後編です。では、続きをどうぞ。
あとサグメの能力について、
オリジナル設定を追加しています。
《前回までのあらすじ》
突如月から永遠亭に綿月豊姫、綿月依姫、稀神サグメ、清蘭、鈴瑚、レイセンの6人が暇つぶしにやってきた。てゐに店を任せ、来客者をもてなすためのスイーツ、フルーツタルトを作る事になったあゆみ。そして、作り終えたタルトを持って、来客者達の下へ。
あゆ「お待たせしました~」
キッチンから戻ってきたあゆみ達。手には人数分の皿とフォークの他に、沢山のフルーツタルト。それを見た来客者達は…。
豊姫「何これぇ!?素敵ぃ!」
ある者は目をキラキラと輝かせ、
依姫「姉さん、私もう目が離せません」
またある者は視線が釘付けになり、
サグ「………」ダラダラダラダラ
更にある者は口から涎を垂れ流していた。
清蘭「うわー、こんなの初めて見たっす!」
鈴瑚「ニシシシ、早く食べようよ」
レイ「これ先輩が?」
鈴仙「ううん、これ全部あゆみちゃんが作ったの」
『ウソ!?』
鈴仙の言葉に驚きを隠せない来客者達。初めて会った永遠亭の居候に一斉に視線を向けた。
あゆ「切り分けてあるので、
好きな物を取って下さいね〜」
皆好き好きにタルトを自分の皿に取り、いざ!
『いただきまーす』
幸せへの階段を一歩ずつ踏み込んだ。
豊姫「おっいしぃぃぃぃ!」
笑顔で絶叫しながら喜ぶ豊姫。
清蘭「果物の酸味とクリームの甘さが絶妙っす!
クリームだけだと少し甘過ぎるのに、
果物と一緒だからそのしつこさを感じないっ
す!」
美味しさを細かに実況する清蘭。
鈴瑚「ニシシ、そだねー。清蘭食レポサンキュー」
それに乗っかる鈴瑚。
永琳「うん、今回も今まで以上に美味しいわ」
冷静ながらも素直にあゆみの実力を認める永琳。
レイ「はぁ〜♡
先輩いつもこんなに美味しい物食べているん
ですか?ズルイです!」
絶頂の表情と共に永遠亭組みを羨むレイセン。
鈴仙「へへーん、いいでしょー。あゆみちゃんのお
かげで、最近は美味しいスイーツ食べれてる
のよ」
ドヤ顔で後輩に自慢する鈴仙。
輝夜「妹紅じゃないけど、私もコレ、好き♡」
ライバルの気持ちが少し分かった輝夜。
それぞれが違ったリアクションをしながらも、「美味しい」と口にして喜んで食べている中、どうも様子の違う者達が…。
ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ…
掻き込む様にタルトを食べているのは、月の姫の一人、依姫だった。彼女は取ったタルトを物凄い勢いで平らげると、おかわりをし、また高速で食べていった。その様子は姫のイメージ像とは程遠く、品がない。その様子に呆れた者が…。
永琳「依姫、お止しなさい。はしたないわよ」
依姫「分かってます。分かってはいるんですけど、
右手と口が止まらないんです!」
輝夜「なんかその表現いやらしいわよ」
豊姫「それは捉え方次第じゃないかしらぁ?
