東方迷子伝   作:GA王

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近頃、寒暖差が激しいですね。
皆さん体調には気をつけてください。



プレゼント_※挿絵有

  『ただいまー』

上海「シャンハーイ」

蓬莱「ホーラーイ」

 

 アリスさんの家に帰ると、上海と蓬莱が「待ってました」とでも言うように、飛んで来た。アリスさんの方へ。微笑ましい光景ではあるのだけど、僕へは……

 

上海「シャッ!」

蓬莱「ホラッ!」

 

 と、片手を上げて「よッ!」か「おかッ!」みたいな雑な対応。この温度差……。でも挨拶をしてくれるだけありがたいです。

 

アリ「優希さん、お腹空きましたよね? 今ご飯の用意をしますから」

優希「ありがとうございます」

 

 白いエプロンをしながら、僕のご飯の準備へと取り掛かるアリスさん。 僕はこの姿のアリスさんが好きです。旦那さんのために、美味しい料理を作ってくれる綺麗な奥さん……みたいな。そうなれたらいいな。ちょっとそれっぽい事言ってみようかな?

 

優希「今日のご飯は何ですか?」

アリ「今日はポトフを作りました。それと……」

 

 あー……、いいなぁ、この感じ。さらに2人きり……

 

魔理「魔理沙ちゃんが採ってきたキノコで作ったパイだze☆」

 

 じゃないんだよなぁ……。

 魔理沙さんは家が滅茶苦茶になったあの日から、ずっとアリスさんの家にいます。その事にも一悶着(ひともんちゃく)ございまして――――

 

 それは僕のバイト初日。その日も魔理沙さんに送られ、アリスさんの家に無事に帰還。そして僕がご飯を食べている時だった。魔理沙さんが背もたれに寄り掛かり、ぼんやりと天井を眺めながら突然、

 

魔理「魔理沙ちゃん、やっぱりしばらくアリスの家に泊まる事にしたze☆」

 

 宿泊延長のお知らせ。僕とアリスさん、

 

  『え?』

 

 思わず目が点に。

 

魔理「ダメか?」

優希「いや、ダメというか……」

アリ「ちょっと魔理沙、いきなり何を言い出すのよ」

魔理「いいじゃんか、一日もしばらくも大差ないze☆」

アリ「だいぶ違うわよ……」

 

 いきなりの事で、この時のアリスさんは迷惑そうにしていました。

 

優希「せっかく片付いたんですから、戻ってこれまで通りに……」

魔理「なんだ? 優希は魔理沙ちゃんがアリスの家に泊まられると、マズイ事でもあるのか?」

優希「いえ、そうではなくて……アリスさんが大変ですよ」

魔理「なにもただ泊めてくれとは言ってないze☆ 家事なら魔理沙ちゃんだってできるんだze☆?」

優希「いや、でも……」

魔理「アリスは困るか?」

 

 でも魔理沙さんの迫力とゴリ押しの意見に負け、

 

アリ「え、えーと……」

 

 すぐに「No」とは言えず、

 

魔理「ほら大丈夫だってさ」

 

 結果、一方的に丸め込まれてしまいました。それは見るからに明らかで、酒丸での事もあって、アリスさんが可愛そうに思えて、

 

優希「いやいやいやいや、言ってませんよ」

 

 味方をしたつもりだったんですが……。

 

魔理「ははーん……。優希お前……、魔理沙ちゃんがいなくなったら、アリスの事を寝込み襲おうとしただろ?」

アリ「え、えーーーッ!! 優希さん、そんなまさか……」

 

 どうしてこうなった?

