東方迷子伝   作:GA王

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ピ~ン ポ~ン パ~ン ポ~ン♪


地霊殿からお越しのぉ、
こいし様からぁ、ご連絡です。
ではどうぞぉ。


こいし「見えてもナイショだよ♪」




九分半咲き:フランさん、大変長らくお待たせしまったところ申し訳ありませんけど、初体験なところにチート能力で遊ばれるズラです_※挿絵有

 臆病(おくびょう)で弱気で意気地(いくじ)なし。

 

優希「ひぃいいいッ」

 

 人見知り、引っこみ思案(じあん)、運動音痴(おんち)

 

優希「(怖い怖い怖ぃいいい)」

 

 短所を列挙(れっきょ)すればキリがない。キャーキャー言われるようなイケメンでもなければ、カワイイと言われるようなベビーフェイスでもない。際立った特徴は無く、パッとせず、ランク付けは下の中。

 

優希「(イタいイタいイタぃいいい)」

 

 得意なことは電子工作の半田付け、自慢できることは最近覚えた料理くらい。だがどれも人並み程度、特別抜きに出たものではない。他には何もない。そう彼自身が悟っていた。

 

優希「(ギブですギブですギブですぅううう)」

 

 傾き始めた日差しは、さながら舞台裏にいた彼を主役の座へと導くスポットライト。哀れな手拍子に誘われて始まった第六演目、果たしてその大役を演じきる事ができるのか。こうして彼と彼のコーチである紅美鈴による『演武(えんぶ)』の幕が上がったのである。

 

優希「((しび)れてる、痺れてますから、痺れてるってぇえええ)」

 

 右から飛来(ひらい)する拳を右腕で(はら)()け、左から振り下ろされる手刀を左手で受け止め、突き上げる蹴りを体をのけ()ってかわす。

 それは彼とコーチの間で幾度(いくど)と繰り返して来た内容の復習&抜き打ちテスト、そして時折り加えられるアドリブはその発展形、コーチが彼をさらなる高みへと導くものだった。

 

優希「(ムリムリムリぃいいい)」

 

 コーチの先導に教わった形式で応じていく彼、その様は演じているというよりも演じさせられているといった具合。それはまるで糸で操られる人形の様でもある。しかしその程度は——

 

あゆ「ほえ〜」

海斗「優希のやつ……」

先生「ふむ、なかなかのものですね」

 

 常軌(じょうき)(いっ)していた。終始一方的でこそあるが、その速さと的確な動きは常人の(はる)か上、動体視力が並の者からすれば何が起きているのか判別出来ないまでに達していた。

 

優希「(いっぱいいっぱいですってぇえええ)」

 

 (まばた)きを禁じられた者多数、開いた口が(ふさ)がらない者大多数、度肝を抜かれた者もっと大多数。そんな中、当の本人達は、

 

優希「(これモロに当たったら軽いケガじゃ済まないやつですって!)」

 

 方や余裕ゼロ。常にギリギリのところで防ぐのがやっと、カウンターや反撃など考える猶予(ゆうよ)などない。あまつさえ気色の悪い悲鳴を上げる始末である。しかしそれでも——

 

メイ「美鈴さん手加減されてます?」

パチュ「あの顔は本気の時」

レミ「じゃあ疲れてるのかしら?」

霊夢「ずっと寝てたじゃない」

 

 息を切らせ玉の汗を流しているのは武の達人の方、なぜなら今彼女は…。

 彼女の算段はこうだった。ウォーミングアップと様子見を兼ねて、序盤(じょばん)は軽めの運動となる程度に。そこから徐々に攻撃のペースを上げていき、頃合いで(すき)を生み出し、決まり手となる一発をヒット直前で止め「まだまだですね」と終わる予定だったのだ。

 だがそれがどうだ。ふたを開けてみれば放てども放てども、見抜かれ、見切られ、反応される。そこに鼻水は()らせど汗を流さない彼に攻撃の手は激しさを増し、気付けば完全本気の目にも止まらぬ(もう)ラッシュに。

 

優希「(ムリムリムリ、ギブギブギブゥ!)」

 

 されども隙を作るには程遠く、体力と時間を(つい)やすばかり。もう(しま)いにすればいいものの、敗北を認めたようで武道家の意地として引くに引けず。

 歯を食いしばり(まゆ)をひそめる武の達人、残された技は残りわずか。費やした時間も体力もいっぱいいっぱい。放たれる最終手段は、彼女が彼を認めたも同意となる一打。

 

