東方迷子伝   作:GA王

35 / 229
図工の授業が一番好きでした。
ただ絵を描くのが凄い苦手で、
特に人物画が酷かったです。

主はもっぱら工作系が好きでした。
それは今も同じで、
今思うとそれが原点だったのかもしれません。


7時間目 図工  ※挿絵回

??「今日もよろしくお願いします」

  「『よろしくお願いしまーす』なのかー」

??「では早速ですが、体験入学の方がいらしてますのでご紹介しましょう」

 

 

ガラッ。

 

 

 私の合図で戸を開けて入って来たのは、いつもお世話になっているスーパーメイドさん。意外な体験入学生に生徒達は驚いた表情のまま言葉を失い、しばらくの間沈黙(ちんもく)が続きました。

 やがて静かな教室にどよめきの声がチラホラと聞こえて来たころ、

 

大妖「キャーーー!」

リグ「おいおいおいおい」

チル「あわわわわ……」

ミス「イヤァーーーッ♪!」

ルー「ガタガタガタ……。マナーモードなのだー」

ヒマ「みんなどうしたの?!」

 

 一部の生徒達が悲鳴を上げて(おび)え出しました。無理もありませんね、スーパーメイドさんの後に入って来たこの方こそ、今回の体験入学生――

 

??「やっほー来ちゃった」

 

【挿絵表示】

 

 

 紅魔館の主人の妹様、フランドール・スカーレットさんです。

 

??「ご存知の方もいるようですね。紅魔館からお越しのフランドール・スカーレットさんです」

フラ「フランって呼んでねー」

リグ「あのさ一応聞いておくけど、本物?」

フラ「そうだよ、証拠見せようか? きゅっとしてー……」

リグ「いーいーいーいー! 本物だって信じるから!」

フラ「ふーん……」

 

 断るリグルさんに少し残念そうにするフランさん。それはそうと(てのひら)……、何でこっちに向いているのでしょう?

 

【挿絵表示】

 

 

??「フランさんは図工の授業を受けに来られます。また、本日咲夜さんはフランさんの保護者として、授業を見学されて行くそうです。皆さん仲良くして下さいね」

  「『は、はーい』なのかー……」

??「では、フランさんはチルノさんの後ろの席へどうぞ」

フラ「はーい」

??「さて早速授業を始めましょう。今日の図工は絵を描きましょう。何を描くかは自由です。題材に困ったら秋ですし、外の紅葉(こうよう)を描いてみてもいいでしょう」

 

 

––生徒準備中––

 

 

フラ「いひひ〜、フラン絵の具セット持ってきたんだ〜」

リグ「へー、よく持ってた……お持ちでございましたですね」

大妖「フラン様は何を描かれるのですか?」

ルー「今日はExモードでいるわ……」

チル「えーっとアタイは……ムグッ」

 

【挿絵表示】

 

リグ「チルノ、今日一日発言禁止だからな」

フラ「みんなもっと普通にしてよ。それにさっき言ったじゃん、フランって呼んでって」

大妖「で、ですが……」

チル「別にいいんじゃないの? 本人がそう言ってるんだし、アタイはフランって呼ぶよ」

リグ「チルノ、それ以上(しゃべ)ったら口にガムテープ()るぞ」

フラ「フランもチルノの事はチルノって呼ぶね。ねぇチルノ、他のメンバーは何て呼んでるの?」

チル「アタイの隣にいるのが大ちゃん。その隣がヒマリ、で向こう側にいるのが奥からミスチー、ルーミア、リグル」

フラ「フランだからね、よろしくー。イエイ」

  『イ、イエイ……』

 

【挿絵表示】

 

 

 

--生徒絵描中--

 

 

 そろそろ出来上がって来た生徒も多いみたいだな、少し(のぞ)いてみようか。

 

??「リグルは絵が上手いな。色使いも綺麗(きれい)だ」

リグ「さんきゅー、でもまだまだ」

 

【挿絵表示】

 

 

 隠れた才能と言うべきだろうな。勉学の面ではお世辞にも優秀とは言えないリグルが、図工という科目では文句なしの優等生だ。そういえばあの時に描いた仏の絵、あれも独自性があって面白い物だった。

 でも、充分な仕上がり具合だと思うが「まだまだ」とは。()り出すと止まらないのも少々考えものだな。

 

??「ほどほどにな」

 

 で、こっちの問題児は……。

 

??「チルノ、それは?」

チル「雪だるま」

??「点が2つしかないけど?」

チル「雪だるまの目」

 

【挿絵表示】

 

??「どうしてそこを描こうと?」

チル「うーん……可愛いから?」

??「紙をもう一枚あげるから違う物も描いてみようか……」

 

