東方迷子伝   作:GA王

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主は国語、算数、理科、社会の中では
算数が一番得意でした。
テストも楽に100点を取れていましたが、
その後、算数は数学に姿を変え、
苦戦する存在になっていました。

算数⇒数学への進化は反則です。



3時間目 算数  ※挿絵回

??「今日もよろしくお願いします」

  「『よろしくお願いしまーす』なのかー」

??「突然ですが、今日は体験入学の方が来られています。それではご紹介します」

 

 

ガラッ……

 

 

  『えーーーーーーッ!!』

大妖「えっ!」

チル「!?」

リグ「はぁッ?」

ミス「ふぇ~♪」

ルー「なのかー?」

 

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 (うつむ)き加減で教室に入って来たのは、守矢神社の神様の一人。普段は特徴のある帽子を被っておられますが……。

 

??「みなさんご存じの様ですよね。洩矢(もりや)諏訪子(すわこ)さんです」

諏訪「よ、よろしく」

 

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大妖「神様がなんで?」

リグ「神社いいのかよ?」

ミス「ふぇ~♪」

ルー「なのかー」

 

 意外な体験入学者に目を点にする生徒達。無理もありません。容姿からはとても想像できませんが、彼女は紛れもなく長年行き続けている神様。この様な場所に来られるような方ではありません。ましてや体験入学だなんて……。

 そんな生徒達の中で唯一様子がおかしい

 

??「アタイのせいだ……」

 

 チルノさん、頭を抱えてうずくまってしまいました。

 

  「『え!?』なのかー?」

大妖「もしかしてあの時の?」

男子「チルノ、お前何したんだよ?」

チル「じ、実はこの前、大ちゃんと守矢神社に遊びに行ったときに……」

リグ「あそこまで行ったのか? お前ら遊びに行く範囲広いな」

 

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チル「最初は2人でかくれんぼをしていたんだけど、途中から大ちゃんに九九の宿題を教えてもらっていたら……」

大妖「諏訪子さんが来て、ちょっと難しかったみたいで……」

生徒「わからなかったの? 九九が?」

チル「う、うん」

ミス「でも、それだけじゃ……」

大妖「そしたらチルノちゃんが『神様なのに九九知らないの?』って」

 

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リグ「うわぁ、それ100%チルノが原因じゃん」

チル「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

ルー「帽子はないのかー?」

 

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  『そういえば』

諏訪「神奈子と早苗に取られた……」

  『えっ!?』

??「諏訪子さんの件はご家族からの希望なんです。ですから、チルノさんが責任を感じる必要はありませんよ」

リグ「あー、読めた。あの2人に九九が分からない事を知られて、寺子屋(ここ)で覚えるまであの帽子を取り上げられたんだ」

??「リグルさんなかなか鋭いですね……」

諏訪「あーうー」

 

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 自己紹介はこれくらいにして授業を始めるとしましょう。

 

??「それでは諏訪子さんはそちらの席へどうぞ。それとせっかくなので、掛け算の抜き打ちテストをしましょう。配られた方から始めて下さい」

チル「大ちゃん、アタイまだ1の段も厳しいよ」

大妖「チルノちゃん、1の段はそのままだよ……」

ルー「苦手なのだー」

リグ「ミスチーは算数得意だよね」

ミス「じゃないとお店の経営できないからね~♪」

諏訪「あーうー」

 

 

--生徒試験中--

 

 

 全員の採点が終わり生徒達へ返却済み。抜き打ちテストにも関わらず、朝飯前といった表情を浮かべる生徒がいる中、算数が苦手の彼女達は――。

 

ミス「リグル~♪ できた?」

リグ「はぁー、3点」

ミス「ヒドイね……チルノは?」

チル「アタイ、リグルよりヒドイよ……1点」

大妖「チルノちゃん……」

ルー「2点なのだー」

 

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諏訪「あーうー」

大妖「あの、神様はどうでした?」

諏訪「……点」

大妖「え?」

諏訪「2点……」

  「『えー!』なのだー」

チル「アタイ達と変わらないじゃん」

リグ「これは新星が現れたな」

ルー「同じなのだー」

 

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諏訪「チビ共と一緒にするんじゃないよ! こんなの直ぐに覚えて、上から見下ろしてやるさ!」

リグ「へー、言ってくれるじゃんよ。私よりも点数低いクセに」

チル「アタイよりも1点いいだけのクセに!」

ルー「なのだー!」

大妖「ちょっと4人共落ち着こ、ね?」

 