美鈴「『華符(かふ):彩光蓮華拳(さいこうれんげしょう)』」

 

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 助かりました。美鈴さんの拳が輝き出した時は爆死する僕が脳裏をかすめましたよ。こうして振り返れるのも、時を止めて参上してくれた咲夜さんのおかげです。「もうおしまいにしなさい」って。その時の咲夜さん、眉を釣り上げてかなり怖かったです。

 なのに美鈴さんときたら「いやははは、失礼しました。つい夢中になってしまいまして」って誤魔化してましたけど…。もう()()じゃありませんよ、()()じゃ。その()()で爆死寸前だったですから。プンプンですよ。

 とはいえ、何もできずにガクブルして突っ立てただけの僕を救ってくれた美鈴さんには頭が上がりません。おまけに僕がギリギリ対応できる程度で手加減してくれるサービス付きです。じゃないと僕とっくに昇天してましたから…、美鈴さん達人ですから…、かないっこありませんから…。ステージの上で何度も何度も何度も頭下げてお礼しました。

 でも美鈴さんはそんな僕に「それよりも」って見せてくれたんです。

 

僕 「もーいーかーい?」

 

 目の前に広がっていた絶景を。たくさんの方が喜んでくれて、盛大な拍手(はくしゅ)をもらえて、数々の称賛(しょうさん)の声を送られて。それがまた嬉しくて、照れくさくて、心地良くて、「またやってもいいかも」なんて調子に乗る自分がいたりして。

 そこにジンワリと内側から込み上げて来たんです。疲労感が、過酷な運動でしたから。達成感が、やりきりましたから。解放感が、乗り越えましたから。おかげで立っていられなくなってしまいまして、ヘナヘナと腰から崩れ落ちてしまいまして、情けない姿を(さら)すことになってしまいまして…。

 もうその時点で充分すぎだったんです。それ以上はムリだったんです。なのに美鈴さんったら——

 

  『まーだーだよ』

 

 「胸を張って下さい」なんて容赦(ようしゃ)のないこと言うもんだから…。ポタリ、ポタリと二滴程こぼしちゃいまして…………ごめんなさい、話盛りました。

 

僕 「いーち、にーい、さーん」

 

 本当は二滴どころじゃないです。泣き虫ですみません、男の子なのに…。今だってこうして思い出しただけで目頭が…、オニで良かったです。こんなところ見られたら「また泣いてんの?」って笑われちゃいますから。

 

僕 「しーい、ごーお、ろーく」

 

 かくして僕は萃香さんから課せられたミッションを無事にコンプリートさせ、温かな拍手に送られながら舞台を後にしたのです。そして――――

 

 

僕 「た、ただいま……です」

萃香「いや〜満足満足、いいもん見してもらったよぉ」

僕 「あ、ありがとうございます」

萃香「アリスのやつアンタがなかなか始めないもんだからって、心配して割り込もうとしてたんだぞぉ?」

アリ「い、言わなくてもいいじゃない!」

僕 「すみません不甲斐(ふがい)なくて…、ご心配をおかけして…、ホントすみません……」

アリ「いえ、そういうつもりでは——」

僕 「それと…、ありがとうございます」

アリ「私はなにも……」

萃香「門番に先越されたもんねぇ。んで、アリスはどうだったの? 感想は? カッコよかった、でいいのかな?」

僕 「か、かかかかっこぐはふッ!?」

アリ「そ、そそそそれは……」

僕 「(どどどどうしよう、バクバクが止まらない。もしアリスさんから直接言われたら、そんなご褒美(ほうび)がもらえたら、そう考えただけで僕ぅ……)」

??「ゆーッきーッ!」

僕 「(グハッ! これフランさん?! ()まってます締まってます、首締まってますって!)」

フラ「フラン見てたよ、すごいカッコよかったよ」

僕 「あ゛、あ゛り゛が……ま゛ず」

萃香「あーあ、ま〜た先越されちゃったよぉ?」

アリ「ゆ、優希さん。あの——」

フラ「ご用終わったよね何も予定ないよね他に誰とも話さないよね話させないからねフランずっとガマンしてたんだよイイ子に待ってたんだよ褒めてくれてもいいんだよ頭なでてくれてもいいんだよ遊んでくれるんでしょ遊んでくれなきゃヤダよ遊んでくれなきゃ壊すよガマンできないよガマンしないよイヤって言っても連れていくからね早くあっちいくよ」

