東方迷子伝   作:GA王

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タルトは主の2番目に好きなスイーツです。
なぜって一つのケーキに大量の果物。
このお得感!
ただそんな理由です。


Menu⑤:フルーツタルト(生地) ※挿絵有

迷いの竹林の中にある永遠亭。

 

今は朝食が終わった頃、

永遠亭の縁側に今日は4人の乙女が、

 

 

ズズー…。

 

  『はぁ~。お茶が美味し~』

鈴仙「あゆみちゃんがお店を始めてから

   明日で一週間かぁ。どう、お店は順調?」

あゆ「うん、順調だよ~」

輝夜「あゆみが嬉しそうで良かったわ」

 

あゆみのオープンした翌日から、影狼と蛮奇の他に新規の客が少しずつ増えていき、売り上げは右肩上がりで好調。もちろん謎の客、小傘も稀に来ては、売り上げに貢献している様だ。

 

てゐ「私もあゆみの手伝いをし始めて、

   少しスイーツの作り方を覚えたウサ」

鈴仙「てゐが作るの?」

輝夜「それ大丈夫なの?

   変な薬を盛ってないでしょうね?」

 

悪戯好きの兎の一言に驚きと疑いの目で見る2人。そんな2人の警察官に、

 

てゐ「失礼ウサ!ちゃんと作ってるウサ!」

 

そんな事はしていないと、顔を赤くして断言する容疑者。そこに、

 

あゆ「チビウサギちゃんが作ると凄いんだよ~。

   ここがポカポカするの~」

 

と胸を押さえ、幸せそうに2人に伝える悪戯兎の弁護人。しかし、その弁護が仇となる事に。

 

鈴仙「てゐあなた…」

輝夜「能力使ってるわね…」

 

悪戯兎の『人を幸せにする程度の能力』に疑惑が掛かり、

 

てゐ「あははは…。

   でも間違った使い方はしてないウサ」

 

本人はあっさりとそれを認めた。

 

あゆ「ん~?」

 

しかし、何の事だか理解できない弁護人。すると、鈴仙は悪戯兎の服を掴んで引き寄せ、弁護人を背に3人で円陣を組んだ。

 

鈴仙「いい?もう能力は禁止よ」ヒソヒソ

輝夜「もしあゆみに知られたら悲しむわよ」ヒソヒソ

 

今後は能力を使わない様にと、注意をする警察官達だったが、

 

てゐ「でも食べた人を幸せにしたいって…」ヒソヒソ

 

自分は悪いことはしていないと語る容疑者。いや、もはや犯人。だが、その言い分が通る筈もなく、

 

  『それでも!』

 

2人の警察官に強く念を押されるのであった。

 

あゆ「なになに~?」

  『なんでもなーい』

あゆ「ん~??」

 

結局、何が何だか分からないままの被害者だった。そこに、

 

永琳「あら、あなた達ここにいたの。丁度いいわ、

   午後に豊姫達が来るみたいなの。

   急いで片づけと準備をしてくれる?」

 

突然現れ、涼しい顔で爆弾を投下した天才薬師。

 

鈴仙「お師匠様、それホントですか?」

てゐ「あいつらが来るウサ…」

輝夜「あー、面倒くさー」

 

被弾した者達は次々と怪訝そうな表情をする中、

 

あゆ「ん~???」

 

不発だった者は更に混乱するだけだった。

そんな生存者に、

 

永琳「あゆみちゃん、何かおもてなし用の

   スイーツを作ってくれないかしら?」

 

スイーツを注文する天才薬師。

 

あゆ「私、お店が~…」

 

でもあゆみとしては、始めたばかりの店を突然休みにはしたくなかった。すると天才薬師はその胸の内を悟った様に、

 

永琳「それならてゐに行かせるわ。お願いね」

 

代役を立て、チビ兎に依頼をするのだった。普通に考えれば、あまりにも突然の依頼で、文句を言うところではあるが、

 

てゐ「よし!一抜けウサ!」

 

チビ兎は喜んで快く引き受けた。

 

  『ずるーい』

 

