Ep.4 のはじまりです。
まずはプロローグです。
下拵え ※挿絵有
通勤・通学客で
女A「今度ランド行かない?」
女B「私はシーがいいな」
女C「えー…、それなら多○センターの方が良くない?」
女D「あゆみは何処がいい?」
あゆ「えっと~、富士山の麓の~」
女C「うわぁ……あゆみ意外と絶叫系好きだよね」
女B「でも反応がワンテンポずれてるんだよねぇ」
あゆ「そーかな~?」
女B「だってジェットコースターの下りきったところで、いきなり『キャーッ』って叫んだりとかさ……」
女D「でも絶叫系ならランドもシーもあるよ」
女A「じゃあ、どっちかにしよっか?」
プシュー…
女A「あ、駅着いちゃった。あゆみ、あとでLINEするね」
あゆ「ん~、わかった~。ばいば~い」
『ばいばーい』
車内に一人だけ残して電車を降りて行く女子高生達。笑顔で手を振り、次の駅へと向かう電車を見送る。そして友人達と別れ、1人残された彼女はというと、
あゆ「~♪」
退屈しているのかと思いきや、なぜかどこか楽しそう。ゆっくりと車内を見渡す彼女の視線の先には、仕事で疲れたのか深い眠りについたスーツ姿の男性や買い物帰りの親子、他には静かに本読む女性やスマホを見ている若者、新聞を読んでいるサラリーマンの姿が。
電車は様々な人が利用し、皆違った過ごし方をするもの。彼女はそれを眺めているのが好きな様だ。
プシュー…
電車が次の駅に到着。そこは有名な電気とアニメの街。彼女が通学でいつも通る駅ではあるが、一度も降りた事がなかった。「今度降りてみようか」と思っているところに、二人の男子高校生が乗車してきた。彼等は彼女の目の前の席に座り、お互い一言ずつだけ言葉を交わし、そのまま眠りへ。
その光景に、「話しをしながら帰らないのか?」疑問に思う彼女であったが、あまりにも心地良さそうに眠る二人を見ているうちに、次第に睡魔が彼女を襲い……やがて夢の中へーーーー
ドーーーン!
突然の大きな音に驚き、目を覚ましたあゆみ。
あゆ「ん~?」
周囲を見回すが、
あゆ「あれ~?」
竹だらけ。眠る前は電車の中にいたはずが気付けば竹林の中。
あまりの突然の状況変化に頭の回転が付いていかず、呆けているところに、
??「あ?お前そこで何やってんだ?」
あゆみの背後から声が。振り返るとそこには、長い白髪に赤いリボンをした少女の姿が。声を掛けられたあゆみ、返答に困ってしまい……、
あゆ「えっと~、え~っと~……」
慌てる。
イラッ!
少女「さっさとしゃべれー!」
あゆ「うわ~、イタイイタ~イ!」
結果、初対面の少女に頭を拳骨で左右からグリグリをされることに。
少女「あ?ここが何処だか分からない?」
あゆ「そ~なんです~」
少女「まいった、このパターンは初めてだ」
あゆ「ど~しよ~」
少女「とりあえず付いて来い、
頼れそうなヤツに合わせてやる」
あゆ「は~い」
出会った少女の後ろに付いて更に竹林を奥へ奥へと進んで行くと、一軒の大きな屋敷が彼女の目に飛び込んできた。
あゆ「お~…」
少女「なんだよ、変な声出して」
あゆ「っき~」
イラッ!
少女「タメが長いんだよー!」
あゆ「うわ~!イタイイタ~イ!」
??「何やってるウサ」
屋敷から出てきたのはあゆみよりも小さな体に大きな兎の耳を付けた女の子だった。その小さな兎を見たあゆみは、
あゆ「か、か、か…。かわい~~~~!」
突然叫び出し、抱き付いた。
兎①「ウサッ!?は、離れるウサ!」
あゆ「キャッ、耳!耳ふわふわ~」
兎①「耳は…、ハァハァ、やめ…あっぁ~…ビクビク!」
イラッ!
