東方迷子伝   作:GA王

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主はドーナツは大好きです。
有名なドーナツのチェーン店に訪れた際に必ず買う物は、一口サイズの6個入りのドーナツとポン◯デリングぜぇ。そしてこれが翌日の朝食になります。



Menu③:ドーナツ        ※挿絵有

迷いの竹林の中にある永遠亭。

 

今は昼の少し前、

永遠亭の縁側には今日も3人の乙女が、

 

ズズー…。

 

  『はぁ~。お茶が美味し~』

輝夜「あゆみ、お店の準備はいいの?」

あゆ「これからモコちゃんが来てくれて~、

   一緒に手続きしてくれるって~」

 

昨日の皆の勧めから店を出す事にしたあゆみ。今日はそのための手続きをしに行く様だ。

 

てゐ「それが終われば、いよいよ工事ウサ」

輝夜「それじゃあまだ先になりそうね」

あゆ「でもモコちゃんがあっという間に

   終わらせてくれる人達を知ってるとかで~、

   明日から営業する気でいろ~

   って言ってたよ〜」

輝夜「そんな人いたかしら?」

 

喧嘩相手が言っていたと言う人物に心当たりがない輝夜は、不思議に思いながらも、彼女を信じる事に。

 

輝夜「それで何のスイーツを売るの?」

あゆ「色々考えてるけど、

   一番やりたいのはケーキ屋かな~。

   でもね、ケーキって冷たいところで

   保存しないといけなくて~。

   大きな冷蔵機能付のショーケースが

   欲しいんだけど~…」

輝夜「それはかなりハードル高いわね。

   幻想郷は冷蔵・冷凍技術が遅れてる

   から」

 

ここ幻想郷は外の世界と比べると著しく文明の発達が遅れており、電化製品の普及率も疎らで、その機能も民衆を満足させられる物ではなく、何より電気が通っているのが極限られた場所のみだった。

 

あゆ「そうなの…。だから暫くは

   日持ちする物くらいしか…」

 

あゆみが悲しい顔で視線を下に落としながら話していると、

 

てゐ「じゃあ、河童に作ってもらうウサ」

 

悪戯好きの兎が外の世界でも有名な妖怪の名前を口にした。

 

あゆ「河童って胡瓜が好物の〜?」

てゐ「その河童ウサ」

あゆ「本当にいたんだ~」

 

あゆみが空想上の生物だとばかり思っていた河童。しかし、平然とその存在を認めるてゐ。

 

輝夜「でもあゆみが思ってるのと少し

   違うかもよ?」

あゆ「ん~?」

てゐ「ちょっと行ってくるウサ。

   後で人里に寄らせるウサ」

 

思い立ったが吉日と言った様子で、縁側からピョンと飛び降り、走り去る悪戯好きの兎。

 

あゆ「ありがと~」

輝夜「てゐがあんなに張り切るなんてね」

 

あゆみがこの世界に来る少し前までてゐは、竹林の中に落とし穴を作っては鈴仙が落ちる様を物陰から見て喜び、またある時は屋敷の中に罠を仕掛け、鈴仙が引っかかるのを楽しんでいたりと悪戯ばかりしていた。そんなてゐが、人の為に進んで行動しているのを見て、微笑ましく思う輝夜だった。

 

あゆ「カグちゃんは運動止めたの~?」

 

この言葉に少しカチンと来た輝夜は、

 

輝夜「なら相手してくれる?」

あゆ「ゆっくりならいいよ~」

 

あゆみを狩る事を決意した。

 

 

--少女弾幕中-

 

 

所変わって永遠亭内では、

 

妹紅「あゆみー!いないのかー?」

 

あゆみを迎えに来た妹紅だったが、何処にも見つからず大声で呼んでいた。そこへ声を聞きつけた鈴仙がやって来た。

 

鈴仙「あ、妹紅。あれ?

