東方迷子伝   作:GA王

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前回の後編です。

最近やたら暑いですね。そういう時は涼しい喫茶店でアイスコーヒーと共に小説を書く。長い間いるとやたらと空調が強く感じるですが、あれは意図的なのでしょうか?



Menu⑧:アップルパイ(ジュワ~)※挿絵有

《前回までのあらすじ》

一気に人気の出たスイーツ店。永遠亭で事前に用意していた商品は早々に売り切れ、店での追加生産を決意したあゆみ。しかし店には窯がなく、あゆみが途方に暮れているところに、寺子屋の遠足で大量の林檎を収穫した妹紅がやって来た。その彼女に再び鬼達にあゆみの店の改装の依頼を伝える様にお願いをする永琳。妹紅は鬼達に伝えるために、あゆみとてゐは店の営業のために、鈴仙は薬の販売のためにそれぞれが動き出した。そんな中、一人取り残された輝夜。永琳からの後押しもあり、ついに彼女が動き出した。

 

 

--スイーツ店--

【OPEN】

 

 開店と共に押し寄せる客の波。ドーナツとシュークリームは飛ぶ様に売れて行き、日替わりメニューとして出したアップルパイの人気も上々。客の列は外まで続き、慌ただしく動く店員達。でも今日は輝夜が加わり、その表情にはどこか余裕がある。

 あゆみ達が店に向かっている途中で輝夜が追いつき、いきなりあゆみの店を手伝うと言い出したのだ。あまりにも突然な事に驚いたあゆみ、てゐ、鈴仙ではあったがあゆみは笑顔で受け入れ、てゐと鈴仙は泣きながら喜んだ。

 

 そして今は昼飯時、客の数が落ち着いてきた頃。丁度のタイミングで萃香達が店にやって来た。

 

萃香「よ!この前ぶり!」

勇儀「お邪魔するよ」

あゆ「萃香さん、勇儀さん!お待ちしてました〜。

   ありがとうございま〜す」

 

しかし、開店の工事の時に来ていた2人の鬼の姿がなかった。

 

あゆ「あれ〜?今日はお二人だけですか〜?」

勇儀「あー、あのバカ達は野球で来れないんだよ。

   アイツにこそやらせないと意味無いのに」

 

あゆみの問いに呆れ顔で答える勇儀。更に、

 

萃香「でも前から決まってたみたいだし」

勇儀「それでもだよ。受けた恩を返さないなんて

   鬼の名に泥を塗る様なもんだよ」

 

萃香の弁護にも腕組みをして否定的といったご様子。

 

あゆ「あの〜…」

勇儀「ああ、悪いね。窯が欲しいんだって?

   奥見せてくれるかい?」

あゆ「はい、案内しま〜す。チビウサギちゃん、

   カグちゃん少しお願いね〜」

  『はーい』

 

萃香達を奥へ案内する為、店頭を離れるあゆみ。

 

萃香「ねー、今のって永遠亭の姫?」

あゆ「そーですよ〜」

勇儀「やっぱりか!アイツ働き始めたのか!?」

あゆ「今日から手伝ってくれてるんですよ〜」

萃香「明日隕石でも降るんじゃないの?」

 

輝夜の変わり様に驚く2人。輝夜の事を知る者達からすれば、天地がひっくり返る程あり得ない話で、翌日の天変地異を心配したくもなる。

 そんな2人をあゆみが店の奥へ案内すると、鬼達は部屋を見回し、柱や壁の具合を軽く叩きながら確認した後、工事の内容と作れる窯の大きさを店員達に説明していった。

 

勇儀「とまあこんな感じだけど、質問はあるか?」

 

勇儀の質問に黙って首を横に振る店員一同。

 

萃香「他に何かやって欲しい事ある?」

輝夜「この際だから頼んじゃえば?」

勇儀「遠慮しないで言ってみな」

 

あゆみ達からすれば願ってもない申し出。萃香と勇儀の言葉に店長は

 

あゆ「え〜っと、じゃー…。

   でも難しいかもしれないし〜。

   出来ればでいいかなぁ〜って感じで〜、

   あ、でもでもやっぱり欲しかったり〜」

 

視線を横に外し、両手の人差し指を突き合わせ、モジモジとこねくり回しながら答えた。遠慮をしているのかしていないのか、やって欲しいのか欲しくないのか、よく分からない彼女に

 

イラッ!