少女「いい加減にしろー!」
見るに見かねた少女は、
あゆ「イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!」
兎①「痛い!痛い!私は被害者ウサー!」
二人に痛恨のグリグリをプレゼントした。
あゆ「もう、なんなのさっきから。あれ?妹紅?」
屋敷から出てきて少女の名を呼んだのは、ブレザーにミニスカートを穿いて兎の耳をしたあゆみと同じくらいの年の女の子だった。
そして、あゆみは・・・
あゆ「か、か、か…。かわ…」
ブレザーの少女に飛び掛った。
ガシッ!
が、一歩手前で妹紅に阻止され、
妹紅「おい、お前。
同じ事を繰り返すつもりじゃあ
ないだろうな?」
あゆ「え~~~っと~…」
イラッ!
妹紅「やっぱりかー!」
あゆ「ごめんなさ~い!」
妹紅から4回目のプレゼントを受け取った。
兎②「えっと、それで妹紅そちらは?患者さん?」
妹紅「いや、どうも迷子みたいだ。
ココが何処だか分からないんだってさ」
兎②「何処だか分からない?
えっとここは『迷いの竹林』ですよ。
って言って分かります?」
あゆ「ん~?」
妹紅「迷いの竹林。分かるか?」
あゆ「ん~??」
妹紅とブレザーの兎から現在地を聞かされるも、聞いたことのない名前に戸惑うあゆみ。すると、
妹紅「ダメだこりゃ」
妹紅は諦めだした。
しかしここでブレザーの兎が別の可能性を口にした。
兎②「もしかしたら外来人かも…」
外来人。妹紅達が住むこの世界。名前を幻想郷。
その幻想郷の外側の世界からやって来た者達は外来人と呼ばれている。
あまりに意外な言葉に妹紅と小さな兎は
『は!?』
呆気に取られた。
ブレザーの兎は自分が言った可能性を確かめるためあゆみに質問をした。
兎②「あの、何か覚えていることありますか?」
あゆ「学校に行って~、電車に乗って~」
妹紅「学校…、
そういや
兎②「じゃあやっぱり…」
兎①「外来人ウサ」
あゆ「ん~?」
兎②「私お師匠様に相談してくる」
妹紅「いいか、落ち着いて聞けよ。
お前からするとここは別の世界なんだ」
兎①「そんなにストレートに言わなくても…」
妹紅から突然聞かされた事実。
それを聞かされたあゆみは。
あゆ「へ~、やっぱりそ~なんだ~」
予想通りといった反応。
予想外の反応に妹紅と小さな兎は、
『えー…』
落胆。
妹紅と小さな兎があゆみに幻想郷について話しているところに、ブレザーの兎が白くて長い三つ編みの大人の女性を連れて来た。
??「こんにちは、私は八意永琳です。
あなたが外来人?」
あゆ「みたいで~す」
永琳「名前は?」
あゆ「あゆみで~す」
永琳「あゆみちゃん、今日はもう夕暮れ時だから、
ここで泊って行きなさい。
明日知り合いに頼んで、
元の世界に帰れる様にしてもらうから」
八意永琳と名乗る女性からの提案にあゆみは、
あゆ「は~い。おじゃましま~す」
何の疑いも無く、素直に聞き入れた。
妹紅「コイツ何でも受け入れるのか?」
他人の、しかも異世界で初めて出会った者の家へ宿泊する事に、何の抵抗も示さないあゆみの素直さに困惑する妹紅。その妹紅とは逆に、それを喜ぶ者が一人。
兎①「いい獲物が来たウサ」
シメシメといった顔でニヤニヤと笑う小さな兎。
兎②「てゐ、あんた屋敷のアレ片づけなさいよ」
てゐ「何の事ウサ?」
兎②「とぼけないで!ケガしたら大変でしょ!」
