東方迷子伝   作:GA王

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もうすぐでGWです。
どうやってすごすか考え中です。
どこも混んでいそう…。

電気とアニメの町での東方イベントは
4月中はやっているそうですよ。


護衛連盟_※挿絵有

優希「お待たせ、それじゃあ帰ろうか」

 

 バイトが終わって帰宅時間。月は最も高い位置。待ち合わせ場所はいつも森の手前。そこには、

 

蓬莱「ホーラーイ」

 

 僕の見張り役、アリスさんお手製の半自立思考人形の蓬莱と、

 

スタ「ふぁ〜……、今日は比較的安全です。それじゃあ私は帰ります」

 

 3妖精の一人、スターサファイアが。早く寝るって言っていたのに、いつも夜遅くまでごめん。

 

優希「あ、うん。いつもありがとう」

 

 森を自分の足で通う様になって1週間。今のところ妖怪や獣に襲われる事も無く、なんとか無事でやれています。霊夢さんから貰ったお守りもあるし、そばに蓬莱もいてくれる。これだけでも充分心強い。

 そこにスターサファイアの『動く物の気配を探る程度の能力』で、事前に森の状況を教えてもらえるので、経路を選ぶ事が出来る。天気予報ならぬ魔法の森予報だ。もう至れり尽くせりです。でも念には念を、という事で……アリスさんの家までダッシュで帰ります。

 秋が深まり、落ち葉が増えてきた森。でも木々に覆われていて、中に入ってしまうとほぼ真っ暗。そんな時便利なのが蓬莱。なんとサーチライト機能付き。目から光が出ます。

 そして時々差し込む月明かりもあるので、今は何とかなっています。

 

優希「今日は満月か、夜なのに明るいね」

 

 枝の隙間から覗く、夜空に煌々と光る月を見つめてポツリ。「魔理沙さんはこういう時に、空でお酒を飲むのが好きだって言ってたな」などと、全く関係ない事をぼんやりと考えながら走っていると……、

 

蓬莱「ホーラーイ!!」

 

 突然蓬莱が叫び出した。まるで「気を付けて」と言っている様に。

 

優希「え? 何?」

 

 立ち止まって警戒態勢。次の瞬間、上空から現れたのは……

 

??「見つけたーッ!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 僕の目の前で宙に浮きながら、まるで『通せんぼ』をする様に大の字。月明かりを反射してキラキラと美しくも、怪しく光る羽の石。無邪気な笑顔からチラチラと見え隠れする狂気。もう絶対に会いたくないと思っていた人物。どうして……、なんでここに!?

 

フラ「今日満月でね、テンション上がっちゃってね、お姉様にね、外出たいってね、言ったらね、特別にね、『いいよ』ってね、許してもらえたの!」

 

 早口で興奮気味に話し出すフランさん。テンション上がりすぎのMAX状態。一言一言声を発する度に伝わってくる威圧感がすごい。僕の足は……震え始めていた。

 

フラ「だからねだからねだからね、フランね……」

 

 

 ゾクッ!

 

 

 全身を駆け巡る危険信号。「何かが来る」僕の体が、全神経がそう予期していた。ジリジリと気付かれない様に、足を後方へ動かし……

 

フラ「()()()()()()()()! キャハハハハハハッ!!」

 

 笑っているけど、目は完全に狩る側のそれ。ギラギラに輝き、まるで餌を目の前にした腹ペコの猛獣そのもの。捕食される側、絶体絶命の大ピンチ。ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイッ!

 襲われる恐怖の中、今出来る事……それは……とにかく逃げる!

 

 

ダッ!