 

 

――――ってなことがありまして、背後から首をハグされて耳元で句読点なしの高速フルオート連射で脳を蜂の巣にされるもんで…。拒否権無かったもんで…、途中聞き捨てならないワードが出てたもんで…、いよいよその時が来ちゃったもんで…。引きずられながら連行された次第です。

 

僕 「しーち、はーち、きゅーう」

 

 フランさんのご要望は例の『弾幕ゴッコ』でした。でもそれを聞いた皆さんが「させてたまるか!」って激怒されたんで取り下げられました。その時に『弾幕ゴッコ』が何たるかを学びました。

 もう驚愕(きょうがく)しましたよ。その場でフランさんに抗議(こうぎ)しましたよ。僕、弾幕なんて出せませんから「不公平です、一方的です、じゃなくても危険です」って。それなのにフランさんは「バレちゃった?」ってテヘペロなんです。確信犯です。フランさん、怖いです。

 それで誰もが知っている平和な遊びを提案したところ「せっかくなら多い方がいい」となりまして、参加者を(つの)ったところ意外や意外に集まりまして、なんやかんやでやんややんやありまして、最終回です。

 

僕 「じゅー!」

 

 目が、目がぁ〜! ぜんぜん見えない…、お先真っ暗です。またやられた……これもう何度目?

 

僕 「ルーミアこれやめれー、見えないよー」

 

 もう「わはは」じゃないよ…、目隠しとか論外だから。やり直しね。

 

僕 「もういいかい?」

  『もーいーよ』

 

 視界良好、今度こそ! おっとこれは……

 

 

【挿絵表示】

 

 

 羽ぇ……やっぱりこの競技、フランさんと大ちゃんには不利くない?

 でもフランさんさっき鬼やったばかりだからなー…。最初に見つけたら「またフランが最初なの?!」ってなりそうですし…。

 だからって大ちゃんはなー…。ただでさえ付き合わされてる感が(いな)めないのに、見つけると「見つかっちゃいましたか」って苦笑いされて敗北感に打ちのめされるんですよねー…。

 ならルーミアだったら、って考えたらホントの意味で負けだもんなー…。バレバレなのにアレで見つからないって信じて疑わないんですもん。見えなければいいってもんじゃないからね? またその黒い球体の中にいるんでしょ?

 そいで傘ぁ…、小傘さんまたちゃっかり参加してるし…。なんで毎度毎度僕がオニの時だけ参加されるんですか? そばに寄っただけで「おどろけー」って自分から出て来るんですよね? それ違いますからね? しかも驚いてあげないと悲しそうな顔されるし…。

 

僕 「ド、ドコカナー?」

 

 出来ればこの四人以外を先に見つけたいです。でも他のメンバーが…。

 まずは不思議ちゃんこと、こころさんです。普通です、平凡です、可もなく不可もなくです。でも見つけられません。いや、見つけてはならないんです、決して。正確には例え見つけても見つけたことにしてはいけないんです、絶対に。

 どういうことかと申しますと、こころさんの隠れる場所が決まって木の上なんです、はい。しかも近くまで寄らないと見つけられない場所を選択されるんです、はい。加えてこころさんのお召し物がヒラヒラのワフワフなんです、はい。

 もうお分かりですよね? だから「みーっけた」=「みーっえた」になってしまうもんで、その時点で人生が()んでしまうんです。Kを失っただけで全てを失ってしまうんです。まさかそれが狙いだったりして…。

 

僕 「コ、コマッタナー」

 

 次にリグルです。比較的見つけやすいです。ただ…、ただなんですよ。アレをもう見たくなくて、手の出しようがなくて、実際どうにもならないんです。

 簡潔に申しますと……虫です、山です、地獄絵図です。ウジャウジャウジャウジャとひしめき合った虫の山です。テレビでたまに見るビックリ人間みたいにその中にいるもんだから、しかも「まだ見つかってない」って認めてくれないもんだから、最初の発見者となるのは不可能なんです。あの大量の虫を払い退ければいいんでしょうけど、()とかクモとかムカデとかGとか…。例えそうじゃなくても虫は苦手なので…。なので(はな)から見つける気ありません。無視です!

