東方迷子伝   作:GA王

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文章を書く様になって、
①日本語って面倒くさい
②日本語って応用が効く
③日本語ってちょっと面白いかも
と改めて思います。

純日本人なのに。




一人で行くために_※挿絵有

--翌日--

 

 

 いつもより早めに朝食を済ませ、毎度の事の様に魔理沙さんの後ろに搭乗。いざ目指すは危険地帯、紅魔館。内心ちょっとビクビクです。そしてアリスさんはというと、片付けを終えたら来てくれるそうです。嬉しい限りです。

 で、やって来ました。

 

魔理「ここが紅魔館だze☆」

優希「ここが……」

 

 

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 全体的に血の様に紅く、漂う雰囲気は禍々しい。名前と外見がぴったりの館。僕はこの館を見たのは初めてではなかった。それは僕が幻想郷に来た翌日、魔理沙さんに強引に遥か上空に連れて行かれた時だ。あの時僕はこの館を見ていた。遠目では何も感じなかったけど、近くで見ると……

 

優希「ちょっと不気味ですね」

 

 本音は「ちょっと」じゃないのですが……。

 

魔理「で、あそこに突っ立ってるヤツいるだろ?」

 

 魔理沙さんが指差す先に、赤毛のロングヘアーの一人の女性が、

 

優希「はい、なんかずっと足元を見ていますけど……」

 

 手を後ろで組んで(うつむ)いて直立不動でいた。

 

魔理「あれが(ほん)美鈴(めいりん)だ。今は……寝てる」

優希「は? 寝てる? 門番が? それじゃあ物騒じゃないですか。簡単に泥棒とか入っちゃいますよ?」

魔理「そうそう、だから楽に……」

 

 魔理沙さんはそこまで語ると、突然「あーっと」と声を上げ、話を中断した。僕、意味不明で脳内『?』だらけ。そんな僕を押しのける様に、魔理沙さんは僕の前へと移動すると、

 

魔理「まあ取り()えず起こすか。ちょっとどいてろ」

 

 と告げ、

 

 

スチャッ!

 

 

 ご愛用の超強力魔法の準備。

 

優希「え!? そそそれはちょっとやり過ぎ……」

魔理「タメ無し、マスタースパーク!」

 

 

ビ===ム

 

 

 放たれたそれは、僕の腕の太さ程度の光。出力されていた時間は1秒前後。やがてその光は門番さんの顔へ……

 

 

ドーーーン!

 

 

美鈴「ぷはっ! 何!? 敵襲!?」

魔理「おい、お前また寝てたze☆」

美鈴「そんなー、またまたご冗談を。ちょっとウトウトとしていただけですよ」

 

 笑顔を浮かべて手で仰ぎながら、魔理沙さんに話す門番さん。でもそう言いますけど、それ寝てますよ……。

 

美鈴「そんな事より……、今日こそは館の中へは入れさせませんよ!」

 

 門番さんはそう告げると、一気に戦闘の構えに。そして……。

 

美鈴「たっぷり寝たから調子が良いんです!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ウトウトじゃなかった……。それに今、魔理沙さんに「今日こそは」って……

 

魔理「ば、ばか! 今日はコイツを連れて来ただけだze☆」

 

 「コイツ」と言われた瞬間にお尻に痛みが。どうやら魔理沙さんに膝で蹴られたみたいです。また蹴った! 親父にも蹴られた事無いのにッ!!

 

美鈴「おや? そちらは? 初めて見る方ですね」

優希「ゅ…ゅぅきで…す」ドキドキ

美鈴「へ?」

 

 精一杯の自己紹介に門番さん、目が点。僕の声は門番さんには届かなかったご様子。すると、見るに見かねた魔理沙さんが、

 

魔理「あー、優希って言うんだ。なんか人里でお前の所のメイドに相談してとか……」

 

 代わりに紹介をしてくれ、その上経緯まで。ホントに感謝です。お尻を蹴られた事は、これで水に流します。

 

美鈴「あら、あなたがそうでしたか。一人で魔法の森を歩ける様になりたいと?」

魔理「え? お前そんな事考えてたのか?」

優希「……はい、最近いつも遅いですし。魔理沙さん達に迷惑をかけたくなくて……」

魔理「お前……」

美鈴「えっと、事情はよく分かりませんけど、方法はありますよ」

優希「ホントですか!?」

美鈴「ええ、簡単です。強くなれば良いんです!」

 

 あっれ〜……? やっぱりフラグだったの〜?