輝夜のエッチィ。溜まってるのかしらぁ?」
輝夜「ばっ、私はそんなんじゃないわよ!」
豊姫「冗談よ。ムキになっちゃって可愛い~。
輝夜は弄りがいがあるわねぇ」
輝夜「くぅ~っ…」
豊姫に弄ばれた輝夜は歯を食いしばって顔を赤くし、両手で拳を作りワナワナと震えていた。一方、タルトで完全に自分を見失っている者は…。
依姫「姉さん、私はコレを毎日食べたいです!」
無茶苦茶な事を言い始めた。
豊姫「あゆみちゃんの都合もあるんだから、
それは難しいんじゃないかしら?」
妹のわがままを大人の対応で言い聞かせる姉。
依姫「なら………」
だが妹はそう呟くと意を決し、
あゆ「わわわ、なになに〜!?」
あゆみを力強く引き寄せ、
依姫「攫って帰るまで!」
小脇に抱えた。その目は狂犬の様に周囲の者を睨み付けていた。
あゆ「助けて〜!」
悲鳴に近い声で助けを求めるあゆみ。本気で恐怖を感じ、目から涙を流していた。
永琳「いい加減になさい!」
--少女反省中--
依姫「大変失礼致しました」
鈴仙「いえいえ、お気になさらないで下さい」
レイ「先輩すみません…」
清蘭「依姫様の意外な一面っすね」
いつもの2人であればこの立場が逆だった。わがままな姉とそれを宥めるしっかり者の妹。それに見慣れている者達からすると、先程の状況はレア中のレア。素直に驚く者がいれば、
鈴瑚「ニシシシシシ、面白ーい。もう一回やって」
輝夜「ぷぷぷ、いい物が見れたわ」
面白がって喜ぶ者も。だが、その被害者は
あゆ「怖かったよ〜」
たまったものではない。それもそのはず、拉致される寸前だったのだ。あゆみは自分の体を抱きしめながら涙を流し、震えていた。そんなあゆみに近づく豊姫。
豊姫「あゆみちゃん怖がらせてごめんね。
はい、いい子いい子」ナデナデ
あゆみを優しく抱き寄せ、頭を撫でながら、耳元で囁く様に妹の失態を謝罪した。
レイ「豊姫様、流石にその様なやり方では…」
その光景は正に子供をあやす母と子。それで許される筈もないだろうと思うレイセンだったが、
あゆ「ふぁ〜。もっとして〜」
『えー…』
割とアリだった様だ。
--少女充電中--
あゆ「豊姫さんのおかげで完全復活です〜!」
依姫「あゆみ、本当に申し訳ない」
立ち直ったあゆみに改めて深々と頭を下げて謝罪するお騒がせ姫様。
あゆ「もう大丈夫ですよ〜。それよりも…」
その謝罪に笑顔で答える被害者。それとは別にあゆみには気掛かりな事が。向けた視線の先にいる少女が先程から一口も食べず、タルトを凝視したまま涎を滝の様に流し続けているのだ。それは餌を目の前に『待て』を命じられている飼い犬の様。
あゆ「あの〜…、サグメさんでしたっけ〜?
タルト嫌いでした〜?」
あゆみが涎だらけの少女、サグメになぜ食べないのか問いかけると、サグメは言葉を選びながら答えた。
サグ「……怖い」
あゆ「怖い?大丈夫ですよ〜。安全ですよ〜」
サグメの言葉が食中毒を気にしているのだと思い、答えるあゆみだったが、
サグ「……」
本人はまだ踏ん切りがつかないといった様子。あゆみがどうしたらいいのか考えているところに、
豊姫「なら、食べたら私が口を塞いであげるぅ。
だから、我慢しないで食べたらぁ?」
豊姫からの謎の提案。何も知らない者からすれば「なんでそんな事を?」と疑問に思うだろう。
サグ「……じゃ」
その提案に乗っかる事にしたサグメ。タルトをカットし、口へと運んでいく。頬張る直前に一度豊姫に視線で合図を送り、
パクッ。
食べた。
サグ「お い し」
間髪入れずに言葉を発するサグメに、慌てて手で口を塞ぐ豊姫。
サグ「!!」
豊姫「あ、危なかったぁ」
依姫「間一髪でした」
輝夜「あと一文字だったわよ!」
そのタイミングは正にギリギリセーフ。皆が肝を冷やす中、
あゆ「ん〜?なんで〜?」
納得いかないあゆみ。
永琳「あゆみちゃん、サグメはね
『口に出すと事態を逆転させる』能力を
持っているの。しかもそれは自分の意思とは
無関係に発動しちゃうの」
輝夜「3文字まではセーフなんだけどね」
依姫「何がきっかけになるか分からない以上は
こちらも用心するしか方法がないのです」
サグ「…」
あゆ「だから喋っちゃいけないの?」
サグ「…」コクッ
俯きながら小さくなって頷くサグメ。
あゆ「そんなの変だよ!可哀想だよ!
美味しいなら『美味しい』って言えば
いいじゃないですか!」
誰に言った訳でもなく、あゆみは悲しい瞳でらしくない強い口調で叫んだ。思いを汲んだ永琳はあゆみを宥めるように、落ち着いた口調で話し始めた。
永琳「あゆみちゃんの言う事は最もだと思うわ。
でもね、それが原因で能力が発動したら、
あゆみちゃんが作る物全てが『不味い』物
になり兼ねないのよ?もしかしたら、それ以
上に良くない事だって…」
サグ「…」
サグメ自身にとってもこの能力は望んで得た力ではなかった。この力は言わば呪い。気が遠くなる程の長い人生の中で、彼女は言いたい事も言えず、ただ黙って過ごすしかなかった。周りもそれが普通の事で、当たり前の事だと思い、気遣う者もいなかった。そんな中、初めて出会った小さな少女は彼女の事を「可哀想」だと言った。彼女はそれが堪らなく嬉しかった。それだけで十分だった。
あゆ「なら…ちょっと待ってて〜」
『ん〜?』
皆が疑問に思う中、小さな少女はそんな彼女のために動いていた。
あゆ「サグメさん!