 

優希「してませんよ! そんな事考えてもいませんよ!!」

魔理「どーだか、男はみんな狼だze☆ うん、やっぱりコイツ信用できないから、魔理沙ちゃんがアリスのことを守ってやるze☆ アリスが反対しても泊まるからな! アリスの純潔は、この魔理沙ちゃんが死守するze☆」

優希「わかりましたから、その酷い誤解を改めてください!」

 

 ――――とまあ、そんなこんなでアリスさんの家で、今も3人で暮らしています。

 

優希「ポトフすごく美味しいです」

アリ「ありがとうございます」

魔理「キノコパイはどうだ?」

優希「まだ食べてませんけど? 先に感想言った方がいいですか?」

魔理「じゃあさっさと食べろよ」

 

 ジト目で威圧。食べ辛いです……。

 

優希「じゃ、じゃあいただきます」

 

 キノコのパイを一切れ取り、いざ実食。口の中に広がる多種多様のキノコの風味。不思議とどれも喧嘩せず、上手に共存、協和している。それにその素材の味を生かすために、塩加減は極力抑えている。食感も色々あって楽しめる。これはこれで……。

 

魔理「どうだ? どうだ? どんな味だ?」

 

 顔を寄せて感想を求めて来る魔理沙さん。そんなにがっつかないで下さい……。

 

優希「え?キノコの味」

アリ「ふふ……」

魔理「ほ、他にあるだろ? なんかさぁ」

 

 ちょっと意地悪したくなりますから。

 

優希「なんの事です?」

アリ「クスクス……」

魔理「魔理沙ちゃん悲しくて泣くぞ?」

 

 魔理沙さんが眉を八の字にして、ドンヨリとした雰囲気を(かも)し出した。分かってますって。そろそろ頃合いかな?

 

優希「美味しいですよ」

魔理「な? だろ? もったいぶらずに言えよなぁ」

 

 その途端、魔理沙さんの表情がパッと明るくなり、その勢いのままドヤられた。でも……、

 

アリ「あはははは、優希さん魔理沙の扱いが上手になりましたね」

 

 全ては僕の計画通りなのです。

 

魔理「へ? な、担いでたな!?」

優希「やっぱり魔理沙さんは『かまってちゃん』ですね」

魔理「優希ぃー……、オ・マ・エ」

 

 

スチャッ!

 

 

 顔を赤くし、怒気を放った魔理沙さんの手には、見覚えのある小さな箱が。それは森の木々を吹き飛ばし、ここから少し離れた魔理沙さんの家を、滅茶苦茶にした魔法を放つ……

 

アリ「ちょ、ちょっと魔理沙やめなさいよ!」

優希「うわわわ、ごごごごめんなさい」

魔理「次またそれ言ったら、近距離マスパだからな!」

 

 近距離でアレをやられたら即死だろうね……。調子に乗ってごめんなさい。もう言いません。

 

 

--オタク反省中--

 

 

アリ「それじゃあ、おやすみなさい」

 

 寝る支度を済ませ、それぞれの部屋へ。と、その前に。

 

優希「あ、アリスさん。ちょっとお話が……」

魔理「じゃあな優希、また明日なぁ。アリス、先に部屋に行ってるze☆」

アリ「あ、うん。あのそれで優希さん話って……?」

優希「あの……えっと、こここコレを受け取って下さい!」

アリ「えーッ!? こここコレって」

 

 

◇    ◆

 

 

 「先に部屋に行ってる」そう告げたにも関わらず、2人の様子が気になり、物陰からコッソリと伺う

 

魔理「お? ラブレターか? 面白くなってきたze☆」

 

 オセロ魔法使い。2人が発する雰囲気から、その後の展開に胸を躍らせていた。

 

 

◆    ◇

 

 

優希「今までお世話になったアリスさんに……」

 

 僕はそれをアリスさんに頭を下げて差し出した。今日早くバイトを終わらせたのだって、これをすぐにでもアリスさんに渡したかったからだ。

 

 

◇    ◆

 

 

魔理「言うか? 言うのか? ワクワクだze☆」

 

 顔を半分だけ見せ、悪い笑顔。そして久しぶりに訪れた面白い出来事に、彼女の期待は最高潮。

 

 