 

 

--オタク??中--

 

 

優希「ゼェー、ゼェー……」

 

 息は切れ切れ、喉はカラカラ、手足はパンパン(ry。一言でまとめると僕、orz。

 

アリ「優希さん、魔理沙お待た……。えっと……、魔理沙コレどういう……」

魔理「身体能力のテスト中だze☆ でもコイツ……」

美鈴「困りましたね……。コレでは先が長そうです」

 

 門番さんから早くも見切られ通告。それでも「先が長そう」と言ってくれるだけ救いです。ここで「やっぱり諦めた方が……」なんて言われたら本気で困っていました。

 

魔理「力も無ければ体力も無いし、足も遅い。良いところ無さ過ぎだze☆」

 

 

グサッ!

 

 

 見下ろしながら冷たい視線。加えてキツイ一撃。運動神経が悪いのは自覚しているんです。でも、やっぱり直接言われると傷付きます。それに、「良いところ無さ過ぎ」って……。僕、泣きますよ?

 

美鈴「分かりました。基礎運動能力の向上と護身術の両方でやっていきましょう」

優希「は、はい。お願ぃ……ます」

美鈴「でも、やる前に一つ約束して下さい」

 

 人差し指を立てて数字の『1』を作り、「約束して欲しい」と告げる門番さん。否、僕の先生。いや、コーチ。「何だろう?」と構えていると、

 

美鈴「妖怪相手に戦おうなんて思わないで下さい」

 

 ちょっと予想外の言葉が告げられた。

 

魔理「おいおい、それじゃあ解決にならないだろ?」

アリ「あの、魔理沙。コレいったいどういう……」

美鈴「私が教えるのは身の守り方と(かわ)し方です。人間の力ではどう頑張っても、妖怪には敵いませんからね。基本は逃げて、危なくなったら守って躱して、また逃げるです!」

 

 人と喧嘩をした事のない僕にとって、コーチが語る戦法は非常にありがたかった。痛いの嫌いですし、逃げる事に躊躇(ためら)いは無いんです。

 

優希「わ、分かりました」

美鈴「という事で、まずは館の周りを走って来てください。ただ走るのではなく、追われている事をイメージして」

 

 コーチの指示に従い、スタートを切ろうとしたその時、

 

魔理「なら魔理沙ちゃんが一役かってやるze☆」

 

 と(ほうき)(またが)った魔理沙さんが乱入。その手には丸く輝く光の玉。そしてそれを、とびきりの(まばゆ)い笑顔で

 

 

ドーン!

 

 

 足元へ撃ってきた。地面の草が……真っ黒に……。焦げてる……。

 

魔理「先に言っておくけど、当たると痛いze☆?」

優希「いや、あの……ちょっと……」

魔理「嫌なら……、逃げてみろ!」

 

 

ドドドドドーン!

 

 

優希「わーーー……」

 

 

--優希が去った紅魔館の正門前では--

 

 

アリ「魔理沙ちょっと!」

 

 光弾を放ちながらオタクを追い回す親友に、静止を呼びかけて追いかけようとする人形使い。だが、その彼女の目の前に武術の達人が、仁王立ちで立ち(ふさ)がった。

 

美鈴「あなたはここにいてください。じゃないと訓練になりませんから」

アリ「訓練って……、いったいどういう事?」

美鈴「あれ? あなたもご存知ありませんでしたか? なんでも魔法の森を一人で行き来出来る様になりたいそうですよ?」

アリ「そんな……優希さん……。ムリされないでも……」

 