これに言いたい事を書いて下さい」
少女が持ってきたのは、彼女と一緒に外の世界からやって来た鞄の中のノートとボールペン。
あゆ「口に出せないなら、書けばいいんですよ〜」
『おーー!』
永琳「確かにこの方法なら」
豊姫「こんな簡単な方法があったなんてねぇ」
依姫「発想の転換ですね」
輝夜「あゆみ、やるわね」
鈴仙「ホントあゆみちゃんには驚かされてばかりね
」
レイ「サグメ様、良かったですね」
清蘭「じゃあ早速何か聞いてみるっす!」
鈴瑚「サグメ様、それ美味しかった?」
予想外なナイスアイデアに皆が歓声を上げ、あゆみを讃えた。そして、会話の手段を手に入れたサグメは、鈴瑚の問いに迷う事なく、筆を走らせた。だがその内容は…。
カキカキ[すごく美味しかった(≧∇≦)]
『えっ…』
サグメを古くから知る者達は皆、顔を引き攣らせた。
あゆ「良かった〜。おかわりいる?」
カキカキ[いっぱい欲しい o(≧▽≦)o ]
依姫「姉さん、サグメって…」
豊姫「案外可愛らしいところあるのねえ」
--皆女子会中--
お茶と共にタルトを食し、話に花が咲く女子一同。
彼女達の今の話題は…。
あゆ「豊姫さんって昔話の『浦島太郎』の
あの乙姫なんですか〜?」
豊姫「ふふふ、そうよ。本人よ」
あゆみにとって予想だにしない真実だった。誰もが知っている昔話のヒロインがまさか目の前にいるとは、誰も思うまい。その裏話と真相は色々ある様で、
永琳「まったく、あの時はあなたの身勝手に
振り回されたわ」
依姫「その節は姉が本当にお世話になりました」
大変だったらしい。
輝夜「あゆみ、そう言う事なら私も昔話の
『かぐや姫』よ」
ここでまた意外な事実が。あゆみと共に生活をしている少女が「自分はかぐや姫だ」と言い出した。その事を信じていないのか、
あゆ「へ〜」
輝夜「何よ、反応薄いわね」
スルーするあゆみ。そしてその態度が気に入らない自称かぐや姫だった。しかし、輝夜の言う事は事実であり、彼女もまた昔話のヒロイン。そしてその話にも裏話と真相が色々ある様で、
清蘭「輝夜様の時はこっちが大変だったんっすよ」
鈴瑚「清蘭もう済んだことなんだからいいじゃん」
レイ「あの時大変だったなー。ねー、先輩?」
こっちも大変だったみたいだ。
そしてレイセンが放ったこの一言が、
鈴仙「…ごめんなさい」
彼女の先輩を苦しめた。その時の話は鈴仙からすれば苦い記憶で、思い出す度罪悪感で押し潰されそうになった。今でも彼女はその事を悔やんでおり、涙目で頭を下げ後輩達に謝罪した。
レイ「あ、あれ?本気で謝らないで下さいよ」
先輩からのまさかの本気の謝罪に後輩は焦った。そんなつもりは全く無く、ただ話の流れで言っただけで、まさか真に受けるとは思わなかった。そしてこの状況の中、嬉しそうに筆を走らせる少女が。
カキカキ[レイセン泣かせたー (σ°∀°)σ]
今のサグメは言わば本来の姿であり、憧れだった。もう何も隠さず、素直に思った事を表現できる。もう彼女の筆を止めれる者は誰もいない。
あゆ「カグちゃん『かぐや姫』だったの〜!?」
大幅な遅延でやってきたリアクションに、
『えっ、今?』
呆れる一同。しかし、これがあゆみの通常運転。
カキカキ[おそっ ∑(゚Д゚)]
そしてこちらはいつもより特急運転の様だ。
その後も女子会は笑い声が絶えず、気付けば外はもう暗くなっていた。そして月からの客人達は帰る時間に。
豊姫「八意様ごちそうさまでしたぁ」
依姫「突然押し掛けて申し訳ありませんでした。
あゆみ、一緒に月で暮らさない?」
永琳「ダーメ。そんなにスイーツを食べたければ、
あゆみちゃんのお店に買いに行きなさい」
レイ「先輩、また遊びに来ますね」
清蘭「今度は遊びに来て下さいっす!」
鈴瑚「その時はお団子とお餅をご馳走するよ」
鈴仙「あ、うん(もう来ないで)」
カキカキ[輝夜様もお元気で (^^)/~~~]
輝夜「あ、うん(めんどくせー)」
輝夜との挨拶を終えたサグメはあゆみに近づき、
カキカキ…。
サグ「……ん」
何かを書き終え、あゆみにノートとボールペンを返した。あゆみがノートに視線を落とすとそこには、
[ありがとうヽ(;▽;)]
泣き顔の顔文字と共に感謝の言葉。それを見たあゆみが再び視線を上げると、
ぎゅーっ!