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諏訪「神に楯突くなんていい度胸だね。じゃあ今度の掛け算の集大成のテスト、この4人の中で1番になったヤツがビリのヤツに、1つ命令できるってのはどうだい?」

  「『のった!』のだー」

ミス「も~……、なんでみんなそうなるの~♪?」

大妖「ミスチー、諦めよ……」

 

【挿絵表示】

 

 

 白熱する4名。なるほど、そういう……なにやら面白い展開になってきましたね。

 

 

--放課後--

 

 

  『ねー!』

??「おや? どうしました?」

リグ「洩矢の神に負けたくないんだ」

チル「アタイ達を特訓してよ!」

ルー「なのだー」

 

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??「特訓と言われても……」

リグ「何か簡単に九九を覚えられる方法はないの?」

??「そうですねぇ、色々ありますが一つその前に質問です。みなさんは九九が嫌いですか?」

リグ「だって計算苦手だし」

チル「アタイは覚えるのが苦手だし」

ルー「頭が痛くなるのだー」

??「なるほど」

 

 根本的に拒絶していますね、これでは克服は難しい。ならば……

 

??「では、歌は好きですか?」

リグ「それは……」

チル「アタイは大好きだぞ」

ルー「私もなのだー」

??「なら歌やリズムに合わせて、九九を覚えるというのはどうでしょう?」

  『???』

??「例えば、1×1が1♪ 1×2が2♪ 1×2が3♪ という具合に」

リグ「それならやれるかも」

チル「アタイ歌を作るの好きだぞ」

ルー「歌うのだー」

 

【挿絵表示】

 

 

 

--翌日--

 

 

チル「2×4が8♪ だから8!」

大妖「チルノちゃん、正解だよ!」

ミス「ふぇ~、3人ともどうしたの急に」

ルー「歌を作ったのだー」

リグ「九九を歌で覚えることにしたんだ。5×1が5♪ 5×2が10♪ って」

ミス「へー、楽しそうでいいね♪」

 

【挿絵表示】

 

リグ「絶対に負けない! 打倒、諏訪子!」

  「『おー!』なのだー」

諏訪「へー、神のこの私をチビ共が倒すって?」

大妖「諏訪子さん!?」

ミス「ふぇ~」

 

【挿絵表示】

 

リグ「ま、負けないからな!」

諏訪「どんな手を使ってくるのか知らないけれど、勝負をするからには私も全力で相手をさせてもらうよ?」

  「『のぞむところだ!』なのだー」

ミス「大ちゃ~ん。これ、ただの九九のテストの話だよね?」

大妖「う、うん。そのはずなんだけど……」

 

 

--そして運命の日--

 

 

??「それではテストを返します」

大妖「チルノちゃん、大丈夫?」

チル「アタイお腹が……」

ルー「空いたのかー?」

リグ「ルーミアはお気楽だな。私もドキドキしてきた」

ミス「みんな頑張っていたから大丈夫だよ~」

諏訪「これは私の勝ちが決まったかな?」

 

【挿絵表示】

 

??「みなさんもご存知のように、この中にこれから返すテストの点数を競争している方達がいます。折角ですので、今回は先にこの4人に特別な方法でテストを返したいと思います」

  『特別な方法?』

 

 首を傾げる生徒達、これから私が何をするのか想像もできないといった様子。

 

??「では発表します、第3位!」

 

 口で鳴らすドラムロール、教室内は瞬時に緊張の渦へ。

 

リグ「そういうことかッ!?」

ルー「ドキドキなのだー」

チル「大ちゃんアタイ……」

大妖「大丈夫だよ!」

 

 最初に名前を呼ぶのは……

 

??「ルーミアさん、80点」

ルー「やったのだー」

 

【挿絵表示】

 

 

 笑顔ではしゃぐルーミアさんに送られるのは驚きの歓声、無理もありません。

 

リグ「ルーミアだったかぁ」

チル「3位で80点!?」

諏訪「へぇ」

 

 発表は始まったばかり、どんどんいきましょう。

 

??「続いて第2位!」

 

 再び流れるドラムロール、そして包まれる独特の空気。

 

ルー「緊張するのだー」

リグ「もうルーミア呼ばれたでしょ……」

チル「もしここで呼ばれなかったら……。大ちゃんアタイ……」

大妖「だ、大丈夫だよ!」

 

 次に名前を呼ぶのは……

 

??「リグルさん、84点」

リグ「よし!」

 

【挿絵表示】

 

 

 ガッツポーズを取って喜ぶリグルさんへは惜しげも無い拍手、よく頑張りました。

 