 互いに気を使うが故の食い違い。片や「これ以上迷惑を掛けたくない」という想い、片や「もっと頼って欲しい」という想い。それは決して交わることの無い平行線。

 そんな中『()を使う程度の能力』の武術の達人は、 「そっちの『気を使う』は専門外」と、気の利いた言葉が見つからず、

 

美鈴「うーん、私こういうのは苦手だなぁ……」

 

 青空へ視線を移し、頬をかきながら(つぶや)いた。

 

 

--オタク逃走中--

 

 

 やっと……一周……もう……無理……。

 

 

ドサッ

 

 

アリ「キャーッ! 優希さん大丈夫ですか!? ちょっと魔理沙! ここまでする事ないでしょッ!!」

美鈴「何回被弾したんですか?」

魔理「30回以上だze☆ 途中から数えるのが面倒になって、よく覚えてないze☆」

アリ「30回以上!? あなた手加減しなさいよ!」

魔理「イヤイヤ、狙いにいったのは数発だけだze☆? でも優希のヤツ、わざと外したつもりの弾にも、ご丁寧に突っ込んでいくんだze☆? どうしろって言うんだよ」

美鈴「あー……、コレは大変だ……。今日はもうお終いに……」

 

 掠れる意識の中、僕を心配する声とダメ出しをする声が聞こえて来る。確かに僕はダメです……。運動神経悪いですし、30発以上被弾する程のマヌケです……。だから……だから……、

 

優希「いえ……、大丈夫なので……続けて欲しいです」

 

 「無理をしてでも、限界を超えてでも、努力するしかない!」そう自分に言い聞かせながら、全身に走るダメージに歯を食いしばり、ゆっくりと立ち上がる。

 

魔理「優希、ガッツは認めるけどな、これ以上は魔理沙ちゃんも心配になるze☆」

アリ「無理なさらないで……」

 

 あの魔理沙さんが心配している。アリスさんは困った様な表情を浮かべている。でも、だからと言って、このままその言葉に甘えたら、僕は何も変わらないと思うんです。

 

優希「いけます! お願いします」

 

 僕は変わらないといけないんです!!

 

美鈴「分かりました。じゃあ次は(かた)にしましょう。それなら激しくありません。では、まず腕を顔の前に……」

 

 

--オタク修行中--

 

 

 コーチた言う様に形の練習は静かなもので、お陰でかなり体力も回復しました。しかもコーチが手取り足取り教えてくれる上、教え方も丁寧なので、初心者の僕でも分かり易いです。

 

美鈴「腕をもう少し内側へ絞った方がいいですよ」

優希「こうですか?」

美鈴「そうです。それでここまで教えて来た事を全部繋げてください」

優希「は、はい」

魔理「期待してるze☆」

 

 僕、ここまで教えてもらった事が一連の流れだとようやく理解。そしてコーチに指摘してもらった事を全て思い起こし……いざッ!

 まずは基本の構えから、真っ直ぐに伸びて来る棒を、掌で払うイメージ。

 

 

サッ!

 

 

 そこからもう片方の手を大きく広げて突き出し、相手の視界を奪う。

 

 

スッ!

 

 

 最後に全身にグルッと反時計回りの回転を加え、踏み込みと同時に肩で下から(えぐ)る様に体当たり!この時に腕を内側へ絞る事を意識して……。

 

 

ザンッ!