無口な悲劇のヒロインがあゆみに力強く抱きついた。始めは驚いた王子様だったが、彼女の気持ちが伝わったのか、
あゆ「うん、サグメさん元気でね」
抱きしめ返して別れの言葉を囁いた。そしてタイミングを見計らった様に、
豊姫「それじゃあみんな挨拶はもういいかしらぁ」
豊姫が能力を発動させ、客人達は一斉に月へと帰っていった。
輝夜「あ゛ー…、どっと疲れが」
鈴仙「ふー…、くたくたです」
その場でヘナヘナと腰を下ろす2人。そんな2人とは反対に
あゆ「また来て欲しいな〜」
再び会える事を月に願うあゆみだった。
ドサッ!
突然大きな物音。皆が音の方へ視線を向けると、そこにはグッタリと横たわったスイーツ店の代理店長が。
あゆ「チビウサギちゃん?」
輝夜「え、てゐ?」
鈴仙「てゐ!?どうしたの!」
永琳「ちょっとどうしたのよ!?」
輝夜「襲われたの?」
鈴仙「私、救急箱取って来ます」
皆が代理店長を心配し、慌てて駆け寄ると彼女は弱々しい声で呟いた。
てゐ「あゆみ…、お店が大変ウサ…」
あゆ「え?」
永琳「あゆみちゃんのお店がどうしたの!?」
てゐ「大繁盛ウサ」
輝夜「は?」
眉をひそめる輝夜と
てゐ「客が尋常じゃない程押し寄せて来たウサ」
永琳「えーと、つまり?」
額に人差し指を当て、状況整理をする天才薬師。
てゐ「疲れたウサ。もの凄い疲れたウサ…」
あゆ「え?え?え?え〜〜!?」
頭を抱えながら大混乱する店長。だが、その顔は困惑というよりも嬉しそう。
永琳「あゆみちゃんやったじゃない!
人里の皆があゆみちゃんの作る
スイーツに満足してるって事よ!」
状況整理が完了した天才薬師はあゆみの手を取り、興奮しながら讃えた。しかしその店長は、
あゆ「でも…何で急に〜?」
そうなる原因が思い当たらなかった。確かに少しずつ客が増えてはいたが、てゐがくたくたになる程ではなかった筈だった。不思議に思っているところに、てゐがその元凶について語り始めた。
てゐ「小傘のせいウサ。アイツがスイーツをあちこ
ちで配ってたみたいウサ。来たお客がみんな
同じ様な事を言ってたウサ」
あゆ「そう言えば買う時に、そんな事言ってた〜。
なんか皆をビックリさせられるって」
てゐ「しかもアイツ足りなくなったからって今日、
また補充しに来たウサ」
輝夜「何そのスパイラル」
永琳「予想外の客引きがいたのね」
小傘の働きに呆れつつも驚く一同。そして、その連鎖はまだまだ続く様だ。そこに、てゐを心配して救急箱を取りに行った鈴仙が戻って来た。
鈴仙「持ってきました!」
永琳「取り敢えず栄養ドリンクあげてくれる?」
鈴仙「え?怪我じゃないんですか?」
てゐ「ファイト一発が欲しいウサ…」
小学生の頃、人を驚かす事にはまっていた時期があり、悪戯を仕掛けてその様を見て楽しんでいました。
まさに(てゐ+小傘)/2=主 みたいな感じです。
そんな主に担任の先生は「やるなら人を喜ばす方法で驚かせなさい」と注意し、それが幼いながらも胸に響きました。あれは名言だったと思います。
次回:【Menu⑦:アップルパイ(サクサク)】
ヤツが動きます。