ミス「リグルすご~い」

ルー「やったのかー?」

大妖「じゃあこれで残るのはチルノちゃんと……」

諏訪「ふん、ここまでは想定通りだよ。私が1位さ」

??「みなさん、心の準備はいいですか? いよいよ最下位を発表します」

 

 一気に静寂に包まれる教室、生徒の心臓の音が聞こえて来そうです。

 

チル「大ちゃん……」

大妖「だ、大丈夫だよ……たぶん」

リグ「奇跡よ、起きろー」

 

 最後に名前を呼ばれてしまうのは……

 

??「チルノさん」

  『あー、やっぱり……』

??「ですが、チルノさん76点と高得点です。良く頑張りました」

  「『チルノが76点!?』なのかー」

??「そして1位の諏訪子さん、せっかくですのでご感想を」

諏訪「ま、当然の結果でしょ。それとチルノに命令していいんだよね?」

 

【挿絵表示】

 

??「ええ、そういう約束ですから」

諏訪「それじゃあ……」

 

 そういい残して席を立つ諏訪子さん。チルノさんの席へゆっくりと歩き出し、

 

ミス「えっ、今!?」

大妖「お願いです、許してあげて下さい」

リグ「きついのは勘弁しろよな」

ルー「なのだー」

生徒「諏訪子様落ち着いて下さい」

 

 「穏便に」と懇願する生徒達には目もくれず、ついにターゲットの目前へ。

 

チル「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 

【挿絵表示】

 

 

 そして頭を抱えて怯えるチルノさんに、

 

諏訪「これからも勉強、頑張ること」

 

【挿絵表示】

 

 

 人差し指で額を小突いて命令を言い渡しました。

 

諏訪「命令だよ?」

チル「うん……」

 

 チルノさんその命令、ちゃんと守ってくださいね。

 

??「さてあとは他の方達にも配りますが、言わずもがなですね。みなさん満点です」

  「『え!?』なのかー」

??「リグルさんとルーミアさんも、もう少し頑張りましょう」

  「『はーい』なのだー」

 

 

--その日の放課後--

 

 

諏訪「これで満足かい?」

 

【挿絵表示】

 

??「ええ、充分です。一役買って頂いてありがとうございました。チルノさん、リグルさん、ルーミアさんは、普段から3人とも競い合って成長していますが、算数については3人ともほぼ同じ成績で伸び悩んでいました。でも諏訪子さんの機転のおかげで、成長のきっかけを掴めたみたいです」

諏訪「狙い通りってことかい。でも私もいい暇つぶしになったよ」

??「それはよかったです。ですが、初日のエピソードは実話なのでは?」

諏訪「ばっ、ばか言うんじゃないよ。誰が子供の算数なんかで苦戦するかい!」

??「そう言いますけど、最後のテスト一問間違えていますよ?」

諏訪「それは……、あーうー」

 

【挿絵表示】

 

??「あなたも負けじと勉強されていたみたいですね」

 

 

--そして更に時は経ち--

 

 

チル「大ちゃん……、アタイ九九の先があるなんて思わなかった」

リグ「なんだよ繰上りって……もう足し算のときで十分だよ」

ルー「ごちゃごちゃなのだー」

 

【挿絵表示】

 

 

 九九は全員が覚えることができた。あの3人がここまで成長してくれるとは正直驚きだ。今は苦戦しているけれど、九九の時と同じように、この3人はまた競い合いながら、助け合いながら成長していくのだろう。競える相手がいるというのは(うらや)ましいものだ。ずっといい友達、ライバルでいて欲しい。

 ここは幻想郷唯一の寺子屋。体験入学も受付中です。

 




転校生が来ると知ったときの
あのワクワク感。
異性であればドキドキ。
同姓であればちょっと張り合って
みようとしたり。

仲良くなった転校生の友達に
当時の事を聞いた時がありました。
そのときは「吐きそうなほど緊張していた」と
語っていました。

それはそうですよね・・・。

【おかりした物】
■モデル
①チルノ/ゆきはね様
 公式HP→http://yukihane.rdy.jp/
②洩矢諏訪子/にがもん様

■ステージ
 人里/鯖缶様
 スカイドームいろいろ詰め合わせ(軽量版)/額田倫太郎様
■ポーズ
 日常ポーズ集/彩籠様
 指ポーズ集/あすは様

■エフェクト
 Adjuster.fx v0.21/Elle/データP様


次回:「4時間目 遠足(準備)」 

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