 

輝夜「いったい何を言いたいのよ!!」

あゆ「ごめんごめん!イタイイタイ〜」

 

拳のドリルで闘魂を注入する輝夜店員。その光景を初めて見る者達は、

 

勇儀「随分と活発な姫様だな…」

萃香「痛そー…」

 

顔を引攣らせ拳の間で涙目になっているあゆみを哀れんだ。

 

てゐ「いつもの事ウサ」

 

しかし見慣れた者からすれば、どうって事のない日常の光景。そして、熱りが冷めたところで、店長が頭を抑えながら話し始めた。

 

あゆ「えっと屋根付きの外で食べれる席が

   あったら良いな〜って」

 

それは所謂テラス席。テイクアウトだけではなく、ゆっくりと食べていって欲しいという彼女の願いだった。

 

輝夜「それはちょっと難しいかもね」

勇儀「屋根の増築は簡単に出来るけどね」

 

しかし店の敷地は狭く、無理にテラス席を作ろうとすれば、道にはみ出てしまうのだ。 その2人の言葉にしょんぼりと肩を落とす店長。

 

萃香「団子屋みたいに椅子出すだけじゃダメなの?

   」

 

代替案を出す萃香だったが、あゆみが置きたいのは椅子とテーブル。客にはそこで友達達とコーヒーや紅茶と一緒にケーキを食べて、楽しいひと時を過ごして欲しいと考えていた。萃香の案に賛成する事ができず、唸り声をあげて悩む店長。そんな彼女を見かねて、

 

てゐ「ちょっとどれくらいまで使えるか聞いてくる

   ウサ」

 

そう言い残して、てゐは店を出て役場へと走って行った。テラスの事はてゐが戻るまで保留という事で、あゆみから他の改装希望を聞き終えた勇儀は、

 

勇儀「じゃあこれからの段取りだけど、早速今から

   始めるよ。だから中にある商品は外に出した

   方がいいよ」

 

作業を開始する旨を伝えた。しかしそうなると問題が…。

 

輝夜「ちょちょっと待って!

   じゃあ暫くお休みってこと?」

萃香「そうなるかな?」

輝夜「せっかくお客さんが来てくれてるのに…」

 

店内の工事の為、必然的に店での商売が出来なくなる。今スイーツ店の人気はうなぎ登りで、そんな時に休みとなるのは大きな痛手で、輝夜の意見は真っ当だった。すると店長は、

 

あゆ「じゃあお店の前でドーナツだけでも

   露天販売しようか?」

 

限られた商品ではあるが、店外での販売を提案した。この案に輝夜はしばらく考えた後、口を開いた。

 

輝夜「そうね、何もしないよりかはマシね」

勇儀「お前さんがソレを言うか?」

萃香「ふふふ…」

 

今日まで何もせず、ただ屋敷に引き篭もっていた輝夜。その彼女の口から出たまさかの言葉に苦笑いをする鬼達だった。

 その後鬼達は工事の準備を始め、あゆみ達は鬼達が工事を始める前にと、急いで店内の片付けと商品の避難を開始した。それぞれが準備を進めているところに、

 

てゐ「ただいまウサ、聞いて来たウサ」

 

出掛けていたてゐが戻って来た。

 

  『どうだった?』

てゐ「閉店後に片付けるならOKだって。

   あとは人がすれ違えるくらいのスペースを

   残していれば、問題ないらしいウサ」

あゆ「じゃ〜…」

輝夜「あゆみ良かったわね」

あゆ「やっっっった〜〜!」

 

大きな声で兎の様に飛び跳ねて喜ぶあゆみを安堵の笑顔で見つめる一同。

 

勇儀「となるとやる事は決まったかな」

萃香「そうだね。外の事は後日決めるとして、

   先に中をやっちゃおう。

   じゃあ気持ちを切り替えて仕事にかかるよ」

 

萃香の言葉と共に再び準備に取り掛かる一同。そして商品の避難と露天販売の準備来た頃、鬼達の作業が本格的に始まり、

 

ドガーン!!バキバキ!