 

 

 僕は勢いよく後方へスタートを切った。

 

フラ「鬼ごっこ? フラン得意だよ! 直ぐに、()()()()()()()()! 待て待てー! キャハハハハ!」

 

 いつも以上に、全速力で、がむしゃらに走り続けた。「もし捕まったら……」と考えると、その先が恐ろしくなり、呼吸を忘れて無我夢中になっていた。それでも伝わって来る背後に迫る危険、脅威、プレッシャー、死へのカウントダウン。それらを振り払う様に、追い付かれない様に、ただひたすら真っ直ぐ逃げ続けた。

 

フラ「ツカマエタ!」

 

 けど僕の逃亡時間は長くは続かなかった。再び目の前にフランさんが現れ、逃げ道を(さえぎ)る様に大の字。前方を塞がれて右へ逃げ出すも、彼女は再びあっという間に僕の目の前に現れて行く手を(はば)み、また方向を変えようとすると、今度は先読みされて進路妨害。

 身体能力が違い過ぎる。反射神経、瞬発力、スピード。それに感も鋭い。どれを取っても僕が勝る物は無い。完全に打つ手なし。

 

フラ「キャハハハ、もう……()()()()()()

 

 ゆっくりと迫る手。恐怖のあまり僕はその場で腰から崩れ落ちた。もう僕は……ここで……。そう覚った途端、今まで楽しかった思い出が、一気にフラッシュバックしてきた。

 お父さんとお母さんとの生活、学校の特別授業、海斗くんとの買い物、魔理沙さんとの会話、霊夢さんの照れた時の顔、アリスさんの眩しい笑顔。

 アリスさん……最後にもう一度だけ……。僕はあなたにまだ伝えたいことが…………。

 

 

タッチ

 

 

フラ「じゃあ次はゆーきが鬼ね。フランの事を捕まえてねー」

 

 そう告げるとフランさんは、持ち前の超スピードで森の奥へと消えて行った。僕の肩に残る軽く叩いた感触を残して。僕、「は? え? コレどういう事?」と脳内パニック。そして文字通り置き去りです……。

 しばらくその場で呆然としていると、フランさんが顔をムスっとさせて戻って来た。

 

フラ「ねー! ちゃんと鬼やってよ! 鬼ごっこやった事ないの? タッチされたら鬼交代なんだよ?」

優希「ご、ごめんなさい。腰が抜けちゃって.……」

フラ「え? そうなの? でもくっついてるよ?」

優希「そういう事じゃなくて……」

 

 なんとベタなボケを……。

 

優希「ちょっと今立てないんです」

フラ「ふーん……、いつ治る? 治ったらまた遊べる? 今度は何する? 弾幕出せる? 弾幕ごっこしようよ!」

 

 早口でマシンガンの様に放つ質問。答える間もなく次々と。その上聞き慣れない単語まで。『ダンマクゴッコ』って何? 新しい遊び? 鬼ごっこ的な何か?

 頭に少し冷静さが戻り、周囲の状況も把握できて来た頃、さっきまでそばにいた彼女が、行方不明になっている事に気が付いた。

 

優希「あ、あの……。人形……、知りません?」

フラ「あー……アレ? さっきどっかに飛んで行ったよ」

 

 蓬莱ー! 見捨てるなー!

 

フラ「ねえねえ、それよりも遊ぼうよ。ネ?」

 

 「ネ?」が怖い。共感を呼びかけるとかじゃなくて、ただの脅迫。いつかのアリスさんと180°違う。このまま相手していたらいつかは……

 

 

 ガタガタ……。

 

 

 手が、足が、全身が震度5強。震源地は僕の内側。恐怖心と絶望感のプレートが引き起こしていた。それをフランさんが見逃すはずもなく……

 

フラ「どうして? なんで震えてるの? 寒いの? それとも……」

 

 

ゾクゾクッ

 

 

 再び走る悪寒。そして放たれる、

 

フラ「()()()()?」

 

 狂気。もう僕の心はボロボロ。目に涙が浮かび、終いには

 

 

ガチガチ……。

 

 

 歯まで鳴り出す始末。これ以上は耐えられない。僕が内側から壊される。

 

フラ「アハハ、でもフランがいるから大丈夫だよ。悪いヤツが来たら、『きゅっとしてドカーン』だから」

 

 でも、彼女は笑いながら「自分がいるから安心して」と告げて来た。もう僕の脳内は滅茶苦茶のグチャグチャの大混乱。いったいこの人は何? 何が目的なの!? 言っている事が一々怖いのに、「遊ぼう」とか「大丈夫」とかこれじゃあまるで……

 

??「優希!」

??「優希さん! 大丈夫ですか!?」

 

 と、そこに魔理沙さんとアリスさんが駆けつけてくれた。僕、もう涙腺崩壊直前です。生きてまたアリスさんに会えて良かった。もちろん魔理沙さんにも。

 

アリ「蓬莱から連絡がありました。『追われているから助けに来て』って」

 

 蓬莱ありがとう! 自分だけ逃げたんじゃなかったんだ。疑ってごめん!