 隠れた才能は(いま)だ見つからず。何か特出している科目があれば他の授業へもいい影響を与えられそうだが、今のところそういった(たぐい)はない。どうしたらいいものか……。

 

フラ「ねえねえ、フランのはどう?」

??「ん? これは赤一色でずいぶんと大胆な紅葉ね。でも同じ赤にも強弱があって面白い。でも紅葉は赤色以外にも——」

フラ「これフランの部屋だよ」

??「え?」

フラ「赤いのはチシ——」

??「あーはい。分かった分かった」

フラ「ふふ、ウ・ソだよ」

 

【挿絵表示】

 

 

 ど・こ・ま・で・が? まったくこの妹君は……。

 

 

--別の日--

 

 

【室内】

大妖「ずいぶんと積もったね」

リグ「何だよ雪って……。ただ寒いだけじゃん」ガチガチガチガチ

ミス「リグル大丈夫〜?」

ヒマ「暖かくしてもらうように頼んで来ようか?」

 

【挿絵表示】

 

リグ「ヒマリお願いしていい? それにしても……、あのバカ達は何であんなに元気かな?」

【外】

チル「なじむ! 実に! なじむぞ! 最高にハイってやつだアアア」WRYYYYY

フラ「やれやれだぜ……」

ルー「なのらー?」

【室内】

リグ「チルノだけなら分かるぞ? でもフランとルーミアは絶対寒いだろ? ルーミアなんて鼻水垂れてるし」

大妖「ルーミアちゃん戻っておいで。鼻かもう」

【外】

ルー「ん? あーい、なのらー」

 

【挿絵表示】

 

チル「ふふふ……、アタイはこの時を待っていた」

 

【挿絵表示】

 

フラ「ふふふ……、それはフランも同じだよ」

 

【挿絵表示】

 

  『勝負!!』

 

【挿絵表示】

 

【室内】

??「皆さんおはようございます。出席を取るので席に——」

【外】

チル「ムダムダムダムダムダムダムダムダムダー!」

フラ「悪羅悪羅悪羅悪羅悪羅悪羅悪羅悪羅(おらおらおらおらおらおらおらおら)ー!」

チル「わわわわわ、『氷符(ひょうふ):アイシクルフォール』!」

フラ「あ、スペカずるーい! それなら……『禁忌(きんき):フォーオブアカインド』!」

チル「4人に増えるなんて反則だよ!」

 

【挿絵表示】

 

【室内】

??「あれは雪合戦で合ってます?」

  『たぶん……』

??「チルノさんとフランさんは元気に出席と……」

 

 

--生徒点呼中--

 

 

??「さて今日の図工の時間はせっかくですから、雪で何か作りましょうか」

 

 と言ってみますが……

 

??「やっと暖かくなってきたのに? 外に出たくないなあ」

??「おい、リグル……」

 

【挿絵表示】

 

 

 もうすっかり暖まった室内からは出にくいものです。

 

??「私もこっちの方がいいな〜。はぁ〜、ポカポカ〜♪」

??「ミスティア……」

 

【挿絵表示】

 

 

 なお寒いこの時期、ストーブもヒーターもない寺子屋では、この方の周りに生徒が集まるのが恒例となっています。

 

??「ふー、あったかーい」

??「もう少しだけ、もう少しだけ」

??「ヒマリに大妖精……。オ・マ・エ・ラ・ナー」

 

 常勤教師で燃料いらずの火付け役、毎度お馴染みの妹紅さんです。

 

 

【挿絵表示】

 

 

  『ん~?』

妹紅「全員離れろ! 私を湯たんぽ代わりにするな!」

リグ「あちち、もう少し抑えてよ」

妹紅「なんなら香ばしくいっとくか?」

  『外に行ってきまーす』

 

 ああいう言い方ですが、本当は嬉しいんだと思います。

 

 

--生徒工作中--

 

 

 大きな雪玉を仲良く転がす5人、この光景を見るのはこの時間だけで実に三度目ですか。…フフフ、そこからが大変なんですが上手くいくと良いですね。

 

  『せーのっ!』

 

【挿絵表示】

 

リグ「うん、いい感じじゃない?」

ヒマ「私三段って作るの初めてかも」

ミス「思いの(ほか)大変だったね〜♪」

ルー「なのらー」

大妖「あ、ルーミアちゃんまた鼻が……」

リグ「で、あの二人は何を作ってんだ?」

 

 完成した雪だるまへの余韻(よいん)を早々と切り上げ、視線を移すリグルさん達。多くの生徒達からの眼差しが集中するそこには、授業開始前までには無かったはずのオブジェが。そしてその前では……、

 

??「『ちょっとだけ:きゅっとしてドカーン』」

 

 掌を氷の塊に向けて能力を巧みに操るフランさんと、

 