その特例措置を受けたチビ兎を羨ましそうに見つめる輝夜と鈴仙。

 

あゆ「あの~、何人くらい来ますか~?」

永琳「たぶん5、6人くらいかしら。できそう?」

あゆ「ん~…」

 

あゆみが何を作ろうか悩んでいるところに、

 

妹紅「おーい!今日もおすそ分けに来たぞー」

 

おすそ分け娘が大きな声でやって来た。

 

輝夜「げ、妹紅」

永琳「あら、妹紅いらっしゃい。いつも悪いわね」

妹紅「里で果物をやたらと貰ったんだ」

てゐ「凄い量ウサ」

 

おすそ分け娘が背負っていた籠の中には、溢れそうな程の旬の果物が入っており、それを見たあゆみは、

 

あゆ「林檎、梨、葡萄…。うん、いいかも~。

   私、久しぶりにケーキ作る~」

 

いつもより少しだけ真剣な顔で決心した。

 

 

--少女調理中--

 

 

あゆ「できたよ~」

 

パティシエが持って来たのは…。

 

輝夜「何これ何これ!フルーツがいっぱーい」

鈴仙「あゆみちゃん、これ何ていうケーキ?」

あゆ「フルーツタルトだよ~」

 

それを見た者達は視線が釘付けになり、

 

永琳「本当に美味しそうね。

   てゐには悪い事しちゃったわね」

 

特例措置を出した者を気遣うのだった。

 

あゆ「まだ作るから、チビウサギちゃんの分は余る

   と思いますよ~」

妹紅「なぁなぁ、一個くれよ。客が来るんだろ?

   なら私もう行かなきゃいけないし。

   な?いいだろ?」

 

目を輝かせながら催促する妹紅に、

 

永琳「そうね。妹紅が持ってきてくれたフルーツ

   ですもんね。いいわよ、持っていきなさい」

 

笑顔で『持って行きなさい』と返す天才薬師だったが、

 

妹紅「サンキュー、じゃあいただきまーす」

鈴仙「ここで食べるんだ…」

 

一切れ手に取り、口へと運ぶ妹紅。

 

妹紅「ん~~~~~ッ!!」

 

一口食べた瞬間目を瞑り、全身を震わせながら、

 

妹紅「ふぁ~~~♡私、コレ、好き♡」

 

両手で落ちそうになる頬を押さえ、幸せを噛み締めた。その表情を見た者達は、

 

輝夜「パンケーキの時より酷い顔してるわよ」

鈴仙「よっぽど美味しかったんだ…」

永琳「これは期待大ね」

 

と、目の前のフルーツタルトの攻撃力を思い知らせられるのだった。

 

ガシッ!

 

そんな中、妹紅が急にあゆみの肩に掴みかかり、

 

妹紅「あゆみ!果物を持って来たら、

   また作ってくれるか!?」

 

目を見開き興奮しながら、

 

あゆ「うんうんうんうん」ガックンガックン

妹紅「約束だぞ!」

 

パティシエの体を揺らし、

 

あゆ「うんうんうんうん」ガックンガックン

妹紅「絶対の絶対の絶対だぞ!」

 

約束を取り付け、更に念を押した。

 

あゆ「うんうんうんうん」ガックンガックン

 

揺らされる度に前後に行ったり来たりするパティシエの頭。その光景に見るに見かねた者達は、

 

鈴仙「妹紅、その辺で止めてあげて…」

輝夜「あんた、あゆみの首が取れるわよ」

 

パティシエを気遣い、止めに入った。

 

妹紅「あ、ごめん」

 

そこで我に返った妹紅。目の前には、

 

あゆ「ふしゅ~~~…」

 

目を回したパティシエが。

 

 

--少女回復中--

 

 

妹紅「実はな、明日寺子屋の遠足に同行する事に

   なってて、もしかしたら秋姉妹の所に

   寄るんじゃないかって思ってるんだ」

あゆ「秋姉妹?」

鈴仙「紅葉と豊作の神様よ」

永琳「農園もやっていて、

   美味しい果物が沢山できるのよ」

あゆ「じゃあもし行ったら沢山採って来てね〜。

   スイーツいっぱい作れるから〜」

妹紅「よし、任せろ!」

 