 

 

 終わり。ど、どうでしょうか? 決して「ドヤッ」なんてできない。自分でもまだまだだと思うし、動きがぎこちなかったし……。「また魔理沙さんから野次られる」と覚悟を決め、恐る恐る振り返る……。

 

魔理「おー、優希カッコいいぞ! な?」

アリ「う、うん」

 

 カッコいい!? 人生初の言葉! もう一回言ってくれないかな? あ、その時は録音したい。

 

美鈴「いい感じです。(かた)は覚えが早いですね。まずはそれを日々練習してください。流れる様に自然に出来れば、今後の鍛錬もスムーズにいきます」

優希「はい! ありがとうございます!」

 

 ここに来てやっと褒められ、僕、大歓喜。そして「もっと覚えたい。もっと知りたい」という欲が沸き、

 

美鈴「では、次回は……」

優希「毎日お願いできませんか!?」

  『は?』

 

 暴走しました。みんな口を開けたまま硬直状態。でも、これは抑えきれそうにもありません。

 

優希「お仕事でお忙しいかもしれませんが、もっと上達したいんです」

 

 それに早く上達できれば、その分アリスさんと魔理沙さんへ迷惑掛けずに済みます。

 

美鈴「私は別に構いませんが、体もちます?」

優希「やれます!」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 オタクが熱血している頃、その姿をぼんやりと眺めながら、

 

魔理「アイツ初めて会った頃と比べると、大分変わったよな?」

 

 ほんの少し前の彼と比較する白黒魔法使い。その結果、彼女の中では「成長した」という結論に。

 

アリ「え? そうかな? 前から優しくて、少し無茶もするけど、努力家で……」

 

 しかし、彼女の親友の人形使いの結論は「前から変わらない」。だがそれは悪い意味ではなく……。

 

魔理「そっか、アリスにしか分からなかっただけか」

アリ「?」

 

 そう、それだけの事。だが、2人共通している結論もある様で……。

 

魔理「でも少し()せたよな?」

アリ「あ、うん。それは気付いた」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 翌日から僕の鍛錬が本格的に始まった。毎日朝食を食べた後、魔理沙さんとアリスさんと一緒に紅魔館へと(おもむ)き、美鈴さんに稽古を付けてもらう事に。そのメニューは初日とほぼ変わらず、形の代わりにときどき組み手をするくらい。

 そしてみっちりと教えてもらった後はバイト。そんな超過酷スケジュールをこなしていった。

 当初は仕事中に意識が飛ぶ等のハプニングもあったけれど、事前に事情を話していた酒丸の店長さんの理解もあり、なんとかクビにならずに済んだ。

 今ではその生活リズムにも慣れ、稽古開始したあの日から1カ月が経った――――

 

 

魔理「この、当たれ当たれ当たれーッ!」

 

 

ドドドドドドドドドーン!

 

 

 魔理沙さんの光弾は単調で単純だから避けやすいです。

 

魔理「感のいいヤツだなぁ! アリスももっと応戦しろよ!」

アリ「で、でも……これ以上はホントに当たっちゃう……」

魔理「そうでもしないと意味ないだろ! クソーッ!」

アリ「うー……、優希さんごめんなさい! 上海! 蓬莱! 行って!」

 

 アリスさんの掛け声で迫ってくる2体の人形。上海と蓬莱。いつもアリスさんの手伝いをしていて、それ用途だとばかり思っていたけど……めっちゃ修行に参加して来ます。しかもその手に持っている物が……。僕知っていますよ、それ。ナイト専用の武器、『ランス』ってヤツですよね? 当たると痛いヤツですよね? チクンとするヤツですよね? なのに……蓬莱、いい笑顔で振り回さないでくれる?

 左から蓬莱、右から上海、僕の逃げ場は徐々に狭まり、「マズイ……」と察知したのも束の間、

 

魔理「よし、逃げ場無しだze☆!」

 

 ()()が。

 

魔理「伝家の宝刀! 『恋符:マスタースパーク』! 出力=死なない程度!」

優希「ちょっ、まっ! ムリムリムリムリ!」

 

 

ビ=====ム! & ピチューン…

 

 

魔理「やっと当たったか」

アリ「魔理沙やり過ぎよ!」

魔理「ちゃんと出力抑えたze☆? 大丈夫だろ?」

アリ「優希さん、優希さん! 目を開けて下さい!」

 

 朦朧(もうろう)とする意識の中、聞えて来たのは僕を呼ぶ透き通った声だった。その声に導かれる様にゆっくりと目を開くとそこには……

 