◆    ◇

 

 

 渋々ながらもそれを受け取ってくれたアリスさん。これが今の僕にできる精一杯の恩返しであり、使命であり、当たり前の事。それと……。

 

優希「それと、これからもよろしくお願いします。だからそれ、全部受け取って下さい。それで足りますか? 足りなければもっと仕事を……」

アリ「いえいえ、充分過ぎます。こんなに沢山……。優希さんが稼がれたお金ですし、もっとご自身のため使って頂いても……」

優希「今はまだ欲しい物はないですし、もし何かあったらアリスさんにお願いします」

アリ「けど、それじゃあ……。私は優希さんに好きな物を買って欲しいです」

 

 

◇    ◆

 

 

 だがその実態は、ただの居候の給料の受け渡し。期待していた展開と大きく異なり、白黒魔法使い、

 

魔理「なんだよ……つまんねぇの。寝よ……」

 

 がっかり。そして、「これ以上得られる物は無さそう」と覚ると、自身の寝室へ……

 

 

◆    ◇

 

 

 「好きな物を買って欲しいです」と言われるも、これと言って欲しい物も無い。ただ「家計が少しでも楽になれば」もしくは「喜んで欲しい」そう思っていただけに、こう言われてしまうと困ってしまう。

 悩みに悩んだ結果、僕は……

 

優希「それじゃあ……」

アリ「?」

 

 何故か心臓バクバクです。それも壊れそうな程に。まるで、こっ、告白しているみたいに。そんな経験ないんですけどね……。

 

優希「ア、アリスさんに……そ、その……プ、プレゼント……したい……です」

 

 勇気を振り絞って言いました。手とか足とかガタガタ震えていたけど、最後まで何とか言い切りました。するとアリスさん、

 

アリ「ふぇーーーーっ!?」

 

 間髪入れず、赤面して大絶叫。困らせてしまったらごめんなさい。

 

 

◇    ◆

 

 

魔理「へー……、そうきたか」

 

 行っていなかった。普通の魔法使いはお宝の匂いを嗅ぎ付け、その場に留まっていたのだ。期待値とは異なるものの、「これはこれでアリ」と判断し、

 

 魔理「じゃ、そろそろかな?」

 

 頃合いを見計らい……

 

 

◆    ◇

 

 

優希「ダメ……ですか?」

 

 (うつむ)いてしまったアリスさんに恐る恐る尋ねてみたけど、

 

アリ「……」

 

 すぐに返事は来なかった。「かなり困らせてしまった?」と後悔し、「どうしよう……」と思い始めた頃、もういないと思っていたあのお方が……

 

 

◆    ◆

 

 

魔理「いいんじゃないか?」

 

 参上。

 

アリ「え、魔理沙? 先に寝ていたんじゃ……」

魔理「明日、優希の仕事前に人里で買い物しようze☆ それでアリスにプレゼントすればいいだろ?」

 

 なんたる助け舟。魔理沙さんの心遣いに感謝です。

 

優希「はい、それでいいですか?」

アリ「えっと、はい……」

魔理「で、優希。アリスにプレゼントするのに、まさか毎日送り迎えしている魔理沙ちゃんには、何も無いって事はないだろうな?」

優希「いえ……あの……、だからケーキを……」

魔理「お前の魔理沙ちゃんへの感謝の気持ちは、ケーキで済まされる物なのか?」

 

 うわー……。さっき泣きそうになる程喜んでいたのに……。前言撤回です。

 

アリ「魔理沙、厚かましいわよ。優希さん、私は頂いたケーキだけで充分ですよ」

優希「でもそれだと……」

魔理「だーもうッ! 魔理沙ちゃんが悪かったよ。魔理沙ちゃんはもういらないから、アリスは優希からプレゼントを買ってもらう。それでいいな!? 全く、2人だと話が進まないze☆」

  『ごめんなさい……』

 

 

--翌日--

 

 