 

魔理「おい、フラン! お前何しに来たんだ!?」

 

 魔理沙さんのダイレクトな質問。僕も気になっていた。

 

フラ「ゆーきと遊びに来たの! 鬼ごっこしてたんだよ」

 

 でもフランさんの回答はにっこり笑顔で「遊びに来た」と。僕はあれだけ怖がっていたのに……

 

魔理「優希、怪我ないか?」

優希「だ、大丈夫です」

魔理「フランッ! おま……」

 

 

パチンッ!

 

 

 何かが破裂したのかと思った。もしかしたら破裂していたのかも、いや、たぶん破裂したのだと思う。魔理沙さんがフランさんに全てを告げる前に、アリスさんがフランさんの頬をビンタしていた。

 

アリ「もし優希さんに何かしたら……、私はあなたの事を絶対に許さないッ!」

 

 初めて見た……。アリスさんの本気の怒り顔。予想外の威圧感に僕、ビックリ。と同時に感じる

 

 

ゾクゾクゾクッ!

 

 

 ここ一番の危険を知らせるシグナル。

 

フラ「……ョ」

 

 なんか嫌な予感……。

 

フラ「……ョ……ョ……ョ」

魔理「お、おいフラン。落ち着け。な?」

 

 アリスさんに叩かれた状態のまま、ブツブツと(つぶや)き始めるフランさんを、(なだ)め始める魔理沙さん。

 

フラ「……ィョ……ィョ……ィョ」

 

 でもフランさんは落ち着くどころか、その音量を徐々に上げていく。それは心のバロメーターが上昇していく様に。魔理沙さんもその事に気付いたのだろう。

 

魔理「アリスも殴るのはやり過ぎだze☆? 謝れよ、な?」

 

 アリさんにも「非はある」と告げ、「協力しろ」とでも言うように、フランさんに謝るように指示を出した。でもアリスさんは「フンッ!」とそれを拒否。そしてついに……

 

フラ「……ドィョ……ドィョ……ドィョ」

 

 フランさんのボルテージはMAXに。

 

フラ「ヒドイヨヒドイヨヒドイヨ! フラン何もしてないのにぃッ! えーーーん!」

 

 膝から崩れてとうとう泣き始めた。その姿に魔理沙さん、アリスさんは

 

  『え?』

 

 キョトン顔。そして僕はと言うと、この時「もしかしたら」と思っていた疑惑が、確信へと変わっていた。やっぱりこの人……

 

魔理「なんだ? なんだ? どういう事だze☆?」

アリ「えっと……」

フラ「えーん」

優希「あのー……、魔理沙さんとアリスさん。もしかしたら僕達、勘違いをしていたのかもしれません」

アリ「それどういう……」

優希「たぶん本当に、ただ遊びたかっただけなのかと……」

魔理「そうかも知れないけど、お前フランがどういうヤツか知らないだろ? フランはなぁ、吸血鬼で『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』っていう、超危険な能力の持ち主なんだze☆? 人間なんて片手で握りつぶすくらいの力だってあるんだ。それをフランはまだコントロール出来てないんだze☆?」

フラ「フラン、ちゃんとコントロールするもん!」

魔理「お前はいつキレるか分からないんだよ! そんなのと一緒にあそ……」

優希「僕は怪我していません! 大丈夫でした!」

フラ「ゆーき……?」

魔理「あのなー……」

優希「僕はフランさんを信じてあげようと思います」

アリ「優希さん! それは危険過ぎます! お願いですから、これ以上……」

 