優希「あ、可愛くて綺麗な天使が……。ここは天国?」

アリ「ここは幻想郷ですよ。良かったー……」

魔理「おいアリス、お前今えらいとこスルーしたze☆?」

 

 魔理沙さんのこの言葉で一気に現実へ。

 

アリ「え?」

優希「わー! わー! 何でもないです!」

 

 大声を上げ、両手を振りながら必死の抵抗。あんなの聞かれていたらと思うと……は、恥ずかすぃー……。聞き流してくれて正解です。

 

美鈴「だいぶ避けれる様になりましたね。私も鼻が高いです。でも、ああいう時こそ受け流しと受け身です」

優希「はい。頑張ります」

美鈴「では次は組手をしましょう。昨日と同じ順番で少しずつ早くしていきます」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 紅魔館、そこは吸血鬼の姉妹とその友人、そして彼女達に仕える従者達が暮らす紅い洋館。そこの住人は実力者揃いとして名高い。そんな館の中から、()えない人間達を見下ろす2つの影が。

 

??「最近、彼も魔理沙も人形使いもよく来るわね」

??「はい、もう1カ月近くになります」

??「いつも見ているけど、なかなか上達のスピードが早いじゃない。それに、美鈴が楽しそうね」

??「最近では少し本気になる事もあるそうです」

??「ふふ、いいじゃない。いい子そうだし、あの子のいい遊び相手になりそうね」

??「お嬢様……」

??「今度、招待してさしあげましょう」

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

美鈴「ちょっと早いですが、今日もお疲れ様でした」

 

 途中死に掛けましたが、今回も無事五体満足で鍛錬終了。そしてついに……

 

優希「ありがとうございました」

美鈴「もう(おおむ)ね大丈夫だと思います。あとは実践あるのみです」

 

 コーチからGoサインが。

 

魔理「やったな! じゃあ早速今日から……」

アリ「待って! そんないきなり一人なんて……」

魔理「それもそうだな。しばらくは魔理沙ちゃんも一緒に行くze☆ 試しに今からアリスの家から人里まで行ってみようze☆ いきなり夜はハードル高いからな」

 

 という事で、いよいよ魔法の森をこの足で通る事になりました。まだ、不安は色々あるけど、美鈴さんから色々教えてもらったし、きっと大丈夫! のはず……。とそこへ……

 

??「私も行く!」

魔理「おう、アリスも行くか」

 

 魔理沙さん、今のアリスさんの声じゃ……。

 

アリ「え? 私も行くけどまだ何も……」

魔理「は?」

??「魔理沙ー! 遊びに来てたなら言ってよー!」

 

 甲高くて幼い声と共に、魔理沙さんの背中に飛び乗ったのは小さな女の子。、短い金色の髪の毛、赤い服、背中に綺麗な石(?)のついた羽根(?)。該当箇所多数。間違いないこの子が……

 

魔理「フラン!? お前なんで外に……」

フラ「日傘があれば大丈夫!イエイ!」

 

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美鈴「妹様。レミリア様からの外出許可は出ていますか?」

フラ「えー、だって絶対ダメって言うんだよー」

魔理「また今度来るからそん時な」

 

 魔理沙さんに「遊ぶのはまた次回」と告げられ、フランさんは「ブー……」と頬を膨らませ、不服といったご様子。その仕草から「面白くて可愛らしい人だな」と思い始めた時だった。

 

フラ「ん? あなたは誰?」

 

 フランさんとバッチシ目が合ったのは。完全に僕をロックオンし、逃げる隙を与えなかった。

 

優希「ゆ、ゆぅきって……いいます」

 

 見るからに年下の幼女に敬語……。けど、ものすっっっごく年上のお方なので、これで正解。

 

フラ「ふーん、ゆーきね。あなた、今度私と遊んでくれる?」

 