 朝食を済ませ、3人で人里へ。僕がバイトに行くまでの限られた時間ですけど、アリスさんが喜ぶ物を見つけたいです。

 

魔理「アリスはどんな物がいいんだ?」

アリ「うーん……」

魔理「いざプレゼントされるってなると、結構迷うよな」

アリ「迷うというか……」

優希「思い浮かびませんか?」

 

 首を傾げて困り顔。意気込んで来たはいいけど、もしかしたら本当に欲しい物が見つからないかも……。早くも高い壁が目の前に現れた感じです。

 

魔理「え? そうなのか? 魔理沙ちゃんだったらわんさか出てくるze☆?」

 

 目を見開いて驚き顔。魔理沙さんは欲深いんですね。なんとなく気付いてました。

 

アリ「魔理沙が(うらや)ましい……」

魔理「じゃあ適当に店を回って行こうze☆」

 

 

【一軒目:服屋】 

 僕がこの世界で服を買おうとした店。結局、和服は着方が分からなかったから断念したけど……。アリスさんはその時「服は自作」みたいな事を言っていたし……どうなんだろ?

 

アリ「和服ってあまり着ないんですよね……」

 

 ぼんやりと眺めるアリスさん。和服はあまり着ないとのことです。でも似合うと思うんだけどなー……。

 

魔理「夏祭りは浴衣着たりするけどな〜」

優希「え、魔理沙さんが? 浴衣?」

魔理「なんだよ、悪いか?」

優希「いえ、ただイメージできないなーって」

魔理「じゃあ今度の夏祭りで着てやるze☆ 魔理沙ちゃんの浴衣、白と黒で可愛いんだからな」

優希「それ……喪服……」

 

 

スチャッ!

 

 

優希「ごごごごめんなさい! 八卦炉(それ)をしまって下さい!」

 

 

【二軒目:玩具屋】

 町並みが時代劇のセットみたいな感じなだけに、商品がメンコやおはじといった古風な物だけかと思いきや、以外や以外。ぬいぐるみやキャラクターグッズまであってビックリです。アリスさんは上海と蓬莱と暮らしているし、人形も自作するくらいだから、もしかしたらこういうお店こそ、気に入る物があるかもです。

 

優希「外の世界の商品も結構あるんですね」

魔理「ちょっとしたルートがあって、人里の商人達は 外の世界の物も仕入れているんだze☆」

 

 僕と魔理沙が店内の商品を見ながら2人でそんな雑談をしていると、アリスがいない事に気が付いた。「何処にいったのだろう?」と店内を回っていると、アリスさんがある商品を手に取ってじっと見つめていた。

 

優希「アリスさん、何か気になる物ありました?」

アリ「へ? いや、ちょっと……」

優希「あ、それ外の世界で人気のプラモデルですよ」

アリ「プラモデル?」

優希「自分で組み立てるプラスチックの人形ですよ。僕も好きです。特に赤いのは通常の3倍なんです!」

魔理「お前の好きな物を買いに来たんじゃないだろ? アリスはそんな子供っぽい物を選ばないだろ」

優希「そうですよね……」

アリ「あはは……。チョットホシカッタ……」

 

 

【三軒目:アクセサリー屋】

 装飾品を主に売っているお店。宝石を使った高価な物から、安価でカジュアルな物も扱っている。なんでもアリスさんが作った物もここで売られているそうです。そして時間的にもここが最後のお店になりそうです。ちょっとピンチ……。

 

魔理「まあここが一番無難だろうな」

優希「色々ありますね」

アリ「あ、これ私が作ったやつですよ」

優希「すごい……、これ手作りですか? 細かいですね……」

 

 アリスさんが作った装飾品に絶句。だって素人目にも分かる程クオリティーが高いんですから……。これだったらプレゼントされるまでもなく、自分で作りますよね……。かなりピンチ……。今までで一番お店のチョイスをミスした感が……。と、そこに

 

 