 

僕 「ワ、ワカラナイナー」

 

 さらにサニー、ルナチャ、スターです。三人の実力については以前から知ってます。お世辞なしにプロです。ステルス、サイレント、サーチの三拍子が(そろ)ったSSS級です。軍からお呼びがかかりそうです。潜入工作員ならダンボールいらずです。

 そう聞けば「見つけようがない」と思うかもしれませんけど、運が良ければわりと早い段階で見つけられます。ルナチャがよく転ぶもんで、基本三人一緒なもんで、ルナチャを見つけたらだいたいその辺にサニーとスターがいるもんで…。でも今回は運が悪い方みたいです。

 

僕 「ム、ムズカシイナー」

 

 そして極めつけはさとり様の妹様、こいしさんですよ…。不思議ちゃんから仲のいい友達だって紹介されました。今日来たのも「神子(みこ)にも誘われたけど、こいしとはしばらく会ってなかったから断ってこっち来た、エッヘン」って話してくれました。あの神子様を()抜きです。

 で、そのこいしさんですがハッキリ言って無理です。探しようがありません。ターゲットの無意識を操ってそこにいないと認識させるとかお手上げです。しかも降参したらしたで、ずっと真後ろにいたとか……ナメプされてます。

 

 『(むし)を操る程度の能力』

 『光を屈折させる程度の能力』

 『音を消す程度の能力』

 『動く気配を探る程度の能力』

 『無意識を操る程度の能力』

 

 そんなチート能力の方々が参加された無理ゲーです。最初に発見されるのは必然的に限られます。せめてあと一人、チート能力でない方がいてくれたら、それこそチルノが参加してくれていたら…。でもチルノ、てゐさんと妹紅さんとレティさん達に囲まれて難しい顔してるからなー…。やっぱりここは今回で最後だし、どうにかしてナメプのこいしさんをギャフンと言わせたいところだけどなー…。ってあゆみさん?! 顔近ッ!

 

あゆ「なにやってるの〜?」

僕 「か、かくれんぼでおおおオニを……」

あゆ「え〜、いいな〜。私もまぜて〜」

僕 「でも今からじゃ…、探す方でも?」

あゆ「いいよ〜」

僕 「じゃ、じゃあ…。みんなー、あゆみさんも一緒に探すことになったからねー」

あゆ「よろしくね〜」

  『え゛っ!?』

 

 なぜイヤそうだし……そういえばあゆみさんって……

 

僕 「あの、こいしさんって何処にいるか分かりますか?」

あゆ「ん〜?」

 

 そうでしたそうでした、そういう仕様でした。

 

僕 「こここぃすぃさんの場所って……」

あゆ「分かるよ〜」

僕 「どどどどどこに——」

あゆ「ここ〜」

僕 「へい?」

 

 半歩引いてみるとあゆみさんが()()()()()で立っておられました。つまりあゆみさんの言う「ここ」とはまさに腕の中のことで、確保中ということになるんですけど……まさかね。

 

僕 「そこ?」

あゆ「そ〜ここ〜」

 

 ホントに捕獲中だったみたいです。ふふふ、思わず過ぎて笑いが(あふ)れちゃいましたよ。だってこの時を待っていたんですから、待ち望んでいたんですから、首を長くして待ち続けていたんですから!

 

僕 「じゃあ——」

 

 悲願達成(ひがんたっせい)念願成就(ねんがんじょうじゅ)気分爽快(きぶんそうかい)です。あゆみさん、ご協力ありがとうございました。

 

僕 「こいしさん、みーっけた」

 

 いました。あゆみさんの顔の真横に手を伸ばすと、ポフッと丸みを帯びた布の感触があったんです。それが帽子だと悟ったところで、こいしさんがゆっくりと姿を現してくれました。(ふくれ)(つら)で。「ズルイ」と言いわんばかりの表情で。けどそうでもしないと見つけられませんから。

 それからあゆみさんのターンが止まりません。サニー→スター→ルナチャ→不思議ちゃん→ルーミア→小傘さん→大ちゃん→フランさんの順にアレよアレよと。

 なんでもあゆみさんが言うには、意識を集中させるとその人のシルエットがキラキラと輝いて見えるそうです。しかも障害物を透過して。だから隠れていようといなかろうと同じなんだとか。

 無敵です、最強です、チートです。どんなチート能力だろうと、あゆみさんのチート能力の前では無力なんです。無駄なんです、無駄無駄。けど小傘さんにはしっかり驚かされてました。見えてるはずなのにです。なんで?