妹紅「お前まだそんな事やってたのか…。
私はもう帰るからな。
アイツの顔見たくないし」
あゆ「え~、私嫌われたの~?」
妹紅「あゆみの事じゃないよ。
ココのしょーもない奴のことだ。じゃあな」
あゆ「うん。また今度ね~」
ここまでお世話になった妹紅に笑顔で手を振って見送るあゆみ。
兎②「また今度って…」
てゐ「明日には帰るウサ…」
永琳「ふふ、あゆみちゃんって可愛い」
『え!?』
妹紅と別れた後、あゆみは屋敷の中へ案内された。そこはまさにTVに出てくる純和風の田舎の農家の様な昔ながらの家。
兎②「私の後ろに付いて来てくれる?」
ブレザーの兎があゆみを案内する事になり、その後ろをあゆみは付いて行く。
あゆ「あの~、えっと~」
兎②「ん?なに?」
あゆ「ウサギちゃんの名前は~?」
兎②「ごめんなさい、自己紹介がまだでしたね。
私は鈴仙です。よろしくね」
あゆ「冷麺ちゃんよろしく~」
鈴仙「鈴仙なんだけど…」
あゆみと鈴仙が自己紹介をしながら歩いて行く。
そして、その後ろをこっそりと付いて行く者が。
てゐ「ムフフ、もうそろそろウサ」
てゐである。もう少しで起きる事象を今や遅しと
待ちうけている様だ。
そんな事とは露知らず 、楽しそうに話しながら歩を進める鈴仙とあゆみ。鈴仙が更にもう一歩足を進めようとしたその時、あゆみは鈴仙の足元の異変に気が付いた。
ポチッ。
鈴仙の足元からは不吉なスイッチ音が。
鈴仙「え?やば!」
やってしまった事に焦りだす鈴仙。そして、
ガーン!
鈴仙の頭上からタライが落下し、素敵な音を奏でる。
鈴仙「あのクソウサギ~~…」
当然、激怒である。
そして鈴仙は一度大きく深呼吸をし、心を落ち着かせた後、あゆみに
鈴仙「実はこの屋敷ね…。
さっきいた小さいウサギ、
『てゐ』って言うんだけど、
あいつのせいで罠だらけなの」
事情を説明した。
あゆ「ん~?」
しかし、それはあゆみに通じていなかった様で、
仕方なく…
鈴仙「えっと…。罠だらけで危ないの」
少しずつ説明していくことに。
あゆ「なんで~?」
鈴仙「さっきの小さいウサギのせいで…」
あゆ「へ~」
鈴仙「だから気をつけてね」
あゆ「うん、わかった~」
説明が終わったところで思わず本音が。
鈴仙「疲れる…」
すると突然、説明を聞き終わったあゆみが、
あゆ「じゃ~、
さっきの色は触っちゃダメなんだね~」
可笑しなことを言い出した。
何かとの聞き間違いかと思い、
鈴仙「え?色?」
鈴仙は聞き返してしまった。
そしてそれは隠れて見ていたハンターにも聞こえ、
てゐ「色?何の事ウサ?」
疑問を抱かせた。
2人が疑問に思う中、あゆみは更に続けて、
あゆ「さっき冷麺ちゃんが踏んだ所、
赤い色してたよ~。あとそこの壁も~」
鈴仙「ここ確かに罠のところだけど…。
あゆみちゃん分かるの!?」
あゆ「うん。
あとここから5歩くらい進んだ床も~」
見えていた『色』について話し始めた。
それを物陰から聞いていたハンターは、
てゐ「コイツ何者ウサ?」
焦りを感じていた。
鈴仙「あゆみちゃん、もしかして能力持ちなの?」
あゆ「ん~?」
鈴仙「一度部屋に案内するから、
その後私とお師匠様の所に行ってくれる?」
あゆ「わかった~」
鈴仙「じゃあ部屋はもうすぐだから付いて来てね」
あゆみを部屋へ案内するため、更に歩を進める鈴仙。
1歩、2歩、3歩、4歩…。
5歩目を踏んだその時!