チル「おー、流石にもう壊れると思ったのに」

フラ「次はチルノの番だよ。もうムリじゃない?」

チル「アタイは天才だからまだやれるよ! 『氷符:アイシクルマシンガン』!」

 

 無数の氷を連射機のごとく放つ、オブジェの生みの親のチルノさんが。

 初めは青く透き通った美しい氷でしたが、今はギリギリ原型を(とど)めているといったところ。多数のツブテとツララが突き刺さり、いたるところにヒビ……いえ、ヒビのないところを探す方が困難と言えるでしょうね。ピキリピキリと悲鳴を上げ今にもパリンと(くだ)けてしまいそうです。

 うーむ、これは2人共遊んでしまっているようですね。

 

フラ「うわぁ、まだ壊れないんだぁ」

チル「アタイにかかればざっとこんなもんよ、けどもう次は無いよ。これでジ・エンドね」

 

 他の生徒もいますし、ちょっと注意をしておきましょうか。

 

??「…ふふふ、お二人とも楽しむのは実に結構です。けど今は図工の授業中、遊んではいけません」

 

【挿絵表示】

 

チル「アタイ達ちゃんと作ってるよ」

フラ「ほら、コレすごいでしょ?」

 

 凄いかと問われればそうなのかも知れませんが、コレを作品として認めてしまっていい物か……悩ましいところですね。

 

リグ「うわっ、なんだよコレ」

ヒマ「壊れそう……」

大妖「チルノちゃんコレ何?」

ミス「なるほど〜、芸術だね〜♪」

ルー「なのらー?」

チル「ふふふ、ミスチーにはアタイ達の天才ぶりが分かるみたいだね」

フラ「でもね、コレで終わりじゃないんだよ。チルノもういいよね? 最後の仕上げやって」

チル「いいよー、みんな少しだけ下がって下がって」

 

 「危ないから」ということなのでしょう。みんなもそう察したようで、不思議な顔をしながらもチルノさんの言われるがまま四歩、五歩と後退(あとずさ)りを。そして全員が安全な所まで下がったと判断したフランさんは――

 

フラ「いっくよー、そーれッ!」

 

 上空へ氷の塊を放り投げると、その直後に目にも()まらぬ早さで飛び上がり、さらにターゲットの背後に回り込むや、

 

フラ「『禁忌:フォーオブアカインド』」

 

 またしても4人に分身を。それだけでも充分驚きですが、フランさんの言う「仕上げ」はここからでした。

 

フラ①「全力!」

フラ②「きゅっ」ドヤッ

フラ③「TO!」

フラ④「して~」

  『ドカーン!!!!』

 

 その瞬間、氷の塊はガラスが割れた様な高音を上げて粉々に(くだ)け散り、カケラ達はダイヤモンドをばら()いた様に美しく輝きながらパラパラと降り注ぎました。

 

【挿絵表示】

 

 

チル「どう? 私とフランの作品」

フラ①「芸術は!」

フラ②「爆発」ドヤッ

フラ④「だ~」

フラ③「YO!」

 

 ええ、すごく神秘的でしたよ。形には残りませんが――

 

大妖「チルノちゃんとフランさん凄い!」

ヒマ「とってもキレイでした」

ミス「目に焼き付いちゃった〜♪」

ルー「なのらー」

 

 みんなの思い出に残るのなら、この様な形があっても良いでしょう。

 

リグ「チルノもフランもすごいと思うよ? でもさー……」

  『?』

リグ「アレ、雪じゃなくて氷じゃん」

  『あ……』

 

 

--さらに時は経ち--

 

 

【室内】

リグ「ガチガチガチガチ……。今年も雪降るのかよ」

ミス「リグル大丈夫〜?」

ルー「なのかー?」

ヒマ「妹紅さん呼んで来ようか?」

リグ「ヒマリお願い…。元気なのはアイツだけだよ」

【外】

チル「なじむ! 実に! なじむぞ!」WRYYYYY

【室内】

ヒマ「そう言えば去年はフランさんが来てたよね」

大妖「チルノちゃんとフランさんの凄かったよね」

ミス「また見たいな〜♪」

ルー「なのだー」

【外】

チル「みんなー、外で遊ぼうよ」

【室内】

  『断る!』

 

 去年のこの季節の図工で形には残らない素晴らしい芸術作品が生まれた。けれどそれは生徒達の記憶と心にしっかりと残り、この寺子屋の歴史の一部として今後も伝えられていくだろう。

 ここは幻想郷唯一の寺子屋。

 歴史に残る図工の授業があります。

 




破壊担当のフラン。図工とは真逆の関係。
だからこそ書いてみたかったです。


次回:「8時間目 体育」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。