東方迷子伝   作:GA王

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主がコンビニスイーツで一番好きなのが、シュークリームです。特に最近のコンビニスイーツのクオリティの高さには驚かされます。




Menu④:シュークリーム     ※挿絵有

迷いの竹林の中にある永遠亭。

 

今は朝食が終わった頃、

永遠亭の縁側には今日も3人の乙女が、

 

ズズー…。

 

  『はぁ~。お茶が美味し~』

鈴仙「あゆみちゃんお店できて良かったね」

 

いつもより幸せそうにお茶を啜るあゆみに、鈴仙は笑顔で祝福し、

 

輝夜「メニューはもう決まってるの?」

あゆ「うん、暫くはドーナツとかかな~」

鈴仙「ドーナツって、昨日作ってた穴の開いたやつ

   でしょ?あれ美味しかったよ」

輝夜「イナバ、夢中で食べてたわね」

あゆ「そう言われると凄く作り甲斐があるよ~」

鈴仙「じゃあ、また作ってね」

 

昨日食べたお気に入りのおやつをまた作ってもらう事を約束した。しかし、ある事に気付いた。

 

鈴仙「あ、でも買いに行けばいいのか」

輝夜「そうかお店を出すんだから、

   もう気にしないでいいのよね。

   じゃあ、売れ残ったら喜んで食べて上げる」

あゆ「あはは…。売れ残られると困るんだけど~」

 

輝夜の申し出に「違った方法で協力して欲しい」と思いながら、苦笑いで答えるスイーツ店の店長だった。

 

鈴仙「それはそうと、てゐは何処かしら?」

輝夜「そう言えば、見てないわね」

 

いつも縁側で一緒にお茶を飲むチビ兎がいない事を不思議に思う2人に、

 

あゆ「窯にいるよ~。手伝いをしてくれてるの~」

 

店長が答えた。と、そこに噂の兎が。

 

てゐ「あゆみ、時間だウサ。見に来て欲しいウサ」

あゆ「うん、今行く~」

 

焼き上がりの時間の様だ。

 

てゐ「どうウサ?」

あゆ「うん、両方ともいい感じ~」

 

香ばしい匂いをさせ、焼き上がったのはふっくらと膨れたシュー。それを見たおまけ達は、

 

鈴仙「わ〜、美味しそう」

輝夜「早く食べたい!」

 

歓声をあげ、食べる気満々。

 

てゐ「2人共つまみ食い目当てウサ」

あゆ「でもシュークリームはこれで終わりじゃない

   んだよ~。これにカスタードクリームを入れ

   るんだよ~」

  『クリーム!?』

 

クリームという言葉に目を輝かせ、過敏に反応するおまけ達。

 

てゐ「鈴仙も姫様も少し落ち着くウサ」

 

焼き上がったシューに切れ込みを入れ、カスタードクリームを絞り入れたら、シュークリームの出来上がり。作り終えたシュークリームをつまみ食い目的で付いて来たおまけ達に手渡して、試食会がスタート。

 

  『おっいし~』

あゆ「ふふ。良かった~」

 

2人のリアクションに笑顔で喜ぶ店長。

 

輝夜「これ絶対人里で大変な騒ぎになるわよ」

 

目を見開き驚きの表情でコメントする輝夜に対し、

 

鈴仙「し・あ・わ・せ~♡」

 

頬に手を当て、満面の笑みで余韻を楽しむ鈴仙。

 

てゐ「さっそくたくさん用意するウサ」

 

2人のリアクションから「これはいける!」と確信を得て、準備に取り掛かろうとするチビ兎だったが、

 

あゆ「ん~っと、そ~したいんだけど~」

 

店長は何か訳ありといった様子。

 

あゆ「初日だし~。どれくらいのお客さんが来るか

   分からないし~、えっとそれよりも〜、まだ

   小さな冷蔵庫が一つあるだけだから~、後は

   保存できる量が~…」

 

長い…。それに耐えられなくなった者が一人。

 

イラッ!

 

輝夜「まどろっこしいわね!