 突然顔を両手で隠すアリスさん。僕、何が起きたか分からず一時硬直。そしてディレイを起こしながらも理解。泣いてる……? え? え? え? なんで? 僕が原因? アリスさんを……泣かせた? 僕がアリスさんを!? えーーーッ!? どうしようどうしようどうしよう……。

 

魔理「あのな優希、お前最近一人で森を通ってるだろ? それをアリスがどんな気持ちで待っているか考えた事あるか? お前が魔理沙ちゃん達に迷惑をかけたくないって気持ちは偉いと思うぞ? でもな、それだけじゃダメなんだよ」

優希「あわわわ……」

魔理「おい、聞いてるか? 今、魔理沙ちゃんスゲーいい事言ったんだぞ?」

優希「どうしよどうしよどうしよ……」

魔理「おい!」

優希「はい!」

魔理「はー……。とりあえずアリスに心配させた事、謝っとけ」

優希「はい……」

 

 魔理沙さんの渇で現実に帰り、いつも迷惑ばかり掛けてしまっているアリスさんの下へ。

 

優希「あの、アリスさん……」

 

 顔を両手で覆ったままで、返事は無かった。きっとアリスさんは、今みたいな事をずっと心配してくれていたんだと思う。凶暴な獣や妖怪がいる森。そこに弱くて、出来損ないの僕が飛び込んでいるのだから、心配になって当然だ。

 

優希「いつも心配させてしまってごめんなさい!」

 

 僕は「2人に迷惑を掛けたくない」と思うばかり、本質を見失っていた。

 

優希「それと……」

 

 だから約束します。

 

優希「もう心配とご迷惑を掛けないくらい、アリスさんの事を守れるくらい、しっかりとした強い男になります!!」

 

 これは僕の決意表明。絶対にそうなってみせます。

 

魔理「なんでそうなんだよ……」

優希「へ? ダメでした?」

アリ「ふふふ……」

 

 魔理沙さんにダメ出しをされていると、アリスさんからクスリと笑う声が聞こえた。そして、ゆっくりと顔を上げて涙を指で払いながら

 

アリ「じゃあ期待してます」

 

 と少し困り顔だったけど、微笑んで答えてくれた。枝の隙間から差し込む月の光。暗い森を上から照らしてくれる唯一の明かり。このお陰で僕はいつも助かっています。でも、今この時だけは……。アリスさんのその笑顔を照らさないで。瞳に残る涙が眩しく輝き、僕の心を強く、苦しくなるまでに締め付けた。

 

優希「本当にすみませんでした!」

 

 アリスさん、ごめんなさい……。

 

フラ「えーっと、フランどうしたらいい? ゆーきは信じてくれるんでしょ?」

 

 そこに割り込んでくる無邪気な脅威。人差し指で自分を指してキョトン顔。しっかり存在を忘れてた。どうしよう……、信じるって言っちゃったし、今更無しなんて事になったらまた泣き出すだろうし……、それ以上の事が起こるかもだし……。でもアリスさん心配するし……。困った。本当にどうしよう……。

 

優希「あーうー」

魔理「お前洩矢の神みたいな声を出すなよ……」

アリ「優希さんはフランの事をなんで信じてみようと思ったんですか?」

優希「えっと……、さっき(おび)えて震えていた時に、フランさんが『悪者から守る』って言ってくれたんです」

フラ「きゅっとしてドカーンね」

 

 片手をニギニギと、開いては閉じてを繰り返し、笑顔で答えるフランさん。そう、それです。でもそのフレーズ何? どういう意味?

 

魔理「それ本当か?」

フラ「ブー……、魔理沙も疑り深いなぁ」

 

 疑いの姿勢をなかなか解かない魔理沙さんに、フランさんいよいよ膨れ面に。あまりしつこいと、それはそれで爆発しないか心配です。すると、アリスさんが、

 

アリ「じゃあ、私も信じてみます」

 

 と。この瞬間フランさんの顔が一気に明るくなった。

 

魔理「本気かよ!?」

アリ「いきなり全部を信じられるわけじゃないけど、優希さんを守ってくれるって言っていたなら、『もう夜の森も心配しなくていいかな?』って」

魔理「は?」

優希「へ?」

アリ「だってフラン、優希さんの事を守ってくれるんでしょ?」

フラ「うん!」

アリ「じゃあこれから毎日、夜の森の優希さんの護衛をお願いできる?」

フラ「いいよ! お姉様に言っとく!」

 

 えーーーっ!? アリスさんそんな事考えてたのッ!? いや、最強の護衛ですけど、最恐ですよ!?