 自己紹介を終えると、彼女はあどけない顔で、首を傾けながら尋ねてきた。自然に、それこそまるで子供の様に。僕には純粋に「一緒にあそぼ」と言っている様に聞こえた。だからそれに釣られる様に……

 

優希「え? あ……」

 

 答えようとしていた。その矢先、

 

魔理「優希!」

アリ「優希さん!」

 

 魔理沙さんとアリスさんが緊迫した表情で、それを止めに来た。僕、何がなんだか分からず、「へ?」と変な声を発声。すると魔理沙さん、僕に背を向けて、フランさんから隠す様に間に立ち……。

 

魔理「フラン、今度絶対遊んでやるから……。私だけでいいだろ?」

 

 違和感。魔理沙さんは自分の事を言う時は、常に「魔理沙ちゃん」だった。でも、今は確かに「私」って……。

 

フラ「うん、いいよ。じゃあね、ゆーき。マタ、コンドネ……」

 

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ゾクッ……!

 

 

 全身を走る寒気。去り際に見せたその表情は、「いいおもちゃを見つけた」と言わんばかりの笑顔。でもその瞳は獲物を捕らえる狩人その物。完全にこの時理解した。彼女は僕の事を狩ろうとしていたと。ヤバイ……、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイヤバイッ! 今の人ホントにヤバイッ!! 次に会ったら僕、どうなっちゃうの? 無事でいられる?

 海斗君……。僕は今、君の一押しの嫁に会いました。言わせてください。嫁とかふざけて言える次元の人じゃないです! 殺されます! 嫁を変える事を強くお勧めします!!

 

魔理「今のがフランだ。会えて良かったな」

優希「もう、会いたくないです……」

魔理「それが正解だze☆」

アリ「最近は大人しくなったって聞いてるけど……」

魔理「いつ爆発するか読めないze☆ おっと、早いとこ戻ろうze☆」

 

 思い知らされた。この世界で会った人達は、みんないい人だったから、きっと凄く素敵な世界なんだと思っていた。でも、これが実態。ああいう人もいる。

 魔理沙さんが前に言っていた「光りあるとこに闇がある」っていう言葉の意味と重みが、今ひしひしと送れて伝わってきます。幻想郷……、怖い。

 

 

--オタク通勤中--

 

 

 アリスさんの家に一度戻って荷物を持って準備完了。忘れ物無し。人里を目指していざ!位置についてヨーイ、ドン!

 

魔理「もう少しペース上げてもいいか?」

 

 現在魔理沙さんを先頭に僕とアリスさんが並走中。とは言っても走っているのは僕だけ。魔理沙さんとアリスさんは低空飛行で飛んでいます。そんな状況ですが、多くの方に鍛えてもらった甲斐(かい)もあって、ここまで順調に魔理沙さんに付いていけてます。前の僕だったら、早くも息は切れ切れ、汗はだらだら、etc、etc,、etc、だっただろうな……。

 でも今まで平坦な道でしか走っていなかったから、森の中のアップダウンは地味に足腰に響きます。

 

優希「まだ何とか。でもやっぱり森の中は走り辛いですね」

アリ「大木ばかりで、根が太いですから……」

 

 と、愚痴にも似た感想を呟いていると……。

 

魔理「待った!」

 

 魔理沙さんが緊急停止。そして周りを見回して……

 

魔理「あいつら〜……」

 

 と。そしてアリスさんまでも。

 

アリ「もー、あの子達、急いでるのに」

優希「え? どうかしたんですか?」

魔理「優希、そこの木に体当たりしてみろ」

優希「コレですか? なんで?」

魔理「いいからやってみろよ」

 

 とは言われたものの、魔理沙さんが何故そんな事を言うのか意味不明。よく分からないまま、言われた通り目の前の木に軽く突進してみると……、

 

優希「あれ? は? なに? なんで?」

 

 そのまま通過。物理法則を無視され、僕、頭の中大混乱。

 

魔理「妖精のイタズラだze☆」

アリ「たまにやってくるんです」

魔理「アホ3匹のな」

 

 魔理沙さんが暴言を吐いて0.1秒後、

 

??「アホとか言うな!」

??「今日はちゃんと考えたんです!」

??「えーと……です!」

 

 何処からか子供の様な声が。でもすぐ近く。こっちかな?