あゆみに大量のお土産を約束し、永遠亭を立ち去る妹紅だった。

 

 

--少女支度中--

 

 

あゆ「うん、これで全部完成~」

鈴仙「すごい種類あるわね」

輝夜「タルトが1、2、3、4…」

永琳「あゆみちゃん、流石ね。頼んで良かったわ」

あゆ「ありがとうございま~す。

   材料がいっぱいあったので、

   張り切っちゃいました~」

 

キッチンのテーブルに並べられた、選り取り見取りのフルーツタルトに目を輝かせる乙女達。その場にいる誰もがどれから食べようか悩んでいるところに、

 

ガラッ。

 

客①「ごめんくださーい。

   師匠ー!ご在宅でしょうかー?」

客②「お邪魔しまぁす」

永琳「丁度来たみたいね」

 

噂の客が来た様だ。

 

永琳「いらっしゃい」

客①「突然の訪問、誠に申し訳ありません」

客②「八意様、遊びにに来ちゃいましたぁ」

客③「鈴仙先輩お久しぶりです!」

客④「私たちも…」

客⑤「来ちゃいましたー」

客⑥「…」

 

訪ねて来たのは、6人の少女だった。その内3人にはてゐや鈴仙の様に頭に兎の耳があり、彼女達を見たあゆみは、

 

あゆ「か、か、か…かわい~~~~!」

 

3匹に襲いかかった。

 

  『ひえっ!?』

 

あまりにも予想外の展開に怯える様に驚く3匹に対し、

 

  『あー、やっぱり…』

 

予想通りの展開だと思う永遠亭組だった。

そして飛びかかったあゆみは、ブレザーを着た水色のショートヘアの兎の耳に、笑顔で頬擦りしながら、

 

あゆ「たれ耳だ~。私たれ耳大好き~♡」

 

愛でていた。その様子に来客者は、

 

客①「師匠、あの子は?」

永琳「早々にごめんなさいなさいね。

   最近ここに住み始めたあゆみちゃんよ」

 

あゆみの事を不審に思う者もいれば、

 

客②「小さくて、ふわふわした子なんですねぇ」

 

と笑顔で見守る者も。

しかし、温かい視線はだんだんと熱い視線へと変わり、やがて体がウズウズし始め…

 

客②「か、か、か…かわいぃぃぃぃ!」

 

我慢の限界といった勢いで、あゆみに抱き付いた。

 

あゆ「ふぇっ!?」

 

捕獲されたあゆみは突然の出来事に硬直し、

 

客②「やだぁ、この子ほっぺぷにぷにしてるぅ。

   肌若ぁい♡」

 

抵抗出来ないまま頬を指で突かれた上、頬擦りされるのだった。その光景に永遠亭組は、

 

輝夜「あゆみの同タイプがこんな身近に…」

鈴仙「そう言えば豊姫様も可愛い物好きでしたね」

永琳「でもこれであゆみちゃんも抱き着かれる側の

   気持ちが分かってくれるでしょ」

 

来客者の奇行に驚くものの、あゆみにとって良い薬になるだろうと期待した。

 

が、

 

あゆ「はぁ~~~~もっとして~~」

 

当の本人は顔をうっとりとさせ、満更でもないといったご様子。寧ろ喜んでさえいた。

 

客③「先輩!あの子なんなんですか!?」

 

あゆみから解放されたブレザー姿の垂れ耳兎は、鈴仙に涙目で泣き付く様に駆け寄っていた。

 

客④「まあまあ、気にしない気にしない」

客⑤「ニシシシ、レイセンかーわい〜」

 

【挿絵表示】

 

 

あゆみの仕業で場が滅茶苦茶になってしまったが、一度仕切り直して、

 

永琳「ちゃんと紹介するわね。

   こちら、あゆみちゃん」

あゆ「あゆみで~す」

 

挨拶と自己紹介を。

 

永琳「それであゆみちゃん。

   この人達は私の弟子みたいな人達で、

   月から来てくれたの」

あゆ「へ~、月ですか~」

 