 

店内からは凄まじい破壊音が。

 

てゐ「何事ウサ!?」

輝夜「凄い音ね…」

あゆ「お店壊れないよね〜?」

 

異常な音に店が心配になるあゆみ達。

 

カシャッ。

 

その3人の近くでシャッターを切る音が。音の方に視線を向けると、そこにはカメラを構える1人の少女がいた。

 

??「あやややや?今日はもう閉店ですか?」

あゆ「まだやってますよ〜。いらっしゃいませ〜」

??「あや、そうでしたか。ではドーナツを一つ。

   それと取材してもいいですか?

   あ、申し遅れました。

   私は『文々。新聞』の記者の

   『清く正しい射命丸』こと、

   射命丸文と申します」

 

新聞記者を名乗る少女は注文したドーナツを受け取ると、その流れで名刺をあゆみに手渡した。

 

輝夜「ブンヤが何の用?」

文 「いやー、今人里を賑わせているスイーツ店の

   取材を…って、あやややや!?

   あなた輝夜さんでは?」

 

ここで認めれば新聞の一面として取り上げられると瞬時に悟った輝夜は、声色を変え、

 

輝夜「な、何の事だろうなー。私はテルヨだぜぃ」

 

演じきる事を決意した。

 

てゐ「ネーミングセンスが皆無ウサ」

 

しかし、新聞記者としてはこれ程美味しいネタはない。その上わざわざ向こうから調理されに来ているのだ。そして彼女のスイッチが入った。

 

文 「…。ではテルヨさんに質問します。

   こちらで働き始めてどれくらいですか?」

輝夜「き、今日から…だぜぃ」

文 「ここのおススメは何ですか?」

輝夜「シュークリーム、だぜぃ」

あゆ「ぷぷぷ〜」

てゐ「くっ、苦しいウサ」

 

【挿絵表示】

 

 

輝夜の必死の演技にあゆみは口を抑え、てゐは腹を抑えて笑いを堪えた。

 

文 「では、最後に妹紅さんに一言お願いします」

輝夜「見てなさいよ単細胞!

   もう私の事を引き篭もりなんて

   言わせないんだから!」

あゆ「…」

てゐ「…」

文 「はい、輝夜さんありがとうございまーす」

 

何食わぬ顔でサラサラと手にしたメモ帳に輝夜のコメントを記載していく新聞記者。調理は完了し、美味しく召し上がった様だ。

 

輝夜「しまったー!」

 

頭を抱え跪く輝夜。

 

てゐ「しまったも何も全然隠せてないウサ。

   自分の首を絞めただけウサ」

文 「なぜお店の外で販売を?」

あゆ「今改装工中なんです。

   中で鬼さん達が工事してくれているんです」

 

あゆみが質問に答えた瞬間、その新聞記者の顔が青くなり、

 

文「あややややや。あ、取材はもう結構ですので、

  私はこれで失礼します」

 

挨拶をそこそこに空の彼方へと猛スピードで飛んで行った。

 

あゆ「はや〜い。でもどーしたんだろ〜?」

てゐ「鬼と天狗は上司と部下の関係ウサ。

   だから面倒事から逃げたウサ」

あゆ「天狗?」

てゐ「天狗。さっきのブンヤ」

あゆ「…」

てゐ「…」

あゆ「え〜〜〜っ!」

てゐ「なる程、このタイミングで…。あれ?」

 

てゐの視線の先には頭を抱えたままガタガタと震える輝夜が。

 

てゐ「姫様どうしたウサ?」

輝夜「新聞…。どうしようどうしよう」

てゐ「2人共面倒くさいウサ」

 

 

 




次回:【Menu⑨:ショートケーキ(スポンジ)】
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