 

魔理「アリス、お前結構黒いな……」

アリ「ふふ、あんな目に遭わされたんだもん、利用できる物は利用しないと」

 

 笑顔でそう話すアリスさんですが……怖っ! その笑顔が怖いです! でもこれでなんとか丸く収まって……。

 

フラ「あっ」

 

 と思っていたのも束の間、フランさんが突然思い出したかの様に、頬を撫でながら

 

フラ「フランまだほっぺ痛いな〜」

 

 と。それは「まだ謝ってもらってない」と言いたげな感じで……。終わったと思ったのに、フランさんの中ではそこは譲れないみたいです。でも……

 

アリ「あら? そんなに強く叩いてないわよ? それに吸血鬼なんだから頑丈でしょ?」

 

 アリスさんはそれに真っ向から戦う姿勢。飛び散る火花。第2Rが始まろうとしていた。

 

魔理「おい、お前ら……」

 

 するとフランさん、止めに入ろうとする魔理沙さんを盾にしてアリスさんから身を隠した。

 

フラ「魔理沙ー、この人怖ーい」

 

 見方作りに動いたのだ。

 

魔理「もとはと言えば、お前が優希を追いかけるからだろ?」

アリ「そうでしょ?」

 

 が、断られた。しかも魔理沙さんはアリスさんに加担する姿勢。フランさん、現在2対1で分が悪い状況。で、

 

優希「えーん、ゆーきー。2人がフランを(いじ)めるー」

 

 こっちに来た。さっきの魔理沙さんの時同様、僕の背後に隠れようとする。でもその時に耳元で……

 

優希「ゆーきは私のミ・カ・タ・ヨ・ネ?」

 

 

 ゾクゾクゾクゾクゾクゾクッ!!

 

 

 恐怖と刺激で全身チキン肌。

 

アリ「優希さんから離れなさい!」

 

 そして目の前のアリスさんは蓬莱を向けて戦闘態勢。 僕、完全に2人の板挟み状態。この状況下で助けを求められるのは一人だけ。

 

優希「魔理沙さん、助けて。怖い……」

魔理「あー……、ご愁傷様!」

 

 誰か助けてーーーッ!

 

 

--オタク恐怖中--

 

 

フラ「わー、可愛い! これも手作り!?」

アリ「ふふ、気に入ったならあげようか?」

フラ「ホント!? やったー、ありがとう!」

  『……』

フラ「キャーッ! 何この猫!? すごい可愛いー!」

 

 僕がプレゼントしたストラップだ……。可愛い?

 

アリ「可愛いでしょ? でもそれはダーメ」

フラ「むー……、いいなぁ」

 

 一触即発の雰囲気の中、魔理沙さんが止めに入ってくれました。おかげで無事に、五体満足のままアリスさんの家まで戻って来れました。と、そこまではいいんですが……。フランさんまで一緒に付いて来て、今なんか2人ともすごい仲良くなってます。

 

フラ「コレの大きいやつ作ってよ」

アリ「じゃあ今度一緒に作ろうか?」

フラ「うん、約束ね」

アリ「うん、約束」

 

 事情を何も知らなければ、「2人は仲がいいんだな」って思う程の、微笑ましい光景なんだけど……。あんな事があったのに、何でこうもコロッと変われるんだろ?

 

優希「あの、魔理沙さん……」

魔理「言うな! 絶賛困惑中だze☆ ホント女子って面倒くさい」

優希「魔理沙さんも女子ですよ?」

魔理「じゃあ魔理沙ちゃんもあの輪に入った方がいいか?」

 

 ちょっと想像してみる……。キャッキャウフフしてる魔理沙さん…………。アリなんじゃない?