ポチッ。
鈴仙「え?また!?」
あゆみの予告通りの場所で、鈴仙に2度目のタライのプレゼントが降って来た。
ガーン!
鈴仙に部屋を案内され、荷物を置いた後、再び鈴仙と共に彼女の師匠の部屋へと足を運んだ。
永琳「え?色が違う?」
弟子から妙な事を言われて困惑する永琳。
弟子は更にあゆみが話していた事を説明する。
鈴仙「そうみたいなんです。
あゆみちゃんが言うには、
てゐの仕掛けた罠の位置だけ、
色が違って見えるそうです。
その証拠にあゆみちゃんの部屋から
ここまで一度も罠にかからないで来ました」
永琳「へー。てゐがわざわざ罠の位置を
教える様なことをするとも思えないし、
あゆみちゃん、
この世界へ来る前も同じ様なことが?」
あゆ「ん~?」
鈴仙「えっと、前にも同じ様な事あった?」
あゆ「ありませんでした~。初めてで~す」
永琳「ならきっとこっちの世界に来た時に
開花しちゃったのね」
鈴仙「なんの能力でしょう?」
永琳「多分『危険を察知する程度』
とかじゃないかしら?」
鈴仙「この屋敷にうってつけですね…」
--翌朝--
あゆ「冷麺ちゃん、チビウサギちゃん、
永琳さん、おはようございまーす」
身支度を終え、元気な声で挨拶をするあゆみ。
てゐ「おはよウサ」
永琳「おはよう」
鈴仙「おはよう。あと鈴仙だからね…」
それに笑顔で応える鈴仙、てゐ、永琳。
永琳「良く眠れた?」
あゆ「はい。それと…」
あゆみの視線の先には昨日は見なかった女の子が。見た目はあゆみと同じ年頃だが、
その身なり、姿勢が気品を感じさせ、あゆみは純和風な美人だと感じた。
そして…
あゆ「か、か、か…。かわい~~~~!」
また飛び付いた。
??「え!?ちょ、何この子!?」
あゆ「わ~、お肌モチモチでスベスベ~。
髪の毛長いのにサラサラだ~、いいな~」
??「ちょっと頬ずりしないでよ!
ご飯が食べれないじゃない!」
あゆ「え~、も~ちょっとだけ~」
永琳「はいはい、あゆみちゃん。
もうその辺で止めましょうね。
その方はこの屋敷のお姫様、
蓬莱山輝夜様よ。
姫様、昨夜お話ししたあゆみさんです」
永琳はあゆみを宥めながら輝夜から引き離すと更に続けて、
永琳「あゆみちゃん、さっき知り合いに、
元の世界に帰れるか聞いてみたんだけど…
今は難しいらしいの。
後2~3年は帰れないそうよ。
ご家族も心配していると思うけれど、
力になれなくてごめんなさいね。
それで、帰れるまではここにいていいから」
友人から聞いた話を掻い摘んで、謝罪する様にあゆみに説明をした。その話を聞かされた本人はと言うと、
あゆ「は~い。よろしくお願いしま~す」
また何の疑問も抱かず、素直に聞き入れた。
輝夜「この子ホントに何なの?頭大丈夫?」
てゐ「素直すぎるウサ…」
永琳「それとコレをあゆみちゃんにって。
お守り。肌身離さず持っててね」
あゆ「は~い。ありがとうございま~す」
あゆみは元気良く返事をし、永琳から『博霊神社』と書かれたお守りを受け取った。
Ep.4 は Ep.2 で少し出てきた
ケーキ屋の女の子の話になります。
次回:「Menu①:パンケーキ」
--2018/05/28--
挿絵作りました
【おかりした物】
■モデル
①春子/ゆきはね様
公式HP→http://yukihane.rdy.jp/
②藤原妹紅/nya様
■ステージ
竹やぶ/NuKasa様