トントン

 

 

 僕の肩を誰かが叩いた。「誰?」と視線をそちらへ向けると……

 

魔理「なー、なー。コレどうだ?」

優希「ね、猫耳!?」

魔理「あっちにあったんだ。ニャー」

 

【挿絵表示】

 

 

 猫耳のカチューシャをした魔理沙さんが。しかも招き猫のようなポーズで猫の真似。不覚にも可愛いと思ってしまった……。

 

魔理「ほらアリスもやってみろよ」

アリ「え、えー!? ちょ、ちょっと……」

 

 マズイ……。それ、耐えられる自信がない……。

 

魔理「わっ、似合い過ぎだze☆ アリス、ニャーってやってみてだze☆」

 

 魔理沙さんがそう言うと、アリスさんは(うる)んだ瞳で上目遣い。さらに恥ずかしそうに顔を赤くしながら、さっきの魔理沙さんと同じポーズを……

 

アリ「ニャ、ニャー?」

 

【挿絵表示】

 

 

優希「グハッ!!」

アリ「キャーッ! 優希さん大丈夫ですか!?」

魔理「あー……大丈夫じゃないか? なんか幸せそうだし」

 

 

--オタク幸福中--

 

 

店員「お買い上げありがとうございました」

アリ「優希さんありがとうございました」

優希「いえ、でもそれで良かったんですか?」

アリ「ええ、とても嬉しいです」

 

 途中アクシデントもありましたが、アクセサリー屋でアリスさんへのプレゼントを購入することが出来ました。

 

優希「あの……魔理沙さん。アリスさんの趣味って……」

魔理「言うな。魔理沙ちゃんも絶賛困惑中だze☆」

 

 アリスさんはアクセサリー屋で「キャーッ!可愛いー!」と突然叫び出し、「何事!?」と様子を見に行くと、掌サイズの太った猫のストラップを手に取っていた。そして僕を見つけるなり、「優希さん! コレ、コレがいいです!」と必死にお願いをして来た。値段も全然問題なかったので、プレゼントしたのですが……、

 

優希「あれ、可愛いと思います?」

魔理「イヤ……、どう見てもブサイクだze☆」

 

 魔理沙さんと初めて意見が合った気がします……。でも、

 

アリ「〜♪」

 

 アリスさんがあんなに喜んでくれているなら、僕は満足です。

 

優希「それじゃあ、僕は仕事行ってきますね」

アリ「優希さん、ありがとうございました。私、この子を大事にしますね。あと今日のご飯、期待していてください」

優希「はい、ありがとうございます。なるべく早く帰ります」

アリ「大丈夫です。いつまでも待っていますよ」

優希「あ、ありがとう……ます」

魔理「魔理沙ちゃん、ちょっと疎外(そがい)感……」

 

 出たよ……『かまってちゃん』。

 

優希「あー……、魔理沙さんも。なるべく遅くならない様に頑張りますので……」

魔理「お前……、隠し事苦手だろ?」

 

 

--オタク仕入中--

 

 

 昨日と同じ時間に魚屋と肉屋に向かうと、お店の手前で紅魔館のメイドさんが、既に来ている事に気が付いた。

 

優希「こ、こんにちは」

??「あ、こんにちは。今日もご苦労様です」

優希「ありがとうございます。ご苦労様です」

??「昨日の件ですが、『一度連れて来て欲しい』と言われていましたので、明日などいかがでしょうか?」

 

 あの紅魔館へ……。魔理沙さんからは「近付くな」と止められている。でもせっかくだし、一度だけ行ってみようかな?