 

優希「あ、見つけた」

  『あ……』

 

 見つけたのは背中に羽の生えた3人の女の子達。それぞれ赤、白、青を基調とした服を着ていた。それはそれでいいとして……

 

魔理「よし、こうしとけばもう悪さはしないだろ」

赤服「ほどけーッ!はなせーッ!」

白服「妖怪達に食べられちゃいますー!」

青服「だから止めようって言ったのにー!」

 

【挿絵表示】

 

 

 魔理沙さんに(ひも)で縛られ、木の上から吊るされる3人。ちょっと可哀想……。というか魔理沙さん、その紐どっから出したの?

 

アリ「彼女達は仲良し3人組の妖精でして、赤い服の一番元気な子がサニーミルク、白い服の髪がクルクルな子がルナチャイルド、青い服の大人しそうな子がスターサファイアです」

  『アリスさん助けてー』

優希「知り合いなんですか?」

アリ「たまにお菓子を食べに来るくらいなんですけどね」

 

 涙目に助けを求めて来る3人の妖精達に、苦笑いを浮かべ、彼女達との接点を説明してくれるアリスさん。お菓子を上げているなんて優しいですね。でもアリスさん、それ多分(たか)られていますよ……。

 そうしている間もギャーギャーと叫び声を上げ、助けを求める3人。なんかもう見ている方が辛いです……。

 

優希「魔理沙さん、少し可哀想なのでその辺で……」

  『いい人だー!』

魔理「お前ら反省してんのか?」

  『もうしません!』

魔理「優希に感謝するんだな、ほれよ」

 

 

ドサッ!!!

 

 

サニ「イッター……、もうちょっと優しく下ろしてくれてもいいじゃんか!」

ルナ「っつ〜、酷いよー……」

スタ「いたたたぁ、ごめんなさい……」

魔理「2匹の反省の色が見えない。全体責任で近距離マスパいっとくか?」

  『ごめんなさい!』

 

 3人寄り添ってガタガタ震えながら「ごめんなさい」と。もう魔理沙さんが悪人に見える……。

 

魔理「もうイタズラするなよ! 特に、優希は今日からココを通る事になるんだ。もし、優希に何かあったら……」

  『あったら……?』

魔理「近距離マスパと妖怪の餌、どっちがいい?」

  『どっちもイヤー!』

魔理「じゃあ死ぬ気で優希を守れ!」

 

 はい? 魔理沙さん、今……何と?

 

サニ「え? 夜も?」

魔理「なんか問題あるのか?」

サニ「だって寝る時間……」

スタ「いつも早く寝ているので……」

ルナ「そ、そーそー」

魔理「おい、待て。1匹は分かるぞ? でも、スター! ルナチャ! お前らはどちらかといえば夜の妖精だろ!?」

 

 魔理沙さんのこの一言で、ハッと気付いた。それは3人の名前。サニー=太陽。スター=星、ルナ=月。そう気付けば確かに3人ともそれっぽい。そして「夜の妖精」と言われ、立場が悪くなったクルクルヘアーのルナチャイルドが……

 

ルナ「えーっと、まだ成長期だしー、夜更かしはお肌に悪いしー、朝は早くから近所の掃除をしなきゃならないしー、こう見えて若くないしー……」

 

 両手の人差し指を付き合せてモジモジと言い訳。その瞬間、魔理沙さんからスチャッと音が。

 

魔理「よし、近距離マスパが決定した」

優希「魔理沙さん、大丈夫ですから。もうイジメないで下さい。イタズラされなければそれでいいです」

  『いい人だー!』

 

 

 




サニーミルク、
ルナチャイルド、
スターサファイア
そしてついに、
フランドール・スカーレットが
登場でした。

次回:「護衛連盟」

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