   庭の方にはいなかった?」

妹紅「いや、誰もいなかったぞ」

鈴仙「変ね。ん?姫様とあゆみちゃんの靴がない」

妹紅「外か…」

 

【屋敷の敷地外】

輝夜「ふー、今日もいい汗かいた」

 

昨日に続き、清々しい笑顔で額の汗を拭うハンター。今回のハンティングにも満足といったご様子。そして獲物の具合はと言うと、

 

あゆ「先回りするとかズルイよ~」

 

ボロボロになりながら涙目。

いや、…泣いていた。

 

輝夜「動かないなんて一言も

   言ってないじゃない」

あゆ「カグちゃんが動いただけでも

   色がメチャメチャになるのに~」

 

あゆみが見ていた景色は赤と緑の2色が疎らに色分けされた世界。それが輝夜が移動する都度、ガチャガチャと忙しなく色を変え、それを見ている方は堪ったものではない。

 

輝夜「全部の色を見るからじゃない?

   緑だけ見るとかできないの?」

 

平然と言う輝夜に納得するものの、「それが出来たら苦労しない」と思うあゆみだった。

 

妹紅「あ、いたいた」

輝夜「げっ、妹紅…」

 

犬猿の仲の2人が顔を合わせた。

 

妹紅「あゆみ遅れて悪かったな。

   支度できたら行くぞ」

あゆ「は~い」

 

が、何も見ていなかった様にお互い華麗にスルー。

しかし、

 

妹紅「おい、引き篭もり」

 

戦線布告とも捉えられる出だし。

 

妹紅「もしコレを日課にするなら…」

輝夜「日課にするなら何よ…」

 

どんな開戦になるのか身構える輝夜。

 

妹紅「たまには付き合ってやる。

   じゃあな」

 

しかし、何故か嬉しそうな顔で再戦を約束する永遠のライバルに、

 

輝夜「ふん!その時は完膚なきまでに

   叩きのめしてやるわ」

 

少し顔を赤くしながらも、腕を組んで偉そうに答える輝夜だった。

 

 

--少女移動中--

 

 

妹紅の案内で人里の役所で手続きを済ませ、例の家へやってきたあゆみ。案内人は寺子屋に用があるからと役所で別れた。あゆみが家の前で佇みながら「可愛い感じにしたい」と思っていると、

 

??「よっ!お待たせ」

 

2本の角が頭から生えた長髪の少女がやって来た。

 

萃香「えっと、依頼を受けて来た伊吹萃香だ。

   あと…」

 

萃香の後ろからやって来たのは、額から一本の赤い角が生えたスタイルの良い女性。彼女を見たあゆみは、同性にも関わらず「綺麗でかっこいい」と思い、自分の胸と見比べた後、彼女の破壊力抜群のナイスバディを羨んだ。

 

勇儀「星熊勇義、鬼だ。よろしく。

   それとこいつらは……おまけだ」

 

背後を親指で指す勇儀。そこから現れたのは、

 

鬼助「姐さん酷いです…。鬼助です」

 

猫背でガックリと肩を落とした鬼助と名乗る鬼。

そして、その隣には

 

鬼助「こいつは新米のオイラの弟分です」

弟分「どうも。よろしくお願いします」

 

礼儀正しく頭を下げて挨拶をする若者が。

 

あゆ「私、あゆみで~す。よろしくで~す。

   鬼って初めて見ました~。

   本当にいたんですね~。

   鬼ってもっと大きくて

   怖い顔だと思ってました~」

勇儀「ふふふ、昔誰かさんにも

   同じ事言われたっけね?」

 

笑って背後にいる若者を見ながら問いかける勇儀に、

 

弟分「もう覚えてないよ」

 

鼻で笑いながら答える若者。

 

勇儀「よし、じゃあ早速取り掛かろう。

   絵を描いて来てくれたんだろ?見せてみな」

あゆ「は~い、ど~ぞ~」

 

あゆみが手渡したのは外観のイメージ図。彼女が思う「可愛い感じ」に描かれ、拘りたい箇所にはコメントが記載されている。コメントは細かい所まで書いてたあり、彼女は全て希望通りにいくか少し心配だった。その絵を見た建築のプロは、

 