 そしてただ…、なんですよ。やっぱりただ…、なんですよ。

 ①僕、最初に言いました「一番最後で」って。

 ②あゆみさん、その通りにしてくれました。

 ③だから残りました。

 ④僕、勧めました「降参しましょう」って。

 ⑤あゆみさん、ブレーキが壊れてました。

 結果、

 

??「へへーん、やっぱ私が一番だね」

 

 再開したプリズムリバーさん達の演奏をかき消す断末魔が響き渡りました。あゆみさん、泣いてました。おかげでみんなも集まって来ちゃいまして、たまたま近くにいた僕に容疑の目が向けられまして…。でも事情を話すまでもなく全員が納得&「ギャーッ!」となりまして…。

 リグル、ドヤってるところ悪いけど先に虫達をどうにかして。

 

リグ「はいはい、お前達もういいぞ。散った散った」

 

 かくれんぼのグランドチャンピオンは圧倒的な力を見せつけた『(むし)を操る程度の能力』、最後まで降参するしか術がありませんでした。見つけても見つけたことにならないって、チートじゃなくてただの反則です。今度は禁止にしよ。

 

リグ「で、あゆみ何やってんの?」

僕 「さ、さあー…」

 

 みんな見つけました。なんならあゆみさんが泣き叫んだ時点でゲームは終了しているんです。そのはずなのに——

 

あゆ「あっれ〜? あれれ〜?」

 

 泣き止んだと思ったら何故かまた探し始めるという…。同じ所をぐるぐると回りながら。誰か教えてあげて下さい「もう探さなくていいんだよ」って。

 え、僕? 僕がその役目なんですか? 分かりましたよ行きますって、だからみんなしてそんなに押さないで下さぃいいい。

 

僕 「っとと。えの、あの、その。あゆみさ〜ん、もう終わってますよー。探さなくていいんですよー」

 

 呼びかけてみるも反応なし。しかも今度は手を後ろで組んだまま微動だにせず、ポヤ〜っと一点を見つめ続けて意識が遥か彼方へ行かれているという…。聞こえてないですね。ならもう一度。

 

僕 「あゆみさ〜ん」

あゆ「ん〜? 聞こえてるよ〜。そうなんだけど〜」

 

 聞こえてたなら何か反応して下さいよ! 聞こえてるのに聞き流すとか(ひど)くないですか?! いじけますよ、いじけていいんですか、なんならいじけ倒しますよ?!

 それともコレが珍しいのかな? いやいや、外の世界でも普通にありましたよ、何処の神社にもあるオプションですよ。長年雨風にさらされて、所々に汚れが目立つ古ぼけた石の置物ですよ。

 あ、海斗君ちょうどいいところに。僕だとあゆみさんを正気に戻してあげられなかったから代わりに——って、あゆみさんのこの反応……

 

あゆ「かわい〜〜〜〜!」

 

 飛びつきました、ぎゅーってたまらず抱きつきました、神社の番犬『狛犬(こまいぬ)』に。何というバチ当たりな……って女の子ぅぉおおお!? 大変です、あゆみさんがハグした狛犬の毛が緑系統に、胴体が赤色にみるみる着色されていき、細身の女の子に姿を変えました。これは大変です、驚きです、とんでもねぇです!

 

??「もんげぇええええええええ!!」

 

【挿絵表示】

 

 

 はい、アウトー。それはダメなやつズラ。『ともだち召喚』されるやつズラ。考えなくても分かるズラ、彼女はきっと東方プロジェクトのキャラクターに違いないズラ。東方博士(はかせ)(にい)つぁん、彼女のお名前教えて欲しいズラよ。

 

海斗「え…、だれ?」

 

 海斗君が分からない…だと…。あの海斗君が? 東方プロジェクトを愛してやまない海斗君が……分からない? いやいや、そんなはずないですよ。だってアロハシャツ着てるんですから、ツノがあるんですから、長髪クリンクリンなんですから。あんなに強烈なキャラなんだから。きっとビックリして記憶が一時的に飛んでるだけなんですよ。

 

僕 「またまた御冗談(ごじょうだん)を、ホントは?」

海斗「まったくだぜ。もしかして俺……。あ、幽々子様ーッ!」

 

 

 あ、行っちゃった…。

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