 

優希「悪くないと思います」

魔理「だが断る!」

優希「ナニッ!」

魔理「この霧雨魔理沙が……」

優希「もうやめときましょう……」

 

 ○○な冒険ごっこをしながら、魔理沙さんの外の世界のボキャブラリーの多さに感心。前にも言っていたけど、僕以外の『外の世界から来た人』から教えてもらったのかな? ん? という事はその方はコッチ(オタク)派!?

 

 

コンコン……。

 

 

 そこに外から扉をノックする音が。「あれ? こんな時間に誰だろ?」と思っていると、

 

アリ「あ、来たかな?」

 

 アリスさんがポツリと呟いて、駆け足で扉の方へ。そして「今開ける」と外の客人に告げてドアノブへ手を掛け……

 

 

ガチャ

 

 

アリ「え!?」

魔理「おいおいおいおい、主人自らかよ……」

 

 そこにいたのは、背中に大きな黒いコウモリの翼が生えた少女。髪の毛は薄い青色だけど、顔がフランさんにそっくりで、直ぐに姉妹だと察した。そしてアリスさん、魔理沙さん、美鈴さん、フランさんの話から考えると、この人が紅魔館の主人でお嬢様……。

 

【挿絵表示】

 

 

??「こんばんわ、いい夜ね。この子から手紙を頂いたわ」

上海「シャンハーイ」

フラ「お姉様……」

魔理「上海なんで主人に渡すかなー……」

??「美鈴が食事でいなかったみたいよ」

アリ「でもわざわざ……」

??「たまにはいいじゃない。それに……」

 

 この間僕、ぽかーん……。一人だけ蚊帳(かや)の外。するとフランさんのお姉さんが、僕の方へ視線を移してニッコリと微笑むと、

 

??「フフ。あなたとこうして会うのは初めてね。私はレミリア・スカーレット、本日お世話になったフランの姉です。以後お見知り置きを」

 

 自己紹介の後に、ドレスのスカートの裾を両手でつまんで、柔らかくお辞儀をした。通称:カーテシー。初めて見たー! お嬢様がやるヤツだ! すごい高貴な人なんだな……。えっと、コレには普通に返していいのかな?

 

優希「ぁ、ゆぅきです。よろ……しくです」ドキドキ

魔理「お前まだそのクセ治らないんだな……」

 

 すぐに治るなら苦労しませんよ……。

 

レミ「ゆーきさんですね。今度紅魔館へいらしてください、一緒にお茶でもしましょう」

フラ「ゆーきが家に来てくれるの!?」

レミ「ええ、ご招待したのよ。それじゃあフラン、帰るわよ」

フラ「はーい、そうだお姉様。私明日から……」

レミ「ええ、聞いてるわ。ちゃんと護衛して差し上げなさい」

フラ「ヤッター!」

 

 お姉さんからの許可が出て万歳をして喜ぶフランさん。そしてこの時をもって正式に決定しました。僕の最強にして最恐のボディーガードが。心強い様で、不安だらけで……、無事が保障されているようで、されてないようで……。とにかく矛盾だらけ。

 

フラ「じゃあね、ゆーき。また明日ね」

優希「あ、はい……。明日からお願いします」

フラ「あとアリス、()()ありがとう」

 

 フランさんがその単語放った途端、お姉さんの足ガピタリと止まり……

 

レミ「人形? キャッ、可愛いぃ!」

 

【挿絵表示】

 

 

 目をキラキラと輝かせて純粋無垢の少女の顔に。あれ? なんか急に……

 

レミ「いいなぁ」

アリ「今度同じの作ってあげるから……」

レミ「ホント!?」

魔理「おい、レミリア。ブレイクしてるze☆?」

レミ「はっ! こほんっ、それでは失礼します」

フラ「バイバーイ」

 

 

 




フランが護衛だったら、
生きた心地しないでしょうね。

そして、レミリア・スカーレット様
ご登場でした。カリスマ!

次回:「花見へ ver.優希」
いよいよEp.2最終話です。

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