勇儀「…。おい鬼助。これどう思う?」

鬼助「ちょっと厳しいですね。

   大きなガラスとなると耐久性が…」

 

彼女が一番拘りたかった箇所を早々に指摘した。

 

あゆ「そーですか~…。

   でも中が見える様にしたいんです~」

 

『外から中を見える様にしたい』そこは譲れないあゆみに、

 

勇儀「じゃあ…」

 

と、代替案を出した。そこからあゆみと鬼達の間で話し合いが行われ、決まったところから下っ端のおまけ達が作業を始めていき、全体が決まったところで…

 

勇儀「よし、じゃあ私達も加勢するか」

萃香「そうだね。さっと終わらせて、

   そのあとに…チラッ」

 

少し頬を赤らめながらある方向、ある人物を見ている萃香に

 

勇儀「はいはい、終わったらね。

   細かい所は任せたよ」

 

呆れ顔で「仕事をしろ」と返す勇儀。

その言葉に萃香は気持ちを仕事モードへとスイッチを入れ替え、能力を発動した。

 

萃香『よし、これくらいいればいいか』

 

能力を発動した萃香は

 

あゆ「小さくなって増えた~!」

 

のである。更にあゆみは畳み掛ける。

 

あゆ「か、か、か…かわい~~~~!」

萃香『えっ、なになに!?』

 

小さくなった萃香を一人捕まえ、

 

あゆ「一人貰っても良いですか~?」

 

まるで子犬か子猫を貰う様な勢いで頼んだ。

 

勇儀「あははは!珍しい子もいるもんだね。

   私はいいと思うぞ」

 

あゆみの奇行が気に入ったのか、大声で笑う勇儀。

 

萃香『一人でもいなくなったら、

   元に戻れなくなるからダメー』

勇儀「じゃあ作業終わったら愛でてやればいいさ」

 

そんなガールズトークが繰り広げられる中、

 

鬼助「あの姐さん方、作業を進めてもらっても?」

 

下手に、最上級の敬意払って「仕事をしろ」と頼み込む鬼助だった。

 

勇儀「あ、悪い悪い…」

 

 

 

萃香と勇儀が作業に加わり、店の外観が瞬く間に仕上がっていく。完成まであと少しのところで、

 

??「ちわー!河城(かわしろ)でーす」

 

大きなリュックを背負い、緑の帽子を被った少女がやって来た。

 

あゆ「え~っと~、どちら様ですか~?」

河城「あれれれー?

   ここに来るように言われたんだけどね。

   場所を間違えたかな?」

 

【挿絵表示】

 

 

あゆみと河城と名乗る少女が顔を見合わせ、お互いが首を傾げていると、

 

勇儀「おや?なんだい、河童じゃないか」

萃香「あれ?本当だ。にとりだ」

 

鬼達が少女の存在に気付いた。

 

にと「やや、これはこれは。勇儀様に萃香様。

   それとその他鬼の皆様方。

   どうもこんにちはです」

鬼助「オイラ達をその他でまとめるなよ…」

勇儀「お前さんは何しにここへ?」

にと「永遠亭の兎にここに寄る様に言われまして。

   なにやらビジネスの話らしく…」

 

にとりがそこまで話したところで、あゆみは今朝縁側でてゐが話していた事を思い出した。

 

あゆ「あ~、それなら私です~」

にと「お、やっぱりそうでしたか。

   いやいや、間違えたかと思ったよ。

   あ、自己紹介まででしたね、

   河童の河城にとりと申しますです」

 

目の前の河童を名乗る少女が、自分の知っているソレと違い過ぎる事に

 

あゆ「こんなに可愛い子が河童なの~!?」

 

本音を大声で叫びながら驚いた。しかしこれが、

 

ボンッ!