   要点だけまとめて言いなさいよー!」

あゆ「ごめんごめん、ごめんって~」

 

『拳の万力』を開店祝いにプレゼントするのだった。

 

鈴仙「え?その場で作るの?」

 

鈴仙の問いにジンジンする頭を抑えながら、

 

あゆ「うん、シューは常温でも大丈夫だから~、

   クリームだけ冷蔵庫にいれて~、

   注文が来たら作るの~」

 

涙目で答える店長。

 

輝夜「いっぱいお客さん来たらどうするのよ?」

鈴仙「なんならてゐを貸そうか?」

てゐ「私は全然構わないウサ」

 

万が一の事を考え、心配する3人だったが、

 

あゆ「たぶん大丈夫だよ~。それに一人でどこまで

   やれるか試したいの~」

 

挑戦したいと言う店長。そこへ、

 

妹紅「おーい、あゆみー。行くぞー!」

 

迎えが来た。店長は出来上がったシューとカスタードクリームを持ち、

 

あゆ「いってきま〜す」

 

元気に挨拶をして仕事へとむかった。

 

  『いってらっしゃーい』

 

小さな店長の初出勤を見送る3人。その姿を見て、

 

輝夜「あゆみ、すごいわね。

   私……、このままでいいのかな?」

 

永遠亭の悩みの種が口を開いた。そして、その言葉を2人は聴き逃さなかった。

 

  『おお!これは!?』

輝夜「ううん、あゆみだって頑張ってるんだから。

   私だって!」

 

このままではいけないと悟った姫に、

 

鈴仙「お師匠様、ついに姫が…」

てゐ「長かったウサ。

   ここまで本当に長かったウサ」

 

涙を浮かべながら喜ぶ側近達。そして、意を決した姫が、

 

輝夜「鈴仙!てゐ!」

  『はい、姫様!』

 

動いた。

 

輝夜「弾幕ゴッゴ付き合いなさい!」

  『えーーー、そっちーーーー!?』

 

だが、やはり輝夜だった。

一方その頃、永遠亭を出発した2人は、

 

妹紅「今日からだな。楽しみか?」

あゆ「うん、でもちょっと不安かな~」

妹紅「ふふふ、あゆみも不安になる事あるんだな」

あゆ「む~、それ失礼だと思うよ~」

妹紅「ふふふ、そうだな」

 

楽しく話しながら人里へと歩を進めていた。すると突然、あゆみが何かに気付いた。

 

あゆ「あれ?前にいるの…。影狼ちゃん!」

 

影狼の姿を確認するや否や、弾丸の様に走り出したあゆみを妹紅は止め

 

妹紅「あ、まずい…。間に合わなかった…」

 

る事が出来なかった。

 

影狼「え?きゃっ!」

 

差し迫る足音に気付いた影狼。後ろを振り返ると、目の色を変えたあゆみが飛び掛かって来ていた。あまりに突然の出来事に避ける事も出来ず、

 

あゆ「よ~し、よしよしよしよし~」

 

とある動物研究家の様な掛け声で、愛でられるのだった。

 

影狼「くぅ~~~ん」

あゆ「わしゃわしゃわしゃ~」

 

誰にも邪魔される事無く、心置きなく触れ合いを楽しむアユゴロウだったが、背後に迫る殺気を感じ、

 

あゆ「はっ!」

 

我に返った。そして振り向くとそこには…

 

妹紅「ほーぉ、察知する様になったか…」

 

2つの拳を構え、炎を身に纏った鬼が立っていた。

 

あゆ「あはは…」

 

 

--少女反省中--

 

 

影狼「取り乱しました…」

妹紅「いや、こっちが悪かった」

あゆ「ごめんなさ~い」

 

それぞれが自分の不甲斐なかったところを謝罪し、気持ちを入れ替え、

 

影狼「それで今からどちらへ?」

妹紅「人里だよ」

あゆ「私のお店今日からオープンなの~」

影狼「そうなの!?じゃあ後で友達連れて行くね」

妹紅「博霊神社の方の派手な色の店だ。

   行けば一発で分かると思うぞ」

影狼「わかった。それじゃあ後でね」

 

