は……

 

萃香「ぷふっ、『ほっといてよ』って、くくく」

 

 鬼である。他人の都合などおかまいなし、気の(おもむ)くまま流されて、

 

アリ「な、なにがおかしいの!」

萃香「いやぁ、怒ってもかわいらしいな〜ってね」

 

 ウソを言わず(おのれ)に正直な種族である。

 

アリ「なななななにを——」

萃香「けど私の方が数段かわいい」ドヤァ

 

 彼女は彼女に初めて笑ってみせた。イタズラを(ふく)んだ笑みで、そしてため息を含んだ笑みで。

 

アリ「あっそ」

 

 内なる全てが真逆、加えて言葉のキャッチボールが成功したのが今回初。しかしクスリとこぼれたタイミングは(はか)ったかのようにピッタリ。なぜなら……

 

萃香「さっきはわるかったよ、影口なんて言ってさ」

アリ「それはもうあまり気にしては——」

萃香「それにからかってすまなかったね、悪気はないんだ。なんかツイね」

アリ「うん……」

萃香「で、話してみて分かったよ。やっぱりアンタ苦手」

アリ「あっそ!」

 

 なぜなら彼女達は女の子同士なのだから。

 

萃香「けどキライじゃない」

アリ「あっ、うん…。私もそこまでじゃない……かも」

萃香「ってことでこれからもよろしく〜。えっとー…」

 

 かくして()み合うことのなかった彼女達の歯車は、()しくも豆腐メンタルの彼が起こした『キュリンキュリンの件』によって動き始めたのである。

 

萃香「誰だっけ?」

アリ「アリス・マーガトロイド!」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 手拍子(てびょうし)がテンポを(きざ)(たび)に押し(つぶ)されそうになる。

 

魔理「マズイことになったze★」

 

 あらゆる方角から飛ばされる視線が全身に()()さって身動きが取れない。

 

??「戻ってみれば……これどういう状況?」

??「彼はたしかー…海斗ちゃんのお友達?」

 

 指差されて(ののし)られて(さげす)まされてきた辛い記憶に支配されて息ができない。

 

さと「こいし手筈(てはず)通りにお願い」

 

 ()えない僕には、つまらない僕には、身の程を知らない僕には何もない。人に見せられる特技も、自慢(じまん)できる取り()も、この場に立っていられる度胸でさえも。

 

霊夢「自分でまいた種なんだから自分でどうにかしなさいよー」

 

 霊夢さんが言われた通りなのは百も千も万も承知なんです。けど手足の痙攣(けいれん)(おさ)まらないんです。もう身体中が……心の奥底から(ふる)えて声すら出せないんです。苦しい…、苦しぃ…、苦し…。

 

アリ「なにするのはなして!」

萃香「まあまあ落ち着きたまえよアリス。せっかく漢を見せようとしてくれてるんだからさ〜」

アリ「でも私……」

 

 これ以上はもうム…。視界が…、また意識が…。助けて…、誰か助けて…、助けて下さ——

 

アリ「見てられない!」

 

 ぃいいいいいッ!?

 あ、危なかったー…。気付けたから良かったけど、少しでも遅れていたらコレ、顔面にめり込んで鼻からドバーって()き出してましたよ。どうしてこんな事されるんですか?!

 

??「おっ、反応は(おとろ)えてないみたいですね」

 

 美鈴さん!

 

美鈴「久しぶりに組手をしましょうか」

 


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