 

にと「か、か、か、かわ…」

 

にとりの小さなキャパシティを易々と超えた。

 

にと「はっ!そ、それでどんな物が欲しいって?」

あゆ「えっと~。冷蔵機能のついた~…」

 

 

--少女説明中--

 

 

あゆみからの注文を聞き終えたにとりは、ソレが大掛かりな物で、今の幻想郷の技術力で実現するには簡単にはいかないと悟った。そして、

 

にと「なるほど…。これは大変だ」

 

本音が溢れた。

 

あゆ「ダメですか〜?」

 

あゆみはその言葉を聞き半ば諦めていると、

 

にと「…くぅー!」

 

目の前の技術屋は身震いをしながら、突然奇声を上げ出した。そして口元で拳を構え、ニヤニヤしながら

 

にと「ワクワクしてきた。久々に本気出すよ!

   まずは材料集めだな。

   温度を均一にするからファンがいるか…。

   あとは温度センサー、湿度センサーも…。

   それをアレで受けてオート制御できれば…」

 

あゆみには理解出来ない単語を口遊み始めた。その姿を不気味に思いながらも

 

あゆ「えっと~、お金は…」

 

支払いを聞いてみる事に。しかし技術者は『喋り掛けるな』とでも言う様に掌を突きつけ、

 

にと「後から請求する!製作期間に1ヶ月頂戴。

   問題は燃料だ。変換効率を考えると…」

 

一応答えてまたブツブツと何かを言いながら、何処かへと歩いて行った。

 

あゆ「あの~…」

 

結果、ポツンと取り残されたあゆみ。

しかし、にとりをよく知る者からすると、アレはいつもの事。

 

勇儀「ほっときな。

   あーなったら何も聞こえなくなるんだ」

萃香「そそ。でもね、すごい物作ってくるよ。

   絶対!だから期待してなよ」

あゆ「は~い。そうだ、休憩にしませんか~?

   皆さんに差し入れ持って来たんですよ~」

 

あゆみは持ってきたバスケットから手作りのスイーツを披露した。

 

勇儀「へー、これは何だい?」

萃香「知らないの?ドーナツだよ」

鬼助「オイラも初めて見ました」

弟分「へぇ…」

あゆ「どうぞ召し上がってくださ~い」

 

珍しい食べ物に目を丸くする鬼達にドーナツを配り、いざ!

 

  『いただきまーす』

 

皆一斉に最初の一口目を噛り付く。

 

鬼助「うわっ、うめぇ!こんなのオイラ初めてだ」

勇儀「やるな。うまいじゃないか」

弟分「パクパクパクパク」

 

ドーナツを頬張りながら大絶賛の鬼達。そんな中小さな鬼は…

 

萃香「ふぁ~~~…♪」

 

口元が緩み目は蕩け、正に幸福の絶頂だった。

 

弟分「萃香ちゃん?」

鬼助「萃香さん、幸せそうですね」

勇儀「なんてだらしのない顔をしてるんだい」

あゆ「気に入ってもらえて良かったで~す」

 

休憩後、鬼達は仕上げの作業に取り掛かり、そしてついに…。

 

あゆ「お~~~~~~!」

勇儀「気に入ったかい?」

あゆ「はい、とっても~」

萃香「ふふ、気に入ってくれて良かったよ」

勇儀「これで私達も旨い酒が飲めるってもんさ」

鬼助「じゃあオイラ達はこれで失礼しますよ」

 

そう言うと鬼達は帰って行き、あゆみが出来上がった店に目を輝かせていると、

 

妹紅「おーい、あゆみー!」

 

町の中心部の方から妹紅が手を大きく振りながらやって来た。

 

妹紅「うおっ!スゲーな、さすがに仕事早いな」

あゆ「見て見て~!お店!私のお店~!!」

 

あゆみは自分の店を指し、今来たばかりの友達に興奮しながらアピールした。

 

妹紅「わかった、わかった。もう見たから…」

 

大興奮のあゆみだったが、

 

あゆ「あ!」

妹紅「なんだ?どうした?」

 

ふと、大事な事を忘れていた事に気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あゆ「萃香さんを愛でるの忘れてた~…」

妹紅「は?何だそれ?」

 

 




「弟分」誰でしょうね。

次回:【Menu④:シュークリーム】
いよいよスイーツ店オープン。

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