影狼に来店の約束を取り付けたやり手の店長だった。

 

 

--少女移動中--

 

 

妹紅「それじゃあ、私はこれから寺子屋行くから」

あゆ「うん、また後でね」

 

妹紅を見送った後、開店の準備をしていく小さな店長。そしてついに、

 

あゆ「開店で~す」

 

キラキラの笑顔と共にあゆみのスイーツ店が今オープンした。

 

 

 

 

 

 

 

が、誰も居なかった。

分かってはいた事だったが、少し寂しそうな表情を浮かべる小さな店長。せめてもと思い、扉を開けておく事にした。

 

 

--3時間経過--

 

 

結局まだ来店者はおらず、約束をした狼娘の事を首を流して待っていると…。

 

【来客1&2人目】

 

影狼「こんにちわー。来たよー」

??「…どうも」

 

狼娘が約束通り友人を連れてやって来た。

 

あゆ「あ、影狼ちゃん。あと…」

 

狼娘の友人は赤いショートヘアに青系のリボンをした少女だった。少女はマントを身に着け、口元が隠れている。

 

影狼「彼女が話してた友達の赤蛮奇。

   蛮奇、あゆみさんよ」

 

【挿絵表示】

 

あゆ「あゆみで~す。よろしくで~す」

蛮奇「…赤蛮奇です、どうぞよろしく」

 

蛮奇が自己紹介と共にお辞儀をすると…

 

スポンッ!

 

心地よい音共に、

 

ガンッ、

 

頭が

 

ゴロゴロゴロ…。

 

床を転がり、

 

【挿絵表示】

 

 

あゆ「…」

影狼「あ、また取れた」

あゆ「きゃーーーーーーーーーーっ!!」

 

甲高い悲鳴が店内に響いた。

恐怖体験をしたあゆみは、

 

あゆ「怖かったよ~」

 

大量の涙を流しながら大声で泣いていた。

 

蛮奇「…すまない」

影狼「ご、ごめん。先に言っておけばよかったね。

   蛮奇はろくろ首で、頭が取れるの」

 

あゆみにも馴染みのある妖怪の名前を聞いて、

 

あゆ「ろくろ首~?昔話に出てくる~?」

 

涙を手で拭いながら尋ねた。

 

蛮奇「…そう、それ私の一族」

あゆ「簡単に取れちゃうんだね~」

蛮奇「…取り外し自由。痛みもない」

 

スポンッ!

 

少し自慢気に首を引き抜きながら話すろくろ首。更に、

 

蛮奇「…取ってもこの通り話せる」

 

取った首を手に持ちながら喋り出した。

 

あゆ「…」

影狼「あゆみさん?」

あゆ「きゃーーーーーーーーーーっ!!」

 

また絶叫するあゆみに、

 

蛮奇「…すまない」

 

首を元に戻して萎れながら謝罪をするろくろ首。

 

影狼「大人しくていい子だから。ね?」

あゆ「う、うん…」

影狼「そ、そうだ。それで蛮奇も甘い物が大好きだ

   から、この間もらったやつか新作があったら

   欲しいな」

 

場を雰囲気を変えようと、あゆみに本来の目的であるスイーツを注文する狼娘。

 

あゆ「なら~。シュークリームがお勧めで~す。

   これシューって言うんだけど~、

   この中にカスタードクリームを入れるの~」

影狼「しゅー?カスター…なんだっけ?」

 

聞き慣れない単語に困惑していると、

 

あゆ「試食様に作ってあるから、これどうぞ~」

 

店長はカットしたシュークリームを差し出した。

 

影狼「わー、ありがとう」

蛮奇「…どうも」

 

2人同時に一口で食べると、驚いた表情をしつつ、

 

影狼「私これ買う!」

蛮奇「…私も!」

 

興奮しながら一個ずつ買って行った。

 

あゆ「ありがと~。また来てね〜」

 