 

優希「ありがとうございます。明日伺ってみます」

??「分かりました。伝えておきますね」

 

 バイトが終わってアリスさんの家に戻ったら、2人に相談してみよ。

 

 

 

--オタク帰宅中--

 

 

 いつも通りにバイトを終え、魔理沙さんが待つ博霊神社へ。そして一風呂入って魔理沙さんの後ろに乗ってアリスさんの家へ。ここまでの流れはもう完全に慣れました。初めの頃は高さが怖かったけど、今では周囲を見回す余裕もあります。でも早いのは苦手です。

 

優希「ただいま戻りました」

 

 扉を開けると、

 

優希「わっ、スゴイ!」

 

 テーブルの上に沢山のご馳走が。

 

アリ「おかえりなさい。今準備しますね」

魔理「アリスのヤツ、今日やたらと気合い入れて飯を作ってたze☆ よかったな、この幸せ者」

優希「はい、すごく嬉しいです。夢……じゃないですよね?」

 

 

スチャッ!

 

 

 突然僕の目の前に八卦炉が出現。

 

優希「なんで?」

魔理「いや、眼が覚めると思って……」

優希「永遠の眠りにつかせる気ですか?」

魔理「お前上手いこと言うな」

 

 そうでもないと思いますが……。

 

優希「今回は魔理沙さん不参加ですか?」

魔理「は? 何の話だze☆?」

優希「いや、ご飯の準備」

魔理「あー、アリスが邪魔すんなって言うから……」

優希「ということは……、100%アリスさんの手料理!?」

魔理「おい、そこでテンションが上がるのはどうかと思うze☆?」

優希「なんでですか?」

魔理「普段は魔理沙ちゃんもやってるんだze☆? その当事者を目の前にして、それはちょっと傷付くze★ お前、前からそうだけど、少し言葉と態度考えろよ?」

優希「はい……。気をつけます」

 

 魔理沙さんから本気の説教をされてしまった……。僕はどうやら無意識に他人の事を傷つける癖があるみたいです……。だから友達が少ないのかも……。気をつけます。

 

アリ「おまたせしました」

 

 凹んでいるところに、アリスさんから「食事の準備ができました」と。その手には出来立てのグラタンが。

 

優希「すごっ! 美味しそう! いただきます」

アリ「熱いので気をつけて下さいね」

優希「あつっ! でもめちゃくちゃ美味しいです!」

アリ「いつも美味しいって言って頂けて、作りがいがあります」

魔理「あー! 魔理沙ちゃんを仲間外れにするな!」

 

 

--オタク食事中--

 

 

 アリスさんの手作り100%の料理は本当に美味しかった。グラタンなんて特に。チーズは2種類使っていたみたいで、味に深みを与え、食感も楽しませてくれた。流石です。あ、魔理沙さんの料理が美味しくないって言っている訳ではないんです。魔理沙さんにもいつも感謝しています。ただ、アリスさんの料理のスペックやクオリティーが異常に高いんです。

 そして食事を終え、あの事を2人に話した。

 

魔理「は? 紅魔館に行きたいだ?」

アリ「フランに会いに行かれるのですか?」

優希「いえ、武術の達人の方がいるそうなので……」

  『あー、中国』

優希「え? 中国?」

アリ「紅美鈴っていう妖怪です。紅魔館の門番をしているんです」

優希「じゃあ、仕事中は邪魔しちゃいけないですね……」

 

 仕事中の人に話し掛けたら、きっと迷惑だと思われるに違いない。そう思っていた。でも……

 

  『いやー……』

 

 2人は首を傾げて「それはどうだろう?」みたいな表情を浮かべていた。僕、頭上に『?』。

 

魔理「逆に行ってやった方が勤務態度良くなるかもな」

アリ「咲夜も頭を抱えていたからね……」

魔理「それに館の中入るわけじゃないし、大丈夫かな? うん、明日朝飯食ったら行ってみようze☆」

優希「お願いします」

魔理「ところで門番に会ってどうする気だ? 喧嘩でもしに行くのか? それとも修行か?」

 

 いやいや……、だから何でみんなそうなるの?




ニャリス可愛いです。

次回:「一人で行くために」
いよいよ紅魔館です。
誰が登場するのかはお楽しみにです。

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