常人であれば驚く信じられない筈の事実にも関わらず、平然と受け入れるあゆみ。彼女は幻想郷で生活する様になり、少しの事では動揺しなくなった様だ。

 

永琳「白の帽子の子が綿月豊姫(わたつきのとよひめ)

   刀を持っている子が綿月依姫(わたつきのよりひめ)

   豊姫の妹ね。

   あと翼があるのが稀神(きしん)サグメ」

豊姫「綿月豊姫でぇす」

 

【挿絵表示】

 

依姫「豊姫の妹の依姫と申します」

 

【挿絵表示】

 

サグ「…」ペコッ

 

【挿絵表示】

 

 

永琳が次々と客を紹介していく。

 

永琳「それでさっき抱き着いた兎達が、

   浅葱色(あさぎいろ)の髪の子が清蘭(せいらん)

   ブロンドの髪の子が鈴瑚(りんご)

   それで誰かと一緒の恰好をしているのが、

   ややこしいかもしれないけど、レイセン」

清蘭「清蘭っす。よろしくっす!」

 

【挿絵表示】

 

鈴瑚「ニシッ、鈴瑚でーす」

 

【挿絵表示】

 

レイ「鈴仙先輩の後輩のレイセンです」

 

【挿絵表示】

 

 

皆が挨拶を終えた後、

 

あゆ「よろしくね~。清蘭ちゃん、鈴瑚ちゃん、

   レイセンちゃん」

 

あゆみから「よろしく」と挨拶。しかし、この事を不服と思う者が。

 

鈴仙「あゆみちゃん?

   私も『れいせん』なんだけど…」

あゆ「ん〜?冷麺ちゃんじゃないの〜?」

鈴仙「違うって!」

レイ「…」

 

黙ってその状況を眺めるもう1人の『れいせん』。だが心では「勝った!」と、ガッツポーズを取っていた。

 

永琳「それじゃあみんな上がってちょうだい」

 

そして、永琳が客を中へ招き入れ様とした時…。

 

あゆ「えー!?みんな月から来たんですか!?」

 

前言撤回、あゆみは驚いていた。

 

  『今!?』

 

広間に案内される月からの来客御一行。皆が腰を掛けたところで、訪問の目的を問いかける永琳、

 

永琳「それで?今日は何をしに来たのかしら?」

 

何気無い質問の筈であるのだが、御一行の様子がどこか変。

 

豊姫「えぇっと…依姫、何だったけ?」

依姫「えーっとアレですよ。ね?レイセン?」

レイ「えっと、あ、そうそう。アレよね、鈴瑚?」

鈴瑚「え、えー!?ああ…だよね?清蘭?」

清蘭「んー、ザクメ様よろしくっす!」

 

次々にバトンタッチを繰り返し、最後にバトンを託されたサグメが本来の目的を告げた。

 

サグ「……暇で」

  『おいっ!』

永琳「途中からそうじゃないかと思ったわよ。

   まあ折角来たんだし、お茶でもして行きなさ

   い。あゆみちゃん、アレお願いね」

 

特に用も無く来た客達を永遠亭の薬師は呆れながらも、もてなす事に。

 

あゆ「は~い。冷麺ちゃん手伝ってくれる?」

鈴仙「うん。でも、私は『れいせん』だからね?」

輝夜「待ってあゆみ、私も行く!」

 

鈴仙だけに声を掛けた筈のあゆみだったが、何故か付いて行くと言い出した輝夜。

 

依姫「輝夜姫様もお変わりなさそうですね」

豊姫「でも以前程の怠け者ではなさそうよぉ」

 

2人の月の姫は久しぶりに会う輝夜の後姿を見つめ、昔の輝夜と照らし合わせ、微笑みながら思い出に浸っていた。一方輝夜は、

 

あゆ「何で来てくれたの~?」

輝夜「あそこ気まずいのよ」

 

2人の月の姫が苦手の様だ。

 

 

 

 

 

 




次回:【Menu⑥:フルーツタルト(果物)】
続きになります。

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