蛮奇と影狼を店の外で手を振りながら見送り、「もう蛮奇には驚かない」誓うあゆみだった。そのあゆみに忍び寄ってくる者が…。

 

??「ばぁーーーーっ!!」

あゆ「…」

??「あれ?またダメだったかな?」

あゆ「きゃーーーーーーーーーーっ!!」

??「は~~~♡快・感♡」

 

【来客3人目】

 

脅かせてきたのは、舌を出した大きな一つ目の傘を手に持った少女だった。先程のろくろ首の事もあり、あゆみの心はボロボロだった。

 

あゆ「も~!なんなの今日~…」

??「ごめんねぇ」

 

謝罪する傘の少女だったが、その顔はニヤつき、「いい獲物を見つけた」と喜んでいた。暫くして、気を持ち直したあゆみは、改めて脅かして来た少女を眺めた。水色のショートボブ。瞳の色は左右で異なるオッドアイ。

 

あゆ「か、か、か…かわい~~~~!」

 

どうやらツボに入ったらしい。

 

??「ひぇっ!?驚かされるのはイヤーッ!」

 

 

--少女愛で中--

 

 

小傘「私は小傘だよ。ここお店だったんだ」

あゆ「そ~だよ~。今日オープンしたの~」

 

愛でてる最中にお互いに「誰?」という話になり、軽く自己紹介を。

 

小傘「何屋?」

あゆ「スイーツ屋さ~ん。

   今はドーナツとシュークリームがあるよ~」

小傘「ふーん、どれも聞いたことないや」

あゆ「じゃ~少し食べてみる~?

   こっちがドーナツで、

   こっちがシュークリームだよ~」

 

初めて聞く名前の食べ物だと言う小傘に、試食用のドーナツとシュークリームを笑顔で差し出すあゆみ。

 

小傘「じゃあドーナツから…」

 

小傘は眉を顰めながらドーナツのカケラを手に取り、まじまじと観察した後、ヒョイッと口へと放り込んだ。

 

あゆ「どう?」

小傘「わっ、ビックリしちゃった!これすごい!

   食べ物でビックリさせられるんだぁ」

 

初めての経験に目を皿にして関心する小傘に、

 

あゆ「ん~?」

 

他の人とは違うリアクションだと違和感を感じる店長。

 

小傘「じゃあこっちも…」

 

更に試食用のシュークリームに手を伸ばす小傘。こちらも手にし、再びまじまじと観察した後、パクッと一口で頬張ると、

 

小傘「おーっ!これにもビックリ!」

 

『味』や『食感』よりも、『驚き』に対する感想だけを残した。その様子を見ている方は、

 

あゆ「ん~??」

 

どこか腑に落ちないといったご様子。そして、試食を終えた小傘は飛び掛かる勢いで、

 

小傘「これ!10個ずつ頂戴!」

 

注文をした。しかも大量に。

 

あゆ「10個ずつ~!?」

小傘「これがあれば私…、

   幸せライフが約束されるよ!

   これでみんなをビックリさせてやる!」

あゆ「あ、うん」

 

注文の品を用意している最中、買ってくれる喜びの一方で、小傘の購入までの経緯にどうも納得できない店長だった。

 

あゆ「ありがと~ございました~」

 

小傘を見送り、また店内で次の客を待つものの、その後客が来ることは無く、オープン初日はこれにて

 

【CLOSE】

 

妹紅「あゆみ、迎えに来た…ぞ?

   おい、どうした!?」

 

迎えに来た妹紅だったが、あゆみは直立して硬直していた。妹紅が心配していると、ゆっくりとか細い声で話し始めた。

 

あゆ「お客さん、来てくれた…」

妹紅「え?」

 

妹紅が聞き返した途端、急に大きな声で、今度は早口で話し始めた。

 

あゆ「お客さんが来てくれたの!それでシュークリ

   ームがドーナツで10個以上!お客さんが、

   お客さんが~!」

妹紅「分かった、分かった。

   分かったから落ち着けって!」

 

 

 

 




次回:【Menu⑤:フルーツタルト】
永遠亭メンバーと深い関わりのある方々と言えば…。

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